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第五章 スローライフに刺激を
43.王子、別れを告げる
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メアリーは泣きながら助けを求めていた。どうやら魔法が制御出来なくなったのだろう。
宙に無数に舞う黒い球。それに触れた物は全て吸い込まれていく。
『あれは拙者がやるぞ!』
『それならワシはあそことそこだな』
コボスケとヒツジは相変わらず張り合っていた。僕は必死に考えるが、あんな闇属性魔法は見たこともない。
きっとメアリーが自分で作った魔法なのかもしれない。止める方法を知っているのは彼女だけだ。
「おい、メアリーどうやって止めるんだよ!」
「私もわからないの――」
魔法神の申し子でも制御の仕方がわからない魔法を僕にどうにかできるはずもない。
「カマバックあれはどうにかなるか?」
『いやーん♡ 今アドルきゅんは私にだけ頼んできたのよ。あなた達聞いたかしら?』
ブラックダストを簡単に封じたあの糸ならどうにかできるかもしれない。
カマバックは対処法を考えながら糸を操る。
『んー、せっかくのお願いだけど、今回のは糸も吸い込まれちゃうから私でも無理ね』
どうやらカマバックでも何もできないらしい。
コボスケにも聞こうとしていたが、いつもならわかりやすいのにどこにいるか探せない。
『ぬぁー、拙者ハゲになってしまう!』
声のする方に目を向けると、謎の生物がいた。
コボスケは魔法に触れたのだろう。毛がそのまま魔法に吸い込まれていく。
何というのか……。
毛がないフェンリルってすでにコボルトでもない。ただの二足歩行する変な生物にしか見えない。
フェンリルにどうすることもできないなら、僕達は逃げるしか選択肢はない。
「おい、お前ら逃げるぞ!」
僕の声に反応して一斉に逃げ出す。ヒツジは触れる前に気づいたのか、どうにか逃げることができたようだ。
ハゲのフェンリルと白虎って、色んな意味で怖いだろう。ハゲはコボスケだけでお腹いっぱいだ。
「メアリー行くぞ!」
「動けないよ……」
そんな中、メアリーは足の力が抜けて立てなくなっていた。魔法で魔力を使いすぎたのも影響しているのだろう。
「えっ……」
「妹を残して逃げれないだろう」
メアリーを抱え込むと急いで森の奥へ逃げる。
「おい、ヒツジ行くぞ!」
『ワシの建てた家が……』
思い出のある家がバキバキと音を立てながら壊れていく。
あれはヒツジと出会うきっかけになった家だ。あそこで毎日楽しく寝たのを今も最近のようだ。
いつもはツンツンとしているヒツジも静かにじっと家が壊れていくのを眺めている。
作ったばかりの家具やベッド、布団が黒い球に吸い込まれていく。
『いつでも布団は作ってあげるよ。それよりもまずは命を大事にしないとね!』
カマバックの言っていることが正しい。まずはここから逃げるのが一番だ。
「ヒツジ行くぞ!」
『ああ』
魔法はある程度吸い込むと、そのまま何もなかったかのように消えていく。
どんどん広がって、次々と畑の野菜、リザードマンの家も無くなった。
みんなの悲しい顔を見て、僕はどうしようもない気持ちになってしまう。
たくさんの思い出が詰まった家。それを壊したのは僕の妹だ。みんなの思い出を壊した責任は僕にもある。
それでも命があるだけまだマシなんだろう。
『アドル早く逃げるんだ! バカネコも行くぞ!』
コボスケに抱えられるとさらに森の奥に進む。どんどんと森まで魔法が近づいてくるのだ。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
僕の腕の中にいるメアリーもその様子を見て涙を流して反省している。自分がやったことの重大性をやっと理解しているのだろう。
僕達はその後も森の奥深くまで逃げることにした。
さようなら。
今までありがとう!
宙に無数に舞う黒い球。それに触れた物は全て吸い込まれていく。
『あれは拙者がやるぞ!』
『それならワシはあそことそこだな』
コボスケとヒツジは相変わらず張り合っていた。僕は必死に考えるが、あんな闇属性魔法は見たこともない。
きっとメアリーが自分で作った魔法なのかもしれない。止める方法を知っているのは彼女だけだ。
「おい、メアリーどうやって止めるんだよ!」
「私もわからないの――」
魔法神の申し子でも制御の仕方がわからない魔法を僕にどうにかできるはずもない。
「カマバックあれはどうにかなるか?」
『いやーん♡ 今アドルきゅんは私にだけ頼んできたのよ。あなた達聞いたかしら?』
ブラックダストを簡単に封じたあの糸ならどうにかできるかもしれない。
カマバックは対処法を考えながら糸を操る。
『んー、せっかくのお願いだけど、今回のは糸も吸い込まれちゃうから私でも無理ね』
どうやらカマバックでも何もできないらしい。
コボスケにも聞こうとしていたが、いつもならわかりやすいのにどこにいるか探せない。
『ぬぁー、拙者ハゲになってしまう!』
声のする方に目を向けると、謎の生物がいた。
コボスケは魔法に触れたのだろう。毛がそのまま魔法に吸い込まれていく。
何というのか……。
毛がないフェンリルってすでにコボルトでもない。ただの二足歩行する変な生物にしか見えない。
フェンリルにどうすることもできないなら、僕達は逃げるしか選択肢はない。
「おい、お前ら逃げるぞ!」
僕の声に反応して一斉に逃げ出す。ヒツジは触れる前に気づいたのか、どうにか逃げることができたようだ。
ハゲのフェンリルと白虎って、色んな意味で怖いだろう。ハゲはコボスケだけでお腹いっぱいだ。
「メアリー行くぞ!」
「動けないよ……」
そんな中、メアリーは足の力が抜けて立てなくなっていた。魔法で魔力を使いすぎたのも影響しているのだろう。
「えっ……」
「妹を残して逃げれないだろう」
メアリーを抱え込むと急いで森の奥へ逃げる。
「おい、ヒツジ行くぞ!」
『ワシの建てた家が……』
思い出のある家がバキバキと音を立てながら壊れていく。
あれはヒツジと出会うきっかけになった家だ。あそこで毎日楽しく寝たのを今も最近のようだ。
いつもはツンツンとしているヒツジも静かにじっと家が壊れていくのを眺めている。
作ったばかりの家具やベッド、布団が黒い球に吸い込まれていく。
『いつでも布団は作ってあげるよ。それよりもまずは命を大事にしないとね!』
カマバックの言っていることが正しい。まずはここから逃げるのが一番だ。
「ヒツジ行くぞ!」
『ああ』
魔法はある程度吸い込むと、そのまま何もなかったかのように消えていく。
どんどん広がって、次々と畑の野菜、リザードマンの家も無くなった。
みんなの悲しい顔を見て、僕はどうしようもない気持ちになってしまう。
たくさんの思い出が詰まった家。それを壊したのは僕の妹だ。みんなの思い出を壊した責任は僕にもある。
それでも命があるだけまだマシなんだろう。
『アドル早く逃げるんだ! バカネコも行くぞ!』
コボスケに抱えられるとさらに森の奥に進む。どんどんと森まで魔法が近づいてくるのだ。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
僕の腕の中にいるメアリーもその様子を見て涙を流して反省している。自分がやったことの重大性をやっと理解しているのだろう。
僕達はその後も森の奥深くまで逃げることにした。
さようなら。
今までありがとう!
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