5 / 72
第一章 王族から追放されました
5.王様、息子を勘違いしていたようです ※王様視点
しおりを挟む
「お父様どういうことですか!?」
娘のマリンが突然王である私に掴みかかってきた。その後ろにも兄弟がゾロゾロと部屋に入ってきた。
「マリア離しなさい」
「嫌ですわ! アドルを追い出したってどういうことよ!」
別にアドルを追い出したわけではない。あいつはこの王族の中で才能に恵まれていなかった。
だから、成人になったのをきっかけに自分のやりたい人生を歩んでもらおうとしたのだ。
「マリア姉さん、そんな糞親父に言っても無理だよ。俺達がどれだけアドルを愛して、才能が芽生えないようにしたのを気づいてないぐらいだよ」
才能が芽生えないようにした?
それはどういうことだ。そもそも兄弟の中では唯一アドルだけは一人でいることが多かった。
それもあって私はアドルを王族から抜けることを提案したのだ。
「俺なんてアドルがかっこいいって言ってくれるから、次期国王になるために努力してきたんだ! あいつがいなければ国王なんてやる意味はない」
「それを言ったら私なんてどこかの馬の骨に取られないように、令嬢達を蹴落としてきたぐらいよ」
幼い頃から長男のレオンはアドルを部屋に閉じ込めて出てこないようにしていた。外に出すのは危険だと、王族の恥になると。長女のマリアもそれに賛成していたはずだ。
あの行動は嫌いだったからやったのではないのか。
「ああ、それは僕も同じだよ。アドルが何もしなくていいように魔道具を開発したのにな」
「アドル兄さん、令嬢達から大人気だもんね。私も何回忘却魔法を貴族達にかけたと思っているのよ」
魔法が得意な次男アーサーと次女メアリーも何を言っているのだろうか。
段々と我が息子と娘ながら怖くなってきたぞ。
「いや、紳士達にも人気だな。俺の学園にいた時も剣術部のみんながファンクラブを作るぐらいだったからな」
「ああ、あの婚約破棄までした人達が集まるファンクラブですか」
この子らが言っているのは、本当にアドルなのか。まさかここまでみんなに好かれているとは思いもしなかった。
いや、これはアドル自体が人に愛されるという才能があったことに気付かなかった私のせいだ。
「それで糞親父はアドルがどこに行ったのか知ってるのか?」
「あー、外の世界を旅してこい――」
「はぁん?」
アドルを除く四人の兄妹の声がハーモニーを奏でるように重なった。
その迫力に私は体の力が抜けてしまう。こんなに兄妹達にアドルが愛されているなんて知らなかった。
いや、王妃である妻が亡くなって私は知らないふりをしていたのかもしれない。
子ども達や貴族に足りない愛をアドルが与えていたことを――。
「とりあえずレオン兄様は貴族達に気づかれないようにまとめてください。きっとファンクラブが暴走したらアレクサンドラ王国は破滅に向かうわ」
「ああ、代表が全員公爵家出身だからな」
「公爵家が反乱なんか起こしたら我が国は――」
「必ず滅ぶね。ちなみに魔法省も全力で魔法をぶっ放すと思うよ。この間、アドルが魔法の勉強がしたいって来た時なんて、見本で山一つを簡単にぶっ飛ばしたからね」
聞いただけで震えが止まらない。兄妹もだけどこの国の人達は頭が狂っているのか。
我々王族は貴族に支えられている。そのほとんどが公爵家の力が大きい。むしろ、公爵家に私達は生かされているようなものだ。
そして、魔法省はこの国を支えている機関の一つだ。そんな魔法省が山を吹き飛ばす力を王族に向けられたら完全にこの国は終わるだろう。
「それでお父様はどうやって責任を取るつもりなのかしら?」
「きっとお父様だから何か魔法をかけて管理しているのよね?」
アドルには探知魔法で居場所を把握している。私は魔力を広げて今すぐにアドルの居場所を探す。
「あっ……」
何度も何度も探すが探知魔法が引っかからない。何者かに解除された後がある。
「お父様……? いや、ただのハゲ親父ぶっ殺してやる!」
魔法神の申し子と言われているメアリーは魔法を発動させた。100本以上もある剣を召喚して、全て王である私に向けている。
普通に考えれば反逆罪だが、そんなの気にしないのだろう。
頭が狂っているからな。
「ちょっとレオン兄さんとマリア姉さんも止めてよ。メアリーが一番怒らせたら怖い――」
そんなメアリーを兄であるアーサーは止めていた。
「俺では剣が出せても30本が限度だからな」
「私なら粉々にしてゴブリンの餌にするわ」
「糞野郎覚悟はできているか?」
ああ、どうやら私は子ども達に殺される運命なんだろうか。
───────────────────
【あとがき】
今回はちゃんともふもふしていきます笑
応援コメント、お気に入り登録お願いします(*´꒳`*)
コメントはコボスケと共に尻尾を振ってお待ちしています!
娘のマリンが突然王である私に掴みかかってきた。その後ろにも兄弟がゾロゾロと部屋に入ってきた。
「マリア離しなさい」
「嫌ですわ! アドルを追い出したってどういうことよ!」
別にアドルを追い出したわけではない。あいつはこの王族の中で才能に恵まれていなかった。
だから、成人になったのをきっかけに自分のやりたい人生を歩んでもらおうとしたのだ。
「マリア姉さん、そんな糞親父に言っても無理だよ。俺達がどれだけアドルを愛して、才能が芽生えないようにしたのを気づいてないぐらいだよ」
才能が芽生えないようにした?
それはどういうことだ。そもそも兄弟の中では唯一アドルだけは一人でいることが多かった。
それもあって私はアドルを王族から抜けることを提案したのだ。
「俺なんてアドルがかっこいいって言ってくれるから、次期国王になるために努力してきたんだ! あいつがいなければ国王なんてやる意味はない」
「それを言ったら私なんてどこかの馬の骨に取られないように、令嬢達を蹴落としてきたぐらいよ」
幼い頃から長男のレオンはアドルを部屋に閉じ込めて出てこないようにしていた。外に出すのは危険だと、王族の恥になると。長女のマリアもそれに賛成していたはずだ。
あの行動は嫌いだったからやったのではないのか。
「ああ、それは僕も同じだよ。アドルが何もしなくていいように魔道具を開発したのにな」
「アドル兄さん、令嬢達から大人気だもんね。私も何回忘却魔法を貴族達にかけたと思っているのよ」
魔法が得意な次男アーサーと次女メアリーも何を言っているのだろうか。
段々と我が息子と娘ながら怖くなってきたぞ。
「いや、紳士達にも人気だな。俺の学園にいた時も剣術部のみんながファンクラブを作るぐらいだったからな」
「ああ、あの婚約破棄までした人達が集まるファンクラブですか」
この子らが言っているのは、本当にアドルなのか。まさかここまでみんなに好かれているとは思いもしなかった。
いや、これはアドル自体が人に愛されるという才能があったことに気付かなかった私のせいだ。
「それで糞親父はアドルがどこに行ったのか知ってるのか?」
「あー、外の世界を旅してこい――」
「はぁん?」
アドルを除く四人の兄妹の声がハーモニーを奏でるように重なった。
その迫力に私は体の力が抜けてしまう。こんなに兄妹達にアドルが愛されているなんて知らなかった。
いや、王妃である妻が亡くなって私は知らないふりをしていたのかもしれない。
子ども達や貴族に足りない愛をアドルが与えていたことを――。
「とりあえずレオン兄様は貴族達に気づかれないようにまとめてください。きっとファンクラブが暴走したらアレクサンドラ王国は破滅に向かうわ」
「ああ、代表が全員公爵家出身だからな」
「公爵家が反乱なんか起こしたら我が国は――」
「必ず滅ぶね。ちなみに魔法省も全力で魔法をぶっ放すと思うよ。この間、アドルが魔法の勉強がしたいって来た時なんて、見本で山一つを簡単にぶっ飛ばしたからね」
聞いただけで震えが止まらない。兄妹もだけどこの国の人達は頭が狂っているのか。
我々王族は貴族に支えられている。そのほとんどが公爵家の力が大きい。むしろ、公爵家に私達は生かされているようなものだ。
そして、魔法省はこの国を支えている機関の一つだ。そんな魔法省が山を吹き飛ばす力を王族に向けられたら完全にこの国は終わるだろう。
「それでお父様はどうやって責任を取るつもりなのかしら?」
「きっとお父様だから何か魔法をかけて管理しているのよね?」
アドルには探知魔法で居場所を把握している。私は魔力を広げて今すぐにアドルの居場所を探す。
「あっ……」
何度も何度も探すが探知魔法が引っかからない。何者かに解除された後がある。
「お父様……? いや、ただのハゲ親父ぶっ殺してやる!」
魔法神の申し子と言われているメアリーは魔法を発動させた。100本以上もある剣を召喚して、全て王である私に向けている。
普通に考えれば反逆罪だが、そんなの気にしないのだろう。
頭が狂っているからな。
「ちょっとレオン兄さんとマリア姉さんも止めてよ。メアリーが一番怒らせたら怖い――」
そんなメアリーを兄であるアーサーは止めていた。
「俺では剣が出せても30本が限度だからな」
「私なら粉々にしてゴブリンの餌にするわ」
「糞野郎覚悟はできているか?」
ああ、どうやら私は子ども達に殺される運命なんだろうか。
───────────────────
【あとがき】
今回はちゃんともふもふしていきます笑
応援コメント、お気に入り登録お願いします(*´꒳`*)
コメントはコボスケと共に尻尾を振ってお待ちしています!
30
お気に入りに追加
1,637
あなたにおすすめの小説
異世界で神様に農園を任されました! 野菜に果物を育てて動物飼って気ままにスローライフで世界を救います。
彩世幻夜
恋愛
エルフの様な超絶美形の神様アグリが管理する異世界、その神界に迷い人として異世界転移してしまった、OLユリ。
壊れかけの世界で、何も無い神界で農園を作って欲しいとお願いされ、野菜に果物を育てて料理に励む。
もふもふ達を飼い、ノアの箱舟の様に神様に保護されたアグリの世界の住人たちと恋愛したり友情を育みながら、スローライフを楽しむ。
これはそんな平穏(……?)な日常の物語。
2021/02/27 完結
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜
山いい奈
ファンタジー
味噌蔵の跡継ぎで修行中の相葉壱。
息抜きに動物園に行った時、仔カピバラに噛まれ、気付けば見知らぬ場所にいた。
壱を連れて来た仔カピバラに付いて行くと、着いた先は食堂で、そこには10年前に行方不明になった祖父、茂造がいた。
茂造は言う。「ここはいわゆる異世界なのじゃ」と。
そして、「この食堂を継いで欲しいんじゃ」と。
明かされる村の成り立ち。そして村人たちの公然の秘め事。
しかし壱は徐々にそれに慣れ親しんで行く。
仔カピバラのサユリのチート魔法に助けられながら、味噌などの和食などを作る壱。
そして一癖も二癖もある食堂の従業員やコンシャリド村の人たちが繰り広げる、騒がしくもスローな日々のお話です。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し
gari
ファンタジー
突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。
知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。
正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。
過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。
一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。
父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!
地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……
ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!
どうする? どうなる? 召喚勇者。
※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる