【書籍化決定】超リアルなVRMMOのNPCに転生して年中無休働いていたら、社畜NPCと呼ばれていました

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第一章 はじまりの町

40.NPC、暴走する

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 風を切るようにショートランスは大蛇に向かって放たれる。

『キシャアアアア!』

 大蛇の叫び声が森の中に響く。

 矢は大蛇の体を突き抜けて地面に刺さった。

「あと数発やっておくか」

 矢を五本掴み放つと、大蛇の体に次々と刺さっていく。

 その影響か大蛇は動けないようだ。

 ここまで固定したら、勇者達も倒しやすいだろう。

 それと同時に俺の存在に気づいたやつもいた。

「うぁー、ヴァイトじゃん。俺怒られないよな?」

「今の発言が怒られそうな気もするけどね?」

「ヒイィィ!?」

 俺に気づいたのはユーマ達だけだろう。

 斥候スキルを使っているからな。

 俺はスキルを解除するとナコの元へ向かう。

「なんでナコがいるんだ?」

「あっ……いや、みんなに頼まれて……」

「頼まれたらこんなところに来るのか? 命がけだぞ?」

「ごめんなさい」

 あまりにもナコがシュンってしているから、段々と可哀想に見えてきた。

 別にいじめたいわけではないからな。

 怒られているリスみたいだ。

「おいおい、俺達のレイドバトルになんでNPCが邪魔してくるんだよ!」

 突然声をかけられ、振り返るとどこかで見たことのある男がいた。

「あー、たしか地面にキスをしていた勇者だっけ?」

「はぁん!? あっ、お前あの時の馬鹿力男だな!」

 そこにいたのは野菜屋の女性を殴ろうとしていた勇者だった。

 なぜこんなやつらと一緒にいるのかアルに聞いたら、臨時で集めたレイドパーティーに参加していると言っていた。

 そりゃー、コンビネーションも取れずにみんなやられているわけだな。

「おい、お前無視する――」

「死にたいなら放り投げるぞ」

「ヒャイ!?」

 少しイラッとしているから、変な奴には絡まれたくない。

 大蛇も矢を引き抜いて動けるようになったからな。

「あのー、なぜこんなところにNPCが来てるんですか?」

 NPC?

 さっきから言っているがなんだそれ?

 囮になると言っていた男も、突然わけのわからないことを言ってきた。

「来ているのは俺だけじゃないぞ。勇者があまりにもバカだからって師匠達が全員駆けつけている」

「えっ……」

「それじゃあ、レイドバトルの報酬が取られるじゃないか!」

「じゃあ、お前一人で行ってくるか? ちょうど大蛇がこっちを向いて怒っているからいいかもな」

 俺は男の襟元を掴むと大蛇に向かって放り投げた。

「うわああああ! キチクウウウゥゥゥ!」

 それと同時に大きく口を開いた大蛇に向けて、矢を数本放つ。

『キシャアアアア!』

 どうやら口の中は柔らかいようだ。

「ヴァイトさんの性格がいつもと違いますね」

「それは僕も思いました。鬼ごっこしている時も鬼畜でしたが、もっと優しく穏やかでした」

「鬼ごっこ……?」

 ああ、また勝手に体が動いているけど、これは何だろうか。

 瞬きをすると、HUDシステムが出現し、あることが書かれていた。

――狂戦士モード

 どうやら狂戦士の職業が影響しているようだ。

「お前達、あとで覚えておけよ?」

 そう言って俺の体は再び動き出す。

 走りながら弓と剣を持ち替えて、大蛇に切りつける。

『キシャアアアア!』

 あれ?

 皮膚が硬いと思っていたが、意外にも剣の刃は通るようだ。

 単に勇者達のSTRが低いのかもしれない。

「この間は散々町を荒らしてくれたよな?」

 大蛇は俺と目が合うとどこか怯えているように見えた。

「父さんを傷つけて黙っているわけにはいかないからな」

 俺はその後も剣で何度も大蛇を切り裂く。

 大蛇の声は冒険者達を引き寄せたのだろう。

「おい、お前ら大丈夫だった――」

 遅れて師匠である冒険者達が駆けつけたが、戦場を見て驚いているようだ。

 その中にはジェイドやエリックもいた。

 まぁ、ほとんど俺が大蛇を狩っているからな。

 それにしても、さっきバビットのことを父さん・・・と言ったのはなんだろう。

「おい、ヴァイトやりすぎだ! それじゃあ、防具にもならないぞ!」

「へっ!?」

 防具にもならないと言われたら、自然と俺の手は止まっていた。

 防具職人として魔物の素材は大事だからな。

 いつのまにか狂戦士モードの文字が消えていた。
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