無才能で孤独な王子は辺境の島で優雅なスローライフを送りたい〜愛され王子は愉快なもふもふと友達になる才能があったようです〜

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第七章 家庭訪問編

67.王子、今後を決める

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『アドル! アドル!』
『アードールー!』
『ルールールー!』

「おい、最後のやつ違うぞ!」

『へへへ!』

 さっきから僕の周りをブンブンを飛んでいる虫達。この間作った毒のスープを飲んで倒れたが、目を覚ましたら話すようになっていた。

 ただ、ちゃんとした会話はできず僕の名前をずっと呼んでいる。

『おいおい、お前らあっちいけ! 拙者のアドルだ!』
『いや、お前のではない。ワシのアドルだ!』

 そんな虫達を追い払おうと、コボスケとヒツジが必死に囲んでいる。

 一方、コボスケとヒツジに確認すると、彼らには毒耐性というスキルが手に入ったらしい。

 うん、僕のスープが毒ということが確定した。

 しばらくは料理するのを禁止というルールが村にできた。料理人を探すのがこの村の目標となった。

 今日はメアリーとアーサーの三人で今後のことを話し合う予定になっている。

 部屋に入るとアーサーがメアリーに何かを聞いているようだ。

「遅くなってすみません。何か良いことでもあったんですか?」

 アーサーに謝ると彼は機嫌が良いのか、笑顔でにこにことしている。

 どちらかと言えばムスッとしている印象が強い兄が笑っていると、何かが起きるのではないかと思ってしまう。

「いや――」

「カクレコに魔道具をプレゼントされて喜んでいるのよ」

「ちょ、メアリー勝手に言うなよ!」

 カクレコの魔道具技術はかなりの腕前で、次々と魔道具を作っている。僕達がもらった魔道具は腕輪型の通信機だ。僕とメアリー、そしてアーサーも持っていることになる。

 通信機の魔道具自体あまり数もないはずなのに、すでにこの村に三つもあるということだ。

「それで今日集まってもらったのは俺に関することだ」

 アーサーが来てからしばらくの月日が経った。魔道具もある程度作ってもらったし、トルンルンでたくさん肖像画もできた。彼は王国に戻るために僕達に声をかけたのだろう。

「僕はここに残ります」

「私も帰らないですよ」

 アーサーが無理に僕を連れ戻そうとすることもあれ以来なくなった。

 メアリーも僕と同じ気持ちなんだろう。

 この島が好きだし、一緒にいる仲間も好き。だからここで過ごすことはすでに決まっている。

「そのことだが、俺もここに残ろうと思う」

「えっ?」

「そういえば、帰る船を用意していなかったわ」

 まさかの展開につい笑ってしまう。僕とメアリーもここに船で来たが、帰りの方法を考えていなかった。

 きっとアーサーも同じ船に乗ってしまったのだろう。

「魔法省は大丈夫なんですか?」

「ああ、俺以外にもできるやつはいくらでもいるからな」

 アーサーが大丈夫と言うなら問題はないのだろう。ただ、魔法使いのトップと魔法頭の申し子がここにいても良いのだろうか。

 国自体の戦力が弱まってしまう気もする。

 ただ、そんなことを考えても仕方ないな。帰る手段がなければどうすることもできないからね。

「それなら改めてみんなに紹介しないといけないね!」

 僕は部屋から出てみんなを集めることにした。

「アーサー兄様って本当に素直じゃないわね。好きな子ができたから残りたいって言えばいいのに」

「なっ!?」

「それにアドル兄様が気になって仕方ないもんね」

「俺は別に――」

「そんなことじゃ、カクレコは落ちないわよ!」

 僕が出ていった部屋から、中々アーサーとメアリーは出てこなかった。
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