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第二章 地下の畑はダンジョンです
40.ホテルマン、夏がやってきた
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「あー、暑いな」
「私も溶けそうです」
「オイラも暑いのは苦手」
俺達はいつものように床に寝転びながら、外を眺めていた。
段々と外の温度は上がり季節は夏に変わっていく。
世間は夏休みに入ったところだが、いまだにホームページに予約の連絡はきていない。
本当に俺達は民泊を始めたのか不安になるが、生活自体は心配いらない。
地下の畑があれば最低限の生活ができている。
肉は角の生えたうさぎで賄えている。
ちなみにやつは我が家でツノウサギと命名された。
今では大事な肉としてみんなで追いかけ回して捕獲している。
うさぎからしたら、妖怪達に追いかけ回されて怖いだろうな。
あとは我が家のお助けマンである牛島さんがいれば問題ない。
「サラちゃん、つめたいね!」
「シルちゃん、はやいよー」
一方、外では幼女二人が楽しそうに遊んでいる。
二人に水鉄砲を買ってあげたら、毎日それで楽しそうに撃ち合っていた。
お互いに水鉄砲から出てくる水を避けて、まるで銃撃戦をしているようだ。
「むー、負けないぞ!」
サラは水鉄砲を床に置くと、手を前に突き出した。
手からは蛇口を一気に捻った量の水が噴射される。
妖怪であるサラも妖術を使うことができた。
河童だからか水を扱うのがとにかく上手なんだろう。
それに定期的に頭に水をかけないと、サラは動けなくなってしまう。
そのため、短く整えられた髪はいつも濡れている。
キューティクルヘアーだから問題ないが、俺みたいなやつの髪が濡れていたら、汗かきだと言われるだけだ。
「まふぉーはつかったらだめだよ」
「だってシルちゃん逃げるもん!」
「そういうあそびだもん!」
「むー!」
俺が知っている水鉄砲はこういう遊びではないけど、二人が楽しいなら問題はない。
サラも我が家にだいぶ馴染んできたからな。
――ピンポーン!
「あっ、うっしーだ!」
「牛島さんですね!」
インターフォンの音にケトとエルが玄関に駆け寄って行く。
「ちゃんと確認するまで開けるなよ」
支配人が来てからは、誰が来たのかを確認してから玄関を開けるルールになっている。
俺はモニターを確認する。
「兄ちゃん、牛乳プリンを持ってきたぞ」
「牛乳プリンですか!」
そんな俺も牛島さんが来るのを楽しみにしている。
「牛島さんだね!」
「「うっしゃー!」」
喜んでいるのか、牛島さんを愛称で呼んでいるのかはわからない。
だが、我が家ではそれだけ牛島さんに助けられている。
「うっしー!」
「うしし!」
水鉄砲で遊んでいた幼女二人も急いで、手を止めるほどだ。
遊びに来る牛島さんは大体お土産を持ってきてくれる。
牛島さんの手作り料理に俺達は見事に餌付けされた。
「うっしーのプリンだいすき!」
「私の分もありますか?」
「サラちゃんのも持ってきたぞ?」
「やったー!」
ちなみにサラは親戚の子どもを預かっていることにしている。
ちょうど夏休み期間だし、遊びにきている感覚だ。
「あっ、採れたてのスイカ食べますか?」
「おー、それならスイカ割りとかはどうだ?」
「スイカ……わり?」
最近、畑にスイカが実っていた。
ほとんどほったらかしの畑だが、日当たりが良い環境であれば、スイカは育つらしい。
「スイカ割りやりましょうか! すぐに採ってきますよ!」
「採ってくる……?」
俺は台所の床下を開けて、地下の畑まで降りて行く。
謎の畑は季節ごとに収穫できる作物が変わるのか、少しずつ夏野菜に切り替わっている。
シルに聞いても、いつからあるのかもわからないらしい。
ひょっとしたら畑自体が妖怪……のはずないよな。
外のように暑いから、変な考えになるのだろう。
俺はスイカを収穫すると、この間見つけた穴が気になった。
また、隙間が大きくなっているような気がする。
中はどういう構造になっているのだろうか。
俺は気になって近づくと、キラリと光るものが目に入った。
「うぉ!?」
手に持っていたスイカで体を守ると、そこにはツノうさぎが刺さっていた。
あのまま覗いていたら、俺の目はツノうさぎにやられていただろう。
あと少しでホラー映画になっていた。
「ふくー?」
心配になったのか、シルも畑に降りてきた。
そして、一緒に来たのはシルだけではなかった。
「兄ちゃん大丈夫か?」
そこには遊びに来ていた牛島さんもいた。
牛島さんには畑の存在を教えてはいなかったが、シルに付いてきてしまったのだろう。
どうやって説明すれば良いのだろうか。
そもそも俺もこの畑についてはあまりしらないからな。
「スイカにうさぎが刺さってる……?」
そんな俺とは裏腹に、牛島さんは畑よりもスイカにうさぎが刺さっていることの方が気になっていた。
「私も溶けそうです」
「オイラも暑いのは苦手」
俺達はいつものように床に寝転びながら、外を眺めていた。
段々と外の温度は上がり季節は夏に変わっていく。
世間は夏休みに入ったところだが、いまだにホームページに予約の連絡はきていない。
本当に俺達は民泊を始めたのか不安になるが、生活自体は心配いらない。
地下の畑があれば最低限の生活ができている。
肉は角の生えたうさぎで賄えている。
ちなみにやつは我が家でツノウサギと命名された。
今では大事な肉としてみんなで追いかけ回して捕獲している。
うさぎからしたら、妖怪達に追いかけ回されて怖いだろうな。
あとは我が家のお助けマンである牛島さんがいれば問題ない。
「サラちゃん、つめたいね!」
「シルちゃん、はやいよー」
一方、外では幼女二人が楽しそうに遊んでいる。
二人に水鉄砲を買ってあげたら、毎日それで楽しそうに撃ち合っていた。
お互いに水鉄砲から出てくる水を避けて、まるで銃撃戦をしているようだ。
「むー、負けないぞ!」
サラは水鉄砲を床に置くと、手を前に突き出した。
手からは蛇口を一気に捻った量の水が噴射される。
妖怪であるサラも妖術を使うことができた。
河童だからか水を扱うのがとにかく上手なんだろう。
それに定期的に頭に水をかけないと、サラは動けなくなってしまう。
そのため、短く整えられた髪はいつも濡れている。
キューティクルヘアーだから問題ないが、俺みたいなやつの髪が濡れていたら、汗かきだと言われるだけだ。
「まふぉーはつかったらだめだよ」
「だってシルちゃん逃げるもん!」
「そういうあそびだもん!」
「むー!」
俺が知っている水鉄砲はこういう遊びではないけど、二人が楽しいなら問題はない。
サラも我が家にだいぶ馴染んできたからな。
――ピンポーン!
「あっ、うっしーだ!」
「牛島さんですね!」
インターフォンの音にケトとエルが玄関に駆け寄って行く。
「ちゃんと確認するまで開けるなよ」
支配人が来てからは、誰が来たのかを確認してから玄関を開けるルールになっている。
俺はモニターを確認する。
「兄ちゃん、牛乳プリンを持ってきたぞ」
「牛乳プリンですか!」
そんな俺も牛島さんが来るのを楽しみにしている。
「牛島さんだね!」
「「うっしゃー!」」
喜んでいるのか、牛島さんを愛称で呼んでいるのかはわからない。
だが、我が家ではそれだけ牛島さんに助けられている。
「うっしー!」
「うしし!」
水鉄砲で遊んでいた幼女二人も急いで、手を止めるほどだ。
遊びに来る牛島さんは大体お土産を持ってきてくれる。
牛島さんの手作り料理に俺達は見事に餌付けされた。
「うっしーのプリンだいすき!」
「私の分もありますか?」
「サラちゃんのも持ってきたぞ?」
「やったー!」
ちなみにサラは親戚の子どもを預かっていることにしている。
ちょうど夏休み期間だし、遊びにきている感覚だ。
「あっ、採れたてのスイカ食べますか?」
「おー、それならスイカ割りとかはどうだ?」
「スイカ……わり?」
最近、畑にスイカが実っていた。
ほとんどほったらかしの畑だが、日当たりが良い環境であれば、スイカは育つらしい。
「スイカ割りやりましょうか! すぐに採ってきますよ!」
「採ってくる……?」
俺は台所の床下を開けて、地下の畑まで降りて行く。
謎の畑は季節ごとに収穫できる作物が変わるのか、少しずつ夏野菜に切り替わっている。
シルに聞いても、いつからあるのかもわからないらしい。
ひょっとしたら畑自体が妖怪……のはずないよな。
外のように暑いから、変な考えになるのだろう。
俺はスイカを収穫すると、この間見つけた穴が気になった。
また、隙間が大きくなっているような気がする。
中はどういう構造になっているのだろうか。
俺は気になって近づくと、キラリと光るものが目に入った。
「うぉ!?」
手に持っていたスイカで体を守ると、そこにはツノうさぎが刺さっていた。
あのまま覗いていたら、俺の目はツノうさぎにやられていただろう。
あと少しでホラー映画になっていた。
「ふくー?」
心配になったのか、シルも畑に降りてきた。
そして、一緒に来たのはシルだけではなかった。
「兄ちゃん大丈夫か?」
そこには遊びに来ていた牛島さんもいた。
牛島さんには畑の存在を教えてはいなかったが、シルに付いてきてしまったのだろう。
どうやって説明すれば良いのだろうか。
そもそも俺もこの畑についてはあまりしらないからな。
「スイカにうさぎが刺さってる……?」
そんな俺とは裏腹に、牛島さんは畑よりもスイカにうさぎが刺さっていることの方が気になっていた。
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