無才能で孤独な王子は辺境の島で優雅なスローライフを送りたい〜愛され王子は愉快なもふもふと友達になる才能があったようです〜

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第七章 家庭訪問編

68.姫様、暴走する ※メアリー視点

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 私は今ある魔法を必死に作り上げようとしている。それは見た目を変える"幻影魔法"だ。

 童話の中で魔法神が使ったとされるその魔法が、姿を変えて魔法神が街に遊びに行ったという話がある。

 ひょっとしたら光属性か闇属性がその魔法に関わっているのではないかと私は思っている。

 そもそも幻影魔法を作ろうとするには理由があった。

『アドル、拙者街に行ってみたい』

「いやいや、お前が行ったらみんな驚いて死ぬよ」

「はにゃ? コボルトぐらいどうも思わないぞ。アドルもメアリーも普通じゃないか」

 私達は驚いたが、すでにアドル兄様が側にいたから問題はなかった。だが、何も知らない街の人が見たらその場で気絶するのは間違いない。

 それに違う理由で幻影魔法を使いたいと言っているやつもいた。

『ワシもアドルのご家族に挨拶がしたい』

 ヒツジが私達の父である王に挨拶がしたいと言い出したのだ。流石にそれは難しいため、まずは肖像画を送るのはどうかという話になった。

「いやー、流石に魔道具で肖像画は作れるけど、見た目がな……」

 ただ、フェンリルや白虎達に囲まれているアドル兄様を見てパニックになるのは間違いない。

『メアリーちゃんできそう?』

「んー、あと少しなんだけど中々上手くいかないんだよね」

 幻影魔法の構造として、光の錯覚によって別の人に見えないかと思ったのだ。 

 実際に闇属性を全身に覆うことで姿を消すことができる。これでアドル兄様の寝室によく忍び込んでいた。

 あとはどうやって調整するかの段階だ。それにしてもチラチラとこっちを見るアーサー兄様の視線が気になって集中できない。

「アーサー兄様少しいいですか?」

 私に呼ばれたのか少し嬉しそうな顔をして駆けつけた。それだけカクレコと話したかったのだろう。

「カクレコさん何かあったんですか?」

 ほらほら、私が呼んだのにカクレコに聞いている。

『メアリーちゃんが困っているので、お兄さん・・・・も何かアドバイスないですか?』

「よかったら名前で呼んで頂けたら――」

『いえいえ、ボクなんかがそんなことできません』

 カクレコはかなりの鈍感だからそんなアプローチじゃ気づかないだろう。そもそも男の娘なのは気にしないのだろうか。

 いや、それよりもダンジョンの方が問題か。アーサー兄様はため息をついて私に寄ってきた。

「それで何が原因なんだ?」

「どうやって幻影を作り出すかがわからなくてね」

 アーサーは何かを思いついたのか、トルンルンを取り出した。

「あー、この魔道具は鑑定の魔法が応用しているのは知っているだろ?」

 鑑定は見たものを文字に表して、その本質を覗く魔法。その本質である覗くを魔道具に組み込んで、雷属性の魔石を使って紙に映し出して偶然できたのがトルンルンだ。

「鑑定のように本質を闇属性と合わせたらできるかもしれないってことですか?」

「ああ、考えとしてはできなくもないが、そもそもそんなに器用なことができる人はいないだろうな。だって、鑑定と闇属性魔法を同時に操作して操るんだからね」

 同時にいくつもの魔法を操るなんて簡単なことだ。

「私を誰だと思っているの?」

「ははは、メアリーは魔法神の申し子だったな!」

 私は闇属性魔法を村全体に伸ばして、鑑定魔法を使った。

 あれ……?

 思ったよりもコントロールがしにくい気がする。

「おいおい、メアリー止めろ! 闇属性魔法はただでさえコントロールができないと言われている魔法だぞ!」

 そういえば、ついこの間闇属性魔法で失敗したばかりだ。

 私は急いで魔法の発動を止める。だが、すでに遅かった。

 様々なところで爆発音が鳴り響いていた。それは隣にいるカクレコも同じだった。
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