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第二章 地下の畑はダンジョンです
64.ホテルマン、予想が的中する
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「はぁー、牛島さんのお茶を飲むと落ち着くな」
「おちつくなー」
俺とシルはお茶を飲みながらボーッとしていた。
牛島さんが淹れてくれるお茶はリラックス効果が高いのか、一口飲むと全身が温まって力が抜けていく。
「兄ちゃん、褒めてくれるのは嬉しいが話さなくてもいいのか?」
「ああ、忘れてました」
ボーッとしすぎて大事なことを忘れていた。
喫茶店の店主とサラの関係があるのか俺も気になっていた。
いつもはシルと仲良く話しているサラもさっきからずっと黙っているからな。
「それでお子さんについてですが……」
「ええ、娘の紗羅は3年ほど前に突然姿を消したんです」
店主はスマホを俺に見せてくれた。
そこには確かにサラに似た少女の写真があった。
「これが姿を消した数日前に撮った写真です。いつもお気に入りの緑のワンピースを着ていて、その姿がそこの少女に似ていたんでしょうね」
今はシルのワンピースを借りているが、我が家のサラも見つけた時には緑のワンピースを着ていた。
パッと見たら間違えるのも仕方ないだろう。
ただ、牛島さんが言うように3年前に行方不明になっていたら、小学生低学年だった彼女はもっと大きく成長しているだろう。
女の子の成長期は8歳前後から始まると言われている。
当時が7歳なら今頃10歳だ。
尚更サラが彼女と同一人物だとは考えづらい。
「それにサラちゃんは兄ちゃんの親戚なんだろ?」
そういえば、牛島さんにはまだ我が家の妖怪達について話をしたことがなかった。
ここで話した方が良いのだろうか。
ずっと黙っておくわけにはいかないからな。
「少し別の部屋に移動しても良いですか?」
シル達が傷つかないように、俺は牛島さんと店主を別の部屋に移動することにした。
「それで何かあるのか?」
「実はサラは河童なんです」
「「河……童……?」」
二人は俺のことを頭がおかしいやつと思っているのだろう。
視線が痛すぎて俺はその場から逃げたくなる。
「サラは喫茶店の近くにある川で遊んでいた時に出会ったんです」
「それってどういうことだ?」
「やっぱりあの子はうちの紗羅じゃ――」
「それはわからないです。河童って言ったのも俺の推測なんですが、我が家には妖怪が集まっています」
「「……」」
やっぱりそういう反応になるよな。
むしろ普通に受け入れた矢吹の方がおかしい。
だって、あいつは数秒でこの話を理解していたぞ。
「シルは座敷わらしで、ケトは猫又、エルは雪女なんです」
「うん、兄ちゃんとりあえず今日は寝るか?」
「妻と娘がご迷惑をおかけしてすみません」
完全に俺が疲れておかしな人という扱いになってしまった。
さすがに急に言われたら、俺が怪しまれるのも仕方ない。
俺はリビングにいるケトを呼んだ。
「やっと冷めたうっしーのお茶を飲もうとしてたのに……ハァ!?」
ケトは猫舌だから、ずっとにゃーにゃーして冷ましていたのだろう。
俺達が三人で話していたのを忘れたのか、文句を言いながら二足立ちで部屋に入ってきた。
「にゃー」
すぐにいつも通りネコを演じて、牛島さんに媚びを売るがもう遅い。
二人は驚いた顔をしていた。
「実はみんなのことを話したんだ」
ケトは俺のことをジーッと見つめてくる。
これは勝手に話した俺が呪われるんだろうか?
ダンジョンの中で狂うジビエ達を思い出して、体が震えてきそうだ。
「はぁー、よっこらしょ」
ため息を吐きながらケトは再び立ち上がる。
「ならもうネコのマネはしなくていいのね。それで用は何?」
「いや、特にないんだけど……」
「呪うよ? オイラはうっしーの作ったお茶を飲むのに忙しいんだからね!」
そう言って、ケトは何事もなかったかのようにリビングに戻って行った。
「俺は疲れているのか……」
「いや、お互いに精神的に疲れているのでしょう」
結局は二人とも自分の体調が悪いことにしていた。
普通はこういう反応になるのが当たり前だよね。
もう一度言うが、矢吹がただおかしかっただけだ。
「帰ったぞー!」
「おかえりー!」
矢吹達も紗奈ちゃんを連れ戻したのか、タイミングよく帰ってきた。
無事に帰ってきたことに、俺の体の力も抜けていく。
やっぱり真っ暗なこの土地で子ども一人で出歩くのは危ないからな。
「とりあえず、今日は休みましょうか。部屋は余っているので使ってください」
考えることをやめた二人はそのまま我が家に泊まっていくことになった。
そういえば、民泊の練習以来、久しぶりに牛島さんが泊まることになったけど大丈夫かな?
あの時より我が家の妖怪達が懐いているから、夜中に金縛りが起きないと良いが……。
「おちつくなー」
俺とシルはお茶を飲みながらボーッとしていた。
牛島さんが淹れてくれるお茶はリラックス効果が高いのか、一口飲むと全身が温まって力が抜けていく。
「兄ちゃん、褒めてくれるのは嬉しいが話さなくてもいいのか?」
「ああ、忘れてました」
ボーッとしすぎて大事なことを忘れていた。
喫茶店の店主とサラの関係があるのか俺も気になっていた。
いつもはシルと仲良く話しているサラもさっきからずっと黙っているからな。
「それでお子さんについてですが……」
「ええ、娘の紗羅は3年ほど前に突然姿を消したんです」
店主はスマホを俺に見せてくれた。
そこには確かにサラに似た少女の写真があった。
「これが姿を消した数日前に撮った写真です。いつもお気に入りの緑のワンピースを着ていて、その姿がそこの少女に似ていたんでしょうね」
今はシルのワンピースを借りているが、我が家のサラも見つけた時には緑のワンピースを着ていた。
パッと見たら間違えるのも仕方ないだろう。
ただ、牛島さんが言うように3年前に行方不明になっていたら、小学生低学年だった彼女はもっと大きく成長しているだろう。
女の子の成長期は8歳前後から始まると言われている。
当時が7歳なら今頃10歳だ。
尚更サラが彼女と同一人物だとは考えづらい。
「それにサラちゃんは兄ちゃんの親戚なんだろ?」
そういえば、牛島さんにはまだ我が家の妖怪達について話をしたことがなかった。
ここで話した方が良いのだろうか。
ずっと黙っておくわけにはいかないからな。
「少し別の部屋に移動しても良いですか?」
シル達が傷つかないように、俺は牛島さんと店主を別の部屋に移動することにした。
「それで何かあるのか?」
「実はサラは河童なんです」
「「河……童……?」」
二人は俺のことを頭がおかしいやつと思っているのだろう。
視線が痛すぎて俺はその場から逃げたくなる。
「サラは喫茶店の近くにある川で遊んでいた時に出会ったんです」
「それってどういうことだ?」
「やっぱりあの子はうちの紗羅じゃ――」
「それはわからないです。河童って言ったのも俺の推測なんですが、我が家には妖怪が集まっています」
「「……」」
やっぱりそういう反応になるよな。
むしろ普通に受け入れた矢吹の方がおかしい。
だって、あいつは数秒でこの話を理解していたぞ。
「シルは座敷わらしで、ケトは猫又、エルは雪女なんです」
「うん、兄ちゃんとりあえず今日は寝るか?」
「妻と娘がご迷惑をおかけしてすみません」
完全に俺が疲れておかしな人という扱いになってしまった。
さすがに急に言われたら、俺が怪しまれるのも仕方ない。
俺はリビングにいるケトを呼んだ。
「やっと冷めたうっしーのお茶を飲もうとしてたのに……ハァ!?」
ケトは猫舌だから、ずっとにゃーにゃーして冷ましていたのだろう。
俺達が三人で話していたのを忘れたのか、文句を言いながら二足立ちで部屋に入ってきた。
「にゃー」
すぐにいつも通りネコを演じて、牛島さんに媚びを売るがもう遅い。
二人は驚いた顔をしていた。
「実はみんなのことを話したんだ」
ケトは俺のことをジーッと見つめてくる。
これは勝手に話した俺が呪われるんだろうか?
ダンジョンの中で狂うジビエ達を思い出して、体が震えてきそうだ。
「はぁー、よっこらしょ」
ため息を吐きながらケトは再び立ち上がる。
「ならもうネコのマネはしなくていいのね。それで用は何?」
「いや、特にないんだけど……」
「呪うよ? オイラはうっしーの作ったお茶を飲むのに忙しいんだからね!」
そう言って、ケトは何事もなかったかのようにリビングに戻って行った。
「俺は疲れているのか……」
「いや、お互いに精神的に疲れているのでしょう」
結局は二人とも自分の体調が悪いことにしていた。
普通はこういう反応になるのが当たり前だよね。
もう一度言うが、矢吹がただおかしかっただけだ。
「帰ったぞー!」
「おかえりー!」
矢吹達も紗奈ちゃんを連れ戻したのか、タイミングよく帰ってきた。
無事に帰ってきたことに、俺の体の力も抜けていく。
やっぱり真っ暗なこの土地で子ども一人で出歩くのは危ないからな。
「とりあえず、今日は休みましょうか。部屋は余っているので使ってください」
考えることをやめた二人はそのまま我が家に泊まっていくことになった。
そういえば、民泊の練習以来、久しぶりに牛島さんが泊まることになったけど大丈夫かな?
あの時より我が家の妖怪達が懐いているから、夜中に金縛りが起きないと良いが……。
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