【一巻3月中旬発売】NPCに転生したら、あらゆる仕事が天職でした~前世は病弱だったから、このVRMMO世界でやりたかったこと全部やる~

k-ing ★書籍発売中

文字の大きさ
上 下
40 / 151
第一章 はじまりの町

40.NPC、暴走する

しおりを挟む
 風を切るようにショートランスは大蛇に向かって放たれる。

『キシャアアアア!』

 大蛇の叫び声が森の中に響く。

 矢は大蛇の体を突き抜けて地面に刺さった。

「あと数発やっておくか」

 矢を五本掴み放つと、大蛇の体に次々と刺さっていく。

 その影響か大蛇は動けないようだ。

 ここまで固定したら、勇者達も倒しやすいだろう。

 それと同時に俺の存在に気づいたやつもいた。

「うぁー、ヴァイトじゃん。俺怒られないよな?」

「今の発言が怒られそうな気もするけどね?」

「ヒイィィ!?」

 俺に気づいたのはユーマ達だけだろう。

 斥候スキルを使っているからな。

 俺はスキルを解除するとナコの元へ向かう。

「なんでナコがいるんだ?」

「あっ……いや、みんなに頼まれて……」

「頼まれたらこんなところに来るのか? 命がけだぞ?」

「ごめんなさい」

 あまりにもナコがシュンってしているから、段々と可哀想に見えてきた。

 別にいじめたいわけではないからな。

 怒られているリスみたいだ。

「おいおい、俺達のレイドバトルになんでNPCが邪魔してくるんだよ!」

 突然声をかけられ、振り返るとどこかで見たことのある男がいた。

「あー、たしか地面にキスをしていた勇者だっけ?」

「はぁん!? あっ、お前あの時の馬鹿力男だな!」

 そこにいたのは野菜屋の女性を殴ろうとしていた勇者だった。

 なぜこんなやつらと一緒にいるのかアルに聞いたら、臨時で集めたレイドパーティーに参加していると言っていた。

 そりゃー、コンビネーションも取れずにみんなやられているわけだな。

「おい、お前無視する――」

「死にたいなら放り投げるぞ」

「ヒャイ!?」

 少しイラッとしているから、変な奴には絡まれたくない。

 大蛇も矢を引き抜いて動けるようになったからな。

「あのー、なぜこんなところにNPCが来てるんですか?」

 NPC?

 さっきから言っているがなんだそれ?

 囮になると言っていた男も、突然わけのわからないことを言ってきた。

「来ているのは俺だけじゃないぞ。勇者があまりにもバカだからって師匠達が全員駆けつけている」

「えっ……」

「それじゃあ、レイドバトルの報酬が取られるじゃないか!」

「じゃあ、お前一人で行ってくるか? ちょうど大蛇がこっちを向いて怒っているからいいかもな」

 俺は男の襟元を掴むと大蛇に向かって放り投げた。

「うわああああ! キチクウウウゥゥゥ!」

 それと同時に大きく口を開いた大蛇に向けて、矢を数本放つ。

『キシャアアアア!』

 どうやら口の中は柔らかいようだ。

「ヴァイトさんの性格がいつもと違いますね」

「それは僕も思いました。鬼ごっこしている時も鬼畜でしたが、もっと優しく穏やかでした」

「鬼ごっこ……?」

 ああ、また勝手に体が動いているけど、これは何だろうか。

 瞬きをすると、HUDシステムが出現し、あることが書かれていた。

――狂戦士モード

 どうやら狂戦士の職業が影響しているようだ。

「お前達、あとで覚えておけよ?」

 そう言って俺の体は再び動き出す。

 走りながら弓と剣を持ち替えて、大蛇に切りつける。

『キシャアアアア!』

 あれ?

 皮膚が硬いと思っていたが、意外にも剣の刃は通るようだ。

 単に勇者達のSTRが低いのかもしれない。

「この間は散々町を荒らしてくれたよな?」

 大蛇は俺と目が合うとどこか怯えているように見えた。

「父さんを傷つけて黙っているわけにはいかないからな」

 俺はその後も剣で何度も大蛇を切り裂く。

 大蛇の声は冒険者達を引き寄せたのだろう。

「おい、お前ら大丈夫だった――」

 遅れて師匠である冒険者達が駆けつけたが、戦場を見て驚いているようだ。

 その中にはジェイドやエリックもいた。

 まぁ、ほとんど俺が大蛇を狩っているからな。

 それにしても、さっきバビットのことを父さん・・・と言ったのはなんだろう。

「おい、ヴァイトやりすぎだ! それじゃあ、防具にもならないぞ!」

「へっ!?」

 防具にもならないと言われたら、自然と俺の手は止まっていた。

 防具職人として魔物の素材は大事だからな。

 いつのまにか狂戦士モードの文字が消えていた。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...