無才能で孤独な王子は辺境の島で優雅なスローライフを送りたい〜愛され王子は愉快なもふもふと友達になる才能があったようです〜

k-ing ★書籍発売中

文字の大きさ
上 下
54 / 72
第六章 辺境の島に国を作る

54.王子、ダンジョン探査をする

しおりを挟む
「えっ? 今ダンジョンって言ったか?」

『はにゃ? ダンジョンって知ってるか?』

『いや、ワシも知らない』

 どうやらコボスケ達はダンジョンを知らないらしい。

 ダンジョンは突然できた迷宮で、中には魔物がたくさん棲息している。

 ダンジョンには様々なトラップやボスと呼ばれる強敵な魔物が存在しており、倒すとアイテムをドロップする。

 倒した魔物は勝手にダンジョンに吸収され消えていくため、片付ける心配もない便利な場所でもある。

 アイテムを売って生活する人達もいるぐらい、別名"資材の宝庫"と言われている。

「ダンジョンに来たからには、生活に必要な資材を手に入れることができるってことか」

 僕達が生活に使っている鍋や武器なども、ダンジョンから手に入れる鉄などが使われている。

 壁には鉄が埋まっていたり、魔物からは兄のアーサーが作った魔道具のエネルギー源である魔石も簡単に手に入れることができる。

 ちなみにこの間倒したエルダートレントの魔石は家の中に飾ってある。

 せっかくだからお爺ちゃんの遺影として忘れないようにしている。

 本音は魔石の使い道なんて僕には知らないからね。

『ここは拙者の出番ですね』

『ワシも負けないぞ!』

 コボスケとヒツジは様々な資材が手に入ると教えたら、勢いよく探しに行った。

 ん?

 ちょっと待てよ。

 ダンジョンに僕は一人で残されたら生きていける気がしないぞ。

 僕は急いでコボスケ達を追いかける。戦う才能がない僕がダンジョンに残されたら命取りだ。

 フィンガーフリックも一日に数発しか使えない。

 そもそも一緒に行動すると思い、説明しながらだいぶ奥まで進んでしまったのだ。一人で帰ることもできない。

「おい、ちょっとお前ら待てよ!」

 僕はダンジョンを一人で移動することになった。

 ただ、あいつらってフェンリルと白虎だから二足走行でもめちゃくちゃ速いんだよな……。





「おーい、お前達どこに行ったんだー?」

 ダンジョンは思ったよりも魔物は出現せず、トラップも見当たらなかった。コボスケ達が今頃トラップに引っかかりながらも魔物を倒しているのだろう。

 そうじゃないと明らかに何も出てこないのがおかしい。

 ただ、今はそんなことよりも重要なことがある。

 それは――。

「ここはどこなんだよー!」

 僕は迷子になっていた。しっかりと目印をつけながら歩いていたはずが、その目印までどこにつけたのか忘れてしまった。

 基本的に地面や壁に書いていたはずなのに、どこにも見当たらないのだ。

 途方に暮れていたら、曲がり角を見つけた。

「本当にあいつらどこに行った……」

 そのまま角を曲がるとそこには突然扉が現れた。

「ボス部屋か」

 きっとこれがボス部屋と言われているところなんだろう。

 ダンジョンには様々な地形が存在しており、昔から有名なダンジョンは階層毎に環境が異なると言われている。

 その階層を移動するときに存在するのが、ボス部屋と言われる次の階層を守護する魔物だ。

 普通の魔物よりもドロップ品が高価で価値が高いため、たくさんのパーティーでチームを組んでボス討伐に当たると言われている。

 僕はその場で引き返そうとしたが、ダンジョンを知らないコボスケ達がボス部屋に入った可能性も捨てきれないでいた。

 角を曲がったところにあるからここに来る可能性も高い。

 最強種であるあいつらならあっさりボスを倒して、違う階層にいたら見つけられるはずがない。

 ボス部屋は基本的に無機質で何もない空間と言われている。そのため休憩するにも丁度良いだろう。

 何かに怯えなくて待てるなら、そこでコボスケ達を待てばいいだけだ。

 一度入ったらボスを倒すまで出れないと言われているボス部屋。

 少しだけ覗いて、まだボスがいたらすぐに閉じればいいだけだ。

 中に入らなければ良い。

 僕はゆっくりと扉を開けて中を覗く。

『えっ?』

「あっ?」

 僕はダンジョンの中にいるやつと目が合ってしまった。

『お風呂場を覗くなんて変態! スケベ! エッチ!』

 ボス部屋の中には体を洗っている女性がいた。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】

女の子なのに能力【怪力】を与えられて異世界に転生しました~開き直って騎士を目指していたらイケメンハーレムができていた件~

沙寺絃
ファンタジー
平凡な女子高生だった主人公は、神様から特殊能力【怪力】を与えられて、異世界の農村に転生する。 持前の怪力を活かしてドラゴン退治していたら、壊滅寸前だった騎士団の騎士に見出された。 「君ほどの力の持ち主を、一介の村娘や冒険者として終わらせるのは惜しい! ぜひイース王国に仕える騎士となるべきだ!」 騎士の推薦のおかげで、軍事都市アルスターの騎士学校に通うことになった。 入学試験当日には素性を隠した金髪王子と出会って気に入られ、騎士団長の息子からはプロポーズされてしまう。さらに王子の付き人は、やっぱりイケメンの銀髪&毒舌家執事。 ひたすら周りを魅了しながら、賑やかな学園生活を送るサクセス&青春ストーリー。 ※この小説はカクヨムでも掲載しています。

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari@七柚カリン
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

処理中です...