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第一章 はじまりの町
11.NPC、肉パンを作る
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バビットに小人のことを聞くとドワーフという種属だと言っていた。
種族はいくつかあり、俺達人族以外に小人族、精霊族、獣人族、魔族と様々な種族が存在している。
それぞれ見た目の違いや適性職業が異なっているらしい。
その中でドワーフは生産職業に長けている人が多いと言っていた。
せっかくこの世界に来たなら、たくさんの人達に出会うのも良い機会だろう。
エルフとか獣人って名前からしてカッコ良さそうだしね。
夜の営業を終えた俺とバビットは、新メニューの容器について話し合うことにした。
容器自体は竹のような植物が存在するらしく、それが容器の代わりになった。
それでもタレ問題は残っていた。
少しでも漏れないように対策をする必要があった。
「タレがもう少し固形のようなジュレになったら良いんだけどな……」
俺の中ではポン酢ジュレのようなものを想像していた。ただ、この世界にゼラチンや寒天は存在しているのだろうか。
トロミが付いているから、うまく飲み込めない俺にとっては馴染みのある調味料だ。
「それならスライムゼリーを使ってみたらどうだ」
バビットの口から、またよくわからない言葉が出てきた。
スライムってゲームの広告に出てきたあの顔が付いた丸いやつだろうか。
この世界にもスライムはいるのか?
もしいたら仲良くなってみたい。
あわよくば一緒に職業体験をする仲間にしても良さそうだ。
「スライムゼリーってなんですか?」
「ああ、魔物のスライムから採れる核を粉状にしたやつなんだけど水とかに混ぜると固くなるんだ」
そう言って引き出しから粉を取り出した。
少し青色がついた粉だからか、どことなく危険な見た目をしていた。
薬物と言われたら信じるレベルだ。
水の中に入れて、かき混ぜると水にトロミがついていた。
色は青色の粉だったのに、水の色が変わることがなかった変わった粉だ。
基本的に薬師が老人の薬を作る時に使うことが多いらしい。
口に服用しても問題はないが、料理に使うことはほとんどない。
あっても飲み込みが苦手な老人が来た時に使うくらい。
早速俺達はスライムゼリーを肉パンに使う甘辛タレに使ってみた。
あまり入れすぎると固形になって食べにくいから、少しずつ調整していくつか作る。
何個も試作品を作ると、ちょうど良さそうな甘辛ジュレができた。
早速夜食で作って食べてみることにした。
ハンバーガーに近いが、あまり汚れなさそうで美味しそうな気がする。
大きく口を開けて、一口パクリと食べてみる。
「うんまっ!」
出てきた言葉は思った通りの感想だった。
味は久々に食べたてりやき味のハンバーガーに近い。
俺の手が止まらず、勢いよく食べているとバビットに手を止められた。
「おいおい、俺にも食わせろよ」
「調理をしていないですよ?」
ここは取られてたまるかと反抗してみる。
この間は調理をしていないものを、料理として出せないと言っていたからな。
そんなに認めない人に食べさせても意味がないだろう。
それに久しぶりのハンバーガーもどきをもっと食べたい。
「いや、肉は焼いている。だから問題なし!」
どうやら肉が焼いてあれば調理したことになるのだろう。
それで良いのかとツッコミたくなるが、目の前でよだれが垂れそうになっているところを見ていると可哀想に思えてきた。
俺も病気で食べられなかった時は、気にしていないと言っていた。ただ、内心ではめちゃくちゃ食べたいと思っていたし、無意識にずっと妹を見ていたからな。
残りの肉パンを渡すと、バビットは全て口の中に放り込んだ。
「あっ……」
「うんめえー! なんだこの組み合わせ! やっぱりヴァイトは料理人になるべきだ!」
俺の肉パンが一瞬にしてなくなった。
それにあれだけ料理人は勧めないと言っていたが、内心俺に料理人を継いでもらいたいのだろう。
ちゃんと今後何の仕事をするのかは、考えた方が良い気がしてきた。
色んな人に関わってみたが、全員優しい人達ばかりだからな。
その分、俺自身がどうするのか早く決めないといけない気もする。
淡い期待を持たせるのも悪いからな。ただ、せっかく健康な体を手に入れたのに、一つしかできないって不便に感じてしまう。
別に料理人の冒険者で武器も解体作業も自分でやりますって人が存在しても良い気がする。
俺にはそれだけ才能があるって聞いているため、何でも出来そうな気がした。
むしろ何でもやりたいのが本音だ。
毎日寝て空を眺めるばかりの人生に飽き飽きしていた。
学校の帰り道なのか、同い年ぐらいの子達の声が聞こえてくると羨ましく思っていた。
なぜこんな体になったのだろうか。
そもそも生まれてこなければよかった。
そんなことを思っていても、友達がいない俺は家族にしか相談できなかった。
ただ、家族に言っても困るとわかっていた俺は何も言えなかった。
それに毎日俺の病気を治そうと、色々と試そうとしている両親に言えるはずがない。
多額なお金が必要だから、父は遅くまで働いていた。
妹も両親が俺に付きっきりで、構ってもらえなかったのに文句一つ言わなかった。
そんな家族が俺は大好きだった。
「おい、ヴァイト大丈夫か?」
前世の家族のことを思い出すと涙が止まらなくなる。
もっとあの家族と楽しい時間を過ごしたかった。
それが俺の中の本音だ。
できればこの体でもう一度両親の子どもとして、生まれ変わりたいと思っていた。
だからこそ、それが叶わないなら俺はこの世界で元気に楽しく過ごすつもりでいる。
それが唯一できる家族孝行な気がした。
俺は涙を拭いて決意する。
「バビットさん、俺は料理人にもなるよ」
「そうか! んっ……今料理人にもって言わなかったか?」
「うん! 冒険者にも料理人にも、そして武器職人や解体師にもなる!」
「ちょちょ、休憩時間によくいなくなっていたがどこに行ってたんだ?」
休憩時間に解体作業や武器職人の手伝いをしていたことを伝えた。
俺に才能がたくさんあることを喜んでいた。ただ、バビットは頭を抱えている。
「この年齢で社畜まっしぐらかよー!」
どうやら俺は社畜まっしぐらで突き進むようだ。
そういえば、この世界にも社畜という言葉が存在していた。
こんなにも優しい人ばかりに囲まれて、俺は生まれ変わっても幸せです。
そう心の中にいる家族にそっと呟いた。
種族はいくつかあり、俺達人族以外に小人族、精霊族、獣人族、魔族と様々な種族が存在している。
それぞれ見た目の違いや適性職業が異なっているらしい。
その中でドワーフは生産職業に長けている人が多いと言っていた。
せっかくこの世界に来たなら、たくさんの人達に出会うのも良い機会だろう。
エルフとか獣人って名前からしてカッコ良さそうだしね。
夜の営業を終えた俺とバビットは、新メニューの容器について話し合うことにした。
容器自体は竹のような植物が存在するらしく、それが容器の代わりになった。
それでもタレ問題は残っていた。
少しでも漏れないように対策をする必要があった。
「タレがもう少し固形のようなジュレになったら良いんだけどな……」
俺の中ではポン酢ジュレのようなものを想像していた。ただ、この世界にゼラチンや寒天は存在しているのだろうか。
トロミが付いているから、うまく飲み込めない俺にとっては馴染みのある調味料だ。
「それならスライムゼリーを使ってみたらどうだ」
バビットの口から、またよくわからない言葉が出てきた。
スライムってゲームの広告に出てきたあの顔が付いた丸いやつだろうか。
この世界にもスライムはいるのか?
もしいたら仲良くなってみたい。
あわよくば一緒に職業体験をする仲間にしても良さそうだ。
「スライムゼリーってなんですか?」
「ああ、魔物のスライムから採れる核を粉状にしたやつなんだけど水とかに混ぜると固くなるんだ」
そう言って引き出しから粉を取り出した。
少し青色がついた粉だからか、どことなく危険な見た目をしていた。
薬物と言われたら信じるレベルだ。
水の中に入れて、かき混ぜると水にトロミがついていた。
色は青色の粉だったのに、水の色が変わることがなかった変わった粉だ。
基本的に薬師が老人の薬を作る時に使うことが多いらしい。
口に服用しても問題はないが、料理に使うことはほとんどない。
あっても飲み込みが苦手な老人が来た時に使うくらい。
早速俺達はスライムゼリーを肉パンに使う甘辛タレに使ってみた。
あまり入れすぎると固形になって食べにくいから、少しずつ調整していくつか作る。
何個も試作品を作ると、ちょうど良さそうな甘辛ジュレができた。
早速夜食で作って食べてみることにした。
ハンバーガーに近いが、あまり汚れなさそうで美味しそうな気がする。
大きく口を開けて、一口パクリと食べてみる。
「うんまっ!」
出てきた言葉は思った通りの感想だった。
味は久々に食べたてりやき味のハンバーガーに近い。
俺の手が止まらず、勢いよく食べているとバビットに手を止められた。
「おいおい、俺にも食わせろよ」
「調理をしていないですよ?」
ここは取られてたまるかと反抗してみる。
この間は調理をしていないものを、料理として出せないと言っていたからな。
そんなに認めない人に食べさせても意味がないだろう。
それに久しぶりのハンバーガーもどきをもっと食べたい。
「いや、肉は焼いている。だから問題なし!」
どうやら肉が焼いてあれば調理したことになるのだろう。
それで良いのかとツッコミたくなるが、目の前でよだれが垂れそうになっているところを見ていると可哀想に思えてきた。
俺も病気で食べられなかった時は、気にしていないと言っていた。ただ、内心ではめちゃくちゃ食べたいと思っていたし、無意識にずっと妹を見ていたからな。
残りの肉パンを渡すと、バビットは全て口の中に放り込んだ。
「あっ……」
「うんめえー! なんだこの組み合わせ! やっぱりヴァイトは料理人になるべきだ!」
俺の肉パンが一瞬にしてなくなった。
それにあれだけ料理人は勧めないと言っていたが、内心俺に料理人を継いでもらいたいのだろう。
ちゃんと今後何の仕事をするのかは、考えた方が良い気がしてきた。
色んな人に関わってみたが、全員優しい人達ばかりだからな。
その分、俺自身がどうするのか早く決めないといけない気もする。
淡い期待を持たせるのも悪いからな。ただ、せっかく健康な体を手に入れたのに、一つしかできないって不便に感じてしまう。
別に料理人の冒険者で武器も解体作業も自分でやりますって人が存在しても良い気がする。
俺にはそれだけ才能があるって聞いているため、何でも出来そうな気がした。
むしろ何でもやりたいのが本音だ。
毎日寝て空を眺めるばかりの人生に飽き飽きしていた。
学校の帰り道なのか、同い年ぐらいの子達の声が聞こえてくると羨ましく思っていた。
なぜこんな体になったのだろうか。
そもそも生まれてこなければよかった。
そんなことを思っていても、友達がいない俺は家族にしか相談できなかった。
ただ、家族に言っても困るとわかっていた俺は何も言えなかった。
それに毎日俺の病気を治そうと、色々と試そうとしている両親に言えるはずがない。
多額なお金が必要だから、父は遅くまで働いていた。
妹も両親が俺に付きっきりで、構ってもらえなかったのに文句一つ言わなかった。
そんな家族が俺は大好きだった。
「おい、ヴァイト大丈夫か?」
前世の家族のことを思い出すと涙が止まらなくなる。
もっとあの家族と楽しい時間を過ごしたかった。
それが俺の中の本音だ。
できればこの体でもう一度両親の子どもとして、生まれ変わりたいと思っていた。
だからこそ、それが叶わないなら俺はこの世界で元気に楽しく過ごすつもりでいる。
それが唯一できる家族孝行な気がした。
俺は涙を拭いて決意する。
「バビットさん、俺は料理人にもなるよ」
「そうか! んっ……今料理人にもって言わなかったか?」
「うん! 冒険者にも料理人にも、そして武器職人や解体師にもなる!」
「ちょちょ、休憩時間によくいなくなっていたがどこに行ってたんだ?」
休憩時間に解体作業や武器職人の手伝いをしていたことを伝えた。
俺に才能がたくさんあることを喜んでいた。ただ、バビットは頭を抱えている。
「この年齢で社畜まっしぐらかよー!」
どうやら俺は社畜まっしぐらで突き進むようだ。
そういえば、この世界にも社畜という言葉が存在していた。
こんなにも優しい人ばかりに囲まれて、俺は生まれ変わっても幸せです。
そう心の中にいる家族にそっと呟いた。
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