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第一章 妖怪達と民泊を始めました

15.ホテルマン、ホームセンターに行く

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 さぁ、民泊をすることが決まったが、どうやって人を集めるかが問題になってくる。

 今のところ家の中は綺麗だし、お風呂も露天風呂まであるから呼び込みはしやすいだろう。

 ただ問題なのが……。

「ここまで人が来るかどうかだよな」

「ふくいがいこないもんね……」

 シルの言葉が俺の胸に突き刺さる。

 寂しい思いをしていたのだろうか。

 確かに俺が引っ越してくるまで、数年誰も住んでいなかったからな。

 それによく考えたら民泊に来たのに、座敷わらしと猫又がいたら驚いて逃げていきそうな気もする。

 なるべくはっきりと姿を見せるように特訓も必要だろう。

「民泊サイトとかには登録するとして、他にも何か呼び込めそうなものがあったらいいけどな……」

「さっきのやつ!」

 ケトは尻尾をピーンと立てて、スマホをポンポンと叩いていた。

「さっきやつって?」

「ピザ!」

 うん、ケトも食いしん坊確定だな。

 尚更たくさんお金が必要になってきそうだ。

 俺はもう一度スマホを使って、ピザ窯の作り方を調べていく。

「思ったよりも簡単に作れそうだな」

 その中でレンガを積み重ねて作っていく動画を見つけた。

 道具や材料は全てホームセンターに揃っているため、明日買い出しに行くことにした。


「うっ……」

「ふく!」
「おい、起きろ!」

 俺はシルとケトに起こされた。

 昨日も金縛りに遭って中々寝付けなかった。

 ただ、前回と違ったのはそのタイミングでシルとケトが布団の中に忍び込んでいることがわかった。

 この際初めから一緒に寝ていたら、金縛りに悩まされることもなさそうだ。

 何か霊力みたいなのがあったりするのだろうか。

 いや、俺の考えすぎだな。

「ホームセンターに行くぞ!」

 ケトは肉は肉球で俺の顔を叩いているが、心地良くて眠たくなりそうだ。

「んー、おきる!」

「ぐふっ!?」

 強烈なシルの一撃に俺は目を覚ました。

 朝から子どもは元気だな。

 眠い目をこすりながら、朝食を食べて車に乗り込む。

「ケトも来るのか?」

「呪うぞ?」

 何かあるたびにケトは俺を呪おうとする。

 その辺の呪いの藁人形よりタチが悪いな。

「んー、ホームセンターだから大丈夫か……。勝手に動かないようにね」

「わかった!」

 ホームセンターの中にペットショップがあったりするから、動物を連れて行っても問題はないだろう。

 事前に調べたがカートの中から逃げ出さなければ、ペット可と書いてあった。

 俺は車を走らせてホームセンターに向かった。

 ついでに鳥居があるか確認したが、やはり牛島さんが言うように見つけられなかった。

 どこか摩訶不思議な感じもするが、帰りにも探してみよう。


 ホームセンターに着くと、俺はケトを抱えて中に入っていく。

「うー、気持ち悪い……」

「あんなにはしゃぐからだろ」

 初めて車に乗ったケトは車の中ではしゃいで、すぐに酔っていた。

「シルはげんき!」

「シルは大人しくしていたもんな」

 一方のシルはちゃんとシートベルトを着けていたから、大丈夫だったのもあるだろう。

 座敷わらしがシートベルトを着けて座っているって聞くと、少し笑ってしまいそうだ。

 念の為に先にペットショップに向かい、ケトが逃げ出さないように首輪とリードを買うことにした。

「おい、降ろせ!」

 首輪とリードをカゴに入れて、歩いていると突然抱えていたケトが暴れ出す。

 やっぱり首輪とリードを買うのは正解だ。

 俺達はすぐにケトを追いかけると、ケトはネコが展示されているところにいた。

 ひょっとしたら何か悪いことをするかもしれない。

 俺はゆっくりと近づき、ケトを抱きかかえる。

「勝手に移動するなよ」

 ケトはジッとネコを見つめていた。

 同じネコとして閉じ込められていることに、何か思うところがあるのだろう。

「ジュテーム!」

 うん。やっぱり猫又はどこかおかしいぞ。

 ただ、ネコはケトを見ると顔をプイと背けた。

「振られた……」

「へっ?」

「オイラこやつに振られた! 呪ってやる!」

 展示されているネコの性別は紙に〝女の子〟と書いてあった。

 きっとケトは雄なんだろう。

「ケト、女の子はこの子だけじゃないからな」

「そうだよ? みっともないよ?」

「うっ……いいもん」

 ケトは俺の首元に顔を埋めて落ち込んでいた。

 その間に首輪とリードを買って、ケトに着けておく。

 これでどこかに行くことはないだろう。
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