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第二章 地下の畑はダンジョンです
42.ホテルマン、全てを明かす
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このままでは俺もネコになってしまうため、一通り牛島さんには説明することにした。
ただ、表情も特に変わりなく反応が薄い。
「えーっと……なんだ」
「俺以外はみんな妖怪ってことですね」
「あー、そういうこともあるんだな」
その結果がこれだ。
きっと牛島さんも考えることを放棄したのだろう。
俺もシルに会った時には、もう考えないようにしたからな。
そしたら、気づいた時には我が家は妖怪達の溜まり場になっていた。
賑やかなことはいいことだけど……。
世の中考えるより、感じろっていうのはこういうのをいうのだろう。
「まぁ、兄ちゃんは憑かれやすいってことだな」
ん?
なぜか俺がおかしい人みたいな扱いだけど大丈夫か?
きっとこういう時こそ考えるより感じるべきだな。
「ふくー、たたけたよ!」
「オイラがバシバシした!」
「ケトじゃなくてサラだよー!」
「あれはみんなで叩いたんですよ?」
そんな俺のことを心配する様子もなく、妖怪達は素手でスイカ割りをしていた。
周囲に果汁が飛び散っているところを見ると、スイカへの集団暴行事件だな。
目隠しもせずに、ただ素手でスイカを割るという無謀な行為でも本当に割れたら、妖怪だと実感してしまう。
いくら成人男性である俺や牛島さんでも無理だろう。
それに普通のスイカよりも少し硬い気がしたけど、それも気のせいだろう。
「とりあえずスイカでも食べますか」
「ああ、そうだな」
とりあえずスイカを食べてから考えればいいか。
今年初めて食べたスイカは、頭が疲れているのかどこか味気ないように感じた。
スイカを食べ終えた牛島さんは突然立ち上がり準備を始めた。
「よし、ホームセンターに行くか!」
「えっ? 行くんですか?」
「罠を作りたいって言ったのは兄ちゃんだぞ?」
思ったよりも牛島さんはシル達のことを気にしていなかった。
長年田舎で生きていると、心も広くなるのだろう。
俺達はそのままホームセンターに向かうことにした。
車は俺が運転して、助手席には牛島さん。
後部座席に妖怪達が座っている。
ただ、ホームセンターに行くだけだが、みんなで一緒に行きたいらしい。
チラッと後ろを見ると仲良く座っていたのに、疲れて寝てしまったようだ。
「この前川沿いにある美味しい喫茶店に行ったんですけど知ってます?」
「あー、あそこの家族も兄ちゃんと一緒で何年か前に移住してきた人達だぞ」
「そうなんですか? なら色々聞きやすいですね」
「ああ、そうだな」
道中で喫茶店の話をしたが、牛島さんは珍しく思い詰めた顔をしていた。
ふとした時に見せる牛島さんの表情はどこか悲壮感が漂っている。
「何かあったんですか?」
「ん? ああ、あの家族もちょっと色々あってな……」
どうやら何か理由があって移住してきたのだろう。
ひょっとして夜逃げか?
もしくは妖怪家族……ってことはないよな。
最近は妖怪ホイホイになり過ぎて、関わる人達が実は妖怪だったってことはさすがにないよね……?
俺はチラッと牛島さんを見ていると目が合う。
「教えないぞ?」
さすがに妖怪ってことはないだろう。
教えないって喫茶店の家族のことだよ……ね?
そんな話をしていると、ホームセンターが奥の方で見えてきた。
「お前らそろそろ着くぞー!」
声に反応して妖怪達は次第に目を覚ます。
「今日はペットショップに寄って行くか?」
ルームミラー越しにケトの顔を見ると、どこか視線を合わせようとしない。
「どうせふくはオイラの代わりを見つけてポイするんだ。あーあ、一緒に来なければよかったな」
きっとこの間見たネコのことを思い出しているのだろう。
「別にケトが行きたくなければいかないぞ?」
「どうせオイラを処分し……ほんと? あっ、オヤツはたべる!」
どうやらいつものケトに戻ったようだ。
もう恋人はいらないのだろうか。
ネコを飼わなくて済むなら、俺としてはありがたい。
「これで着いたかな? どう?」
「いいよー!」
ケトは自分でリードを着けて、シルに確認をしてもらっていた。
「あいつっていつもあんな感じなのか?」
「ペットショップに行かない限りは穏やかですよ」
「ほぉー、さすが飼い主だな」
何度もヒステリックになれば、そろそろ対応の仕方もわかってくる。
それにケトって構ってあげれば元に戻るから、そこまで難しい印象はない。
ネコってツンデレな生き物だからね。
ケトの場合はヒステリックツンデレか。
「ホームセンター楽しみですね」
「シルがいろいろ教えるね!」
初めてホームセンターに行くエルも楽しそうにしていた。
だが、サラだけはどこか寂しそうに遠くに見える川を眺めていた。
ただ、表情も特に変わりなく反応が薄い。
「えーっと……なんだ」
「俺以外はみんな妖怪ってことですね」
「あー、そういうこともあるんだな」
その結果がこれだ。
きっと牛島さんも考えることを放棄したのだろう。
俺もシルに会った時には、もう考えないようにしたからな。
そしたら、気づいた時には我が家は妖怪達の溜まり場になっていた。
賑やかなことはいいことだけど……。
世の中考えるより、感じろっていうのはこういうのをいうのだろう。
「まぁ、兄ちゃんは憑かれやすいってことだな」
ん?
なぜか俺がおかしい人みたいな扱いだけど大丈夫か?
きっとこういう時こそ考えるより感じるべきだな。
「ふくー、たたけたよ!」
「オイラがバシバシした!」
「ケトじゃなくてサラだよー!」
「あれはみんなで叩いたんですよ?」
そんな俺のことを心配する様子もなく、妖怪達は素手でスイカ割りをしていた。
周囲に果汁が飛び散っているところを見ると、スイカへの集団暴行事件だな。
目隠しもせずに、ただ素手でスイカを割るという無謀な行為でも本当に割れたら、妖怪だと実感してしまう。
いくら成人男性である俺や牛島さんでも無理だろう。
それに普通のスイカよりも少し硬い気がしたけど、それも気のせいだろう。
「とりあえずスイカでも食べますか」
「ああ、そうだな」
とりあえずスイカを食べてから考えればいいか。
今年初めて食べたスイカは、頭が疲れているのかどこか味気ないように感じた。
スイカを食べ終えた牛島さんは突然立ち上がり準備を始めた。
「よし、ホームセンターに行くか!」
「えっ? 行くんですか?」
「罠を作りたいって言ったのは兄ちゃんだぞ?」
思ったよりも牛島さんはシル達のことを気にしていなかった。
長年田舎で生きていると、心も広くなるのだろう。
俺達はそのままホームセンターに向かうことにした。
車は俺が運転して、助手席には牛島さん。
後部座席に妖怪達が座っている。
ただ、ホームセンターに行くだけだが、みんなで一緒に行きたいらしい。
チラッと後ろを見ると仲良く座っていたのに、疲れて寝てしまったようだ。
「この前川沿いにある美味しい喫茶店に行ったんですけど知ってます?」
「あー、あそこの家族も兄ちゃんと一緒で何年か前に移住してきた人達だぞ」
「そうなんですか? なら色々聞きやすいですね」
「ああ、そうだな」
道中で喫茶店の話をしたが、牛島さんは珍しく思い詰めた顔をしていた。
ふとした時に見せる牛島さんの表情はどこか悲壮感が漂っている。
「何かあったんですか?」
「ん? ああ、あの家族もちょっと色々あってな……」
どうやら何か理由があって移住してきたのだろう。
ひょっとして夜逃げか?
もしくは妖怪家族……ってことはないよな。
最近は妖怪ホイホイになり過ぎて、関わる人達が実は妖怪だったってことはさすがにないよね……?
俺はチラッと牛島さんを見ていると目が合う。
「教えないぞ?」
さすがに妖怪ってことはないだろう。
教えないって喫茶店の家族のことだよ……ね?
そんな話をしていると、ホームセンターが奥の方で見えてきた。
「お前らそろそろ着くぞー!」
声に反応して妖怪達は次第に目を覚ます。
「今日はペットショップに寄って行くか?」
ルームミラー越しにケトの顔を見ると、どこか視線を合わせようとしない。
「どうせふくはオイラの代わりを見つけてポイするんだ。あーあ、一緒に来なければよかったな」
きっとこの間見たネコのことを思い出しているのだろう。
「別にケトが行きたくなければいかないぞ?」
「どうせオイラを処分し……ほんと? あっ、オヤツはたべる!」
どうやらいつものケトに戻ったようだ。
もう恋人はいらないのだろうか。
ネコを飼わなくて済むなら、俺としてはありがたい。
「これで着いたかな? どう?」
「いいよー!」
ケトは自分でリードを着けて、シルに確認をしてもらっていた。
「あいつっていつもあんな感じなのか?」
「ペットショップに行かない限りは穏やかですよ」
「ほぉー、さすが飼い主だな」
何度もヒステリックになれば、そろそろ対応の仕方もわかってくる。
それにケトって構ってあげれば元に戻るから、そこまで難しい印象はない。
ネコってツンデレな生き物だからね。
ケトの場合はヒステリックツンデレか。
「ホームセンター楽しみですね」
「シルがいろいろ教えるね!」
初めてホームセンターに行くエルも楽しそうにしていた。
だが、サラだけはどこか寂しそうに遠くに見える川を眺めていた。
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