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第二章 地下の畑はダンジョンです
57.ホテルマン、存在しない住所
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「はい、こちら国家ダンジョン管理局です」
「あのー、家にダンジョンができた場合どうしたらいいですか?」
「……はぁん?」
次の日、俺は矢吹に言われた通りに都道府県の役所に連絡することにした。
ダンジョンができた場合、基本的には国に報告する義務がある。
あとは国が管理することになるが、それまでの手順を役所が教えてくれるらしい。
「えーっと、家から魔物が現れまして……」
「ご自宅は世界遺産や国の重要文化財または、特定天然記念物など何かに関係していますか?」
「いや、特に何も――」
「はぁー、イタズラ電話ですか?」
「えっ?」
「ダンジョンは先ほどお話しした場所でできると言われています。そもそも可能性として、屋外にできるのが一般的なのは知ってますか?」
どうやら家にダンジョンができたことはなく、度々こういう迷惑行為が絶えないらしい。
過去に自宅にダンジョンができて最強の探索者になる漫画やアニメが流行ったことで、そういう行為も増えたとか。
子どもが探索者に憧れてするイタズラで、よくあると教えてもらった。
「とりあえず住所を教えてもらってもよろしいですか? 自宅周辺にダンジョンになりそうなものがないか調べてみますね」
俺が住所を伝えると、再び電話越しにため息を吐いている声が聞こえてきた。
「やはりイタズラ電話ですね。その住所は人が住めるような地域になっていませんよ」
「人が住めないって……?」
一体俺はどこに住んでいるというのだろうか。
ちゃんと住所も存在しているし、矢吹だって家に来ている。
他にもカメラマンや支配人も来たぐらいだから、住所としては間違っていないはずだ。
民泊に来た人達はどこに行ったのかという話になってしまう。
それに少し離れてはいるものの、牛島さんがやっている農場もある場所だぞ。
「私達も暇ではないので失礼します」
それだけ言って電話を切られてしまった。
ダンジョンができたと報告をしたかったはずなのに、人が住めるような地域ではないということが耳に残って不安になってきた。
「ふく、おわったよー!」
「ガラスの交換は業者に……どうしたんだ?」
電話をしていた俺を呼びに来たのか、シルと矢吹が声をかけてきた。
矢吹は家の中に入るために窓ガラスを割って侵入している。
その処理と窓ガラスがさらに割れないようにテープで固定して、ダンボールで塞いでもらっていた。
「いや……電話をしたらイタズラ電話と間違えられた」
「やっぱりな」
矢吹も家の中にダンジョンができた話を聞いたことがないらしく、何となくその予想はしていたらしい。
それに今まで知られている魔物やダンジョンと異なっているため、本当にダンジョンなのか怪しんでいた。
「それにここの住所って人が住めるような地域になっていないって……」
「……」
俺の言葉に矢吹は静かになる。
「ふく? やぶきん?」
そんな様子にシルは居た堪れなくなったのか、俺達の顔を覗き込んでいる。
お腹が減ったのかな?
「とりあえずダンジョンに関しては、しばらく俺が様子を見てから報告する」
「ああ、助かるよ」
ひとまず地下の畑には俺一人では行かない。
行く時は矢吹かシル達に手伝ってもらうのが条件となった。
また、一人でダンジョンの中に引き込まれて迷子になると危ないからな。
戦う力がない囮役の俺だけだと確実に即死するだろう。
よほど運が良かったってことだな。
しばらくダンジョンは矢吹担当と決まった。
あいつなら方向音痴の俺達と違って適任だろう。
美味しそうなジビエ達が出てきたら、捕獲だけしてもらうように頼んでおいた。
食事を食べ終えた俺は再びあるところに電話をかけることにした。
「はい、こちら真心便利屋です」
「あのー、窓ガラスの修理を頼みたいんですが……」
「ご住所はどちらになりますか?」
「えーっと……」
さっきのことが頭に残っていたが、今回は大丈夫だろう。
対応してくれているオペレーターは住所を検索しているのか、パソコンのキーボードを打つ音が聞こえてくる。
「すみません、もう一度住所をお聞きしてもよろしいですか?」
うまく聞き取れなかったのだろう。
もう一度住所を伝えてしばらくその場で待つ。
「あのー、住んでいるところを先ほどから地図上で検索をしていますが、どこにも一致しないため住所の間違え等はありませんでしょうか?」
その言葉に俺は背筋がゾクゾクとする。
住所が存在しない地図上から消えた地域。
そんなところが存在するのだろうか。
「もしもし……」
「ああ、すみません」
「もし住所がわかり辛いところにお住まいであれば、窓枠を外してお持ちいただければ修理は可能ですので――」
「わかりました。また、どうするか決めてご連絡しますね」
「ありがとうございます。それでは失礼します」
やっぱりこの家には何かあるのだろうか。
ひとまず窓枠を外して、持っていけば直せることがわかって安心した。
「あのー、家にダンジョンができた場合どうしたらいいですか?」
「……はぁん?」
次の日、俺は矢吹に言われた通りに都道府県の役所に連絡することにした。
ダンジョンができた場合、基本的には国に報告する義務がある。
あとは国が管理することになるが、それまでの手順を役所が教えてくれるらしい。
「えーっと、家から魔物が現れまして……」
「ご自宅は世界遺産や国の重要文化財または、特定天然記念物など何かに関係していますか?」
「いや、特に何も――」
「はぁー、イタズラ電話ですか?」
「えっ?」
「ダンジョンは先ほどお話しした場所でできると言われています。そもそも可能性として、屋外にできるのが一般的なのは知ってますか?」
どうやら家にダンジョンができたことはなく、度々こういう迷惑行為が絶えないらしい。
過去に自宅にダンジョンができて最強の探索者になる漫画やアニメが流行ったことで、そういう行為も増えたとか。
子どもが探索者に憧れてするイタズラで、よくあると教えてもらった。
「とりあえず住所を教えてもらってもよろしいですか? 自宅周辺にダンジョンになりそうなものがないか調べてみますね」
俺が住所を伝えると、再び電話越しにため息を吐いている声が聞こえてきた。
「やはりイタズラ電話ですね。その住所は人が住めるような地域になっていませんよ」
「人が住めないって……?」
一体俺はどこに住んでいるというのだろうか。
ちゃんと住所も存在しているし、矢吹だって家に来ている。
他にもカメラマンや支配人も来たぐらいだから、住所としては間違っていないはずだ。
民泊に来た人達はどこに行ったのかという話になってしまう。
それに少し離れてはいるものの、牛島さんがやっている農場もある場所だぞ。
「私達も暇ではないので失礼します」
それだけ言って電話を切られてしまった。
ダンジョンができたと報告をしたかったはずなのに、人が住めるような地域ではないということが耳に残って不安になってきた。
「ふく、おわったよー!」
「ガラスの交換は業者に……どうしたんだ?」
電話をしていた俺を呼びに来たのか、シルと矢吹が声をかけてきた。
矢吹は家の中に入るために窓ガラスを割って侵入している。
その処理と窓ガラスがさらに割れないようにテープで固定して、ダンボールで塞いでもらっていた。
「いや……電話をしたらイタズラ電話と間違えられた」
「やっぱりな」
矢吹も家の中にダンジョンができた話を聞いたことがないらしく、何となくその予想はしていたらしい。
それに今まで知られている魔物やダンジョンと異なっているため、本当にダンジョンなのか怪しんでいた。
「それにここの住所って人が住めるような地域になっていないって……」
「……」
俺の言葉に矢吹は静かになる。
「ふく? やぶきん?」
そんな様子にシルは居た堪れなくなったのか、俺達の顔を覗き込んでいる。
お腹が減ったのかな?
「とりあえずダンジョンに関しては、しばらく俺が様子を見てから報告する」
「ああ、助かるよ」
ひとまず地下の畑には俺一人では行かない。
行く時は矢吹かシル達に手伝ってもらうのが条件となった。
また、一人でダンジョンの中に引き込まれて迷子になると危ないからな。
戦う力がない囮役の俺だけだと確実に即死するだろう。
よほど運が良かったってことだな。
しばらくダンジョンは矢吹担当と決まった。
あいつなら方向音痴の俺達と違って適任だろう。
美味しそうなジビエ達が出てきたら、捕獲だけしてもらうように頼んでおいた。
食事を食べ終えた俺は再びあるところに電話をかけることにした。
「はい、こちら真心便利屋です」
「あのー、窓ガラスの修理を頼みたいんですが……」
「ご住所はどちらになりますか?」
「えーっと……」
さっきのことが頭に残っていたが、今回は大丈夫だろう。
対応してくれているオペレーターは住所を検索しているのか、パソコンのキーボードを打つ音が聞こえてくる。
「すみません、もう一度住所をお聞きしてもよろしいですか?」
うまく聞き取れなかったのだろう。
もう一度住所を伝えてしばらくその場で待つ。
「あのー、住んでいるところを先ほどから地図上で検索をしていますが、どこにも一致しないため住所の間違え等はありませんでしょうか?」
その言葉に俺は背筋がゾクゾクとする。
住所が存在しない地図上から消えた地域。
そんなところが存在するのだろうか。
「もしもし……」
「ああ、すみません」
「もし住所がわかり辛いところにお住まいであれば、窓枠を外してお持ちいただければ修理は可能ですので――」
「わかりました。また、どうするか決めてご連絡しますね」
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