無才能で孤独な王子は辺境の島で優雅なスローライフを送りたい〜愛され王子は愉快なもふもふと友達になる才能があったようです〜

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第六章 辺境の島に国を作る

51.王子、畑を作る

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 今日は完成した畑に野菜を植える日にしている。各々の少しずつ採取してきた物をメアリーと見極めることにした。

『拙者、ブドゥを持ってきたぞ』

「お兄様、これって本当にブドゥですか?」

「ああ、僕も初めて見た時は驚いたね」

 コボスケはブドゥの木をそのまま持ってきていた。ブドゥと言えば、この島に来た時に初めて食べた果物だ。

 一般的なブドゥは一房に何個も付いているが、このブドゥは数個しか付いていない。大きさも想像以上に大きいためメアリーもブドゥだと思わなかったのだろう。

 一粒食べるとジューシーな果肉と溢れ出る果汁に虜になっていた。

 輸出ができればお金を稼ぐこともできると言っていた。その時が来たらぜひみんなに味わってもらいたいな。

『次はワシだな! メロロンを持ってきたぞ!』

 次はヒツジが持ってきたメロロンだ。メロロンは高級な果物と言われており、王都でも高値で売られている。

 そのメロロンはこの島では変わった形をしている。

『メロロンって私達乙女オネエのためにあるものよね』

「どういうことだ?」

『ほらほら形がおし――』

「ああ、ハートになっているな!」

 このままだとカマバックは変なことを言いそうだと思い止めた。流石に妹のメアリーに変なことは教えたくないからな。

 メロロンはハートの形をしている変わった食べ物だ。もちろん味はメロロンのままだが、一口食べると一瞬にして幸福感を味わうことができる。どこか麻薬に近い果物だ。

 ヒツジはメロロンが好きなのか、普段から食べている。

 食べた日には決まって僕に戯れてくるから、素直になれない時に食べているのだろう。

 これも婚約したばかりの令嬢達に売れそうな気がする。

『私はイモちゃん達を持ってきたわ。私イモ系が好きなのよ』

 カマバックは様々なイモを持ってきた。ジャンガイモにサッツンマイモ、タロンイモと代表的なものばかりだ。

 それにしてもカマバックがイモ好きなのは知らなかった。サドンの話だと虫を食べると思っていた。

『やっぱりイモ系男子は純粋無垢そうで――』

「はいはい、カマバックはイモが好きってことでいいね!」

 それ以上は言わせない。やはりカマバックは違う意味でイモ系が好みだったらしい。ちなみに僕はイモ系ではないが、中身で好いていると言っていた。

 別にそんなことを聞きたいわけではなかった。

『アドルきゅん嫉妬したの?』

 いや、そこは別にイモ系男子に負けても良いと思っています。別に嫉妬もしていないし、楽しい乙女オネエ生活を彼女にはして欲しいと思います。

『オイラは肉を持ってきたぞ?』

 次はアースドラゴンとドラゴニュートの番だ。葉に包んでいるのか、ゆっくりと葉をめくっていく。

「ヒイィィ!?」

 葉の中には大量に虫が入っていた。葉に包まれウニョウニョと動く虫を見て、メアリーはその場で倒れそうになっていた。

 僕も前は逃げ回っていたが、慣れって怖いものだな。そのうち僕も虫を食べる日が来るのだろうか。

「これは流石に育つ……いや、こいつらって大きくなったら何になるんだ?」

 僕はみんなに確認したが、どうやら虫の成長した姿は見たことないと言っていた。基本的に沼にいることが多いが、ドラゴニュートも成長した姿を見たことがないらしい。

 このウニョウニョとした姿が成虫なのか、それとも幼虫なのか確認しても良いのかもしれない。

「じゃあ、新しい畑を作って様子を見てみるか」

「お兄様、本当に育てるつもりですか?」

「ああ、そうだけど?」

 僕の言葉にメアリーは驚いていた。

 ウニョウニョを預かるとそのまま土の中に埋めていく。意外に虫が好物なやつも多いため、これで数が増えたら虫に困ることはない。

「やっぱりお兄様すごいわ」

 しばらく会っていない間に、僕は別人のようになったと言っていた。

 ここで生活していたら、メアリーもいつのまにか変わるだろう。

 どんなことが起きても動じない心が養われると思っている。そんな成長をここにいる間にして欲しいな。

『キュ!』

 そんなことを考えていると、僕の腕に虫が這いずってきた。しかも、一匹だけではなく数匹も乗ってきた。

 カサカサと動く足に鳥肌が止まらない。

「ぬあああああ!!」

 やはり僕は虫が苦手なようだ。

 その後も畑に様々な野菜を植えていく。これからどんな畑になるのか楽しみにしておこう。
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