無才能で孤独な王子は辺境の島で優雅なスローライフを送りたい〜愛され王子は愉快なもふもふと友達になる才能があったようです〜

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第二章 衣食住、住居を探します

14.王子、プレゼントをもらう

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『アドル! アドル!』

 コボスケは大量の石灰石をいっぱい抱えて戻ってきた。キラキラした目と大きく動く尻尾が今か今かと待っているのを表している。

「さすがコボスケだな!」

 体全体を両手でもふもふすると、コボスケは僕の周りをクルクルと回っていた。喜びの評価が独特だが、少しずつ扱い方がわかってきた。

 石灰石が海岸にあったのは、石灰石の一部がサンゴと言われているからだ。サンゴは暖かい海に生息するため、海岸にたくさん落ちている。

「じゃあ、これを踏み潰してもらってもいいか?」

『はにゃ!? これはアドルのプレゼントだぞ!』

「ちゃんとした使い方は潰すのが常識なんだぞ?」

 戸惑っているコボスケをよそに僕は石灰石を踏み潰す。

 泣きそうになりながらもコボスケは一緒に石灰石を踏んでいた。一瞬にして粉々になる石灰石に、コボスケの精神は少しずつ削られている。

 ちなみに僕の重さでは砕けないため、ただ石灰石の上に乗っている状態だ。

 潰しているのは僕ではなくて、全てコボスケになる。

 さすがにプレゼントとしてもらった物を粉々に踏むことはできない。だが、これがないとセメントが作れないのは事実。

 だからコボスケ自身に踏ませている。

 コボスケは終わったのか、その場で立ち止まる。周囲には砕けた石灰石の粉が山になっていた。

『ぬぁ!? 拙者だけ粉々にしているじゃないですか!?』

 ついにコボスケは気づいてしまったようだ。悔しそうにグルグルと唸っている。

「僕が壊したらコボスケが悲しむと思ってな」

『アドル……拙者が間違っていた!』

 コボスケは僕に抱きつき謝っていた。どこか胸がチクリ痛くなる。

 王族として生きる中で、多少はずる賢い考えは必要になる。ただ、コボスケといるとそんな考えもいらないように感じてしまう。

 ただ、抱きつかれて獣臭が酷かった。

「あとは石灰石の粉をささみの火で焼いていくだけだな」

 側には心地良さそうに寝ているささみがいる。起きたタイミングで火を吐いて手伝ってもらおう。そう思っていたが、コボスケは違ったようだ。

『おい、新人! アドルのために早く火を吐くんだ!』

 ささみの背中をバシバシと叩いていた。流石にフェニックスの子どもでも体は小さい。コボスケの力だと、いくらなんでも衝撃が強いだろう。

 大人の僕でもあれだけの勢いで叩かれたら即死だ。
 
 現にささみは今にも泣きそうな顔をしている。

「おいおい、流石にやりすぎだろ」

 僕はささみをコボスケから奪い取ると、ささみを揺すって宥める。フェニックスでも子どもには変わりないからな。

 今も喜んでいるのか笑顔で心地良さそうにしている。

『ヌー! アドルが取られ……なんだその顔は!』

 背後ではコボスケがなぜか怒っていた。顔って誰のことを言っているのだろうか。

「お前大丈夫か?」

『アドル、こいつ拙者の顔を見て蔑むように笑っていたぞ!』

「ささみそんなことしたのか?」

 抱かれているささみに確認すると、首を横に振っている。どうやらコボスケの勘違いだろう。

「ささみはやっていないって」

『絶対嘘だあー! こいつは拙者のことを嫌っているぞ!』

 きっと僕がささみの相手をするのが嫌なんだろう。子どもは弟や妹ができると、赤ちゃんに戻るって聞くぐらいだ。

 コボスケもそんな気持ちを抱いているのだろう。

「お兄ちゃんはきっと寂しんだろうな」

『ヌー! 今こいつニヤリと笑ったぞ! アドル、こいつ食べていいか!』

 コボスケもまだまだ子どもなんだろう。

 怒っているコボスケの頭に手を置く。突然の行動に驚いたのか、怒っていたコボスケは止まった。

『拙者、こんなことでは騙され――』

「コボスケはえらいな。お兄ちゃんだから我慢できるもんな」

 撫でられたコボスケは尻尾を振りながら静かになった。

 本当にコボスケはわかりやすいやつだな。
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