62 / 72
第七章 家庭訪問編
62.王子、親友の温もりを感じる
しおりを挟む
「アドル……本当にアドルなのか?」
「僕の他ににアドルっているんですか?」
「会いたかっ――」
「はいはい、アーサーお兄様はとりあえず落ち着きましょうね」
僕に抱きついてこようとするアーサーをメアリーは止めた。どこかメアリーが番犬のように感じてしまう。
今もアーサーになぜ来たのかと威嚇している。
「そういえば、アーサー兄さんはなんでここにいるんですか?」
「そりゃーお前達を連れて帰るためだぞ?」
連れて帰るってまたあの王城に帰るってことだろうか。外に出るのは学園に通う時のみで、あとはレオンとマリアに閉じ込められる日々に戻るというのか。
刺激はないし、誰も相手をしてくれないところに帰るのは絶対に嫌だ。
「私はアドル兄様が帰らないならこのままここにいますよ」
「勝手なことを言ってないで、アドルがいないとどうなるのか――」
そもそも僕を追い出したのは父である王だ。あの国では彼の命令には絶対従わないといけない。
それなのに連れて帰るってわがままにも程がある。
僕の人生をなんだと思っているのだろうか。
「僕は絶対に帰りません。追い出しておいて帰って来いって勝手すぎます」
「いいからアドルは帰って――」
アーサーは僕の腕を掴み無理やり引っ張って連れて帰ろうとする。それを見たメアリーは必死に止めようとしていた。
「僕は誰も相手してくれない城には絶対に帰りません!」
その手を払って家に帰ることにした。今すぐにでもコボスケ達に会いたい。そんな気持ちになってしまった。
もう一人でずっと過ごすのは嫌だ。
♢
『おっ、アドルどうしたんだ?』
僕に気づいたのかヒツジが声をかけて来た。ドラゴニュートから聞いて肉畑の柵を作っていたのだろう。
何も話さない僕に違和感を感じたのか、ヒツジはどこか戸惑っている。
「僕はこのままみんなといたいよ」
ふかふかな体に抱きつく。コボスケと違い短毛な毛は肌触りが良い。
『おい、アドル本当にどうしたんだ?』
僕がヒツジに抱きつくことなんて滅多にない。それだけ今は彼らに甘えたくなってしまう。
『木を持って……ヒツジだけせこいぞ! 拙者もアドルと――』
資材を取りに行ってたコボスケも木を抱えて戻って来た。僕の異変に敏感なコボスケもさすがだ。
ただ、どっちが慰めるかでコボスケとヒツジが言い合いをしているのはどうかと思う。
『さぁ、拙者の胸に今すぐに飛び込むんだ!』
決着がついたのかコボスケは手を広げて待っている。
だが、すでに遅い。当の本人である僕はもう元気だ。
必死にジャンケンをしている姿を見て元気がでてきた。グーとパーしか出せないのに、どうやって決着をつけるのか見ていたらヒツジが譲ってくれたようだ。
ツンツンしていても仲間思いなのは変わらないな。
こういうところに僕は居心地の良さを感じているのだろう。
ずっと尻尾を振って待っているコボスケに僕は抱きついた。少し可哀想に見えてくるからな。
ただ、それがダメだった。
『アドル……また浮気したのか?』
「えっ?」
その言い方だと僕は浮気性の男みたいだ。今まで浮気もしたことないし、恋愛もした記憶がない。
『知らない人間の臭いがする。メアリーじゃないやつだ!』
少し腕を掴まれただけで臭いがついたのか。
しかも、メアリーではないとすぐに判断できるのは嗅覚が発達しているからだろう。
『じゃあ、さっきの知らない声はアドルを傷つけたやつか』
ひょっとしてヒツジもアーサーと話していた声が聞こえていたのかもしれない。
さすがフェンリルと白虎だ。
『拙者が殺そうか?』
『ワシが殺そうか?』
うん、こいつらは危ない気がする。メアリーと会ってから少し過激派になったようだ。
僕はとりあえずコボスケとヒツジを撫でて、何もないふりをした。
「僕の他ににアドルっているんですか?」
「会いたかっ――」
「はいはい、アーサーお兄様はとりあえず落ち着きましょうね」
僕に抱きついてこようとするアーサーをメアリーは止めた。どこかメアリーが番犬のように感じてしまう。
今もアーサーになぜ来たのかと威嚇している。
「そういえば、アーサー兄さんはなんでここにいるんですか?」
「そりゃーお前達を連れて帰るためだぞ?」
連れて帰るってまたあの王城に帰るってことだろうか。外に出るのは学園に通う時のみで、あとはレオンとマリアに閉じ込められる日々に戻るというのか。
刺激はないし、誰も相手をしてくれないところに帰るのは絶対に嫌だ。
「私はアドル兄様が帰らないならこのままここにいますよ」
「勝手なことを言ってないで、アドルがいないとどうなるのか――」
そもそも僕を追い出したのは父である王だ。あの国では彼の命令には絶対従わないといけない。
それなのに連れて帰るってわがままにも程がある。
僕の人生をなんだと思っているのだろうか。
「僕は絶対に帰りません。追い出しておいて帰って来いって勝手すぎます」
「いいからアドルは帰って――」
アーサーは僕の腕を掴み無理やり引っ張って連れて帰ろうとする。それを見たメアリーは必死に止めようとしていた。
「僕は誰も相手してくれない城には絶対に帰りません!」
その手を払って家に帰ることにした。今すぐにでもコボスケ達に会いたい。そんな気持ちになってしまった。
もう一人でずっと過ごすのは嫌だ。
♢
『おっ、アドルどうしたんだ?』
僕に気づいたのかヒツジが声をかけて来た。ドラゴニュートから聞いて肉畑の柵を作っていたのだろう。
何も話さない僕に違和感を感じたのか、ヒツジはどこか戸惑っている。
「僕はこのままみんなといたいよ」
ふかふかな体に抱きつく。コボスケと違い短毛な毛は肌触りが良い。
『おい、アドル本当にどうしたんだ?』
僕がヒツジに抱きつくことなんて滅多にない。それだけ今は彼らに甘えたくなってしまう。
『木を持って……ヒツジだけせこいぞ! 拙者もアドルと――』
資材を取りに行ってたコボスケも木を抱えて戻って来た。僕の異変に敏感なコボスケもさすがだ。
ただ、どっちが慰めるかでコボスケとヒツジが言い合いをしているのはどうかと思う。
『さぁ、拙者の胸に今すぐに飛び込むんだ!』
決着がついたのかコボスケは手を広げて待っている。
だが、すでに遅い。当の本人である僕はもう元気だ。
必死にジャンケンをしている姿を見て元気がでてきた。グーとパーしか出せないのに、どうやって決着をつけるのか見ていたらヒツジが譲ってくれたようだ。
ツンツンしていても仲間思いなのは変わらないな。
こういうところに僕は居心地の良さを感じているのだろう。
ずっと尻尾を振って待っているコボスケに僕は抱きついた。少し可哀想に見えてくるからな。
ただ、それがダメだった。
『アドル……また浮気したのか?』
「えっ?」
その言い方だと僕は浮気性の男みたいだ。今まで浮気もしたことないし、恋愛もした記憶がない。
『知らない人間の臭いがする。メアリーじゃないやつだ!』
少し腕を掴まれただけで臭いがついたのか。
しかも、メアリーではないとすぐに判断できるのは嗅覚が発達しているからだろう。
『じゃあ、さっきの知らない声はアドルを傷つけたやつか』
ひょっとしてヒツジもアーサーと話していた声が聞こえていたのかもしれない。
さすがフェンリルと白虎だ。
『拙者が殺そうか?』
『ワシが殺そうか?』
うん、こいつらは危ない気がする。メアリーと会ってから少し過激派になったようだ。
僕はとりあえずコボスケとヒツジを撫でて、何もないふりをした。
3
お気に入りに追加
1,632
あなたにおすすめの小説
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

三度の飯より犬好きな伯爵令嬢は田舎でもふもふスローライフがしたい
平山和人
恋愛
伯爵令嬢クロエ・フォン・コーネリアは、その優雅な所作と知性で社交界の憧れの的だった。しかし、彼女には誰にも言えない秘密があった――それは、筋金入りの犬好きであること。
格式あるコーネリア家では、動物を屋敷の中に入れることすら許されていなかった。特に、母である公爵夫人は「貴族たるもの、動物にうつつを抜かすなどもってのほか」と厳格な姿勢を貫いていた。しかし、クロエの心は犬への愛でいっぱいだった。
クロエはコーネリア家を出て、田舎で犬たちに囲まれて暮らすことを決意する。そのために必要なのはお金と人脈。クロエは持ち前の知性と行動力を駆使し、新しい生活への第一歩を踏み出したのだった!

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~
舞
ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。
異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。
夢は優しい国づくり。
『くに、つくりますか?』
『あめのぬぼこ、ぐるぐる』
『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』
いや、それはもう過ぎてますから。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる