14 / 72
第二章 衣食住、住居を探します
14.王子、プレゼントをもらう
しおりを挟む
『アドル! アドル!』
コボスケは大量の石灰石をいっぱい抱えて戻ってきた。キラキラした目と大きく動く尻尾が今か今かと待っているのを表している。
「さすがコボスケだな!」
体全体を両手でもふもふすると、コボスケは僕の周りをクルクルと回っていた。喜びの評価が独特だが、少しずつ扱い方がわかってきた。
石灰石が海岸にあったのは、石灰石の一部がサンゴと言われているからだ。サンゴは暖かい海に生息するため、海岸にたくさん落ちている。
「じゃあ、これを踏み潰してもらってもいいか?」
『はにゃ!? これはアドルのプレゼントだぞ!』
「ちゃんとした使い方は潰すのが常識なんだぞ?」
戸惑っているコボスケをよそに僕は石灰石を踏み潰す。
泣きそうになりながらもコボスケは一緒に石灰石を踏んでいた。一瞬にして粉々になる石灰石に、コボスケの精神は少しずつ削られている。
ちなみに僕の重さでは砕けないため、ただ石灰石の上に乗っている状態だ。
潰しているのは僕ではなくて、全てコボスケになる。
さすがにプレゼントとしてもらった物を粉々に踏むことはできない。だが、これがないとセメントが作れないのは事実。
だからコボスケ自身に踏ませている。
コボスケは終わったのか、その場で立ち止まる。周囲には砕けた石灰石の粉が山になっていた。
『ぬぁ!? 拙者だけ粉々にしているじゃないですか!?』
ついにコボスケは気づいてしまったようだ。悔しそうにグルグルと唸っている。
「僕が壊したらコボスケが悲しむと思ってな」
『アドル……拙者が間違っていた!』
コボスケは僕に抱きつき謝っていた。どこか胸がチクリ痛くなる。
王族として生きる中で、多少はずる賢い考えは必要になる。ただ、コボスケといるとそんな考えもいらないように感じてしまう。
ただ、抱きつかれて獣臭が酷かった。
「あとは石灰石の粉をささみの火で焼いていくだけだな」
側には心地良さそうに寝ているささみがいる。起きたタイミングで火を吐いて手伝ってもらおう。そう思っていたが、コボスケは違ったようだ。
『おい、新人! アドルのために早く火を吐くんだ!』
ささみの背中をバシバシと叩いていた。流石にフェニックスの子どもでも体は小さい。コボスケの力だと、いくらなんでも衝撃が強いだろう。
大人の僕でもあれだけの勢いで叩かれたら即死だ。
現にささみは今にも泣きそうな顔をしている。
「おいおい、流石にやりすぎだろ」
僕はささみをコボスケから奪い取ると、ささみを揺すって宥める。フェニックスでも子どもには変わりないからな。
今も喜んでいるのか笑顔で心地良さそうにしている。
『ヌー! アドルが取られ……なんだその顔は!』
背後ではコボスケがなぜか怒っていた。顔って誰のことを言っているのだろうか。
「お前大丈夫か?」
『アドル、こいつ拙者の顔を見て蔑むように笑っていたぞ!』
「ささみそんなことしたのか?」
抱かれているささみに確認すると、首を横に振っている。どうやらコボスケの勘違いだろう。
「ささみはやっていないって」
『絶対嘘だあー! こいつは拙者のことを嫌っているぞ!』
きっと僕がささみの相手をするのが嫌なんだろう。子どもは弟や妹ができると、赤ちゃんに戻るって聞くぐらいだ。
コボスケもそんな気持ちを抱いているのだろう。
「お兄ちゃんはきっと寂しんだろうな」
『ヌー! 今こいつニヤリと笑ったぞ! アドル、こいつ食べていいか!』
コボスケもまだまだ子どもなんだろう。
怒っているコボスケの頭に手を置く。突然の行動に驚いたのか、怒っていたコボスケは止まった。
『拙者、こんなことでは騙され――』
「コボスケはえらいな。お兄ちゃんだから我慢できるもんな」
撫でられたコボスケは尻尾を振りながら静かになった。
本当にコボスケはわかりやすいやつだな。
コボスケは大量の石灰石をいっぱい抱えて戻ってきた。キラキラした目と大きく動く尻尾が今か今かと待っているのを表している。
「さすがコボスケだな!」
体全体を両手でもふもふすると、コボスケは僕の周りをクルクルと回っていた。喜びの評価が独特だが、少しずつ扱い方がわかってきた。
石灰石が海岸にあったのは、石灰石の一部がサンゴと言われているからだ。サンゴは暖かい海に生息するため、海岸にたくさん落ちている。
「じゃあ、これを踏み潰してもらってもいいか?」
『はにゃ!? これはアドルのプレゼントだぞ!』
「ちゃんとした使い方は潰すのが常識なんだぞ?」
戸惑っているコボスケをよそに僕は石灰石を踏み潰す。
泣きそうになりながらもコボスケは一緒に石灰石を踏んでいた。一瞬にして粉々になる石灰石に、コボスケの精神は少しずつ削られている。
ちなみに僕の重さでは砕けないため、ただ石灰石の上に乗っている状態だ。
潰しているのは僕ではなくて、全てコボスケになる。
さすがにプレゼントとしてもらった物を粉々に踏むことはできない。だが、これがないとセメントが作れないのは事実。
だからコボスケ自身に踏ませている。
コボスケは終わったのか、その場で立ち止まる。周囲には砕けた石灰石の粉が山になっていた。
『ぬぁ!? 拙者だけ粉々にしているじゃないですか!?』
ついにコボスケは気づいてしまったようだ。悔しそうにグルグルと唸っている。
「僕が壊したらコボスケが悲しむと思ってな」
『アドル……拙者が間違っていた!』
コボスケは僕に抱きつき謝っていた。どこか胸がチクリ痛くなる。
王族として生きる中で、多少はずる賢い考えは必要になる。ただ、コボスケといるとそんな考えもいらないように感じてしまう。
ただ、抱きつかれて獣臭が酷かった。
「あとは石灰石の粉をささみの火で焼いていくだけだな」
側には心地良さそうに寝ているささみがいる。起きたタイミングで火を吐いて手伝ってもらおう。そう思っていたが、コボスケは違ったようだ。
『おい、新人! アドルのために早く火を吐くんだ!』
ささみの背中をバシバシと叩いていた。流石にフェニックスの子どもでも体は小さい。コボスケの力だと、いくらなんでも衝撃が強いだろう。
大人の僕でもあれだけの勢いで叩かれたら即死だ。
現にささみは今にも泣きそうな顔をしている。
「おいおい、流石にやりすぎだろ」
僕はささみをコボスケから奪い取ると、ささみを揺すって宥める。フェニックスでも子どもには変わりないからな。
今も喜んでいるのか笑顔で心地良さそうにしている。
『ヌー! アドルが取られ……なんだその顔は!』
背後ではコボスケがなぜか怒っていた。顔って誰のことを言っているのだろうか。
「お前大丈夫か?」
『アドル、こいつ拙者の顔を見て蔑むように笑っていたぞ!』
「ささみそんなことしたのか?」
抱かれているささみに確認すると、首を横に振っている。どうやらコボスケの勘違いだろう。
「ささみはやっていないって」
『絶対嘘だあー! こいつは拙者のことを嫌っているぞ!』
きっと僕がささみの相手をするのが嫌なんだろう。子どもは弟や妹ができると、赤ちゃんに戻るって聞くぐらいだ。
コボスケもそんな気持ちを抱いているのだろう。
「お兄ちゃんはきっと寂しんだろうな」
『ヌー! 今こいつニヤリと笑ったぞ! アドル、こいつ食べていいか!』
コボスケもまだまだ子どもなんだろう。
怒っているコボスケの頭に手を置く。突然の行動に驚いたのか、怒っていたコボスケは止まった。
『拙者、こんなことでは騙され――』
「コボスケはえらいな。お兄ちゃんだから我慢できるもんな」
撫でられたコボスケは尻尾を振りながら静かになった。
本当にコボスケはわかりやすいやつだな。
15
お気に入りに追加
1,631
あなたにおすすめの小説
目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し
gari@七柚カリン
ファンタジー
突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。
知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。
正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。
過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。
一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。
父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!
地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……
ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!
どうする? どうなる? 召喚勇者。
※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった
椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。
底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。
ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。
だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。
翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

三度の飯より犬好きな伯爵令嬢は田舎でもふもふスローライフがしたい
平山和人
恋愛
伯爵令嬢クロエ・フォン・コーネリアは、その優雅な所作と知性で社交界の憧れの的だった。しかし、彼女には誰にも言えない秘密があった――それは、筋金入りの犬好きであること。
格式あるコーネリア家では、動物を屋敷の中に入れることすら許されていなかった。特に、母である公爵夫人は「貴族たるもの、動物にうつつを抜かすなどもってのほか」と厳格な姿勢を貫いていた。しかし、クロエの心は犬への愛でいっぱいだった。
クロエはコーネリア家を出て、田舎で犬たちに囲まれて暮らすことを決意する。そのために必要なのはお金と人脈。クロエは持ち前の知性と行動力を駆使し、新しい生活への第一歩を踏み出したのだった!

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる