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第一章 妖怪達と民泊を始めました
23.ホテルマン、突然の客に驚く
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「ははは、やっぱりおじさんにホームページ作成は難しいね」
「いやいや、俺は何もできないですからね」
お客さんがしばらく来ないと思っていたら、牛島さんがホームページを消してしまったらしい。
インターネットって中々難しいから、更新した時に変なところを押して削除した可能性もある。
どこかに依頼しても結構お金がかかるから、ホームページの運営も自分でやるのが良いのだろう。
――ピンポーン!
珍しくインターフォンが鳴った。
目の前に牛島さんもいるし誰だろうか。
「みてくる!」
俺が向かう前にシルとケトが玄関に向かった。
「これはお土産だ」
「おみやげ?」
「美味しいお菓子だよ」
シルは誰かと話しているようだ。
「シル、知ってる人かー?」
「おきゃくさん!」
お客さん?
俺は玄関に向かうとそこにいる人達に驚く。
「まさかお前が民泊なんて始めるとは思わなかったな」
「なんでいるんですか……」
「なんでってお前の上司だから確認しにきたんだろ?」
そこにいたのはダイヤモンドホテルの支配人と愛人の女性従業員だった。
なぜ、ここの場所を知っているのだろうか。
「なぜ知っているんですか?」
「知らないんですかー? 東福さん今話題の人なんですよ?」
見せられたスマホの画面に映るネット記事に驚いた。
〝有名カメラマン再び羽ばたく〟
〝幸運を呼び寄せる民泊は何処に……〟
そこにはこの間泊まったお客さんが取材されていた。
なんでも世界的に有名な写真のコンテストに入賞したらしい。
たしかにどこかのコンテストに出す写真を撮りに来たと聞いていたが、こんなことになるとは俺も思っていなかった。
本当にシルが幸運を呼び寄せたのだろう。
「ここに来ると幸運を呼び寄せるらしいからな。見た感じ客もいないから泊まっていくぞー」
「おじゃましますー!」
勝手に入っていくやつらに、少しずつ頭が冷静になってくる。
こいつらは俺に何をやったのか忘れたのだろうか。
毎日死ぬ気で働いていた俺を理不尽に解雇させたやつらだ。
ただ、シルとケトは初めてお土産をもらったからか嬉しそうにしていた。
暇なのもあり断るわけにはいかないだろうし、民泊を始めると言ってから全く仕事をしていないからな。
シルとケトの様子次第で帰ってもらおうか。
「ふーん、中はやっぱり綺麗なんだな」
「おそうじしてる!」
シルは嬉しいのかニコニコと笑っている。
「そうか……。だが、やっぱりホテルとは比べられないな」
「ふふふ、仕方ないわよ。結局ただの家なんだからね」
「アメニティもなさそうだし、誰がこんなところに泊まるんだろうな」
中をジロジロと見ているが、出てくるのはこの家に対しての批判ばかりだ。
俺はすぐにシルの耳を塞ぐ。
さすがに座敷わらしのシルには聞かせられるような内容じゃないしな。
「この人達は……?」
「ああ、こんな家に他にもお客さんがいたんですね。やっぱり幸運になりたい人は、我慢してでも泊まるんだな」
それだけ言って支配人達は勝手に二階に上がっていく。
「お客さん?」
牛島さんは俺にお客さんかどうか聞いてきた。
ただ、いつもの優しい表情はなく、少し怒っているような気がする。
「前の職場の上司です」
「そうか……」
俺の言葉に何とも言えない冷たい表情をしている。
「わぁー、家具は古いけど、部屋は広いよ! それにお風呂も大きい!」
女性が家の中を勝手に見て、楽しそうにはしゃいでいる。
シルは聞こえていないのか首を傾げていた。
「予約したお客さんじゃないなら返すか? 言いにくいなら俺が言ってやるぞ?」
やっぱり牛島さんは頼りになる。
ただ、ここで俺が何もしないのも元ホテルマンとしてのプライドが邪魔をする。
誰でも楽しむことができる環境を提供する。
それがホテルマンとして常に思っていたことだ。
「シルとケトはどうする?」
「お土産もらった!」
「にゃー」
シルとケトが良いなら一日ぐらい我慢すれば良いだろう。
お土産をもらったお返しはしたいようだしね。
それに陽が落ちて、外が暗くなってきているからすぐには返せないのもある。
「俺も手伝おうか?」
「ありがとうございます」
何も食事の準備をしていないため、急遽牛島さんが手伝ってくれることになった。
牛島さんがいたら無敵だからな。
俺達は台所に向かうとすぐに調理にかかる。
「ピザは材料があるし、うさぎの肉もあるからラパン・ロティもできます」
メインは今作り慣れているピザとラパン・ロティで良いだろう。
むしろ他の料理はいまだに俺が作れないからな。
「前菜はカプレーゼでいいよな」
「シルがきるね!」
シルは台に乗って、トマトとチーズを切っていく。
カプレーゼなら地下にあるトマトと牛島さんが作ったチーズでできる。
「あとは酢物もあるし、パスタとかもできそうだな」
料理に慣れている牛島さんにここは任せた方が良いのだろう。
俺はオーブンを予熱している間に、うさぎの肉に味付けをしてフライパンで焼き色をつけていく。
ケトは手伝おうとしているのか、コソコソと庭でピザ釜の準備をしていた。
「おい、風呂入っても良いか?」
「タオルなら脱衣室に置いてあります」
それだけを聞きにくると、二人で風呂場に向かって行った。
「おい!」
「なんでしょうか?」
「客が来たのに湯も入れてないのか!」
「勝手に来たのはそっち――」
「大丈夫ですよ」
俺は今にも怒りそうな牛島さんを止める。
「すみません。すぐに準備しますね」
作業を牛島さんに任せて、お風呂にお湯を入れにいく。
「東福さんって働いている時から手際が悪かったですよね」
「こいつずっと客にペコペコしていたからな」
二人で働いている時の俺の文句を言っているようだ。
手際が悪かったのはお前達が勝手なことをして、毎回俺が謝っていたからな。
2階を見ると部屋の扉はすべて開いていた。
誰もいないとわかったからか、好き勝手なことをやっているようだ。
「しばらくお待ちくださいね」
それだけ伝えて俺は脱衣室から出ていく。
「すぐに汗を流したかったのにな……」
「その間イチャイチャすれば良いじゃないか」
「ふふふ、変態なんだから」
チラッと聞こえた話し声にすぐに戻る。
さすがに我が家でそういう行為をしてもらうのは、シルの教育上良くない。
しかも、脱衣室は一階にあるからな。
「そういうのは我が家では控えてください」
「はぁん!? お前は客に指図をするのか!」
「そうよ? お客様は神様って教えてもらわなかったんですか?」
「ははは、さすが手際が悪いだけのことはあるな」
「子どももいるので控えてくださいね」
若干イライラしながらも俺は調理場に戻った。
「ふく、だいじょうぶ?」
怒っている俺を見て、シルは心配そうに顔を覗いてくる。
「ああ、シルを見たら元気が出たよ」
一生懸命トマトを切っている姿を見たら、どこかイライラした気持ちがスーッと消えていく気がした。
「いやいや、俺は何もできないですからね」
お客さんがしばらく来ないと思っていたら、牛島さんがホームページを消してしまったらしい。
インターネットって中々難しいから、更新した時に変なところを押して削除した可能性もある。
どこかに依頼しても結構お金がかかるから、ホームページの運営も自分でやるのが良いのだろう。
――ピンポーン!
珍しくインターフォンが鳴った。
目の前に牛島さんもいるし誰だろうか。
「みてくる!」
俺が向かう前にシルとケトが玄関に向かった。
「これはお土産だ」
「おみやげ?」
「美味しいお菓子だよ」
シルは誰かと話しているようだ。
「シル、知ってる人かー?」
「おきゃくさん!」
お客さん?
俺は玄関に向かうとそこにいる人達に驚く。
「まさかお前が民泊なんて始めるとは思わなかったな」
「なんでいるんですか……」
「なんでってお前の上司だから確認しにきたんだろ?」
そこにいたのはダイヤモンドホテルの支配人と愛人の女性従業員だった。
なぜ、ここの場所を知っているのだろうか。
「なぜ知っているんですか?」
「知らないんですかー? 東福さん今話題の人なんですよ?」
見せられたスマホの画面に映るネット記事に驚いた。
〝有名カメラマン再び羽ばたく〟
〝幸運を呼び寄せる民泊は何処に……〟
そこにはこの間泊まったお客さんが取材されていた。
なんでも世界的に有名な写真のコンテストに入賞したらしい。
たしかにどこかのコンテストに出す写真を撮りに来たと聞いていたが、こんなことになるとは俺も思っていなかった。
本当にシルが幸運を呼び寄せたのだろう。
「ここに来ると幸運を呼び寄せるらしいからな。見た感じ客もいないから泊まっていくぞー」
「おじゃましますー!」
勝手に入っていくやつらに、少しずつ頭が冷静になってくる。
こいつらは俺に何をやったのか忘れたのだろうか。
毎日死ぬ気で働いていた俺を理不尽に解雇させたやつらだ。
ただ、シルとケトは初めてお土産をもらったからか嬉しそうにしていた。
暇なのもあり断るわけにはいかないだろうし、民泊を始めると言ってから全く仕事をしていないからな。
シルとケトの様子次第で帰ってもらおうか。
「ふーん、中はやっぱり綺麗なんだな」
「おそうじしてる!」
シルは嬉しいのかニコニコと笑っている。
「そうか……。だが、やっぱりホテルとは比べられないな」
「ふふふ、仕方ないわよ。結局ただの家なんだからね」
「アメニティもなさそうだし、誰がこんなところに泊まるんだろうな」
中をジロジロと見ているが、出てくるのはこの家に対しての批判ばかりだ。
俺はすぐにシルの耳を塞ぐ。
さすがに座敷わらしのシルには聞かせられるような内容じゃないしな。
「この人達は……?」
「ああ、こんな家に他にもお客さんがいたんですね。やっぱり幸運になりたい人は、我慢してでも泊まるんだな」
それだけ言って支配人達は勝手に二階に上がっていく。
「お客さん?」
牛島さんは俺にお客さんかどうか聞いてきた。
ただ、いつもの優しい表情はなく、少し怒っているような気がする。
「前の職場の上司です」
「そうか……」
俺の言葉に何とも言えない冷たい表情をしている。
「わぁー、家具は古いけど、部屋は広いよ! それにお風呂も大きい!」
女性が家の中を勝手に見て、楽しそうにはしゃいでいる。
シルは聞こえていないのか首を傾げていた。
「予約したお客さんじゃないなら返すか? 言いにくいなら俺が言ってやるぞ?」
やっぱり牛島さんは頼りになる。
ただ、ここで俺が何もしないのも元ホテルマンとしてのプライドが邪魔をする。
誰でも楽しむことができる環境を提供する。
それがホテルマンとして常に思っていたことだ。
「シルとケトはどうする?」
「お土産もらった!」
「にゃー」
シルとケトが良いなら一日ぐらい我慢すれば良いだろう。
お土産をもらったお返しはしたいようだしね。
それに陽が落ちて、外が暗くなってきているからすぐには返せないのもある。
「俺も手伝おうか?」
「ありがとうございます」
何も食事の準備をしていないため、急遽牛島さんが手伝ってくれることになった。
牛島さんがいたら無敵だからな。
俺達は台所に向かうとすぐに調理にかかる。
「ピザは材料があるし、うさぎの肉もあるからラパン・ロティもできます」
メインは今作り慣れているピザとラパン・ロティで良いだろう。
むしろ他の料理はいまだに俺が作れないからな。
「前菜はカプレーゼでいいよな」
「シルがきるね!」
シルは台に乗って、トマトとチーズを切っていく。
カプレーゼなら地下にあるトマトと牛島さんが作ったチーズでできる。
「あとは酢物もあるし、パスタとかもできそうだな」
料理に慣れている牛島さんにここは任せた方が良いのだろう。
俺はオーブンを予熱している間に、うさぎの肉に味付けをしてフライパンで焼き色をつけていく。
ケトは手伝おうとしているのか、コソコソと庭でピザ釜の準備をしていた。
「おい、風呂入っても良いか?」
「タオルなら脱衣室に置いてあります」
それだけを聞きにくると、二人で風呂場に向かって行った。
「おい!」
「なんでしょうか?」
「客が来たのに湯も入れてないのか!」
「勝手に来たのはそっち――」
「大丈夫ですよ」
俺は今にも怒りそうな牛島さんを止める。
「すみません。すぐに準備しますね」
作業を牛島さんに任せて、お風呂にお湯を入れにいく。
「東福さんって働いている時から手際が悪かったですよね」
「こいつずっと客にペコペコしていたからな」
二人で働いている時の俺の文句を言っているようだ。
手際が悪かったのはお前達が勝手なことをして、毎回俺が謝っていたからな。
2階を見ると部屋の扉はすべて開いていた。
誰もいないとわかったからか、好き勝手なことをやっているようだ。
「しばらくお待ちくださいね」
それだけ伝えて俺は脱衣室から出ていく。
「すぐに汗を流したかったのにな……」
「その間イチャイチャすれば良いじゃないか」
「ふふふ、変態なんだから」
チラッと聞こえた話し声にすぐに戻る。
さすがに我が家でそういう行為をしてもらうのは、シルの教育上良くない。
しかも、脱衣室は一階にあるからな。
「そういうのは我が家では控えてください」
「はぁん!? お前は客に指図をするのか!」
「そうよ? お客様は神様って教えてもらわなかったんですか?」
「ははは、さすが手際が悪いだけのことはあるな」
「子どももいるので控えてくださいね」
若干イライラしながらも俺は調理場に戻った。
「ふく、だいじょうぶ?」
怒っている俺を見て、シルは心配そうに顔を覗いてくる。
「ああ、シルを見たら元気が出たよ」
一生懸命トマトを切っている姿を見たら、どこかイライラした気持ちがスーッと消えていく気がした。
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