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第二章 地下の畑はダンジョンです
61.ホテルマン、ナポリタンを作る
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俺は店主にエプロンを借りると厨房の中に入っていく。
「よろしくお願いします」
お店の人に直接教えてもらうため、牛島さんの時よりも少し緊張してきた。
そんな俺を矢吹とケトはニヤニヤとしながら見ている。
「ではお湯を沸かしている間に野菜の準備をしましょうか」
玉ねぎ、ピーマン、マッシュルームなどの野菜やソーセージを冷蔵庫から取り出す。
「ピーマンはヘタと種を取って、全部の材料を薄切りにしてください」
「わかりました」
俺は言われた通りに野菜を切っていく。
「お子さんがいる家庭だと、ウィンナーとかでタコさん……いや、お兄さんには難しいかもしれないですね」
店主は俺が切った野菜を見て、途中で話すのをやめていた。
薄切りに切っていたはずなのに、だんだんと太くなっているからな。
ただ、タコさんウィンナーがあったら、シルとサラも喜びそうだ。
「パスタは書いてある時間よりも1分ほど短く茹でてください」
「理由があるんですか?」
「あとで炒める工程があるので、茹ですぎるとパスタが柔らかくてソースが吸い込みにくいんですよね」
言われた通りにタイマーを設定して、その間にソースを作っていく。
まずはサラダ油を入れてから、玉ねぎをしんなりするまで炒める。
「中々料理ってうまくいかなくて、いつも近所の人に助けてもらってるんですよね」
「近所の人ですか?」
「農場をやっている牛島さんって方なんですが……」
「ああ、牛島さんですか!」
どうやら店主も牛島さんの存在を知っているらしい。
彼はこの辺の有名人なんだろうか。
さすが我が家の救世主だね。
「玉ねぎがしんなりしてきたら、ケチャップとマッシュルームを入れます」
ケチャップが具材にまとわりつくぐらいまで炒めるのが目安らしい。
「私達も牛島さんにはお世話になっているんですよ」
店主の視線の先には、チラシを折っている奥さんがいた。
少し寂しそうな顔をしているのは、何か関係しているのだろうか。
「ソースはこれぐらいでいいですか?」
「ちょうどいいですね。そこにバターとピーマンを入れて、少し炒めたらパスタを入れてナポリタンは完成ですね」
バターを入れることで、まろやかさと風味が良くなるらしい。
他にもウスターソースやにんにくなど、アレンジするとよりナポリタンを楽しめると教えてもらった。
「あとは温めた鉄板の上にバターを塗って、溶き卵を入れたところにナポリタンを入れたら完成ですね」
お洒落な見た目だが、思ったよりも簡単にできるようだ。
調味料の分量だけ間違えなければ、俺でも上手に作れるような気がした。
できたばかりの鉄板ナポリタンを矢吹達が待つテーブルに持っていく。
矢吹とケトは怪しそうな顔で、俺とナポリタンを交互に見ている。
「どうした?」
「本当にお前が作ったのか?」
「にゃー」
さっきまで作っているところを見ていたのに、何を言っているのだろうか。
美味しそうなナポリタンの匂いが漂っているから、尚更疑っているのだろう。
「いらないなら俺が食べ――」
「いただきます!」
「にゃー」
すぐに矢吹達はフォークを持って食べ始めようとする。
だが、ケトは身動きが取れないようだ。
「ケトちゃんは食べちゃだめだよ?」
「ハァ!?」
ネコだから人間のものは食べられないと、抱きかかえられて止められた。
ケトは娘さんの顔をジーッと見ている。
これはもしかして……。
「呪う――」
「ケトは何でも食べるから大丈夫だよ」
強引にナポリタンの作り方まで聞いたのに、ここで娘さんが呪われたら、さらに迷惑な客になってしまう。
「そうなの?」
「にゃー」
お互いにジーッと見つめあっているが、先に彼女が諦めていた。
娘さんの膝から降りたケトは、俺のところに戻ってくる。
しばらく視線が気になりながら、昼食を食べた。
初めて作ったナポリタンはケトがバレないかと、ドキドキしてあまり味を感じなかった。
矢吹とケトが何も言わないってことは、美味しかったってことかな?
「よろしくお願いします」
お店の人に直接教えてもらうため、牛島さんの時よりも少し緊張してきた。
そんな俺を矢吹とケトはニヤニヤとしながら見ている。
「ではお湯を沸かしている間に野菜の準備をしましょうか」
玉ねぎ、ピーマン、マッシュルームなどの野菜やソーセージを冷蔵庫から取り出す。
「ピーマンはヘタと種を取って、全部の材料を薄切りにしてください」
「わかりました」
俺は言われた通りに野菜を切っていく。
「お子さんがいる家庭だと、ウィンナーとかでタコさん……いや、お兄さんには難しいかもしれないですね」
店主は俺が切った野菜を見て、途中で話すのをやめていた。
薄切りに切っていたはずなのに、だんだんと太くなっているからな。
ただ、タコさんウィンナーがあったら、シルとサラも喜びそうだ。
「パスタは書いてある時間よりも1分ほど短く茹でてください」
「理由があるんですか?」
「あとで炒める工程があるので、茹ですぎるとパスタが柔らかくてソースが吸い込みにくいんですよね」
言われた通りにタイマーを設定して、その間にソースを作っていく。
まずはサラダ油を入れてから、玉ねぎをしんなりするまで炒める。
「中々料理ってうまくいかなくて、いつも近所の人に助けてもらってるんですよね」
「近所の人ですか?」
「農場をやっている牛島さんって方なんですが……」
「ああ、牛島さんですか!」
どうやら店主も牛島さんの存在を知っているらしい。
彼はこの辺の有名人なんだろうか。
さすが我が家の救世主だね。
「玉ねぎがしんなりしてきたら、ケチャップとマッシュルームを入れます」
ケチャップが具材にまとわりつくぐらいまで炒めるのが目安らしい。
「私達も牛島さんにはお世話になっているんですよ」
店主の視線の先には、チラシを折っている奥さんがいた。
少し寂しそうな顔をしているのは、何か関係しているのだろうか。
「ソースはこれぐらいでいいですか?」
「ちょうどいいですね。そこにバターとピーマンを入れて、少し炒めたらパスタを入れてナポリタンは完成ですね」
バターを入れることで、まろやかさと風味が良くなるらしい。
他にもウスターソースやにんにくなど、アレンジするとよりナポリタンを楽しめると教えてもらった。
「あとは温めた鉄板の上にバターを塗って、溶き卵を入れたところにナポリタンを入れたら完成ですね」
お洒落な見た目だが、思ったよりも簡単にできるようだ。
調味料の分量だけ間違えなければ、俺でも上手に作れるような気がした。
できたばかりの鉄板ナポリタンを矢吹達が待つテーブルに持っていく。
矢吹とケトは怪しそうな顔で、俺とナポリタンを交互に見ている。
「どうした?」
「本当にお前が作ったのか?」
「にゃー」
さっきまで作っているところを見ていたのに、何を言っているのだろうか。
美味しそうなナポリタンの匂いが漂っているから、尚更疑っているのだろう。
「いらないなら俺が食べ――」
「いただきます!」
「にゃー」
すぐに矢吹達はフォークを持って食べ始めようとする。
だが、ケトは身動きが取れないようだ。
「ケトちゃんは食べちゃだめだよ?」
「ハァ!?」
ネコだから人間のものは食べられないと、抱きかかえられて止められた。
ケトは娘さんの顔をジーッと見ている。
これはもしかして……。
「呪う――」
「ケトは何でも食べるから大丈夫だよ」
強引にナポリタンの作り方まで聞いたのに、ここで娘さんが呪われたら、さらに迷惑な客になってしまう。
「そうなの?」
「にゃー」
お互いにジーッと見つめあっているが、先に彼女が諦めていた。
娘さんの膝から降りたケトは、俺のところに戻ってくる。
しばらく視線が気になりながら、昼食を食べた。
初めて作ったナポリタンはケトがバレないかと、ドキドキしてあまり味を感じなかった。
矢吹とケトが何も言わないってことは、美味しかったってことかな?
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