無才能で孤独な王子は辺境の島で優雅なスローライフを送りたい〜愛され王子は愉快なもふもふと友達になる才能があったようです〜

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第三章 衣食住、たらふくご飯を食べます

29.王様、死を覚悟する ※王様視点

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 ワシはいつから子育てを間違えたのだろうか。いや、きっと初めから間違えていたのだろう。

「おい、糞野郎まだアドルの居場所がわからないのか?」

 次期王子であるレオンは大人になって反抗期を迎えたようだ。幸い貴族をしっかりはまとめてくれてはいるが、ワシに対しての言葉使いはすでに人間以下の接し方だ。

「いや、何かに阻害されて――」

「本当に使えないわね。自分のことしか話さない令嬢達の方がまだ良い報告ができるわ」

 長女のマリアはまだ良い方だが、完全にワシを見る目は汚い者扱いだ。

 よく貴族の令嬢達が言う"お父様は臭いから一緒のところで下着を洗わないで"って言ってる目に近い。

 どうか王であり、父でもある私にそんな目を向けないでくれ。

「それで父さんはどういう魔法を使ったんですか?」

 次男のアーサーはそんな私に優しく話しかけてくれる。ここでの唯一の味方だ。

「探知魔法で――」

「はぁん? お前は馬鹿か? この間探知魔法でダメだったのを覚えていないのか? お前の頭は虫以下だな」

 いや、こいつも魔法に関することには王とか関係ない。本当に飴と鞭が上手に使い分けられる子に育ったよ。

 一方、一番なのは次女のメアリーだ。兄のことを影からずっと見ていたメアリーはアドル好きが止まらない。

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

 ワシの顔を見るたびに呪いの呪文を放ってくる。一番危険なのは次女のメアリーだろう。

 これでも魔法神の申し子と呼ばれている。彼女自身がアドルを探した方が早い気もするが、ワシが声をかけると魔法を放ってくるのだ。

 ああ、アドルよ。

 どこに行ったんだ。早く帰ってきてくれないだろうか。

 だから、ワシは一番の味方である宰相に相談した。彼なら信用できると思ったのだ。

「きっと宰相が見つけて――」

「宰相ですって?」

 マリアがワシの服を掴み、今すぐにでもビンタをしてきそうな勢いだ。少し息が荒くなりそうだが、ここは我慢しないといけない。

 父がドMなのがバレてしまう。むしろそのおかげで亡くなった妻と結婚できたぐらいだ。

「糞野郎がここまで馬鹿だとは思わなかったぞ」

「宰相って確かストッカー公爵家出身ですよね?」

「ああ」

「しかも、アドルファンクラブに一番資金提供している人よ」

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」

 宰相がそんなファンクラブの一員だとは知らなかったぞ。確かによくアドルは元気か聞いてきたり、プレゼントをもらうことが多かったが、そんなに好きだとは思ってもいなかった。

 一度確認したが好きではないと言っていた。

 "尊い"・"推し"と訳のわからないことを言っていたが、それがこれと関係しているのだろうか。

 それとメアリーは完全に壊れたようだ。父に呪いの言葉を発していた。

「まずは宰相を止めないといけないってことになりますね」

「ファンクラブって魔法省所属が多かったよな?」

「ええ、魔法省と騎士団それに学園に勤めている先生や学園長も参加しているわね」

「はぁ、これは終わったな」

「終わりましたね」

「おい、糞野郎どうやって責任を取るんだ?」

 どうやらワシの王様人生……いや、人生そのものが幕を閉じようとしているようだ。

「そこは私が呪い殺すから安心して」

 いやいや、メアリーが一番怖いんだ……。


───────────────────
【あとがき】

 ここで衣食住の"食"が完結しました!
 結局、虫が一番美味しいという展開笑
 アドル達は仲間が増えて毎日楽しい生活になりそうですね。

 一方、追放した側の王様は可哀想です。
 子どもに責められ、貴族達に責められ……。
 でも、この人の性癖忘れちゃダメですよ笑

 ちなみにメアリーの呪いの言葉を数えて見てください笑
 ちゃんと仕掛けを用意しました!

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 次は衣食住の衣に着目していきます!
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