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第二章 地下の畑はダンジョンです

48.ホテルマン、仲間外れにされる

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 広間に戻った俺達は今後どうするか話し合うことにした。

「シルのポケットには食べ物はないのか?」

「はぁ!?」

 シルは思い出したかのようにポケットに手を入れて中身を出していく。

「これとこれとこれ……」

 ポンポン物が出てくる姿を見ると、実は座敷わらしではなく猫型ロボットだったのかと思ってしまう。

 ただ、日用雑貨や生活用品は次々と出てくるが、食料品は全く出てこない。

「カップラーメンしかないのか……」

 唯一出てきたのは、回収し忘れたカップラーメンだった。

「うん……」

「さすがに食べられ……いや、サラが出す水は飲めるのか?」

 サラは妖術で水が出せる。

 目の前にはカップラーメンだけではなく、鍋やガスボンベまで置いてあった。

 シルのポケットはある意味防災バックのようになっているのだろう。

 食料品だけないのが痛手だけどな……。

「たぶん大丈夫だよ?」

 その言葉にシルの目は広間の光源より輝いていた。

「サラちゃーん!」

 シルはサラに抱きつきながら、鍋を押し付けていた。

 早く水を入れろってことだろう。

 友情よりカップラーメンが圧勝していた。

「シルちゃん……」

 そんなシルの鍋に渋々水を入れるサラ。

 あの時見た妖術は深海のような水だったが、鍋に出ているのは透明に澄んだ水で安心した。

 ただ、サラの表情は深海のように真っ暗だ。

「オイラのもある?」

「私もお腹空きました」

 ケトやエルもお腹が空いたのだろう。

 シルはポケットに手を入れると、カップラーメンをいくつか取り出した。

「一体いくつ隠しているんだ?」

「ギクッ!?」

 買ったカップラーメンはシルに見つからないように隠していた。

 いざ、食べようと思った時に少し減っていたのは、やっぱりシルが隠し持っていたからか。

「カップラーメンの食べ過ぎは体に悪いって言ったよね?」

「食べてないもん!」

 確かにポケットに入っていたから、食べてないのは事実だ。

 それでもいつか食べようと思っていたのは間違いない。

 それに隠していたのは認めているからな。

「ならなぜ持ってるんだ?」

「えーっと……うん! お守り!」

 絶対今考えた言い訳だろう。

 ジーッと見つめるがシルは一度も顔を見合わせようとしない。

「水を入れてー!」

「私の分もお願いします」

 そんな俺達のことを気にも止めず、ケトとエルはサラに水を求めていた。

「うん……」

 ただ、サラの顔は暗くなるばかり。

 いつもニコニコしているサラはどこに行ったのだろうか。

「サラ大丈――」

「もう、いや! どうせ私のことを水道だと思っているんでしょ!」

「いや、水道より河童――」

 俺はサラを水道だと思ったことはない。

 手から水を出す姿がもう立派な河童だからな。

 いや……河童は手から水を出すのが当たり前なのか?

「それになんで私のだけカップ焼きそばなの!」

 怒りをどうすれば良いのかわからないのだろう。

 その場で足をジタバタさせている。

「「「サラちゃん……」」」

 シル達はサラをぞんざいに扱っていたことに気づいたのだろう。

 こんな真っ暗な中だと、心もおかしくなってくるからな。

 同じ妖怪同士、関係が良好な方が楽しく過ごせるだろう。

 俺達は共同生活しているからな。

 俺もできるなら早く戻りたいものだ。

「ふくのとこうかんしよ!」
「カップ蕎麦がそこにあるぞ?」
「焼きそばはお湯を捨てないといけないですからね」

 ん?

 ぞんざいに扱われているのは俺の方か?

 サラは素早く手を動かして、俺の目の前に置かれていたカップ蕎麦を手に取る。

 ジーッと見つめる俺と目が合うが、自分のカップ焼きそばと入れ替えていた。

「みんなと一緒がいいもん」

 ただ一緒のやつが食べたかっただけなんだね。

 我が家の妖怪達は仲が良いようだ。

 だが、俺の心は静かに深海に落ちていきそうだ。

「ふく?」

「どうせ俺だけ仲間外れだよ。あー、みんなして俺を除け者にしてさ」

「えっ……ふくがオイラより面倒くさくなってるよ?」

 いやいや、ケトよりはめんどくさくないはず。

 やっぱりこの真っ暗な環境に心が引っ張られているのだろう。

「みんなでカップラーメンパーティーしよ!」

「そうね! こういう時は楽しいことをしましょう!」

「これ以上ふくがおかしくなるのも面倒くさいからね」

 俺はケトの頬を掴みグルグルと回す。

 でも、こういう時こそ楽しんだ方が良いのだろう。

 シルは次々とカップラーメンの蓋を開けていく。

 今までたくさんのカップラーメンを食べたことがないため、妖怪達も嬉しそうだ。

 えーっと……全部で8個も食べられるのだろうか。

 こういう日が夏の良い思い出になるのだろう。

 どこかキャンプに行った気分にもなれるしな。

 ただ、いつまでこの洞窟にいるのかをこの時から考えておくべきだったと、後になって思い知らされるのだった。
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