無才能で孤独な王子は辺境の島で優雅なスローライフを送りたい〜愛され王子は愉快なもふもふと友達になる才能があったようです〜

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第三章 衣食住、たらふくご飯を食べます

21.王子、置いてきぼりにされました ※一部コボスケ視点

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『こっちに肉はいるはずだけどな……』

『気を引くための嘘か』

『違う! アドルは拙者を信じてくれるよね? ね?』

 コボスケは僕の顔を覗き込む。あれから肉を先に探すことになった。

 そこで心当たりがあるコボスケについていくが、一向に動物が出てくる気配がしない。

 むしろ僕達を見て逃げ出していくぐらいだ。それに気づいていないのか、お互いに歪みあっているから余計に驚いて逃げていくのだろう。

 そして野菜も同じだ。ヒツジが自由気ままなのか、野菜の場所を忘れて結局見つからないのだ。

『拙者、先に肉を持ってきます!』

『いや、ワシが野菜を持ってくる方が先だ!』

 そう言っていつのまにか僕は森の中で一人放置されてしまった。

 あいつら帰ってきたら、一回ずつフィンガーフリックで躾決定だな。流石に森の中で一人放置されると恐怖しかない。

 ほら、今もそこで音を立てながら何かが近づいてくる。

「グオォォー!」

 僕は全力で家に戻ることにした。それにしてもここに出てくる動物は全て大きいようだ。




 拙者は雄叫びを発しながら肉を探す。肉と言っても動物であれば問題ない。アドルは魚や虫を食べる気がなかったため、魔物は食べたくないのだろう。

 今回は拙者を嘲笑うようなささみのために肉を探してくることになったが、アドルの頼みなら仕方ない。

 拙者のアドルを独り占めするささみは嫌いだ。いつも拙者の顔を見てニヤリと笑うのだ。

 アドルがいなかったら今頃一口で丸呑みしていたところだ。
 
『ヌー! 肉はどこにいるんだあー!』

 それにしても肉は全く出てこない。

 むしろさっきから動物達の姿を全く目にしない。イライラしてだんだん気が立ってしまう。

 こんな状況だとバカネコに負けてしまう。あいつも最近アドルのことが気に入ったのか、家に居着くことになった。

 アドルが許可を出したら、拙者は受け入れるしかない。しかも、ヒツジという名前までもらっていたのだ。

 拙者にもコボスケという名前がある。どうせならアドルに名前をつけて欲しかった。

『そういえば拙者の名前は誰がつけたんだ?』

 いつの間にか自分のことをコボスケと言っていた。小さい頃の記憶は、はるか昔に消えている。

 拙者はどれだけ生きていたのだろうか。

 この島にいるやつは変わり者が多い。

 でも、みんな拙者より後に生まれた存在だ。

『おい、バカイヌ肉は見つかったか?』

 拙者のことをバカイヌと呼ぶバカネコも、拙者より後にこの島にいたやつだ。

『そっちはどうなんだ?』

『うっ……』

 どうやらあっちも野菜を見つけてないらしい。このままではアドルに怒られてしまう。

 アドルは怒ると怖いからな。

 あの時の姿を思い出すと、今でも体が震えてしまうほどだ。

『アドルは見つかった――』

 拙者が振り返るとアドルはいなかった。バカネコも思い出したのか必死にアドルを探す。

『ひょっとして……』
『置いてきた……ニャ?』

 バカネコも後ろに付いてきているか、拙者と一緒にいると思ったらしい。

 いや、これはかなり大変なことになったぞ。

 この大きな森でアドルを一人にしたら大きい奴らに押しつぶされてしまう。

『おい、どっちがアドルを先に見つけられるか勝負だ!』

『ワシがバカイヌに負けるわけない』

 今度はアドルを探すために拙者達は森を駆け回る。
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