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第一章 はじまりの町
20.NPC、勇者に絡まれる
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毎朝の日課であるステータスポイント割り振りを行う。
昨日は13職のデイリークエストがクリアできたため、ポイントが39もあった。
【ステータス】
名前 ヴァイト
STR 47
DEX 49 +14
VIT 10
AGI 100 +25
INT 10
MND 60
AGIが100になったことで、何か変化があるのかと思ったが、大きな変化はなかった。
きっと職業体験をしていたら、仕事効率が良くなった時に気づくだろう。
俺は肉パンの準備のため、朝からパンを商店街に買いに行くことにした。
すでに外は賑わっているが、どこか賑わい方がいつもと違った。
「おい、こんな物を俺達に食わせるのかよ!」
「自分達で料理すれば良いじゃないのよ。ここはただの野菜店よ!」
「てめぇ、勇者にそんなことを言うのか!」
自分のことを勇者と言っているから、昨日この町に来た人なんだろう。
野菜店の女性に文句を言っていた。
近くに寄ってみると、お腹が減って旅に行けないと駄々を捏ねている。
そりゃー、空腹だと旅に行けないが、食事を削るほどお金がないのだろう。
それに周囲を見ても、似たような光景がちらほら見られた。
武器店や防具店でも、早く入荷しろと言ったり、工房に直接文句を言うなど横暴な人ばかりだ。
昨日ボビーが言っていた横暴な人とは、ああいう人のことを言うのだろう。
「てめぇ、NPCのくせに――」
野菜店の女性に殴りかかろうとしていた。
俺は咄嗟に後ろから回りその手を掴む。
「へっ!?」
男は止められるとは思ってなかったのだろう。
さらに強く叩こうと、手を握りもう一度振りかぶろうとしていた。
どこか手が光っているような気がしたが、手に電球でも持っているのだろうか。ただ、全く身動きが取れないようだ。
思ったよりもSTRの数値が影響している気がした。
「あっ……あの……」
野菜店の女性も驚いて困惑していた。
ああ、何が欲しいか言っていなかった。
「あっ、サラダに使う野菜をもらっても良いですか? できれば葉物が多い方が良いです」
勇者の男と野菜店の女性が驚いた顔で俺を見ていた。
「あっ……はい!」
すぐに野菜を麻の袋に詰めてもらう。
「おい、てめぇ離せよ!」
「あっ、どうぞ」
俺は言われた通りに手を離すと、男はそのまま拳を突き出して突っ込んでいく。
さすがに女性にぶつかったら危ないと思い、足を引っ掛けて、浮いたタイミングで服を通路側に引っ張った。
「うっ、うおおおお!」
男は急に体が浮いて止められなかったのだろう。
見事に顔面から突っ込んでいく。
――ドンッ!
拳が地面に当たった瞬間、大きな音が聞こえてきた。
地形が変わるような明らかな変化に、周囲の人達がざわめき出す。
「あれが勇者の力か……」
俺にはない到底計り知れない力が、勇者にはあるのだろう。
「HPが残りわずかになったじゃねーか」
男は頭をかいて俺を探していた。
「急いで逃げた方が良いです」
野菜店の女性は俺に野菜を渡して、背中を押していた。
このままいたらお店の邪魔になると思ったのだろう。
俺はすぐにその場から立ち去った。
その後、昼の営業中も内心はドキドキした。
あいつらが襲ってきたらどうしようかと。ただ、この町で働いている客も勇者達にはうんざりしている様子。
最終的には勇者達へのボイコットをしようという話すら出ていた。
ボイコットがダメなら、最終的に町から追い出しても良いという声もあった。
勇者が来て二日目でそこまで関係が悪化するとは誰も思ってなかっただろう。
そもそも勇者に対して、親切に接してくれと通達があったのは国からだ。
国のお偉いさん達である貴族がいるのは王都だ。
最終的に王都に行って、貴族達に面倒をみて貰えば良いと言っていた。
ここの町って王都からかなり離れているらしいから、準備ができた人達から王都に向かうのだろうか。
どっちにしても早くいなくなってもらいたいってのが、ここに住む町の人達の願望だ。
「ヴァイトは気にしなくても良いからな?」
「でも、さすがにあの態度はないですよね……」
昼の営業の時に、また料理を値引きしてくれと言っていた奴もいた。
飲食店に来て値引きしてくれって、流石に人として人間性を疑うレベルだ。
勇者の中にもちゃんとお金を払っている人はいる。
その人はゆっくりとした生活がしたいと言っていた。
冒険に出たい勇者とスローライフがしたい勇者だと感覚が違うのだろう。
ちなみに俺は冒険もする気はないし、スローライフをするつもりもない。
楽しくいろんなことがやりたい。
「俺はバイトニストの生活がしたい!」
「いや……それは社畜ライフだぞ」
どうやら声に出ていたようで、バビットがボソッと何かを言っていた。
「教会に行ってから、冒険者ギルドと生産街に行って……時間がないので行ってきます!」
「ああ、ほどほどに頑張れよ」
俺は今日もデイリークエストを終わらせるために、社畜バイトニストとして職業体験に向かう。
昨日は13職のデイリークエストがクリアできたため、ポイントが39もあった。
【ステータス】
名前 ヴァイト
STR 47
DEX 49 +14
VIT 10
AGI 100 +25
INT 10
MND 60
AGIが100になったことで、何か変化があるのかと思ったが、大きな変化はなかった。
きっと職業体験をしていたら、仕事効率が良くなった時に気づくだろう。
俺は肉パンの準備のため、朝からパンを商店街に買いに行くことにした。
すでに外は賑わっているが、どこか賑わい方がいつもと違った。
「おい、こんな物を俺達に食わせるのかよ!」
「自分達で料理すれば良いじゃないのよ。ここはただの野菜店よ!」
「てめぇ、勇者にそんなことを言うのか!」
自分のことを勇者と言っているから、昨日この町に来た人なんだろう。
野菜店の女性に文句を言っていた。
近くに寄ってみると、お腹が減って旅に行けないと駄々を捏ねている。
そりゃー、空腹だと旅に行けないが、食事を削るほどお金がないのだろう。
それに周囲を見ても、似たような光景がちらほら見られた。
武器店や防具店でも、早く入荷しろと言ったり、工房に直接文句を言うなど横暴な人ばかりだ。
昨日ボビーが言っていた横暴な人とは、ああいう人のことを言うのだろう。
「てめぇ、NPCのくせに――」
野菜店の女性に殴りかかろうとしていた。
俺は咄嗟に後ろから回りその手を掴む。
「へっ!?」
男は止められるとは思ってなかったのだろう。
さらに強く叩こうと、手を握りもう一度振りかぶろうとしていた。
どこか手が光っているような気がしたが、手に電球でも持っているのだろうか。ただ、全く身動きが取れないようだ。
思ったよりもSTRの数値が影響している気がした。
「あっ……あの……」
野菜店の女性も驚いて困惑していた。
ああ、何が欲しいか言っていなかった。
「あっ、サラダに使う野菜をもらっても良いですか? できれば葉物が多い方が良いです」
勇者の男と野菜店の女性が驚いた顔で俺を見ていた。
「あっ……はい!」
すぐに野菜を麻の袋に詰めてもらう。
「おい、てめぇ離せよ!」
「あっ、どうぞ」
俺は言われた通りに手を離すと、男はそのまま拳を突き出して突っ込んでいく。
さすがに女性にぶつかったら危ないと思い、足を引っ掛けて、浮いたタイミングで服を通路側に引っ張った。
「うっ、うおおおお!」
男は急に体が浮いて止められなかったのだろう。
見事に顔面から突っ込んでいく。
――ドンッ!
拳が地面に当たった瞬間、大きな音が聞こえてきた。
地形が変わるような明らかな変化に、周囲の人達がざわめき出す。
「あれが勇者の力か……」
俺にはない到底計り知れない力が、勇者にはあるのだろう。
「HPが残りわずかになったじゃねーか」
男は頭をかいて俺を探していた。
「急いで逃げた方が良いです」
野菜店の女性は俺に野菜を渡して、背中を押していた。
このままいたらお店の邪魔になると思ったのだろう。
俺はすぐにその場から立ち去った。
その後、昼の営業中も内心はドキドキした。
あいつらが襲ってきたらどうしようかと。ただ、この町で働いている客も勇者達にはうんざりしている様子。
最終的には勇者達へのボイコットをしようという話すら出ていた。
ボイコットがダメなら、最終的に町から追い出しても良いという声もあった。
勇者が来て二日目でそこまで関係が悪化するとは誰も思ってなかっただろう。
そもそも勇者に対して、親切に接してくれと通達があったのは国からだ。
国のお偉いさん達である貴族がいるのは王都だ。
最終的に王都に行って、貴族達に面倒をみて貰えば良いと言っていた。
ここの町って王都からかなり離れているらしいから、準備ができた人達から王都に向かうのだろうか。
どっちにしても早くいなくなってもらいたいってのが、ここに住む町の人達の願望だ。
「ヴァイトは気にしなくても良いからな?」
「でも、さすがにあの態度はないですよね……」
昼の営業の時に、また料理を値引きしてくれと言っていた奴もいた。
飲食店に来て値引きしてくれって、流石に人として人間性を疑うレベルだ。
勇者の中にもちゃんとお金を払っている人はいる。
その人はゆっくりとした生活がしたいと言っていた。
冒険に出たい勇者とスローライフがしたい勇者だと感覚が違うのだろう。
ちなみに俺は冒険もする気はないし、スローライフをするつもりもない。
楽しくいろんなことがやりたい。
「俺はバイトニストの生活がしたい!」
「いや……それは社畜ライフだぞ」
どうやら声に出ていたようで、バビットがボソッと何かを言っていた。
「教会に行ってから、冒険者ギルドと生産街に行って……時間がないので行ってきます!」
「ああ、ほどほどに頑張れよ」
俺は今日もデイリークエストを終わらせるために、社畜バイトニストとして職業体験に向かう。
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