【一巻3月中旬発売】NPCに転生したら、あらゆる仕事が天職でした~前世は病弱だったから、このVRMMO世界でやりたかったこと全部やる~

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第一章 はじまりの町

15.NPC、どこでも職業体験! ※一部別視点

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 俺はジェイド達と一緒にバビットを教会まで連れて行った。

 他の人も町の人全員で教会まで運んでいく。

 教会は住宅街の奥の方にひっそりとあった。

 そこには神父がおり、回復属性魔法をかけて治療をしていた。

 中は血のにおいで溢れており、どこか衛生的に良くないような気がする。

 怪我人が多いから仕方ない。ただ、入院している時に、看護師が血が付いたものは別に廃棄すると言っていた。

 この世界に感染症という概念がないのだろうか。

 バビットが治療してもらっている間、俺は特にやることもなく周囲を見渡していた。

 まだまだたくさんの人が血だらけで倒れている。

 俺は近くにあった樽を持って、井戸に水を汲みに行くことにした。

「おい、ヴァイトどこに行くんだ?」

「あいつのやりたいことをさせておけ」

 住宅街なのもあり、井戸はすぐ近くにあった。

 そこから水を汲み取って、教会に戻るとブラシを使って床についた血を洗い流していく。

「ほら、また自ら社畜になってるだろ……」

「ヴァイトらしいというのかね」

 そんな俺を三人は優しく眺めていた。

 我ながら店の掃除に慣れているからか、簡単な掃除ならすぐに終わってしまう。

 普段であれば、その場所に向かったり、きっかけがあったタイミングでデイリークエストが発生する。しかし、今回は何も聞こえなかった。

 俺には教会での仕事が向いていないのだろうか。

 掃除を終えた俺がバビットのところに戻ると、治療はすでに終わっていた。

「お祈りをしてから帰ろうか」

「お祈りですか?」

 どうやら治療のお礼にお布施をして、神に祈りを捧げるらしい。

 どこかお参りに近いイメージだ。

 大きな女性の石像の前に片膝立ちで座り、手を組んで祈りを捧げる。

【デイリークエスト】

 職業 聖職者
 1日1回神にお祈りをする 1/1
 報酬 ステータスポイント3

 祈りを捧げ終わると、目の前には半透明の板が現れていた。

【デイリークエストをクリアしました】

 今回のきっかけは神に祈ることだった。

 新しい職業体験ができることを知った俺はウキウキしながら、お店に帰ることにした。

「なぁ、あいつこれから仕事する気じゃないのか?」

「あー、まだ営業しないって伝えてなかったわ」

「それは早く言わないとヴァイトは悲しそうな顔をするだろうな」

「あいつは社畜だもんな……」

 さぁ、夜の営業が終わったら今度は何をしようかな。

 ♢

「咲良ちゃん今日も学校休みかな?」

 私は親友の家の前で、親友が出てくるのを待っていた。

――ガチャ!

「咲良――」

「奈子ちゃんごめんね。咲良まだ体調が悪くてね」

「ああ、そうですよね。毎日寄ってすみません!」

 私はすぐに頭を下げた。

 いつも一緒に登下校していたから、自然と寄るのが当たり前になっていた。

「奈子ちゃんは気にすることないのよ。お兄ちゃんが亡くなってから、咲良の中で何かが失ったんだろうね」

 そう言って咲良のお母さんも寂しそうな顔をしていた。

 咲良の兄はこの間病気で亡くなった。

 私も数回しか会ったことはないけど、その時は車椅子に乗ってニコニコしていたというイメージしかなかった。

「お兄ちゃんのこと好きでしたもんね。ゲームも一緒にやるって……」

「奈子ちゃんも一緒にやるつもりだったんでしょう?」

「今日から配信開始だったんです。よかったら咲良にゲームで待ってるよって伝えてください!」

 私はそう告げて学校に向かった。

 今日から楽しみにしていたVRMMOのゲームが配信される。

 今までと違うのはあらゆる感覚が共有され、もう一つの世界があるような感じがするという点だ。

 触ったものが熱いか冷たい、転んだら痛いなど、全ての感覚がわかるようになる。

 それにゲームに出てくるNPCもAIが搭載されて、様々な環境で学習して本当に生きているように感じるらしい。

 咲良はその世界なら、お兄ちゃんが自由に生きていけるとよく話してくれた。


 学校が終わった私はすぐにゲームをダウンロードして、開始するのを待っていた。

 今夜の日本時間19時になったら、全世界で同時に開始される。

「まずははじめの町に行って、二種類の職業を決めないといけないんだよね」

 私はヘッドギアの形をしたゲーム機を装着して、ベッドに横になる。

 事前にゲームのシステム確認とキャラクターカスタマイズは済んでいる。

 様々な種族、性別、身長、体重、見た目を選ぶことができる。

 これを決めるのに3日はかかった。

 その理由はキャラクターが一種類しか作れないからだ。

 ゲームの中でもリアルを再現するために、キャラクター作成は1体までとなっている。

 表示されるカウントダウンが少しずつ進んでいく。

 ――18:59:57

 ――18:59:58

 ――18:59:59

 ――19:00:00

【夢のファンタジー世界にようこそ!】

 私はゲームの世界にログインした。
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