無才能で孤独な王子は辺境の島で優雅なスローライフを送りたい〜愛され王子は愉快なもふもふと友達になる才能があったようです〜

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第七章 家庭訪問編

62.王子、親友の温もりを感じる

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「アドル……本当にアドルなのか?」

「僕の他ににアドルっているんですか?」

「会いたかっ――」

「はいはい、アーサーお兄様はとりあえず落ち着きましょうね」

 僕に抱きついてこようとするアーサーをメアリーは止めた。どこかメアリーが番犬のように感じてしまう。

 今もアーサーになぜ来たのかと威嚇している。

「そういえば、アーサー兄さんはなんでここにいるんですか?」

「そりゃーお前達・・・を連れて帰るためだぞ?」

 連れて帰るってまたあの王城に帰るってことだろうか。外に出るのは学園に通う時のみで、あとはレオンとマリアに閉じ込められる日々に戻るというのか。

 刺激はないし、誰も相手をしてくれないところに帰るのは絶対に嫌だ。

「私はアドル兄様が帰らないならこのままここにいますよ」

「勝手なことを言ってないで、アドルがいないとどうなるのか――」

 そもそも僕を追い出したのは父である王だ。あの国では彼の命令には絶対従わないといけない。

 それなのに連れて帰るってわがままにも程がある。

 僕の人生をなんだと思っているのだろうか。

「僕は絶対に帰りません。追い出しておいて帰って来いって勝手すぎます」

「いいからアドルは帰って――」

 アーサーは僕の腕を掴み無理やり引っ張って連れて帰ろうとする。それを見たメアリーは必死に止めようとしていた。

「僕は誰も相手してくれない城には絶対に帰りません!」

 その手を払って家に帰ることにした。今すぐにでもコボスケ達に会いたい。そんな気持ちになってしまった。

 もう一人でずっと過ごすのは嫌だ。





『おっ、アドルどうしたんだ?』

 僕に気づいたのかヒツジが声をかけて来た。ドラゴニュートから聞いて肉畑の柵を作っていたのだろう。

 何も話さない僕に違和感を感じたのか、ヒツジはどこか戸惑っている。

「僕はこのままみんなといたいよ」

 ふかふかな体に抱きつく。コボスケと違い短毛な毛は肌触りが良い。

『おい、アドル本当にどうしたんだ?』

 僕がヒツジに抱きつくことなんて滅多にない。それだけ今は彼らに甘えたくなってしまう。

『木を持って……ヒツジだけせこいぞ! 拙者もアドルと――』

 資材を取りに行ってたコボスケも木を抱えて戻って来た。僕の異変に敏感なコボスケもさすがだ。

 ただ、どっちが慰めるかでコボスケとヒツジが言い合いをしているのはどうかと思う。

『さぁ、拙者の胸に今すぐに飛び込むんだ!』

 決着がついたのかコボスケは手を広げて待っている。

 だが、すでに遅い。当の本人である僕はもう元気だ。

 必死にジャンケンをしている姿を見て元気がでてきた。グーとパーしか出せないのに、どうやって決着をつけるのか見ていたらヒツジが譲ってくれたようだ。

 ツンツンしていても仲間思いなのは変わらないな。

 こういうところに僕は居心地の良さを感じているのだろう。

 ずっと尻尾を振って待っているコボスケに僕は抱きついた。少し可哀想に見えてくるからな。

 ただ、それがダメだった。

『アドル……また浮気したのか?』

「えっ?」

 その言い方だと僕は浮気性の男みたいだ。今まで浮気もしたことないし、恋愛もした記憶がない。

『知らない人間の臭いがする。メアリーじゃないやつだ!』

 少し腕を掴まれただけで臭いがついたのか。

 しかも、メアリーではないとすぐに判断できるのは嗅覚が発達しているからだろう。

『じゃあ、さっきの知らない声はアドルを傷つけたやつか』

 ひょっとしてヒツジもアーサーと話していた声が聞こえていたのかもしれない。

 さすがフェンリルと白虎だ。

『拙者が殺そうか?』
『ワシが殺そうか?』

 うん、こいつらは危ない気がする。メアリーと会ってから少し過激派になったようだ。

 僕はとりあえずコボスケとヒツジを撫でて、何もないふりをした。
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