無才能で孤独な王子は辺境の島で優雅なスローライフを送りたい〜愛され王子は愉快なもふもふと友達になる才能があったようです〜

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第二章 衣食住、住居を探します

17.王子、躾をします

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 ああ、僕は何のために努力をしたのだろうか。今まで一生懸命基盤から作って、やっと柱に木を嵌め込んで屋根だけだった。

『クソイヌなぜワシのところに来ないのだ!』

『おい、アドルの――』

『アドルって誰だ? 新しいケットシーか? お前ワシを置いて浮気をしたんか?』

『そもそもお前とは何の関係もない』

『ワシ達は永遠のライバルではないか!』

 そうか、あのネコ……いや白虎はバカイヌの友達なのか。

 あれだけ友達がいないと言っていたのに、じゃれ合うほどの仲だ。

 今もワチャワチャしている。

『おいおい、それ以上ここを壊したら――』

『こんな木の山邪魔だ!』

 僕はそっとささみを安全な場所に移す。心配してスリスリしてくれるが、もうあいつらを許す気はない。

 大事に作った家は跡形もなく破壊されている。

 はぁー、あいつを友達と思った僕はバカだ。

「おい、バカイヌとバカネコ!」

『んあ? 誰のことを言ってるんだ?』

「お前しかいないだろ!」

 僕はゆっくりと魔力を練っていく。魔法の才能はないし、剣術もできない。それでも、僕は王族の血を引き継いでいる。

『おいおい、この小さなやつに何が――』

『拙者の友達を悪く言うな!』

「んぁ!? お前をたぶらかしたのはあいつか!」

 白虎は僕に怒りの矛先を向けて近づいてくる。ああ、こんなにも体格の差があるのか。

 コボスケと同じぐらいの大きさだ。僕なんてあの爪や牙で一刺しで死ぬだろう。

『アドル……? 拙者が悪かったよ。もうこいつとは関わらない』

『はぁん!? ワシと関わらないとはどういうことだ』

『お前は黙っていろ! 拙者はアドルが大事なんだ!』

『やっぱりあいつのせいじゃないか! 絶対殺してやる!』

 白虎は大きな口を開けて僕の目の前に来た。きっと鋭い歯で噛み砕くつもりなんだろう。

 コボスケは必死に止めようとして、尻尾を引っ張っている。

 だが、僕が許さないのはお前達二人だ。

 もう僕の手には魔力が溜まっている。王族は魔力の量が桁違いという特徴がある。ただ、僕はその魔力をコントロールできないだけだ。

 だから、魔法の才能がないと言われている。

 そんなにコントロールを必要としない下位魔法を使っているのだ。

 僕が唯一魔力をコントロールできるのは指先に魔力を集めることだけだ。

「もう、お前らは黙れ。さっきからお前達の関係にを巻き込むんじゃねーよ!」

 ついつい言葉遣いも王族とはかけ離れてしまった。

 僕は指に力を入れて、おもいっきり人差し指を弾く。

 唯一魔力を使ってできる得意なこと。

「フィンガーフリック!」

 魔力が込められた指は勢いよく白虎の額に当たる。額に当たる音と同時に嫌な音が森の中に響く。

――パチン!

 デコピンが当たった白虎は勢いそのままに森の奥に転がっていく。その距離は山一つ分だろう。

 僕の一番の得意な魔法。

 正確に言えば指でやる魔法だ。

「おい、お前も当たっておくか?」

『拙者はアドルの下僕です。友達でもありません。何でもやらせて頂きます!』

 コボスケは尻尾を股の間に挟んで震えていた。どうやら躾には成功したようだ。

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