無才能で孤独な王子は辺境の島で優雅なスローライフを送りたい〜愛され王子は愉快なもふもふと友達になる才能があったようです〜

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第五章 スローライフに刺激を

41.王子、しっかりお風呂に入ろうと決意する

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 僕はとりあえずカマバックを仲間達に紹介することにした。

『アドルきゅん遅い! みんなからの視線が熱いのよ。私の魅力に――』

『それはないから安心しろ。ワシはアドルだけだ』
『拙者も同じくアドル……バカネコいつのまにアドルのこと好きになったんだ!?』

『アドルきゅんは私のよ?』

『はぁん?』
『なんだと?』

 コボスケとヒツジはカマバックと言い合いをしているようだ。

 やはりみんな存在自体は知っているようだが、あまり関わりはなかったらしい。

 焼き鳥達やコカスケはオドオドと困惑しているぐらいだ。

『オイラ食べられるのかな……』

『吾輩は本体がこっちなので美味しくない……はず!』

 いや、あれはサドンが言っていた捕食される者達の困惑なんだろう。

 ちなみにカマバックに何を食べるか聞いたら、野菜や果物を中心の食生活だから安心して欲しい。

 乙女オネエは内面から綺麗になるために、肉は食べていないらしい。

 どうやらそういうやつらをビーガン系乙女オネエと呼ぶことを教えてくれた。

 カマバックは僕の知らないことをたくさん知っているようだ。

「あっ、みんな集まってくれ!」

『アドルきゅーん!』
『アドル!』
『ふん!』

 カマバック、コボスケ、ヒツジと僕を周囲で囲っている。側から見たら、僕は今から食べられる人に見えるだろう。

 本当にこいつらは変わったやつだ。

「さっきの倒れていたやつだが、僕の妹なんだ」

『アドルきゅんの妹だから……義妹なのね!?』

 カマバックは何か良からぬことを考えているようだ。

『なぜアドルの妹がいるんだ?』

「実は家族から旅に出ろと言われて僕は追放されたんだが、妹もそんな感じなのかな?」

 僕はこいつらに王族を追放されたことを話すつもりはなかった。だって、そんな話をして喜ぶ者はいないはず。

 だが、メアリーがここにいたら自然とバレてしまうだろう。それなら僕の口から大事なこいつらに話をしたかったのだ。

 妹がここに来た理由は後で本人に確認することにした。

『拙者、感動です』
『ふん。ワシがずっといてやるよ』
『きゅん♡ 弱ったアドルきゅんも最高よ』

 各々の考えていることはあるだろう。ただ、僕の話を真摯に受け止めてくれた。

 前よりもどこか距離感が近くなった気がする。

「お前らちょっと近いぞ」

 いや、物理的に距離が近くて押し潰されそうだ。

 それだけこいつらは自分から離れるつもりはないのだろう。

 言葉だけではなく態度でも示してくれるからわかりやすいし、居心地が良い。


――バタン!


「お兄様!?」

 音がしたと思ったらどうやらメアリーが起きたようだ。ただ、みんなに押しつぶされて話す余裕もない。

 とりあえずどこにいるかわかりやすいように、手を上げて振る。

「あの布団から香る匂いはやっぱりお兄様だったのね! 本当にここにいたわ!」

 あれ?

 メアリーってあんなにおかしなやつだったのか?

「はあはあ。私が今すぐ大好きなお兄様を助け出してあげるからね!」

 ん?

 妹は何か勘違いをしているのだろうか。

 僕はただ仲間に押しつぶされているだけだ。

 それよりも匂いで兄だとわかるものなのか?

 ひょっとしたらメアリーって匂いに敏感な子だったのかもしれない。

 そんなことも気づけない兄で辛かったよな。

「はぁ……僕臭かったのか」

 今日からもっと体を入念に擦って洗うことにしよう。
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