上 下
15 / 75
第一章 妖怪達と民泊を始めました

15.ホテルマン、ホームセンターに行く

しおりを挟む
 さぁ、民泊をすることが決まったが、どうやって人を集めるかが問題になってくる。

 今のところ家の中は綺麗だし、お風呂も露天風呂まであるから呼び込みはしやすいだろう。

 ただ問題なのが……。

「ここまで人が来るかどうかだよな」

「ふくいがいこないもんね……」

 シルの言葉が俺の胸に突き刺さる。

 寂しい思いをしていたのだろうか。

 確かに俺が引っ越してくるまで、数年誰も住んでいなかったからな。

 それによく考えたら民泊に来たのに、座敷わらしと猫又がいたら驚いて逃げていきそうな気もする。

 なるべくはっきりと姿を見せるように特訓も必要だろう。

「民泊サイトとかには登録するとして、他にも何か呼び込めそうなものがあったらいいけどな……」

「さっきのやつ!」

 ケトは尻尾をピーンと立てて、スマホをポンポンと叩いていた。

「さっきやつって?」

「ピザ!」

 うん、ケトも食いしん坊確定だな。

 尚更たくさんお金が必要になってきそうだ。

 俺はもう一度スマホを使って、ピザ窯の作り方を調べていく。

「思ったよりも簡単に作れそうだな」

 その中でレンガを積み重ねて作っていく動画を見つけた。

 道具や材料は全てホームセンターに揃っているため、明日買い出しに行くことにした。


「うっ……」

「ふく!」
「おい、起きろ!」

 俺はシルとケトに起こされた。

 昨日も金縛りに遭って中々寝付けなかった。

 ただ、前回と違ったのはそのタイミングでシルとケトが布団の中に忍び込んでいることがわかった。

 この際初めから一緒に寝ていたら、金縛りに悩まされることもなさそうだ。

 何か霊力みたいなのがあったりするのだろうか。

 いや、俺の考えすぎだな。

「ホームセンターに行くぞ!」

 ケトは肉は肉球で俺の顔を叩いているが、心地良くて眠たくなりそうだ。

「んー、おきる!」

「ぐふっ!?」

 強烈なシルの一撃に俺は目を覚ました。

 朝から子どもは元気だな。

 眠い目をこすりながら、朝食を食べて車に乗り込む。

「ケトも来るのか?」

「呪うぞ?」

 何かあるたびにケトは俺を呪おうとする。

 その辺の呪いの藁人形よりタチが悪いな。

「んー、ホームセンターだから大丈夫か……。勝手に動かないようにね」

「わかった!」

 ホームセンターの中にペットショップがあったりするから、動物を連れて行っても問題はないだろう。

 事前に調べたがカートの中から逃げ出さなければ、ペット可と書いてあった。

 俺は車を走らせてホームセンターに向かった。

 ついでに鳥居があるか確認したが、やはり牛島さんが言うように見つけられなかった。

 どこか摩訶不思議な感じもするが、帰りにも探してみよう。


 ホームセンターに着くと、俺はケトを抱えて中に入っていく。

「うー、気持ち悪い……」

「あんなにはしゃぐからだろ」

 初めて車に乗ったケトは車の中ではしゃいで、すぐに酔っていた。

「シルはげんき!」

「シルは大人しくしていたもんな」

 一方のシルはちゃんとシートベルトを着けていたから、大丈夫だったのもあるだろう。

 座敷わらしがシートベルトを着けて座っているって聞くと、少し笑ってしまいそうだ。

 念の為に先にペットショップに向かい、ケトが逃げ出さないように首輪とリードを買うことにした。

「おい、降ろせ!」

 首輪とリードをカゴに入れて、歩いていると突然抱えていたケトが暴れ出す。

 やっぱり首輪とリードを買うのは正解だ。

 俺達はすぐにケトを追いかけると、ケトはネコが展示されているところにいた。

 ひょっとしたら何か悪いことをするかもしれない。

 俺はゆっくりと近づき、ケトを抱きかかえる。

「勝手に移動するなよ」

 ケトはジッとネコを見つめていた。

 同じネコとして閉じ込められていることに、何か思うところがあるのだろう。

「ジュテーム!」

 うん。やっぱり猫又はどこかおかしいぞ。

 ただ、ネコはケトを見ると顔をプイと背けた。

「振られた……」

「へっ?」

「オイラこやつに振られた! 呪ってやる!」

 展示されているネコの性別は紙に〝女の子〟と書いてあった。

 きっとケトは雄なんだろう。

「ケト、女の子はこの子だけじゃないからな」

「そうだよ? みっともないよ?」

「うっ……いいもん」

 ケトは俺の首元に顔を埋めて落ち込んでいた。

 その間に首輪とリードを買って、ケトに着けておく。

 これでどこかに行くことはないだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜

西園寺若葉
ファンタジー
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話

菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。 そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。 超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。 極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。 生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!? これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。

辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女ノヴァ ~魔力0の捨てられ少女はかわいいモフモフ聖獣とともにこの地では珍しい錬金術で幸せをつかみ取ります~

あきさけ
ファンタジー
とある平民の少女は四歳のときに受けた魔力検査で魔力なしと判定されてしまう。 その結果、森の奥深くに捨てられてしまった少女だが、獣に襲われる寸前、聖獣フラッシュリンクスに助けられ一命を取り留める。 その後、フラッシュリンクスに引き取られた少女はノヴァと名付けられた。 さらに、幼いフラッシュリンクスの子と従魔契約を果たし、その眠っていた才能を開花させた。 様々な属性の魔法が使えるようになったノヴァだったが、その中でもとりわけ珍しかったのが、素材の声を聞き取り、それに応えて別のものに作り替える〝錬金術〟の素養。 ノヴァを助けたフラッシュリンクスは母となり、その才能を育て上げ、人の社会でも一人前になれるようノヴァを導きともに暮らしていく。 そして、旅立ちの日。 母フラッシュリンクスから一人前と見なされたノヴァは、姉妹のように育った末っ子のフラッシュリンクス『シシ』とともに新米錬金術士として辺境の街へと足を踏み入れることとなる。 まだ六歳という幼さで。 ※この小説はカクヨム様、アルファポリス様で連載中です。  上記サイト以外では連載しておりません。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

異世界転移したので、のんびり楽しみます。

ゆーふー
ファンタジー
信号無視した車に轢かれ、命を落としたことをきっかけに異世界に転移することに。異世界で長生きするために主人公が望んだのは、「のんびり過ごせる力」 主人公は神様に貰った力でのんびり平和に長生きできるのか。

倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~

乃神レンガ
ファンタジー
 謎の白い空間で、神から異世界に送られることになった主人公。  二重取りの神授スキルを与えられ、その効果により追加でカード召喚術の神授スキルを手に入れる。  更にキャラクターメイキングのポイントも、二重取りによって他の人よりも倍手に入れることができた。  それにより主人公は、本来ポイント不足で選択できないデミゴッドの種族を選び、ジンという名前で異世界へと降り立つ。  異世界でジンは倒したモンスターをカード化して、最強の軍団を作ることを目標に、世界を放浪し始めた。  しかし次第に世界のルールを知り、争いへと巻き込まれていく。  国境門が数カ月に一度ランダムに他国と繋がる世界で、ジンは様々な選択を迫られるのであった。  果たしてジンの行きつく先は魔王か神か、それとも別の何かであろうか。  現在毎日更新中。  ※この作品は『カクヨム』『ノベルアップ+』にも投稿されています。

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

処理中です...