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第二章 地下の畑はダンジョンです
31.ホテルマン、新しいジビエ料理に挑戦する
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「おい、本当にこれでいいのか?」
「大丈夫だ! 俺ならできる!」
「だいじょーぶ!」
「うさぎを使ってもスープはスープだしな!」
今まではラパン・ロディしか作ったことがなかった。
今回は矢吹もいるため、我が家の畑にある野菜とうさぎの肉を使って、スープを作ることにした。
もちろんちゃんとレシピは検索しているから大丈夫……なはず!
うさぎってどことなく鶏肉に近く、淡白な味わいだから、失敗はしないだろう。
「野菜を入れてチキンブロスを……」
「ちきんぶろす?」
「そんなもんこの家にはないよな?」
「はぁー」
矢吹はため息を吐いていた。
いやー、必要な調味料は先に見ておくべきだったな。
材料は基本的にあるからな。
少し調味料が足りなくても、大丈夫……なはず!
「料理はやる気と気合いだからな!」
「おっ……おう」
どこかに逃げそうな矢吹を捕まえる。
こういうのは連帯責任だからな。
俺は作っていないから、食べないと言われないようにリスク管理は大事だ。
「少し味が変わってしまいますが、鶏ガラスープで代用できるらしいですよ」
さすが電化製品大好きエルさん。
すぐに代用品を調べてくれた。
雪女のエルは暑いところが苦手なため、台所の外から覗いてレシピを教えてくれる。
どうやらチキンブロスの代わりに鶏ガラスープでもどうにかなるらしい。
「あとは煮るだけだから、その間にピザの準備をしようか」
「はーい!」
シル達にピザ作りを任せて、俺と矢吹はピザ窯の火の準備をすることにした。
「そういえば、今まで連絡がなかったって畑中さんが言っていたけど何かあったのか?」
「なにもないぞ?」
「うん、嘘なのはすぐにバレるからな」
ここに来た時から普段と違う矢吹のことは気になっていた。
それを隠すためにいつもより多く話していたからな。
矢吹って普段から静かだし、体が大きいからクマのぬいぐるみみたいな人間だ。
そんなやつがさっきまでペラペラと話していたからな。
初めは久しぶりに会ったからだと思っていたが、明らかにおかしいのは気づいていた。
「ははは、やっぱりお前はすごいよ。人のことを理解しているし、変化も気づけるぐらいだからな」
「だからホテルマンをやってたんだけどな。俺も色々あったからな」
俺は今までホテルマンとして働いていたことを包み隠さず話した。
この間のことで俺の中でやっと解決したからな。
だが、話したことでスッキリするのも再認識した。
「まぁ、言いたくなったら聞くからさ」
火の準備を終えた俺はシル達の元に戻っていく。
こういうのは無理やり聞くもんでもないからな。
矢吹が自然と話したくなった時に、聞いてあげられる気持ちの準備だけしておけば良い。
「はぁー、妖怪達に頼ったらまた会えるのかな……」
しばらく矢吹は外で星を見上げていた。
料理が完成した俺達はテーブルに並べていく。
「幸治と食べるのは久々だな」
「施設にいた時はずっと隣だったもんな」
「ふく、はやく!」
「お腹がくっついちゃう!」
「今日も熱々ばかりですね……」
妖怪達も反応は様々だ。
ケトに関しては矢吹に猫又と伝えたからか、ネコの振りをやめていた。
ネコの振りをするのも大変なんだろう。
「いただきます!」
しっかり手を合わせてからご飯を食べていく。
ピザや他の食事は作り慣れたから、どうにかなっているだろう。
問題はうさぎの肉を使って作ったスープだ。
変な臭みとかが出ていないと良いが……。
ゆっくりとスープを口の中に入れていく。
「ん? 思ったよりもうまくできてるな」
「おいしいね!」
そんな俺達と反対に矢吹の手は止まっていた。
「おい、あいつ大丈夫か?」
矢吹の視線の先にはエルがスープに氷を入れて冷やしていた。
もちろん猫舌のケトの分も一緒に冷やしている。
「ああ、雪女だからな」
「そうか……。逆に探索者って言われたほうがしっくりくるのは俺だけか?」
スキルの中にも火を出したり、毒を出したりする人もいる。
言われてみたら探索者も超能力が使えるから、妖怪が使う妖術とそんなに変わらないだろう。
実は探索者の中にも妖怪が混ざっています、と言われたほうが今は納得できそうだ。
「珍しくふくが失敗してないぞ!」
「やはりレシピは大事ってことね」
やっと食べられるようになったケトとエルも初めて作ったうさぎのスープに満足しているようだ。
うさぎのスープは思ったよりも上手にできていた。
食材を入れるだけの料理なら、ちゃんとレシピ通りにやったら失敗はしないんだな。
食事を終え、風呂も入った俺達は各々寝るために部屋に戻る。
今日は俺と矢吹が同じ部屋に寝て、いつも寝ている部屋にシル達妖怪が寝ている。
ベッドに入ると電気を消していく。
「あっ、言うの忘れたけど――」
「なんだ?」
「我が家に妖怪がいるから、金縛りにあっても知らないぞ」
「あー、そうか。それぐらいなら大丈夫だ」
ここにきて初めて金縛りにあった時は驚いたが、矢吹は思ったよりも反応が薄いようだ。
さすが探索者ってことか。
「お前過去に幽霊を連れてきたことがあったからな……」
ん?
それはどういうことだ?
「やぶきん? おーい!」
俺が矢吹の方を見ると、彼はいびきをかきながら眠っていた。
矢吹の最後の一言が耳に残って、俺はしばらく寝れないでいた。
「大丈夫だ! 俺ならできる!」
「だいじょーぶ!」
「うさぎを使ってもスープはスープだしな!」
今まではラパン・ロディしか作ったことがなかった。
今回は矢吹もいるため、我が家の畑にある野菜とうさぎの肉を使って、スープを作ることにした。
もちろんちゃんとレシピは検索しているから大丈夫……なはず!
うさぎってどことなく鶏肉に近く、淡白な味わいだから、失敗はしないだろう。
「野菜を入れてチキンブロスを……」
「ちきんぶろす?」
「そんなもんこの家にはないよな?」
「はぁー」
矢吹はため息を吐いていた。
いやー、必要な調味料は先に見ておくべきだったな。
材料は基本的にあるからな。
少し調味料が足りなくても、大丈夫……なはず!
「料理はやる気と気合いだからな!」
「おっ……おう」
どこかに逃げそうな矢吹を捕まえる。
こういうのは連帯責任だからな。
俺は作っていないから、食べないと言われないようにリスク管理は大事だ。
「少し味が変わってしまいますが、鶏ガラスープで代用できるらしいですよ」
さすが電化製品大好きエルさん。
すぐに代用品を調べてくれた。
雪女のエルは暑いところが苦手なため、台所の外から覗いてレシピを教えてくれる。
どうやらチキンブロスの代わりに鶏ガラスープでもどうにかなるらしい。
「あとは煮るだけだから、その間にピザの準備をしようか」
「はーい!」
シル達にピザ作りを任せて、俺と矢吹はピザ窯の火の準備をすることにした。
「そういえば、今まで連絡がなかったって畑中さんが言っていたけど何かあったのか?」
「なにもないぞ?」
「うん、嘘なのはすぐにバレるからな」
ここに来た時から普段と違う矢吹のことは気になっていた。
それを隠すためにいつもより多く話していたからな。
矢吹って普段から静かだし、体が大きいからクマのぬいぐるみみたいな人間だ。
そんなやつがさっきまでペラペラと話していたからな。
初めは久しぶりに会ったからだと思っていたが、明らかにおかしいのは気づいていた。
「ははは、やっぱりお前はすごいよ。人のことを理解しているし、変化も気づけるぐらいだからな」
「だからホテルマンをやってたんだけどな。俺も色々あったからな」
俺は今までホテルマンとして働いていたことを包み隠さず話した。
この間のことで俺の中でやっと解決したからな。
だが、話したことでスッキリするのも再認識した。
「まぁ、言いたくなったら聞くからさ」
火の準備を終えた俺はシル達の元に戻っていく。
こういうのは無理やり聞くもんでもないからな。
矢吹が自然と話したくなった時に、聞いてあげられる気持ちの準備だけしておけば良い。
「はぁー、妖怪達に頼ったらまた会えるのかな……」
しばらく矢吹は外で星を見上げていた。
料理が完成した俺達はテーブルに並べていく。
「幸治と食べるのは久々だな」
「施設にいた時はずっと隣だったもんな」
「ふく、はやく!」
「お腹がくっついちゃう!」
「今日も熱々ばかりですね……」
妖怪達も反応は様々だ。
ケトに関しては矢吹に猫又と伝えたからか、ネコの振りをやめていた。
ネコの振りをするのも大変なんだろう。
「いただきます!」
しっかり手を合わせてからご飯を食べていく。
ピザや他の食事は作り慣れたから、どうにかなっているだろう。
問題はうさぎの肉を使って作ったスープだ。
変な臭みとかが出ていないと良いが……。
ゆっくりとスープを口の中に入れていく。
「ん? 思ったよりもうまくできてるな」
「おいしいね!」
そんな俺達と反対に矢吹の手は止まっていた。
「おい、あいつ大丈夫か?」
矢吹の視線の先にはエルがスープに氷を入れて冷やしていた。
もちろん猫舌のケトの分も一緒に冷やしている。
「ああ、雪女だからな」
「そうか……。逆に探索者って言われたほうがしっくりくるのは俺だけか?」
スキルの中にも火を出したり、毒を出したりする人もいる。
言われてみたら探索者も超能力が使えるから、妖怪が使う妖術とそんなに変わらないだろう。
実は探索者の中にも妖怪が混ざっています、と言われたほうが今は納得できそうだ。
「珍しくふくが失敗してないぞ!」
「やはりレシピは大事ってことね」
やっと食べられるようになったケトとエルも初めて作ったうさぎのスープに満足しているようだ。
うさぎのスープは思ったよりも上手にできていた。
食材を入れるだけの料理なら、ちゃんとレシピ通りにやったら失敗はしないんだな。
食事を終え、風呂も入った俺達は各々寝るために部屋に戻る。
今日は俺と矢吹が同じ部屋に寝て、いつも寝ている部屋にシル達妖怪が寝ている。
ベッドに入ると電気を消していく。
「あっ、言うの忘れたけど――」
「なんだ?」
「我が家に妖怪がいるから、金縛りにあっても知らないぞ」
「あー、そうか。それぐらいなら大丈夫だ」
ここにきて初めて金縛りにあった時は驚いたが、矢吹は思ったよりも反応が薄いようだ。
さすが探索者ってことか。
「お前過去に幽霊を連れてきたことがあったからな……」
ん?
それはどういうことだ?
「やぶきん? おーい!」
俺が矢吹の方を見ると、彼はいびきをかきながら眠っていた。
矢吹の最後の一言が耳に残って、俺はしばらく寝れないでいた。
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