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第一章 妖怪達と民泊を始めました
19.ホテルマン、ピザを食べる
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戻った俺達はすぐにトマトを使ってピザソースを作っていく。
「ピザソースだからトマトを潰して水を入れたらいいんじゃないか?」
俺はトマトを切ってとりあえず鍋に入れようとしたら牛島さんに止められた。
「兄ちゃん本当に若者か? 今の時代ちゃんと調べた方がいいぞ?」
牛島さんに言われた通りにスマホで調べていくと、どうやら水すらいらなかったようだ。
「んーっと、鍋にオリーブオイルとにんにくを入れて、トマトと玉ねぎを炒める」
俺が書いてあることを読んでいくと、すぐに牛島さんが作っていく。
「おぉー!」
その姿に俺達は感心していた。
「コンソメと塩胡椒、砂糖で味を整えて……」
「兄ちゃんが覚えないと意味ないからな?」
「きっとどうにかなりますよ!」
「なんか心配だな……」
正直料理に関しては経験を積まないとどうしようもないと思う。
それに早くできないのかと食いしん坊の妖怪達がさっきから睨んでくるのだ。
今日は試作品みたいなものだから、少しずつ上手くできるようになれば良い。
最悪、牛島さんを呼んで……いや、そんなことはできないか。
牛島さんが味見をしながら、ゆっくりと煮詰めていく。
その様子を隣でシルと一緒に見ていく。
途中ケチャップを少し足したりなどしていたが、ほとんどが感覚のようだ。
料理に慣れているかどうかは、作っている人の味覚で変わるだろう。
しばらく煮たらピザソースが完成した。
「あとは伸ばした生地にピザソースと具材を載せて焼いたら完成だな」
基本的に生地とピザソースができていれば、具材はなんでも良いらしい。
チキンやマヨネーズ、明太子やお餅などバリエーションの多い具材を用意したら、それだけでも楽しめる気がする。
ピザの準備ができたらあとは焼くだけだ。
アルミホイルの上にピザを載せて、そのまま投げるようにピザ釜に入れていく。
なぜアルミホイルの上に載せているかって?
「本当に兄ちゃん大丈夫かー!?」
ピザを入れたり取り出すのに使うヘラみたいなやつを買い忘れたのだ。
正式名称はピザピールって名前らしい。
あまりにも俺が頼りないのか、軍手をつけた牛島さんがアルミホイルの端を掴み皿に乗せてくれた。
気づいた頃にはピザが完成していた。
何かするたびに牛島さんが心配し、全てやってくれる。
ひょっとして我が家の料理長は牛島さんに決定じゃないか?
夜だけでも誘ったら来てくれないだろうか。
俺達はそのまま地面に座り込み、ピザを一口食べてみる。
「うまっ!?」
「おいひい!」
「んみゃー!」
俺達は口を揃えてピザを食べていく。
「さすが牛――」
ふと、牛島さんを見ると、どこか悲しみでも喜びでもない、ただ穏やかな何かを感じた。
「あのー、食べないとシルとケトに取られますよ?」
隣ではシルとケトが、牛島さんのピザを見ていた。
ケトはすでに手を伸ばしているからな。
「ははは、まだ生地のあまりがあるから作ってやろう――」
ニコリと微笑む牛島さん。
さっきの表情は何があったのだろうか。
ただ、今の俺達は牛島さんが作ったピザに意識が奪われていた。
「お願いします!」
「うん!」
「みゃー!」
「ははは、家族揃って食いしん坊なんだな」
ついつい美味しいピザのおかわりがあると聞いて、すぐに返事をしてしまった。
恥ずかしいと思いながらも、たくさん作ってくれる牛島さんのピザに俺達は幸せな気持ちになっていた。
♢
俺はゆっくりと歩き家に帰っていく。
隣人に呼ばれてピザパーティーをしに行ったはずだが、気づいたらほぼ俺が作っていた。
「本当に変わった家族だな」
親子二人とネコ一匹で引っ越してきた隣人。
影が薄く消えてしまいそうな存在に、どこか胸が締め付けられる。
「あいつがいたら、彼は良いお兄ちゃんになっていたんだろうな。いや、あの性格だと弟か……」
妻と息子がいなくなって何年経ったのだろう。
ここに引っ越してきたときが20代で、気づいた時には俺も40代のおっさんだ。
どこかで生きていたらきっと高校生ぐらいな気がする。
月日が経つのは早く、あいつらがいなくなったのがついこの間の気がする。
「ただいま!」
誰もいない静かな家に一人で帰っていく。
だけど、今日はいつもよりウキウキして帰っている俺がいた。
頼りない兄ちゃん達と騒いで、久しぶりに楽しい時間を過ごせた気がする。
ただただ、ご飯を作らされただけだったけどな。
「またチーズでも作ってやるか」
俺はあいつらのために、いつもよりチーズを多めに作ることにした。
---------------------
【あとがき】
「お気に入り登録、コメントをしない人達は――」
「「呪うよ?」」
シルとケトはニヤリと笑ってこっちを見ていた。
| |д・)ωΦ^ ) ジィー
「ピザソースだからトマトを潰して水を入れたらいいんじゃないか?」
俺はトマトを切ってとりあえず鍋に入れようとしたら牛島さんに止められた。
「兄ちゃん本当に若者か? 今の時代ちゃんと調べた方がいいぞ?」
牛島さんに言われた通りにスマホで調べていくと、どうやら水すらいらなかったようだ。
「んーっと、鍋にオリーブオイルとにんにくを入れて、トマトと玉ねぎを炒める」
俺が書いてあることを読んでいくと、すぐに牛島さんが作っていく。
「おぉー!」
その姿に俺達は感心していた。
「コンソメと塩胡椒、砂糖で味を整えて……」
「兄ちゃんが覚えないと意味ないからな?」
「きっとどうにかなりますよ!」
「なんか心配だな……」
正直料理に関しては経験を積まないとどうしようもないと思う。
それに早くできないのかと食いしん坊の妖怪達がさっきから睨んでくるのだ。
今日は試作品みたいなものだから、少しずつ上手くできるようになれば良い。
最悪、牛島さんを呼んで……いや、そんなことはできないか。
牛島さんが味見をしながら、ゆっくりと煮詰めていく。
その様子を隣でシルと一緒に見ていく。
途中ケチャップを少し足したりなどしていたが、ほとんどが感覚のようだ。
料理に慣れているかどうかは、作っている人の味覚で変わるだろう。
しばらく煮たらピザソースが完成した。
「あとは伸ばした生地にピザソースと具材を載せて焼いたら完成だな」
基本的に生地とピザソースができていれば、具材はなんでも良いらしい。
チキンやマヨネーズ、明太子やお餅などバリエーションの多い具材を用意したら、それだけでも楽しめる気がする。
ピザの準備ができたらあとは焼くだけだ。
アルミホイルの上にピザを載せて、そのまま投げるようにピザ釜に入れていく。
なぜアルミホイルの上に載せているかって?
「本当に兄ちゃん大丈夫かー!?」
ピザを入れたり取り出すのに使うヘラみたいなやつを買い忘れたのだ。
正式名称はピザピールって名前らしい。
あまりにも俺が頼りないのか、軍手をつけた牛島さんがアルミホイルの端を掴み皿に乗せてくれた。
気づいた頃にはピザが完成していた。
何かするたびに牛島さんが心配し、全てやってくれる。
ひょっとして我が家の料理長は牛島さんに決定じゃないか?
夜だけでも誘ったら来てくれないだろうか。
俺達はそのまま地面に座り込み、ピザを一口食べてみる。
「うまっ!?」
「おいひい!」
「んみゃー!」
俺達は口を揃えてピザを食べていく。
「さすが牛――」
ふと、牛島さんを見ると、どこか悲しみでも喜びでもない、ただ穏やかな何かを感じた。
「あのー、食べないとシルとケトに取られますよ?」
隣ではシルとケトが、牛島さんのピザを見ていた。
ケトはすでに手を伸ばしているからな。
「ははは、まだ生地のあまりがあるから作ってやろう――」
ニコリと微笑む牛島さん。
さっきの表情は何があったのだろうか。
ただ、今の俺達は牛島さんが作ったピザに意識が奪われていた。
「お願いします!」
「うん!」
「みゃー!」
「ははは、家族揃って食いしん坊なんだな」
ついつい美味しいピザのおかわりがあると聞いて、すぐに返事をしてしまった。
恥ずかしいと思いながらも、たくさん作ってくれる牛島さんのピザに俺達は幸せな気持ちになっていた。
♢
俺はゆっくりと歩き家に帰っていく。
隣人に呼ばれてピザパーティーをしに行ったはずだが、気づいたらほぼ俺が作っていた。
「本当に変わった家族だな」
親子二人とネコ一匹で引っ越してきた隣人。
影が薄く消えてしまいそうな存在に、どこか胸が締め付けられる。
「あいつがいたら、彼は良いお兄ちゃんになっていたんだろうな。いや、あの性格だと弟か……」
妻と息子がいなくなって何年経ったのだろう。
ここに引っ越してきたときが20代で、気づいた時には俺も40代のおっさんだ。
どこかで生きていたらきっと高校生ぐらいな気がする。
月日が経つのは早く、あいつらがいなくなったのがついこの間の気がする。
「ただいま!」
誰もいない静かな家に一人で帰っていく。
だけど、今日はいつもよりウキウキして帰っている俺がいた。
頼りない兄ちゃん達と騒いで、久しぶりに楽しい時間を過ごせた気がする。
ただただ、ご飯を作らされただけだったけどな。
「またチーズでも作ってやるか」
俺はあいつらのために、いつもよりチーズを多めに作ることにした。
---------------------
【あとがき】
「お気に入り登録、コメントをしない人達は――」
「「呪うよ?」」
シルとケトはニヤリと笑ってこっちを見ていた。
| |д・)ωΦ^ ) ジィー
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