上 下
18 / 75
第一章 妖怪達と民泊を始めました

18.ホテルマン、ジビエに襲われる

しおりを挟む
 ピザの生地を寝かせている間にピザ窯で火の準備をしていく。

 ケトが見ていない間に買ってきた薪や炭を配置して、その上から採ってきた木を載せていく。

 さっきからジトっとした目で見てくるが、俺の体で隠しているから問題はないだろう。

「そろそろ生地ができたんじゃないか?」

 木に火が着いたのを確認してから、俺達はピザ作りを再開する。

「ソースはトマトケチャップかトマトソースどっちが良さそうですか?」

「普通はトマトの方がいいんじゃないか?」

「じゃあ、持ってきますね」

「持ってくる……?」

 ピザの生地は牛島さんに任せて、俺はピザに使うトマトを地下にある畑へ収穫に向かう。

「ピザをみんなで作るならソースの準備も必要なのか。それともみんなでソースを作るところからやった方が良いのか?」

 民泊を始めたら何がメインになるのか考えないといけない。

 文化や生活、周囲に何があるのかはわからない俺にとったら、民泊自体の良さが必要になってきそうだ。

 農家民泊とか、その土地のイベントに合わせた民泊など個性的な民泊が注目を浴びている。

「今のところは景色が良い露天風呂とピザ窯と……座敷わらしがいるか」

 この民泊の最大のウリはごく普通に座敷わらしが紛れて生活していることだろうか。あと猫又もいる。

 ただ、お互いに幸運の足し引きをしている気もするが気にしないでおこう。

 畑に着いた俺はトマトを何個か収穫していく。

 ――ガサガサ!

 物音が聞こえて振り向くと、そこには体が黒色のうさぎがいた。

 またシル達の仲間かと思ったが、うさぎの妖怪っているのだろうか。

 なぜ妖怪だと思ったかって?

 それは普通のうさぎとは違うからだ。

 額に大きな角が生えていた。

「うわぁ!?」

 俺がそのまま見ていると、突然うさぎが飛び上がり俺の元へ向かってきた。

 咄嗟に避けると、うさぎの角はトマトに刺さり、枝に体が引っかかっている。

 明らかに俺の心臓を狙って向かってきたのがすぐにわかった。

「ふくー?」

 戻ってくるのが遅かったからか、シルが畑に降りてきた。

「シル、きちゃダメ!」

「なんで!」

 俺の声に反応してシルが急いで降りてくる。

 うさぎも角を抜き取れたのか、再び俺の方へ向かってきた。

 凶暴なうさぎに困惑していると、横から手が伸びてきた。

「ふくをいじめない!」

 その手はシルだった。

 シルはうさぎを捕まえると、地面に強く叩きつけた。

 あまりにも子どもがするような行動ではないと気づき、俺はシルを止めるが口からよだれが出ていることに気づいた。

「ジビエおいしい?」

 どうやらこの畑にうさぎが出てくるのは日常茶飯事らしい。

 風が吹いてない環境で野菜がどうやって地面に落ちるのかと疑問に思ったが、こういう動物によって落ちていたのだろう。

 それにこの間、地面が赤くなっていたのはうさぎの血だったのかもしれないな。

 俺を見かけて襲ってきたってことは縄張り意識も高そうだ。

 農家民泊はやめて、ここには俺達家族しか入らない方が良さそうだな。

 そんなことを思っていると、シルは慣れた手つきでうさぎを吊るして血抜きをしていた。

 ポケットからナイフが出てきた時は、少しドキッとした。

「ひひひ」

 不気味な笑みがさらに座敷わらしだったんだと認識させられる。

 いや、あれは座敷わらしと関係あるのか?

 ひょっとしたら悪い妖怪ばかりがいる民泊になるんじゃないかと少し心配になる。

「うさぎの捌き方は知っているの?」

「もちろん!」

 うさぎはシルに任せれば良いのだろう。

 ジビエが食べられる民泊って人を呼ぶ要素にもなりそうだ。

 うん……。

 その前に普通の料理ができるか心配だが、どうにかなるだろう。 

「よし、ピザを作りに行こうか!」

「うん!」

 我が家には座敷わらしや猫又だけではなく、角の生えたうさぎが出ることを知った。

 いやー、変な動物じゃなくてよかったな。

 それにうさぎって俺も食べたことないし、少し楽しみになってきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美少女だらけの姫騎士学園に、俺だけ男。~神騎士LV99から始める強くてニューゲーム~

マナシロカナタ✨ラノベ作家✨子犬を助けた
ファンタジー
異世界💞推し活💞ファンタジー、開幕! 人気ソーシャルゲーム『ゴッド・オブ・ブレイビア』。 古参プレイヤー・加賀谷裕太(かがや・ゆうた)は、学校の階段を踏み外したと思ったら、なぜか大浴場にドボンし、ゲームに出てくるツンデレ美少女アリエッタ(俺の推し)の胸を鷲掴みしていた。 ふにょんっ♪ 「ひあんっ!」 ふにょん♪ ふにょふにょん♪ 「あんっ、んっ、ひゃん! って、いつまで胸を揉んでるのよこの変態!」 「ご、ごめん!」 「このっ、男子禁制の大浴場に忍び込むだけでなく、この私のむ、む、胸を! 胸を揉むだなんて!」 「ちょっと待って、俺も何が何だか分からなくて――」 「問答無用! もはやその行い、許し難し! かくなる上は、あなたに決闘を申し込むわ!」 ビシィッ! どうやら俺はゲームの中に入り込んでしまったようで、ラッキースケベのせいでアリエッタと決闘することになってしまったのだが。 なんと俺は最高位職のLv99神騎士だったのだ! この世界で俺は最強だ。 現実世界には未練もないし、俺はこの世界で推しの子アリエッタにリアル推し活をする!

退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話

菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。 そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。 超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。 極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。 生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!? これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。

辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女ノヴァ ~魔力0の捨てられ少女はかわいいモフモフ聖獣とともにこの地では珍しい錬金術で幸せをつかみ取ります~

あきさけ
ファンタジー
とある平民の少女は四歳のときに受けた魔力検査で魔力なしと判定されてしまう。 その結果、森の奥深くに捨てられてしまった少女だが、獣に襲われる寸前、聖獣フラッシュリンクスに助けられ一命を取り留める。 その後、フラッシュリンクスに引き取られた少女はノヴァと名付けられた。 さらに、幼いフラッシュリンクスの子と従魔契約を果たし、その眠っていた才能を開花させた。 様々な属性の魔法が使えるようになったノヴァだったが、その中でもとりわけ珍しかったのが、素材の声を聞き取り、それに応えて別のものに作り替える〝錬金術〟の素養。 ノヴァを助けたフラッシュリンクスは母となり、その才能を育て上げ、人の社会でも一人前になれるようノヴァを導きともに暮らしていく。 そして、旅立ちの日。 母フラッシュリンクスから一人前と見なされたノヴァは、姉妹のように育った末っ子のフラッシュリンクス『シシ』とともに新米錬金術士として辺境の街へと足を踏み入れることとなる。 まだ六歳という幼さで。 ※この小説はカクヨム様、アルファポリス様で連載中です。  上記サイト以外では連載しておりません。

異世界転移したので、のんびり楽しみます。

ゆーふー
ファンタジー
信号無視した車に轢かれ、命を落としたことをきっかけに異世界に転移することに。異世界で長生きするために主人公が望んだのは、「のんびり過ごせる力」 主人公は神様に貰った力でのんびり平和に長生きできるのか。

倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~

乃神レンガ
ファンタジー
 謎の白い空間で、神から異世界に送られることになった主人公。  二重取りの神授スキルを与えられ、その効果により追加でカード召喚術の神授スキルを手に入れる。  更にキャラクターメイキングのポイントも、二重取りによって他の人よりも倍手に入れることができた。  それにより主人公は、本来ポイント不足で選択できないデミゴッドの種族を選び、ジンという名前で異世界へと降り立つ。  異世界でジンは倒したモンスターをカード化して、最強の軍団を作ることを目標に、世界を放浪し始めた。  しかし次第に世界のルールを知り、争いへと巻き込まれていく。  国境門が数カ月に一度ランダムに他国と繋がる世界で、ジンは様々な選択を迫られるのであった。  果たしてジンの行きつく先は魔王か神か、それとも別の何かであろうか。  現在毎日更新中。  ※この作品は『カクヨム』『ノベルアップ+』にも投稿されています。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

処理中です...