無才能で孤独な王子は辺境の島で優雅なスローライフを送りたい〜愛され王子は愉快なもふもふと友達になる才能があったようです〜

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第三章 衣食住、たらふくご飯を食べます

23.王子、ちゃんと頑張りを見ています

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 家に帰ってからささみと一緒に昼寝をして過ごすことにした。あいつらは一向に帰ってくる様子はない。

 いつまで肉と野菜を探しているのだろう。

 そんな中、玄関の扉を急いで開ける音が聞こえてきた。

『アドルは帰ってきたか?』
『あいつはいるか?』

 全身泥だらけで体がボロボロになったコボスケとヒツジが玄関にいた。

 僕がささみと寝ているのに気づいたのか、そのまま飛びつくように家の中に入ろうとしてきた。

「お座り!」

 僕の言葉にすぐに反応して、その場に座っている。きっと怒られると思っているのだろう。

 あの様子だと自分達が勝手に行動して、僕をずっと探していたのだろう。

 ウルウルとした目で見られたら僕も怒る気はなくなってしまう。

 ただ、僕が森の中で放置されたのも事実だ。単純に僕自身がこの森で生きていける力があれば問題ないんだけどね。

「なんで泥だらけなんだ?」

『これはアドルを探していて――』
『お主が勝手にいなくなるから――』

「一緒に話さない!」

 コボスケとヒツジはビクッとしていた。やはり怒られると思っているのだろう。

『拙者達が勝手に争っていたらアドルを忘れていました』

「おう、そうだな」

『気づいたときには拙者の後ろにも、バカネコのところにもいなくて――』

『ワシもバカイヌとアドルが一緒にいると思っていたぞ!』

「要するにどっちも僕のことを忘れていたってことだな」

『ごめんなさい』
『すまん』

 ぺたっと下がる耳に、地面には尻尾がだらんと垂れている。どうやら本当に反省しているのだろう。

「コボスケとヒツジが僕のために肉と野菜を持って来ようとしてくれたのは理解している」

『本当か!?』

 ああ、すぐにフォローすると尻尾がピクピクとしだしたぞ。

「ああ、ただ森の中に置いていくのはどうかと思うぞ? 必死に逃げ回って助けてくれたのはささみだったからな」

『それはすまない』

 また尻尾はぺたんと地面についた。ただ、後ろにある物を見たらこいつらが頑張ったのは目に見てわかる。

 コボスケとヒツジの後ろには動物と野菜が山積みになっていた。

 そっと頭の上に手を置いた。怒られると思って少しビクッとしている。

「でも、僕のために頑張ったんだよな? ありがとう」

 優しく撫でるとキラキラとした目で僕を見ていた。耳と尻尾はピーンと立ち上がり感情を押し殺せないのだろう。

 ヒツジもそっぽ向いているが、喉がゴロゴロと言っている。

 頑張ったやつにはちゃんと撫でてあげないとな。

『アドル……アードール――』

「お座り!」

 飛びついて来ようとしたコボスケをその場で座らせる。なぜ止められたのかわからないのか、困惑している。

「お前達その体で家の中に入る気か?」

 自分達が汚れているのに気づかなかったのだろう。今頃ハッとしている。

 それだけ心配して探してくれたのだろう。ただ、汚いやつを家の中に入れるわけにはいかない。

「今すぐに洗ってこいよ」

『イエッサアアァァァ!』
『ハイッサアアァァァ!』

 声を揃えてコボスケとヒツジはどこかへ走っていく。その後ろ姿はウキウキしている子どものようだった。
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