上 下
19 / 72
第二章 衣食住、住居を探します

19.王子、ツンデレをなづける

しおりを挟む
 僕はささみと共に家の中に入っていく。城とは異なり一階建てだが、とにかく広くなっている。

 中には家具など何一つ置いていないため、ただの広い空間だ。

 ささみも部屋の中を駆け走ることもできる。

 まずは雨風を凌げるのであれば特に問題はないだろう。

「それでお前はいつまでいるんだ?」

『付いていくのはワシの勝手だろ!』

 僕達の後ろをこっそりと白虎は付いてきている。その後ろはまるで盗みに入る泥棒のようだ。

 ただ、尻尾はまっすぐ伸びてどこにいるかわかりやすい。

 そういえば、コボスケに慣れていたけど、白虎も二足歩行で歩いていたな。

 魚やフェニックスも二足歩行なのは、何か理由があるのだろうか。

「コボスケを待ってるんか?」

『そそそ、そうだ!』

 コボスケを待っているのなら仕方ない。あいつは今何をしに行ってるのだろうか。

 気にしないように家の中の扉を開けていく。部屋は五部屋あり、食堂・風呂場、あとは僕達の各々の部屋が用意してあった。

『ここでワシは生活するのか』

 僕の聞き間違いだろうか。白虎は目を輝かせて部屋の中を見ている。

「ここにキッチンを置いたら料理もできるね! あとはお風呂とベッドが欲しいね」

『ここでワシがご飯を作るのか』

 やはり聞き間違いか?

 さっきから後ろにいる白虎が一緒に住むようなことを言っているぞ。

「ここが玄関なら靴置き場が必要だな」

『それはワシが作って――』

「おいおい、お前も一緒に住むつもりか?」

 白虎の顔を見るとどこか遠くを見ている。ただ、尻尾をピーンと伸ばしているのは何か理由があるのだろうか。

 それにさっきより尻尾の先が揺れている気がする。


――ガチャ!


『アドル帰ってきたぞ!』

 ちょうど玄関の扉が開くとコボスケが立っていた。いや、こいつはコボスケで本当に合っているのだろうか。

『どうだ! この毛並み! アドルはもふもふして仕方ないだろう!』

 毛並みがサラサラ過ぎて、風になびいている。姉のマリアよりもサラサラしているだろう。

 さすがにそこまでサラサラだと気になってしまう。

 実際に触れてみると、途中で引っかかることもなく最後まで指が通る。

「どうやったらこうなるんだ?」

『まずは魚が住む泥で泥パックをして、泥を落としたら葉で毛を包みこんで――』

 リザードマンがいる沼の泥のことを言っているのだろう。

 一息で捲し立てるように話すコボスケは貴族のお茶会で話す令嬢のようだ。

『それよりもなぜバカネコがいるんだ?』

『ワシはバカネコではない! ケットシーだ!』

 いやいや、ケットシーなら長靴と帽子がセットのはずだ。

 明らかに聖獣の白虎にしか見えないぞ!

 そもそもケットシーも珍しいが、白虎の方が伝説の生き物だ。

「それでケットシーはなぜここいるんだ?」

『ワシが作ったならここに住んでも良いではないか!』

 どうやら白虎は自分が作った家を気に入っているらしい。確かに僕よりも手先が器用で、途中からはほぼケットシーのみで作っていた。

『ワシがいたらキッチンを作るぞ?』

 おお、それは良い提案だ。ただ水と火はどうするつもりなんだろう。

『ワシがいたら風呂を作るぞ?』

 風呂があっても、僕の魔法では水を出すのが限界だ。あとはささみが火を吐かない限りお湯にはならない。

『ワシがいたらベッドを作ってあげるぞ?』

 おお、それは良い提案だ。あとはささみの羽が抜け変われば、寝具もどうにかなるはずだ。

『アドルそんなやつの――』

『ワシがいたら魔法で――』

「よし、採用だ! 君は今日から執事だ!」

 きっと白虎に家事を教えるとできそうな気がする。しかも、執事と伝えたら本人は嬉しそうだ。

『そうか。ワシの名前はツジか!』

 どこか名前を間違えている気もするが、本人が喜んでいるのなら良いだろう。きっと尻尾を立てて、少し振っているのは喜んでいる証拠だ。

「あっ、汚いやつは家には入れないぞ?」

 自分の体を見て汚れていることに気づく。さっきまで客人だったから何も言わなかったが、汚いやつを家に入れるつもりもない。

『ウッ……バカイヌ行くぞ!』

『拙者はアドルとおおおお!』

 白虎はコボスケを連れてどこかへ走っていく。きっと毛並みを整えに行ったのだろう。

 新しく白虎のヒツジが仲間になった。

───────────────────
【あとがき】

 やっと家が建ちましたー!

 ほとんど白虎のヒツジのおかげです!

 そろそろ気づいたと思いますが、今回は主人公以外が頭が逝っている無自覚系です笑

 一番逝ってるのって手足が生えた魚のような気もしますが……。

 初のスローライフばかりの作品で何を書けばいいのか分からず、多少強引になっている部分は許してください(T ^ T)

 ぜひぜひ応援コメント、お気に入り登録お待ちしています(*´꒳`*)

 次は衣食住の食に着目していきます!
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

異世界で神様に農園を任されました! 野菜に果物を育てて動物飼って気ままにスローライフで世界を救います。

彩世幻夜
恋愛
 エルフの様な超絶美形の神様アグリが管理する異世界、その神界に迷い人として異世界転移してしまった、OLユリ。  壊れかけの世界で、何も無い神界で農園を作って欲しいとお願いされ、野菜に果物を育てて料理に励む。  もふもふ達を飼い、ノアの箱舟の様に神様に保護されたアグリの世界の住人たちと恋愛したり友情を育みながら、スローライフを楽しむ。  これはそんな平穏(……?)な日常の物語。  2021/02/27 完結

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈
ファンタジー
味噌蔵の跡継ぎで修行中の相葉壱。 息抜きに動物園に行った時、仔カピバラに噛まれ、気付けば見知らぬ場所にいた。 壱を連れて来た仔カピバラに付いて行くと、着いた先は食堂で、そこには10年前に行方不明になった祖父、茂造がいた。 茂造は言う。「ここはいわゆる異世界なのじゃ」と。 そして、「この食堂を継いで欲しいんじゃ」と。 明かされる村の成り立ち。そして村人たちの公然の秘め事。 しかし壱は徐々にそれに慣れ親しんで行く。 仔カピバラのサユリのチート魔法に助けられながら、味噌などの和食などを作る壱。 そして一癖も二癖もある食堂の従業員やコンシャリド村の人たちが繰り広げる、騒がしくもスローな日々のお話です。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

処理中です...