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第五章 スローライフに刺激を
44.王子、生きる
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「お兄様ごめんなさい」
さっきからメアリーに話しかけても返ってくる言葉は謝罪のみだ。自分のやったことを理解しているからこそ、謝っても謝りきれないのだろう。
『そんなに謝らなくてもいいぞ? 拙者毛刈りのシーズンだったし』
隣にいるコボスケは特に気にしてはいないようだ。
それにしてもフェンリルって毛刈りをする時期があったのか。
確かに短毛じゃない限り、毛を刈らないと邪魔になるのだろう。
『私も別に気にしていないわよ? そもそも私はアドルきゅんがいればいいのよ!』
カマバックは僕を抱きついて離さない。これが捕食される気持ちなんだろうか。
『ぬぁ!? 拙者のアドルに何するんだ! 手を離すんだ!』
必死にカマバックから解放しようとするが、毛がないコボスケはどこか触り心地も悪い。
さっきも逃げている時に掴むところがなかったため、皮膚をおもいっきり掴んだら叫んでいた。
コボスケに毛は必要なんだろう。
「はぁー、ヒツジも悪かったな」
そんな中ずっと機嫌が悪かったのはヒツジだった。家から家財までのほとんどがヒツジの手作りだ。
『アドルは悪くない』
「でも、メアリーは僕の妹でもあるし――」
『そんなことは知ってる! いや、知っているんだ。知ってるけど……すまん。一人にしてくれ』
大事なものが一瞬にして消えた悲しみをどうすればいいのかわからないのだろう。
そう言ってヒツジはどこかへ立ち去ってしまった。
いつもは落ち込んでいても、どこか元気なヒツジはいない。
「私が謝って――」
「大丈夫だ。メアリーはまず体を休ませろ。魔力も少ないし、あまり寝れてないんだろ?」
メアリーは会った時から目の隈ができていた。昔から不安なことがあると、僕の寝室に入ってきて隣で少し寝ていたのは知っている。
今までずっと一人で寝付けなかったのだろう。
魔法神の申し子と言われていても、僕の可愛い妹には変わりない。
「カマバックは糸で寝るところを準備できないか?」
木と木の間に編み込んだ糸を張ることでベッドの代わりになるだろう。まずは混乱しているメアリーを休ませた方が先だ。
『もう! 妹思いのアドルきゅんも好きだけど、自分を大事にしないといけないよ?』
「ははは、心配してくれてありがとう」
辛い時こそ笑った方が良いのだろう。みんな辛いのは変わりないからな。
『きゅん♡』
カマバックは糸を使って寝床を作り出した。
ももやささみも走り疲れたのかその場で寝ている。そんな子ども達を焼き鳥は抱えて休んでいた。
流石に走るのが苦手なフェニックスには辛かっただろう。
リザードマンやアースドラゴンには、カマバックが寝床を作り終えるまで周囲を警戒してもらうことにした。
コカスケはいつも通りに空中歩行の練習で、遠くから何か近づいてこないか見張りをお願いした。
そういえば、逃げる時に気づいたが、コカスケは少しずつ空中歩行ができるようになっていた。いつかは本当に飛べる日が来るだろう。
「コボスケは一緒に行くぞ」
『はにゃ? 拙者はアドルとどこに行くんだ?』
「お前何言ってるんだ? ヒツジは僕達の一番の親友だろ?」
コボスケはヒツジのことを親友だと思っていないのだろうか。いや、あいつのことだから気づいていないのだろう。
いくら張り合う仲間でも親友になることを――。
「とりあえずお前は付いてこいよ!」
『拙者、アドルとデートしてきます!』
『いやーん♡ 私も連れてってー』
カマバックは何か言っていたが、コボスケとともにヒツジを探しに行くことにした。
あいつはツンツンしていても心配してもらいたいやつだからな。
さっきからメアリーに話しかけても返ってくる言葉は謝罪のみだ。自分のやったことを理解しているからこそ、謝っても謝りきれないのだろう。
『そんなに謝らなくてもいいぞ? 拙者毛刈りのシーズンだったし』
隣にいるコボスケは特に気にしてはいないようだ。
それにしてもフェンリルって毛刈りをする時期があったのか。
確かに短毛じゃない限り、毛を刈らないと邪魔になるのだろう。
『私も別に気にしていないわよ? そもそも私はアドルきゅんがいればいいのよ!』
カマバックは僕を抱きついて離さない。これが捕食される気持ちなんだろうか。
『ぬぁ!? 拙者のアドルに何するんだ! 手を離すんだ!』
必死にカマバックから解放しようとするが、毛がないコボスケはどこか触り心地も悪い。
さっきも逃げている時に掴むところがなかったため、皮膚をおもいっきり掴んだら叫んでいた。
コボスケに毛は必要なんだろう。
「はぁー、ヒツジも悪かったな」
そんな中ずっと機嫌が悪かったのはヒツジだった。家から家財までのほとんどがヒツジの手作りだ。
『アドルは悪くない』
「でも、メアリーは僕の妹でもあるし――」
『そんなことは知ってる! いや、知っているんだ。知ってるけど……すまん。一人にしてくれ』
大事なものが一瞬にして消えた悲しみをどうすればいいのかわからないのだろう。
そう言ってヒツジはどこかへ立ち去ってしまった。
いつもは落ち込んでいても、どこか元気なヒツジはいない。
「私が謝って――」
「大丈夫だ。メアリーはまず体を休ませろ。魔力も少ないし、あまり寝れてないんだろ?」
メアリーは会った時から目の隈ができていた。昔から不安なことがあると、僕の寝室に入ってきて隣で少し寝ていたのは知っている。
今までずっと一人で寝付けなかったのだろう。
魔法神の申し子と言われていても、僕の可愛い妹には変わりない。
「カマバックは糸で寝るところを準備できないか?」
木と木の間に編み込んだ糸を張ることでベッドの代わりになるだろう。まずは混乱しているメアリーを休ませた方が先だ。
『もう! 妹思いのアドルきゅんも好きだけど、自分を大事にしないといけないよ?』
「ははは、心配してくれてありがとう」
辛い時こそ笑った方が良いのだろう。みんな辛いのは変わりないからな。
『きゅん♡』
カマバックは糸を使って寝床を作り出した。
ももやささみも走り疲れたのかその場で寝ている。そんな子ども達を焼き鳥は抱えて休んでいた。
流石に走るのが苦手なフェニックスには辛かっただろう。
リザードマンやアースドラゴンには、カマバックが寝床を作り終えるまで周囲を警戒してもらうことにした。
コカスケはいつも通りに空中歩行の練習で、遠くから何か近づいてこないか見張りをお願いした。
そういえば、逃げる時に気づいたが、コカスケは少しずつ空中歩行ができるようになっていた。いつかは本当に飛べる日が来るだろう。
「コボスケは一緒に行くぞ」
『はにゃ? 拙者はアドルとどこに行くんだ?』
「お前何言ってるんだ? ヒツジは僕達の一番の親友だろ?」
コボスケはヒツジのことを親友だと思っていないのだろうか。いや、あいつのことだから気づいていないのだろう。
いくら張り合う仲間でも親友になることを――。
「とりあえずお前は付いてこいよ!」
『拙者、アドルとデートしてきます!』
『いやーん♡ 私も連れてってー』
カマバックは何か言っていたが、コボスケとともにヒツジを探しに行くことにした。
あいつはツンツンしていても心配してもらいたいやつだからな。
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