無才能で孤独な王子は辺境の島で優雅なスローライフを送りたい〜愛され王子は愉快なもふもふと友達になる才能があったようです〜

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第二章 衣食住、住居を探します

8.王子、溺れる

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 流石に沼で顔は洗えないと思った僕は海に向かう。

『なぜ、拙者らに付いてくるんだ?』

『私も食生活を改めようと思いまして……』

 なぜかコボスケの後ろをリザードマンもペタペタと歩いて付いてくる。

 コボスケに何を食べているのか確認をしたら、それを聞いていたリザードマンも教えてもらいたかったのだろう。

 そもそもこの島に何が存在しているのか僕はわからない。見たのはブドゥとウニョウニョとした虫だけだ。

 コボスケの聞いた話だとほとんど果物と便秘の時に虫しか食べていなかった。

 フェンリルなら肉を食え! 肉を!

 海までは思ったよりも遠く、森の中を歩くのは一苦労だった。

 昨日はコボスケの肩に乗っていたため、あまり遠く感じなかった。だが、実際はかなり距離があって遠かった。

 改めてこの島自体の大きさを痛感する。

「コボスケも顔を洗って歯を磨けよ」

『拙者の牙は磨かなくても丈夫だぞ?』

「せめてうがいはしろよ」

 さすがに当事者に向かって口臭が気になるからとは言えない。渋々、コボスケは海に向かうと海水を口に入れてうがいをする。

『アドル、口がしょっぱいぞ!』

「あっ、忘れ――」

『グルルルルル』

「口の嫌なねばつきは取れるだろ?」

 海水が塩辛いことを忘れていた。また唸り出したからすぐに言い換えたが、大丈夫だったのか微妙なラインだ。

『グルルルルル……ぺっ!』

 いや、これは唸っているんではなくて、うがいをしていた。一つ一つの動きが紛らわしいぞ。

 ちなみにリザードマンはすでに沼で顔を洗ってきたらしい。一際肌艶がいいのはリザードマンだからではなく、泥による影響だと言っていた。

 リザードマンが自然泥パックってどこかの貴族令嬢のようだ。

 僕も顔を洗うために海に近づく。

 あれ、なんか思ったよりも海水の色が黒いぞ。

『アドルあぶない!』

 海の底から突然手が現れて僕の顔を掴む。あまりにも急な出来事に逃げることもできずに、そのまま引き込まれてしまった。

『アドルを離すんだ!』

 コボスケが足を掴み、必死に海から引き上げようとする。ただ、顔面を掴まれて海に入っているため息苦しい。

『魚手伝うんだ!』

『私海に入れないんです』

 はい、リザードマンはドラゴン確定です!

 あいつは絶対リザードマンなんかじゃない。

 リザードマンに見せかけたただのドラゴンだ!

 そんなリザードマンも持っているフォークを何度も海に引き込もうとしているやつを目掛けて刺していた。

 じわじわとダメージが蓄積されているのか、だんだんと引っ張る力が弱まっていく。その隙に僕は陸へ上がる。

「ゴホッ! ゴホッ!」

 少し海水を飲んでしまったようだ。確かに塩辛い気がした。

 コボスケは僕の周りをクルクル周り必死に考えている。

『溺れた時は人工呼吸か!? いや、犬呼吸か?』

 犬呼吸とはなんだろう。少し気にはなるが、近づいてくる口臭野郎の顔を手で押さえる。

「大丈夫だ」

『アドル心配したぞー!』

 コボスケは僕に抱きついてきた。心配かけたのは間違いない。僕は優しく撫でると、尻尾を大きく振っていた。

 うん、たまに犬に見えるのはなんでだろう。

『これは食べれますか?』

「あっ、魚なら……いや、これは無理だろう」

 リザードマンが持ってきたのは、魚に手足が生えた謎の物体だった。さっき海に引き込もうとしていたやつはこいつだ。

 分厚い唇に口がぱかぱかとしていたのを覚えている。
 
「いやん♡優しくし・て・ね?」

 殺意が湧いたのか、リザードマンはフォークを何度も魚に突き刺していた。
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