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第二章 地下の畑はダンジョンです

53.クマ男、挑発される ※矢吹視点

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 地下の畑にあった穴を潜ると、すぐに違和感を感じた。

「どう考えてもここはダンジョンだろ」

 ダンジョンはすぐに繋がっているわけではなく、移送空間を通り抜けることでどこかに繋がっている。

 まるでワープ装置のようなものがあるイメージに近い。

 一部の学者達からは異世界と繋がる時間と言われており、別世界で体が作り替えられている期間だと提唱されている。

 だが、実際に異世界があるとは誰も思っていないだろう。

 この現象は探索者にしか感じることはできず、一般人にとったら、短時間でダンジョンと繋がっている感じらしい。

 俺達探索者にとっては、この時間こそがダンジョンという認識だ。

 周囲を警戒しながら、ダンジョンに移送されるのを待つ。

 すぐに肌にまとわりつくピリッとした魔力を感じた。

「到着したな」

 すぐに周囲を見渡して、魔物がいないか確認する。

 移送された瞬間に魔物の集団に囲まれることは珍しくないからな。

「ここにはいないか」

 遠くに魔物の反応が多くあり、何かに怯えているのか魔力が安定してしていない。

 上位種が存在していれば、下位の魔物はダンジョン内では狩られる存在となる。

 そんな雰囲気とこのダンジョンは似ていた。

「畑とダンジョン入り口は下から潜る仕組みだな」

 俺は周囲を見渡しながら、マッピングをすることにした。

 ダンジョン入り口はトンネルタイプや地面に潜り込むタイプ、地下に落ちていくタイプと様々だ。

 入り口の把握をしておかないと、ダンジョンの中で彷徨うことは多々ある。

 ダンジョン内は洞窟型ダンジョンとなっており、一本道でできていた。

「ここが分岐点だな」

 ただ、問題なのは途中から分岐するところがあるからだ。

 草原型や砂漠型のダンジョンは目票物があれば迷うことは少ないが、洞窟型は見た目が同じなのもあり迷いやすい。

 それに途中から分岐して、複雑になってくる特徴がある。

 それだけではなくトラップが仕掛けてあるダンジョンもあり、入った瞬間に無数の矢が飛んでくることもある。

 狭い空間での罠は逃げるにも逃げづらい。

 最悪魔物に逃げ道を塞がれることもあるからな。

 俺は紙とダンジョンに印をつける。

『キィエエエエェェェェ!』

 突然、魔物の声が聞こえて警戒心を強める。

 声がする方とは反対にある分岐した道に隠れて、魔物の存在を観察する。

「あの魔物はなんだ?」

 目の前を逃げるように通っていったのは、猿型の魔物だった。

 猿型の魔物といえば、手先が器用で石を投げてくる小柄なやつかゴリラのような馬鹿力で大柄なやつが主流だ。

 それなのにさっきの魔物はその中間のサイズをしていた。

 まるでチンパンジーのような見た目で、他の魔物よりは見た目も可愛らしいが、周囲に毒を吐いて逃げていた。

 きっとこの先にあいつより強い魔物が存在しているのだろう。

 俺は魔物が逃げてきた道をゆっくりと進んでいく。

 遠くが少し明るいのは、ボス部屋の入り口なんだろうか。

 思ったよりも小さなダンジョンでほっとした。

 小さいダンジョンであれば、俺一人でも管理はできるからな。

 さすがにダンジョンができた家に住めるかはわからない。

 だが、探索者が一人いればどうにかなるかもしれない。

 それにダンジョンの存在が恐ろしいのは、ダンジョンの外に魔物が溢れてくるスタンピードだ。

 ダンジョンの中であれば、怪我をしても回復スキルでどうにかなるが、ダンジョン外だと回復スキルの効果がなくなってしまう。

 それに一般人には魔力がないため、発動しても意味がない。

 だからこそ探索者を配置して、ダンジョンの魔物を定期的に狩る必要がある。

「うぉー!」

 奥に歩いているとさらに声が聞こえてきた。

 さっき見た猿型の魔物より声が聞き取りやすいってことは、上位種の魔物がいるってことだ。

「お前の足はチーズより臭いぞー!」

 んっ?

 俺の足はチーズより臭いのか?

「お前の息は納豆だー!」

 納豆って俺の苦手な食べ物だぞ?

 まるで俺を挑発するかのような声に、心を落ち着かせようとするがイライラとしてくる。

 声のするところまでもう少しだ。

 角を曲がったところにやつがいるだろう。

 俺は盾を構えると足に力を入れる。

「誰が納豆チーズだああああああ!」

 そのまま勢いよく突進する。

「はぁん!?」
「うぇ!?」

 魔物にぶつかったと思ったら、そこには盾に飛ばされて宙に浮いている幸治がいた。

 どうやら俺は魔物と幸治を間違えていたようだ。
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