37 / 150
第一章 はじまりの町
37.NPC、鬼畜ルーキーと呼ばれる
しおりを挟む
夜の営業のために店に戻ると、冒険者達も集まっていた。
その中にジェイドやエリックもいる。
まだ営業前に店で何をやっているのだろうか。
「おっ、鬼畜ルーキーが来たな」
「なんですかそれ?」
「新しいヴァイトの呼び方ですよ」
どうやら勇者達には鬼畜野郎って言われているのに、冒険者からは鬼畜ルーキーと呼ばれているらしい。
どちらも違うことが俺としては残念だ。
「それでこんなに集まって何かあったんですか?」
店に来ているのは訓練場で見たことある冒険者達だった。
一瞬、勇者達が一人前になったことを喜ぶお祝いかと思ったが、雰囲気はそんな感じではなかった。
「町を襲った魔物が今森の中で暴れているからな。そいつらをどうするか話し合っていたところだ」
「ひょっとして武器を壊されたのはジェイドさん達ですか?」
「ああ、俺の大事に使っていた剣が一瞬で溶かされたからな」
ボギーが言っていた剣が早く欲しいって言っていたのはジェイドだった。
他にもここにいる冒険者の全員が武器を失っていた。
俺を追いかけてきた時にそんな能力を一切見せなかったのは、やはり強者の余裕ってやつなんだろうか。
町を襲っている時も楽しんでいたぐらいだからな。
「次討伐に行く時に俺も手伝いましょうか? 遠くからの援護射撃ぐらいならバビットさんも心配しないだろうし」
「あいつに矢は通らなかったぞ?」
「剣も通りにくい体をしているから、ヴァイトでも大変そうだよ?」
あの時はSTRが低かったのもあるが、俺の作った剣が未熟だったのもあるだろう。
全く刃が通らなかったのは俺も記憶に残っている。
「俺が使っているのはこの矢なので大丈夫ですよ」
俺がさっきも作っていたショートランス型の矢を取り出すと、冒険者達がざわめき出した。
「本当にこれを放ってるのか?」
「本当はもっと槍のように長く鋭い形にしたかったですが、コスト面も高くなりますし、持ち運びがめんどくさいですからね」
「ちょ、気にするのはそこじゃなくて、ヴァイトは槍を投げようとしたんですか?」
「はい! 槍を投げるのは一本しか無理なんで、矢として放ちたかったんですよね。五本までなら同時に放てますからね」
俺はこの場にいる弓使いの師匠に尋ねると、困った顔をして頷いていた。
ちなみに師匠は俺よりも的確に矢を多く放ってるぞ?
「なんか魔物側からしても鬼畜ルーキーだな……」
「戦い方が独特なのは気づいていたけど、そこまで鬼畜だったのね……」
なぜか効率重視で安全に戦えると思っていたのに冒険者達に引かれてしまった。
そもそも俺が使っているショートランス型の矢は弓使いの師匠でも放つことはできる。ただ、矢自体が重いため実用性がないと言われていた。
実際に放ってもらったときは、全く飛ばずに軌道がずれていた。
それでも練習していたらしっかり飛ぶようにはなった。
実戦でゴブリン相手に使えたぐらいだからね。
STRとDEXが同じぐらいなのが、きっと変わった弓矢を放つのに影響しているのだろう。
それに武器職人でもあるからこそ、構造自体を理解して軌道修正ができたりするのかもしれない。
「それならあいつらを見張ってもらうべきか?」
「あいつらって……?」
「あのおバカ勇者達だ」
どうやら冒険者達も勇者のことをバカだと認識していたようだ。
いや、バカなのはユーマだけな気がするが……。
♢
「ハップション!」
「あんたってくしゃみもバカぽいね」
「さすがにくしゃみがバカぽいってないだろう」
「きっとユーマがバカだって噂しているんだね」
「アルまで俺をバカ扱いするのかよ!」
♢
「それでまた勇者達がやらかしそうなんですか?」
「ああ、今度はレイドバトルだああああ! って叫んでいたぐらいだね」
レイドバトルってなんだろうか。
俺はわからず首を傾げていると、準備を終えたバビットが教えてくれた。
「みんなで共闘することだな。ちなみに俺はそこにヴァイトが参加するのは反対だぞ」
バビットとしては危険な場所に俺を行かせたくないのだろう。ただ、俺としては勇者達に付いて行った方が良い気がしてきた。
「行ったらダメですか? 勇者達って命を粗末にするので、俺としては見過ごせないです」
ユーマ達なら逃げる手段を身につけたから問題はないだろう。だが、他の勇者達は別だ。
あまり関わっていないからわからないが、ユーマ達を見ているとゲーム感覚なのは間違いないだろう。
俺としてはそんな勇者を守るためにも……いや、命を無駄遣いしないためにも行かないといけない気がした。
正直、勇者達がどうなろうがどっちでも良い。ただ、今日ユーマ達が言っていた勇者の中では上位に入るという言葉が引っかかっていた。
もし、本当に勇者達が共闘するならあいつらは呼ばれるだろうし、参加する気がする。
この世界に生まれ変わってできた友達を俺は簡単に見殺しにはできない。
「はぁー、頑固なところまであいつに似ているからな」
俺の顔を見たバビットはため息を吐いていた。
ポンっと頭に手を置くと優しく撫でた。
「無理するなよ」
どこか鼻詰まりぽい声が聞こえたが、頭を撫で終えると調理場に戻って行った。
「すぐに俺達も向かうから、ヴァイトは見てるだけでいいぞ」
「僕もすぐに追いかけるので大丈夫です」
「そもそもあのバカ達を止められたら良いんだけどな」
「俺からも声をかけてみますね」
そう思っていた晩に勇者達は魔物の討伐に向かっていた。
その中にジェイドやエリックもいる。
まだ営業前に店で何をやっているのだろうか。
「おっ、鬼畜ルーキーが来たな」
「なんですかそれ?」
「新しいヴァイトの呼び方ですよ」
どうやら勇者達には鬼畜野郎って言われているのに、冒険者からは鬼畜ルーキーと呼ばれているらしい。
どちらも違うことが俺としては残念だ。
「それでこんなに集まって何かあったんですか?」
店に来ているのは訓練場で見たことある冒険者達だった。
一瞬、勇者達が一人前になったことを喜ぶお祝いかと思ったが、雰囲気はそんな感じではなかった。
「町を襲った魔物が今森の中で暴れているからな。そいつらをどうするか話し合っていたところだ」
「ひょっとして武器を壊されたのはジェイドさん達ですか?」
「ああ、俺の大事に使っていた剣が一瞬で溶かされたからな」
ボギーが言っていた剣が早く欲しいって言っていたのはジェイドだった。
他にもここにいる冒険者の全員が武器を失っていた。
俺を追いかけてきた時にそんな能力を一切見せなかったのは、やはり強者の余裕ってやつなんだろうか。
町を襲っている時も楽しんでいたぐらいだからな。
「次討伐に行く時に俺も手伝いましょうか? 遠くからの援護射撃ぐらいならバビットさんも心配しないだろうし」
「あいつに矢は通らなかったぞ?」
「剣も通りにくい体をしているから、ヴァイトでも大変そうだよ?」
あの時はSTRが低かったのもあるが、俺の作った剣が未熟だったのもあるだろう。
全く刃が通らなかったのは俺も記憶に残っている。
「俺が使っているのはこの矢なので大丈夫ですよ」
俺がさっきも作っていたショートランス型の矢を取り出すと、冒険者達がざわめき出した。
「本当にこれを放ってるのか?」
「本当はもっと槍のように長く鋭い形にしたかったですが、コスト面も高くなりますし、持ち運びがめんどくさいですからね」
「ちょ、気にするのはそこじゃなくて、ヴァイトは槍を投げようとしたんですか?」
「はい! 槍を投げるのは一本しか無理なんで、矢として放ちたかったんですよね。五本までなら同時に放てますからね」
俺はこの場にいる弓使いの師匠に尋ねると、困った顔をして頷いていた。
ちなみに師匠は俺よりも的確に矢を多く放ってるぞ?
「なんか魔物側からしても鬼畜ルーキーだな……」
「戦い方が独特なのは気づいていたけど、そこまで鬼畜だったのね……」
なぜか効率重視で安全に戦えると思っていたのに冒険者達に引かれてしまった。
そもそも俺が使っているショートランス型の矢は弓使いの師匠でも放つことはできる。ただ、矢自体が重いため実用性がないと言われていた。
実際に放ってもらったときは、全く飛ばずに軌道がずれていた。
それでも練習していたらしっかり飛ぶようにはなった。
実戦でゴブリン相手に使えたぐらいだからね。
STRとDEXが同じぐらいなのが、きっと変わった弓矢を放つのに影響しているのだろう。
それに武器職人でもあるからこそ、構造自体を理解して軌道修正ができたりするのかもしれない。
「それならあいつらを見張ってもらうべきか?」
「あいつらって……?」
「あのおバカ勇者達だ」
どうやら冒険者達も勇者のことをバカだと認識していたようだ。
いや、バカなのはユーマだけな気がするが……。
♢
「ハップション!」
「あんたってくしゃみもバカぽいね」
「さすがにくしゃみがバカぽいってないだろう」
「きっとユーマがバカだって噂しているんだね」
「アルまで俺をバカ扱いするのかよ!」
♢
「それでまた勇者達がやらかしそうなんですか?」
「ああ、今度はレイドバトルだああああ! って叫んでいたぐらいだね」
レイドバトルってなんだろうか。
俺はわからず首を傾げていると、準備を終えたバビットが教えてくれた。
「みんなで共闘することだな。ちなみに俺はそこにヴァイトが参加するのは反対だぞ」
バビットとしては危険な場所に俺を行かせたくないのだろう。ただ、俺としては勇者達に付いて行った方が良い気がしてきた。
「行ったらダメですか? 勇者達って命を粗末にするので、俺としては見過ごせないです」
ユーマ達なら逃げる手段を身につけたから問題はないだろう。だが、他の勇者達は別だ。
あまり関わっていないからわからないが、ユーマ達を見ているとゲーム感覚なのは間違いないだろう。
俺としてはそんな勇者を守るためにも……いや、命を無駄遣いしないためにも行かないといけない気がした。
正直、勇者達がどうなろうがどっちでも良い。ただ、今日ユーマ達が言っていた勇者の中では上位に入るという言葉が引っかかっていた。
もし、本当に勇者達が共闘するならあいつらは呼ばれるだろうし、参加する気がする。
この世界に生まれ変わってできた友達を俺は簡単に見殺しにはできない。
「はぁー、頑固なところまであいつに似ているからな」
俺の顔を見たバビットはため息を吐いていた。
ポンっと頭に手を置くと優しく撫でた。
「無理するなよ」
どこか鼻詰まりぽい声が聞こえたが、頭を撫で終えると調理場に戻って行った。
「すぐに俺達も向かうから、ヴァイトは見てるだけでいいぞ」
「僕もすぐに追いかけるので大丈夫です」
「そもそもあのバカ達を止められたら良いんだけどな」
「俺からも声をかけてみますね」
そう思っていた晩に勇者達は魔物の討伐に向かっていた。
83
お気に入りに追加
1,330
あなたにおすすめの小説
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる