無才能で孤独な王子は辺境の島で優雅なスローライフを送りたい〜愛され王子は愉快なもふもふと友達になる才能があったようです〜

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第六章 辺境の島に国を作る

57.王子、再びダンジョンへ

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「なんだダンジョンだったのかー! って言うとでも思っていたのかしら?」

 椅子に腰掛けて、腕を組んでいるメアリーに僕は怒られている。

 なんでこんなことになっているのかって?

 それは少し時間を遡る。

 僕達はダンジョンにいた彼にまた来ることを伝えて家に帰ることにした。

 今度来る時はエルダートレントの魔石をプレゼントとして持って来ることを約束する。

 特にお金を要求されることもなくて一安心だ。

 ん?

 これが彼の作戦なのかって?

 お爺ちゃんの遺影処分になるから別に気にしなくて良いだろう。

 その後も帰り道に住人募集をするが誰も声をかけるものはいなかった。

「ただいまー!」

 村に入ると僕達を待っていたのか、総出で出迎えてくれた。

「お兄様、おかえり――」

『メアリーちゃん! アドルきゅんから女の匂いがするわよ!』

「私もすぐに感じたわ!」

 メアリーとカマバックが帰ってきたばかりの僕を問い詰めて来る。

 ああ、これが貴族の男達が貴族夫人に問い詰められる"浮気の確認"ってやつだろう。僕の匂いをずっと嗅いでいる。

「やっぱりお兄様浮気しましたよね?」

『アドルきゅん最低よ?』

 浮気をしたつもりもないし、そもそもメアリーとカマバックと結婚したつもりもない。ただ、ここで誤解を解いておかないと僕の命が危ない気がする。

「いや、あいつは――」

『拙者より撫でていたからやっぱり浮気だったのか!』

 はい、コボスケのせいで死が確定しました。

 メアリーとカマバックの顔が見たことないぐらい怖いのだ。あまりにも威圧が強すぎて、森からバタバタと音が聞こえてくるほどだ。きっと大量に動物が逃げ出しているのだろう。

「お兄様、詳しく教えてくださいね!」

「ああ」

 僕は家の中に入ると、メアリーに説明することにした。

 そして、今現在に至るのだ。

「それでその女はどこにいるのかしら?」

「ダンジョンの中です」

 その言葉にメアリーは目を光らせていた。

「ふーん、ダンジョンね。カマちゃん今すぐに武器を持ってダンジョンに乗り込むわよ!」

 椅子から立ち上がったメアリーはカマバックと共にダンジョンに向かって行った。

 きっと女性をダンジョンの中に隠していると勘違いしているのだろう。

 むしろ人間がいたら、すぐにこの村に連れて来たいぐらいだ。

「ダンジョンの場所も伝えていないのに大丈夫なのかな?」

『はにゃ? それなら拙者が伝えぞ?』

 ああ、やらかすやつが身近にいたことを忘れていた。そもそも変な勘違いをしたのもコボスケのせいだ。

 このままでは彼はメアリー達に何をされるかわからない。

「ヒツジすぐに向かうぞ!」

『えっ?』

 僕はエルダートレントの魔石を持って、ヒツジとダンジョンに向かうことにした。お詫びに魔石を早く持っていけば、少しは許してもらえるだろう。

 メアリー達にボコボコにされていないか心配だ。

『アドル、拙者は?』

「お前は留守番だ!」

『アードールー!』

「おすわり! 僕が帰って来るまで動いたら嫌いになるからな」

 僕に嫌われるのが嫌なのか、コボスケはその場で伏せるように待っていた。
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