上 下
69 / 72
第七章 家庭訪問編

69.王子、お礼を伝える

しおりを挟む
 コボスケとヒツジと空を見ながら日向ぼっこをしていたら突然村が闇に包まれた。すぐに警戒を強めたが、辺りで爆発音が鳴り響いた。

 それはコボスケとヒツジからも聞こえている。

 急いで安否の確認をするが、その姿に僕は驚いた。

「お前達誰だ?」

「アドル、拙者のことを忘れたのか?」

 いや、コボスケがこんな姿になるとは思ってもいなかった。

「今のはメアリーが魔法を失敗したな」

 うん、きっとそうだろうがお前達は誰なんだ?

「拙者はコボスケだぞ!」
「ワシはヒツジだ!」

 ああ、この感じは完全にコボスケ達で間違いはないはずだ。

「何か体の異変を感じていないか?」

「拙者ですか? 拙者は……毛がない! いや、前から毛は生えてないが、毛根からないぞ!」

 コボスケはやっと自分の姿に気づいたのだろう。ヒツジはだいぶ前から気づいて嬉しそうにしていた。

「拙者、人間になったぞー!」

 コボスケとヒツジは僕に抱きついてきた。うん、前はもふもふして気持ちよかったが、ただの人間になったら暑苦しいだけだ。

「少し離れようか」

「えっ……」

 一緒に喜んでくれると思ったのだろう。ただ、喜べない理由がたくさんある。

 まずはコボスケだが、見た目が完全に僕に似ている。いや、兄のレオンに似ていると言った方が良いのだろうか。

 レオンより体型を大きくして、髪の毛を銀髪にしたような感じだ。

「ワシはいいだろ?」

 コボスケよりはヒツジの方が白髪に黒のメッシュでわかりやすいが、やはり見た目はレオン似だ。

 垂れ目で優しそうなレオンとツリ目でツンツンしているレオンという感じだ。

「アドルお兄様大丈夫……レオン兄様?」

「まるで兄弟だな」

 やはり兄妹も同じことを思ったのだろう。そもそも僕の容姿がレオンに似ているのもある。

「カクレコは変化なかったけど、あとは――」

「いやーん♡ 私はどうかしら?」

 そこには見たこともない大柄な女性がいた。女性のはずが体格が男性のように筋肉質の姿をしている。

 綺麗な髪が風になびいているのが印象的だ。

「カマちゃんなの?」

「そうよ?」

 どうやらカマバックが人間になったら、体格の良い女性になるようだ。その姿にメアリーは驚きながらも嬉しそうにしていた。

 これからカクレコ達とファションショーをやると意気込んでいた。

 ドラゴニュートは元から人型だから見た目に変化はなく、地面の中にいたアースドラゴンもそのままだった。

「オラ達は――」

「焼き鳥かわいいぞー!」

 焼き鳥、もも、ささみはどこかコロコロとして、子供のような姿をしている。

 そして、コカスケは焼き鳥達よりも大きく、どこかお兄さんのようだ。

 何が起きてこうなっているのかはわからないが、メアリーとアーサーはどこか納得している。

「あっ、今ならちょうどトルンルンで――」

「皆さん並んでくださいー!」

 僕達は一ヶ所に集まる。

「おい、拙者がアドルの隣だ!」

「ワシがアドルの隣だ!」

「いやよ! お兄様は私の隣――」

 この島に来てこんなことになるとは思わなかった。

「オラ達は小さいからアドルの前――」

「しれっと近くに来るなよ!」

「なら、私とカクレコとメアリーの女性陣が――」

「ほとんど男――」

――バチン!

 コボスケはカムバックにビンタされていた。人間になっても威力は元の姿なんだろう。風圧で木が飛んでいった。

「あはは、みんな面白いな」

 ついつい僕は笑ってしまう。

 いつも一人で友達もいなかった。

 才能もなくて、ただただ生きていくだけで精一杯だった。

「おい、アドルを泣かしたの誰だ」

「別に泣いてないぞ」

 そう、これは悲しく泣いているんじゃない。

 こんなにたくさんの仲間に恵まれると思わなかったのだ。

「ほらほら、みんな集まってー!」

 アーサーが駆け寄ってくる。

 ああ、生きてて今が一番幸せだ。

 みんないつも一緒にいてくれてありがとう。

「大好きだよ」

「うぇ!?」

 トルンルンが幸せな瞬間を捉えた。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

異世界で神様に農園を任されました! 野菜に果物を育てて動物飼って気ままにスローライフで世界を救います。

彩世幻夜
恋愛
 エルフの様な超絶美形の神様アグリが管理する異世界、その神界に迷い人として異世界転移してしまった、OLユリ。  壊れかけの世界で、何も無い神界で農園を作って欲しいとお願いされ、野菜に果物を育てて料理に励む。  もふもふ達を飼い、ノアの箱舟の様に神様に保護されたアグリの世界の住人たちと恋愛したり友情を育みながら、スローライフを楽しむ。  これはそんな平穏(……?)な日常の物語。  2021/02/27 完結

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈
ファンタジー
味噌蔵の跡継ぎで修行中の相葉壱。 息抜きに動物園に行った時、仔カピバラに噛まれ、気付けば見知らぬ場所にいた。 壱を連れて来た仔カピバラに付いて行くと、着いた先は食堂で、そこには10年前に行方不明になった祖父、茂造がいた。 茂造は言う。「ここはいわゆる異世界なのじゃ」と。 そして、「この食堂を継いで欲しいんじゃ」と。 明かされる村の成り立ち。そして村人たちの公然の秘め事。 しかし壱は徐々にそれに慣れ親しんで行く。 仔カピバラのサユリのチート魔法に助けられながら、味噌などの和食などを作る壱。 そして一癖も二癖もある食堂の従業員やコンシャリド村の人たちが繰り広げる、騒がしくもスローな日々のお話です。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

処理中です...