転生幼児は夢いっぱい

meimei

文字の大きさ
上 下
123 / 131

野営部

しおりを挟む








組織の人間に付いて広場を出ると、そこは海外の街、或いはファンタジーゲームの中の様な場所だった。召喚された他の女性達や、比奈や美咲はキョロキョロと周囲を見回して感嘆の息を吐いていた。だが萌香にとっては特に珍しい光景じゃ無い。異世界で旅をしていた時に、もっと不思議な光景を見て来たからだ。だから街並みよりも気になったのは他の人間だ。組織に属して居ない人間プレイヤー達。隠れるように路地裏や民家らしき建物の窓から何人かがこちらの様子を伺っていたが、皆一様に暗い顔だ。

(やっぱり組織コイツら、ヤバい奴らっぽいな。)

黒髪の男が言っていた、組織に属して居ないソロプレイヤー、少人数で組んでいるプレイヤー。その誰もが薄汚れた格好だ。対して先程広場に居た組織の人間の装備や格好は小綺麗で、顔色も良かった。

組織が上手く回っているのなら、それもおかしな事ではないかも知れないが、それなら薄汚れて顔色の悪いソロプレイヤーや、少人数チームのプレイヤーに説明がつかない、1000人居るらしいプレイヤーの内、組織に属しているのは半数にも満たない400人。それが不可解だ。そんなに良い組織なら皆入る筈だ。組織の話を聞いた限りは、他に大人数で組んでいる者達も居なさそうだ。それは、組んでもメリットが無いからじゃ無いだろうか?それに先程から感じる視線は、気の毒そうな視線だった。

(……組織、……大方、初心者を騙して、何かやってんだろうな、だから男女を分けたって事でしょ?…………、女は性処理にでも使う気?…………、男は、なんだろう………、労働力?)

萌香の考えはそう間違って居ないと思う。先程から黒髪の男がチラチラと比奈を見ている。その視線は豊かな胸元に向いていた。

(きも…………)






◇◇◇◇◇◇







「はーい、皆さん。いらっしゃーい。リーダーもおかえりなさーい♡」

着いたのは、大きなホテルのような建物だった。そこから綺麗な格好の女性が4人出て来て、笑顔で出迎えてくれた。それを見てホッと息を吐く召喚された女性達。顔を顰めていた美咲の表情も和らいだ。それを見て萌香は呆れた。

(…………馬鹿だな。こんなの見え見えの罠じゃん。安心させて油断させる為のさ。…………でも普通の人なら騙されるのかな、昔の私みたいに…………)

「ただいまー。食事の用意出来てる?新人さんの歓迎会だし、飲み物とかも沢山用意して有る?今回結構大人数だから、無いなら俺が買いに行くけど?」

黒髪の青年が4人の内の一人、金髪の女性の肩を抱いて言う。

「勿論、ちゃんと準備してるよ~、直樹君♡」

「ありがと、ミミ。んじゃ皆を広間に案内してくれる?」

黒髪は直樹と言うみたいだ。

「はーい♡じゃ、皆さん、うちらについて来て、食事もお酒もあるよー♡」

そう言って金髪女性はニコニコとして萌香達に声を掛けて、手招きして居る。

「…………なんか、大丈夫そうだね。比奈、行こ」

そう言うと、美咲はさっさと比奈の手を引いて金髪の女性達について行った。比奈は何度か困った顔で振り向いたが、そのまま引っ張られて行ってしまった。

萌香はため息を吐く。

(安心したら、こっちをまた無視?…………はあ。…………名波さん。嫌いなタイプだわ)



◇◇◇◇◇◇





広間に案内されると良い匂いが漂っている。豪華な机の上にはご馳走が並んで居た。

(用意周到すぎて怪しすぎ。でも誰も疑って無い。はあ…………、危機感無さ過ぎ…。あーイライラする。)

女性は萌香を含めて全部で18人。その中には年配の人や、成人している大人の女性も居るのに、皆ご馳走に目を輝かせている。

(…………、本当危機感の無い馬鹿女ばっかり…………、騙されて、搾取されても自業自得だよ…………、あーあ。気分悪い。来なきゃ良かったな。)














しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

異世界でのんびり暮らしたい!?

日向墨虎
ファンタジー
前世は孫もいるおばちゃんが剣と魔法の異世界に転生した。しかも男の子。侯爵家の三男として成長していく。家族や周りの人たちが大好きでとても大切に思っている。家族も彼を溺愛している。なんにでも興味を持ち、改造したり創造したり、貴族社会の陰謀や事件に巻き込まれたりとやたらと忙しい。学校で仲間ができたり、冒険したりと本人はゆっくり暮らしたいのに・・・無理なのかなぁ?

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

異世界召喚されました……断る!

K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】 【第2巻 令和3年 8月25日】 【書籍化 令和3年 3月25日】 会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』 ※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

処理中です...