無才能で孤独な王子は辺境の島で優雅なスローライフを送りたい〜愛され王子は愉快なもふもふと友達になる才能があったようです〜

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第七章 家庭訪問編

69.王子、お礼を伝える

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 コボスケとヒツジと空を見ながら日向ぼっこをしていたら突然村が闇に包まれた。すぐに警戒を強めたが、辺りで爆発音が鳴り響いた。

 それはコボスケとヒツジからも聞こえている。

 急いで安否の確認をするが、その姿に僕は驚いた。

「お前達誰だ?」

「アドル、拙者のことを忘れたのか?」

 いや、コボスケがこんな姿になるとは思ってもいなかった。

「今のはメアリーが魔法を失敗したな」

 うん、きっとそうだろうがお前達は誰なんだ?

「拙者はコボスケだぞ!」
「ワシはヒツジだ!」

 ああ、この感じは完全にコボスケ達で間違いはないはずだ。

「何か体の異変を感じていないか?」

「拙者ですか? 拙者は……毛がない! いや、前から毛は生えてないが、毛根からないぞ!」

 コボスケはやっと自分の姿に気づいたのだろう。ヒツジはだいぶ前から気づいて嬉しそうにしていた。

「拙者、人間になったぞー!」

 コボスケとヒツジは僕に抱きついてきた。うん、前はもふもふして気持ちよかったが、ただの人間になったら暑苦しいだけだ。

「少し離れようか」

「えっ……」

 一緒に喜んでくれると思ったのだろう。ただ、喜べない理由がたくさんある。

 まずはコボスケだが、見た目が完全に僕に似ている。いや、兄のレオンに似ていると言った方が良いのだろうか。

 レオンより体型を大きくして、髪の毛を銀髪にしたような感じだ。

「ワシはいいだろ?」

 コボスケよりはヒツジの方が白髪に黒のメッシュでわかりやすいが、やはり見た目はレオン似だ。

 垂れ目で優しそうなレオンとツリ目でツンツンしているレオンという感じだ。

「アドルお兄様大丈夫……レオン兄様?」

「まるで兄弟だな」

 やはり兄妹も同じことを思ったのだろう。そもそも僕の容姿がレオンに似ているのもある。

「カクレコは変化なかったけど、あとは――」

「いやーん♡ 私はどうかしら?」

 そこには見たこともない大柄な女性がいた。女性のはずが体格が男性のように筋肉質の姿をしている。

 綺麗な髪が風になびいているのが印象的だ。

「カマちゃんなの?」

「そうよ?」

 どうやらカマバックが人間になったら、体格の良い女性になるようだ。その姿にメアリーは驚きながらも嬉しそうにしていた。

 これからカクレコ達とファションショーをやると意気込んでいた。

 ドラゴニュートは元から人型だから見た目に変化はなく、地面の中にいたアースドラゴンもそのままだった。

「オラ達は――」

「焼き鳥かわいいぞー!」

 焼き鳥、もも、ささみはどこかコロコロとして、子供のような姿をしている。

 そして、コカスケは焼き鳥達よりも大きく、どこかお兄さんのようだ。

 何が起きてこうなっているのかはわからないが、メアリーとアーサーはどこか納得している。

「あっ、今ならちょうどトルンルンで――」

「皆さん並んでくださいー!」

 僕達は一ヶ所に集まる。

「おい、拙者がアドルの隣だ!」

「ワシがアドルの隣だ!」

「いやよ! お兄様は私の隣――」

 この島に来てこんなことになるとは思わなかった。

「オラ達は小さいからアドルの前――」

「しれっと近くに来るなよ!」

「なら、私とカクレコとメアリーの女性陣が――」

「ほとんど男――」

――バチン!

 コボスケはカムバックにビンタされていた。人間になっても威力は元の姿なんだろう。風圧で木が飛んでいった。

「あはは、みんな面白いな」

 ついつい僕は笑ってしまう。

 いつも一人で友達もいなかった。

 才能もなくて、ただただ生きていくだけで精一杯だった。

「おい、アドルを泣かしたの誰だ」

「別に泣いてないぞ」

 そう、これは悲しく泣いているんじゃない。

 こんなにたくさんの仲間に恵まれると思わなかったのだ。

「ほらほら、みんな集まってー!」

 アーサーが駆け寄ってくる。

 ああ、生きてて今が一番幸せだ。

 みんないつも一緒にいてくれてありがとう。

「大好きだよ」

「うぇ!?」

 トルンルンが幸せな瞬間を捉えた。
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