48 / 75
第二章 地下の畑はダンジョンです
48.ホテルマン、仲間外れにされる
しおりを挟む
広間に戻った俺達は今後どうするか話し合うことにした。
「シルのポケットには食べ物はないのか?」
「はぁ!?」
シルは思い出したかのようにポケットに手を入れて中身を出していく。
「これとこれとこれ……」
ポンポン物が出てくる姿を見ると、実は座敷わらしではなく猫型ロボットだったのかと思ってしまう。
ただ、日用雑貨や生活用品は次々と出てくるが、食料品は全く出てこない。
「カップラーメンしかないのか……」
唯一出てきたのは、回収し忘れたカップラーメンだった。
「うん……」
「さすがに食べられ……いや、サラが出す水は飲めるのか?」
サラは妖術で水が出せる。
目の前にはカップラーメンだけではなく、鍋やガスボンベまで置いてあった。
シルのポケットはある意味防災バックのようになっているのだろう。
食料品だけないのが痛手だけどな……。
「たぶん大丈夫だよ?」
その言葉にシルの目は広間の光源より輝いていた。
「サラちゃーん!」
シルはサラに抱きつきながら、鍋を押し付けていた。
早く水を入れろってことだろう。
友情よりカップラーメンが圧勝していた。
「シルちゃん……」
そんなシルの鍋に渋々水を入れるサラ。
あの時見た妖術は深海のような水だったが、鍋に出ているのは透明に澄んだ水で安心した。
ただ、サラの表情は深海のように真っ暗だ。
「オイラのもある?」
「私もお腹空きました」
ケトやエルもお腹が空いたのだろう。
シルはポケットに手を入れると、カップラーメンをいくつか取り出した。
「一体いくつ隠しているんだ?」
「ギクッ!?」
買ったカップラーメンはシルに見つからないように隠していた。
いざ、食べようと思った時に少し減っていたのは、やっぱりシルが隠し持っていたからか。
「カップラーメンの食べ過ぎは体に悪いって言ったよね?」
「食べてないもん!」
確かにポケットに入っていたから、食べてないのは事実だ。
それでもいつか食べようと思っていたのは間違いない。
それに隠していたのは認めているからな。
「ならなぜ持ってるんだ?」
「えーっと……うん! お守り!」
絶対今考えた言い訳だろう。
ジーッと見つめるがシルは一度も顔を見合わせようとしない。
「水を入れてー!」
「私の分もお願いします」
そんな俺達のことを気にも止めず、ケトとエルはサラに水を求めていた。
「うん……」
ただ、サラの顔は暗くなるばかり。
いつもニコニコしているサラはどこに行ったのだろうか。
「サラ大丈――」
「もう、いや! どうせ私のことを水道だと思っているんでしょ!」
「いや、水道より河童――」
俺はサラを水道だと思ったことはない。
手から水を出す姿がもう立派な河童だからな。
いや……河童は手から水を出すのが当たり前なのか?
「それになんで私のだけカップ焼きそばなの!」
怒りをどうすれば良いのかわからないのだろう。
その場で足をジタバタさせている。
「「「サラちゃん……」」」
シル達はサラをぞんざいに扱っていたことに気づいたのだろう。
こんな真っ暗な中だと、心もおかしくなってくるからな。
同じ妖怪同士、関係が良好な方が楽しく過ごせるだろう。
俺達は共同生活しているからな。
俺もできるなら早く戻りたいものだ。
「ふくのとこうかんしよ!」
「カップ蕎麦がそこにあるぞ?」
「焼きそばはお湯を捨てないといけないですからね」
ん?
ぞんざいに扱われているのは俺の方か?
サラは素早く手を動かして、俺の目の前に置かれていたカップ蕎麦を手に取る。
ジーッと見つめる俺と目が合うが、自分のカップ焼きそばと入れ替えていた。
「みんなと一緒がいいもん」
ただ一緒のやつが食べたかっただけなんだね。
我が家の妖怪達は仲が良いようだ。
だが、俺の心は静かに深海に落ちていきそうだ。
「ふく?」
「どうせ俺だけ仲間外れだよ。あー、みんなして俺を除け者にしてさ」
「えっ……ふくがオイラより面倒くさくなってるよ?」
いやいや、ケトよりはめんどくさくないはず。
やっぱりこの真っ暗な環境に心が引っ張られているのだろう。
「みんなでカップラーメンパーティーしよ!」
「そうね! こういう時は楽しいことをしましょう!」
「これ以上ふくがおかしくなるのも面倒くさいからね」
俺はケトの頬を掴みグルグルと回す。
でも、こういう時こそ楽しんだ方が良いのだろう。
シルは次々とカップラーメンの蓋を開けていく。
今までたくさんのカップラーメンを食べたことがないため、妖怪達も嬉しそうだ。
えーっと……全部で8個も食べられるのだろうか。
こういう日が夏の良い思い出になるのだろう。
どこかキャンプに行った気分にもなれるしな。
ただ、いつまでこの洞窟にいるのかをこの時から考えておくべきだったと、後になって思い知らされるのだった。
「シルのポケットには食べ物はないのか?」
「はぁ!?」
シルは思い出したかのようにポケットに手を入れて中身を出していく。
「これとこれとこれ……」
ポンポン物が出てくる姿を見ると、実は座敷わらしではなく猫型ロボットだったのかと思ってしまう。
ただ、日用雑貨や生活用品は次々と出てくるが、食料品は全く出てこない。
「カップラーメンしかないのか……」
唯一出てきたのは、回収し忘れたカップラーメンだった。
「うん……」
「さすがに食べられ……いや、サラが出す水は飲めるのか?」
サラは妖術で水が出せる。
目の前にはカップラーメンだけではなく、鍋やガスボンベまで置いてあった。
シルのポケットはある意味防災バックのようになっているのだろう。
食料品だけないのが痛手だけどな……。
「たぶん大丈夫だよ?」
その言葉にシルの目は広間の光源より輝いていた。
「サラちゃーん!」
シルはサラに抱きつきながら、鍋を押し付けていた。
早く水を入れろってことだろう。
友情よりカップラーメンが圧勝していた。
「シルちゃん……」
そんなシルの鍋に渋々水を入れるサラ。
あの時見た妖術は深海のような水だったが、鍋に出ているのは透明に澄んだ水で安心した。
ただ、サラの表情は深海のように真っ暗だ。
「オイラのもある?」
「私もお腹空きました」
ケトやエルもお腹が空いたのだろう。
シルはポケットに手を入れると、カップラーメンをいくつか取り出した。
「一体いくつ隠しているんだ?」
「ギクッ!?」
買ったカップラーメンはシルに見つからないように隠していた。
いざ、食べようと思った時に少し減っていたのは、やっぱりシルが隠し持っていたからか。
「カップラーメンの食べ過ぎは体に悪いって言ったよね?」
「食べてないもん!」
確かにポケットに入っていたから、食べてないのは事実だ。
それでもいつか食べようと思っていたのは間違いない。
それに隠していたのは認めているからな。
「ならなぜ持ってるんだ?」
「えーっと……うん! お守り!」
絶対今考えた言い訳だろう。
ジーッと見つめるがシルは一度も顔を見合わせようとしない。
「水を入れてー!」
「私の分もお願いします」
そんな俺達のことを気にも止めず、ケトとエルはサラに水を求めていた。
「うん……」
ただ、サラの顔は暗くなるばかり。
いつもニコニコしているサラはどこに行ったのだろうか。
「サラ大丈――」
「もう、いや! どうせ私のことを水道だと思っているんでしょ!」
「いや、水道より河童――」
俺はサラを水道だと思ったことはない。
手から水を出す姿がもう立派な河童だからな。
いや……河童は手から水を出すのが当たり前なのか?
「それになんで私のだけカップ焼きそばなの!」
怒りをどうすれば良いのかわからないのだろう。
その場で足をジタバタさせている。
「「「サラちゃん……」」」
シル達はサラをぞんざいに扱っていたことに気づいたのだろう。
こんな真っ暗な中だと、心もおかしくなってくるからな。
同じ妖怪同士、関係が良好な方が楽しく過ごせるだろう。
俺達は共同生活しているからな。
俺もできるなら早く戻りたいものだ。
「ふくのとこうかんしよ!」
「カップ蕎麦がそこにあるぞ?」
「焼きそばはお湯を捨てないといけないですからね」
ん?
ぞんざいに扱われているのは俺の方か?
サラは素早く手を動かして、俺の目の前に置かれていたカップ蕎麦を手に取る。
ジーッと見つめる俺と目が合うが、自分のカップ焼きそばと入れ替えていた。
「みんなと一緒がいいもん」
ただ一緒のやつが食べたかっただけなんだね。
我が家の妖怪達は仲が良いようだ。
だが、俺の心は静かに深海に落ちていきそうだ。
「ふく?」
「どうせ俺だけ仲間外れだよ。あー、みんなして俺を除け者にしてさ」
「えっ……ふくがオイラより面倒くさくなってるよ?」
いやいや、ケトよりはめんどくさくないはず。
やっぱりこの真っ暗な環境に心が引っ張られているのだろう。
「みんなでカップラーメンパーティーしよ!」
「そうね! こういう時は楽しいことをしましょう!」
「これ以上ふくがおかしくなるのも面倒くさいからね」
俺はケトの頬を掴みグルグルと回す。
でも、こういう時こそ楽しんだ方が良いのだろう。
シルは次々とカップラーメンの蓋を開けていく。
今までたくさんのカップラーメンを食べたことがないため、妖怪達も嬉しそうだ。
えーっと……全部で8個も食べられるのだろうか。
こういう日が夏の良い思い出になるのだろう。
どこかキャンプに行った気分にもなれるしな。
ただ、いつまでこの洞窟にいるのかをこの時から考えておくべきだったと、後になって思い知らされるのだった。
219
お気に入りに追加
668
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】ダンジョンに閉じ込められたら社畜と可愛い幼子ゴブリンの敵はダンジョン探索者だった
k-ing ★書籍発売中
ファンタジー
社畜の門松透汰は今日も夜中まで仕事をしていた。
突然出てきた猫を避けるためにハンドルを切ると、田んぼに落ちてスクーターが壊れてしまう。
真っ暗の中、家に向かって帰っていると突然草原の真ん中に立っていた。
謎の言葉に謎の半透明な板。
わけもわからず睡眠不足が原因だと思った透汰はその場で仮眠をしていると謎の幼子に起こされた。
「とーたん!」
どうやら俺のことを父親と勘違いしているらしい。
俺と幼子は元のところに帰るために、共に生活を始めることにした。
あれ……ゴブリンってこんなに可愛かったけ?
社畜とゴブリンのダンジョンスローライフ。
※カクヨムやなろうにも投稿しています
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ダンジョンブレイクお爺ちゃんズ★
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
人類がリアルから撤退して40年。
リアルを生きてきた第一世代は定年を迎えてVR世代との共存の道を歩んでいた。
笹井裕次郎(62)も、退職を皮切りに末娘の世話になりながら暮らすお爺ちゃん。
そんな裕次郎が、腐れ縁の寺井欽治(64)と共に向かったパターゴルフ場で、奇妙な縦穴──ダンジョンを発見する。
ダンジョンクリアと同時に世界に響き渡る天からの声。
そこで世界はダンジョンに適応するための肉体を与えられたことを知るのだった。
今までVR世界にこもっていた第二世代以降の若者達は、リアルに資源開拓に、新たに舵を取るのであった。
そんな若者の見えないところで暗躍する第一世代の姿があった。
【破壊? 開拓? 未知との遭遇。従えるは神獣、そして得物は鈍色に輝くゴルフクラブ!? お騒がせお爺ちゃん笹井裕次郎の冒険譚第二部、開幕!】
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる