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第1章 デレガナド会戦編
第2話 硝煙
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機神それぞれ、全高は20m程はあろうか、ただ、ジークは完全な戦闘用機神でない事に少し安堵した。
オークが投入したのはガーディアンシリーズと呼ばれた、暴徒鎮圧専用であり中型の生物の捕獲な特化した機神。
何故これを投入したのか意図は分からないが、こちら側の械人ならばまだ勝機はあるとジークは感じた。
「全械人、オークが持ってきたのはガーディアンタイプの機神だ。単独では絶対攻めるな!
必ずニから三機で迎撃、最低でも殲滅、可能ならば鹵獲だ。
元々は人間の造ったモンだから、返してもらおうぜ!!」
ジークは無線越しに怒鳴り散らし、檄を飛ばした。
そして一斉に、械人はビームベレッタやヒートナイフを構え、生身の戦闘員は一斉に銃の照準をオーク部隊に向けた。
「豚ヅラが大量に押し寄せて来るから、丸焼きにしてやれえええ!!!」
オーク部隊も部隊を展開、一斉に防壁に向かって殺到した。
人間の大半が居住する、東亜連邦の北西部に位置するひとつの村にて、かつて地球と呼ばれたこの星の最大規模の総力戦、"地星大戦"が始まった。
撃ち合い
斬り合い
殴り合い
蹴り倒し
薙ぎ倒す
人間同士でも、これ程の凄惨な戦場は類を見ない内容であろう。
銃弾は平面どころか頭上からも含めて無作為に飛び、塹壕は機動兵器の展開力により何の意味も成さず、果ては争うオークの素の戦闘能力は人間と比べても数倍にも及ぶ。
剣撃だけで銃弾や光線、弾頭を弾き返したり切断して捻じ伏せるものがいる。
別のオークは、わざと喰らって強引に近づき、人間の兵を雑に振り回しては地面にめり込ませたり、引き千切ったりしている。
蛮族らしく粗野な戦いをする者もいれば、しっかりと小隊を組んで人間然として部隊行動を取る者達もいる。
しかし、人間ももちろん、防戦一方ではなかった。
単独の力では敵わない事は皆百も承知で、歩兵部隊は四から五人の組み合わせで、オークを一人ずつ確実に屠っている。
中には、手練れのオークと同じく銃弾を剣で弾き返したり、後方の防壁の犬走からオークを狙うスナイパーは自身の撃った銃弾でオークの所持する戦車から放たれた砲弾に直接撃ち抜くと言う神業まで魅せる者もいる。
オークのような人間の力を上回る種族が出現したのに対し、人間ももちろん、進化を捨ててはいなかった。
テクノロジーだけに頼らず、自身の力量を徹底的に鍛錬する。
全ては生存を賭けた戦いに勝つ為に。
フェイトはそのような混沌とした乱戦の中、機動兵器のアグレッシブな戦闘の渦中にいた。
人間の軍の中でもフェイトの力量は頭三つは抜けていたようで、生身にも関わらず自身の愛用の銃身剣でオークの死体の山を築き、オークが搭乗しているガーディアンを単独で5機も撃破している。
少し息をついた時でも、後ろから襲い来るオークを振り向き様に、銃身剣を遠心力で回転させてスマートにオークの首を刎ねる。
オークの返り血と、少しの泥に塗れて、只でさえ出で立ちの黒いフェイトの全身は更に黒くなっていた。
「やるじゃねえかよ!!でも休んでんじゃねえぞ!!!」
ジークが拡声器で怒鳴りつけてくる。
伊邪那岐改はフェイトに背を向けて、次から次へと雪崩れ込むオークの有象無象をビームベレッタで乱射している。
「くそったれ!!ビームベレッタじゃ何にもならん!!!」
ジークが悪態をつくと同時に、Eパックの残量が全て尽きた。
これに伊邪那岐改はビームベレッタの銃身をオークの群れに向かって投げつけた。
いくら小型銃とは言え、機動兵器用なので長さは1.5mはあろうか、鉄の塊がオーク数十人程薙ぎ倒した。
「オークちゃん、ダンスしようぜぃ」
ふざけたジークは、コントロールレバーを指3本で摘まみながらアクセルを全開にした。
伊邪那岐改が古風な舞を踊るように、ヒートナイフを振りかざしてオークの群れを脚部で薙ぎ倒しつつ、ガーディアンの腕部の接続部を連撃し、攻撃不能に陥らせる。
更に、腰部からサイドマニピュレーターが一本飛び出し、強化装甲服を装備したオークを4、5人程雑に引っ掛け、ハンマー投げの要領で勢いよく投げ飛ばした。
勢い余ってその内二人は防壁の鉄板に直撃し、死んだ。
「ふぉーーーーー!!!これが剣の舞ってかああああ!!!」
トリップしたジークは更にコントロールレバーをこねくり回し、アクセルとブレーキを小刻みに踏みつける。
伊邪那岐改の舞が大きく派手な動きになり、縦の斬りつけが入って来た。
ガーディアンのコックピットハッチにヒートナイフを抉り込ませ、すぐに1機が戦闘不能。
その隣にいた別のガーディアンにも構える隙も与えずメインカメラに一閃、ヒートナイフを横に流し、間髪入れずに伊邪那岐改がバック転をしながらガーディアンの左胸部を抉る。
すぐにその1機も沈黙した。
この様子を見ても、フェイトは表情一つ変えず、自身もすぐに戦線復帰する。
銃身剣の台尻にあるスイッチを押し、銃と剣に分け、片手でライフル状の長い銃を片手で乱射しつつ、銃身についていた剣でオーク歩兵を、雑草を狩るように斬り倒していく。
何人かのオークはフェイトと伊邪那岐改の存在に目をつけ、我こそが倒さんと二人にかなりの数が殺到し始めた。
「なんだよかまってちゃんかーーー!?そんなに待てないのかよ辛抱強くない男は嫌われるぜーーーーー!!!!!」
ジークはまだトリップし続けていた。
飛び道具を失っていた為、例の“剣の舞”を繰り返しながら回転時にサイドマニピュレーターでオークの死体や機動兵器の残骸を引っ掴み、さながら人のように動く投石器と化した。
「機械で環境利用闘法とか、無茶苦茶なおっさんだな」
無表情でフェイトは一人毒づいた。
一瞬伊邪那岐改の動きに目をやった隙にオークが一人殴りつけようとして来たところ、フェイトは伊邪那岐改から目線を外さず後ろを向かずに、正確に剣でオークの喉を貫いた。
「卑怯な戦い方しか出来ねえのかよ、つまんね」
無愛想に吐き捨て、フェイトは再度行動開始した。
開戦からどれぐらい時間が経っただろうか。
オーク側が一旦、駐屯地手前まで一度撤退するようで一斉に退き始めた。
オーク側も被害は甚大だったようだが、割合で言えば人間側の方が致命的だった。
ざっと数にして、五千人だったのが千人にまで減少していた。
機動兵器も、応急処置して辛うじて動けるかどうかで、戦力低下どころか文字通りの戦闘不能寸前の状態だった。
「そういや、レベログラードへの援軍要請の返答はまだ来ねえのか!?あいつらいっつも高みの見物しやがって!!」
ジークは伊邪那岐改に乗ったまま、外に向けた拡声器をオンにしているのを忘れいた。
怒鳴り声が伊邪那岐改から発せられる。
「こるぁぁぁぁ!!!援軍要請は2時間前に出しただろがボケがぁ!!!
いっつもテメエら何だってそんなに遅いんだ!!!
こっちはいつもテメーらの要望に従ってやってんのによぉ、こんな時ぐらいシャキッと動けやあ!!!!!」
ジークは無線で何処かに回線を繋げて会話しているようである。
そして相手側に何かしら宥められる言葉を聞かされたのか、怒声は少し抑えつつもジークは不機嫌なまま答えた。
「おぉ、後1時間後来るんだな?今回のヤツらはまともなヤツらなんだろな?
指揮権はこっちが絶対に持つ。少しでも拒否するようなヤツらがいたら、このまま械人に乗ってそこまで行ってテメーらの拠点再起不能にしてやるからな」
ジークはそう吐き捨てて回線を切った。
そして伊邪那岐改のコックピットハッチが開く。
「今は負傷者の搬送、損耗率の低い兵器の応急修理をやってくれ!
くそったれな援軍は後1時間後到着するようだからそれまでに戦闘態勢を整えるぞ!!!」
それから数十分程してから、援軍が到着した。
だが、戦力の拡充、と言うには少し稚拙だった。
人数は1万人と、オーク軍に数ではタメを張れるぐらいにはなったが、如何せん、練度の低さが目に見えていた。
自分の銃すらもまともに組み上げられず、剣ですらも持つ手が震えている。
散っていった第一陣の大半の兵達の方が、粗野だが遥かに誇れる。
それが応援の方がまるで役に立たない。
次の戦闘は確実にやられる、そんな空気が第一陣の生存者の空気を支配した。
「かなりのボンクラばかりだな。七千人で三万を追い返した第一陣の戦いを見せればよかったな」
フェイトは目を見せないサングラス越しに毒づいた。
「たくよ、レベログラードの連中はどうも高単価な兵を寄越したがらない。
規模を聞いてすっかり尻込みしてやがるから役に立たねえよ。まあ、来てくれたこいつらには罪ねえんだけどよ
ジークは整備している手を止め、第二陣の様子を眺め、憐れむような目線を配った。
確かにやらかしているのはあくまでもレベログラードの傭兵企業であり、直接派兵された傭兵達には罪はない。
だがジークはこれまでにレベログラードからの応援受諾の内容には常に辟易していた。
しかも最も緊急事態であるこの最中でも、どこ吹く風で傍観している事に更に苛立てている。
「まあ、これが終わったらレベログラードの企業片っ端からぶっ壊して回るが・・・、て、なんだあれ?」
ジークは何かに気付き、オークが撤退した方向に向けて目を細めた。
つられて、フェイトも同じ方向を見た。
鈍く銀色に光る、人型のような何かが1体だけ、ホバー移動しているのか静かに、そして速く接近して来ていた。
双眼鏡を手に取ってジークはその銀色の対象を凝視したが、すぐに目を離してフェイトに怒鳴った。
「あれ何だ!?銀色のオークだぞ!!
オーク・ギアなのか!?」
そう言われフェイトはサングラスのフレームに指を二回、軽くタップした。
サングラスはどうやらズーム機能を持っているようで、フェイトの目にもその銀色の人型を捉える事が出来た。
「全員臨戦態勢で!!ヘタに手を出すな。あれは俺がやる!!」
そう言ってフェイトは銃身剣を乱暴に引っ掴み、更に手近にあった大剣や手榴弾を掴み上げた。
「オーク・ギアだ!!普通のオークや機動兵器はお前らに任せる!!
コイツだけは絶対に手を出すな!!!」
フェイトはジークに負けんばりの怒声を周囲に響かせた。
これに周囲の兵達は何事かとフェイトの駆けて行く方向を見据えると、全員言った事を理解したのか一斉に準備を急ぎ始める。
「オーク・ギアだと・・・?ホントにまずいんじゃねえのか??」
ジークも急いで、伊邪那岐改の整備を急ピッチで再開するが、ここで無線から怒声が発せられた。
「ジーク!!今誰かがオーク・ギアと言ってなかったか!?」
これにジークは怒鳴らず、しかし緊迫しているとしか思えない張り詰めた声で答えた。
「今すぐに役場に連絡して、村全域に非常事態宣言を出すよう伝えろ。
追加で伝えるなら、今見えているがオーク・ギアが3体、こちらに向かって接近してきているようだ。
今可愛げ満載の甥っ子が対処してくれるそうだ。オークが追加で来るならここにいる守備隊全員で、俺は甥っ子の救援でもやってくるぜ」
それだけ伝えてジークは無線を切り、操縦シートに乱暴に座りハッチを閉めた。
「お前らぁ!!今向かってきているのはオーク・ギア3体。
後方におそらく普通のオークもそこそこな数紛れているだろう!!
お前らは普通の方のオークの対処を頼む!!
俺は一人、オーク・ギアの対処に向かったフェイト・ガンザーラの救援に勝手に向かう!!
これまでのオークとのお遊戯会とはワケが違うぞ。ヤツらは本気で俺達を滅ぼしに来た。
おそらくこれから、人間とオークの全面戦争に突入する。でも初っ端が肝心だ。
ヤツらは人間を徹底的に舐め腐っている!!来るヤツら全員豚の丸焼きにしてやれやぁぁぁぁぁ!!!」
ジークの怒号が無線を通じて戦場に響き渡り、兵達の歓声、怒号がデレガナドの防壁中に響き渡った。
オークが投入したのはガーディアンシリーズと呼ばれた、暴徒鎮圧専用であり中型の生物の捕獲な特化した機神。
何故これを投入したのか意図は分からないが、こちら側の械人ならばまだ勝機はあるとジークは感じた。
「全械人、オークが持ってきたのはガーディアンタイプの機神だ。単独では絶対攻めるな!
必ずニから三機で迎撃、最低でも殲滅、可能ならば鹵獲だ。
元々は人間の造ったモンだから、返してもらおうぜ!!」
ジークは無線越しに怒鳴り散らし、檄を飛ばした。
そして一斉に、械人はビームベレッタやヒートナイフを構え、生身の戦闘員は一斉に銃の照準をオーク部隊に向けた。
「豚ヅラが大量に押し寄せて来るから、丸焼きにしてやれえええ!!!」
オーク部隊も部隊を展開、一斉に防壁に向かって殺到した。
人間の大半が居住する、東亜連邦の北西部に位置するひとつの村にて、かつて地球と呼ばれたこの星の最大規模の総力戦、"地星大戦"が始まった。
撃ち合い
斬り合い
殴り合い
蹴り倒し
薙ぎ倒す
人間同士でも、これ程の凄惨な戦場は類を見ない内容であろう。
銃弾は平面どころか頭上からも含めて無作為に飛び、塹壕は機動兵器の展開力により何の意味も成さず、果ては争うオークの素の戦闘能力は人間と比べても数倍にも及ぶ。
剣撃だけで銃弾や光線、弾頭を弾き返したり切断して捻じ伏せるものがいる。
別のオークは、わざと喰らって強引に近づき、人間の兵を雑に振り回しては地面にめり込ませたり、引き千切ったりしている。
蛮族らしく粗野な戦いをする者もいれば、しっかりと小隊を組んで人間然として部隊行動を取る者達もいる。
しかし、人間ももちろん、防戦一方ではなかった。
単独の力では敵わない事は皆百も承知で、歩兵部隊は四から五人の組み合わせで、オークを一人ずつ確実に屠っている。
中には、手練れのオークと同じく銃弾を剣で弾き返したり、後方の防壁の犬走からオークを狙うスナイパーは自身の撃った銃弾でオークの所持する戦車から放たれた砲弾に直接撃ち抜くと言う神業まで魅せる者もいる。
オークのような人間の力を上回る種族が出現したのに対し、人間ももちろん、進化を捨ててはいなかった。
テクノロジーだけに頼らず、自身の力量を徹底的に鍛錬する。
全ては生存を賭けた戦いに勝つ為に。
フェイトはそのような混沌とした乱戦の中、機動兵器のアグレッシブな戦闘の渦中にいた。
人間の軍の中でもフェイトの力量は頭三つは抜けていたようで、生身にも関わらず自身の愛用の銃身剣でオークの死体の山を築き、オークが搭乗しているガーディアンを単独で5機も撃破している。
少し息をついた時でも、後ろから襲い来るオークを振り向き様に、銃身剣を遠心力で回転させてスマートにオークの首を刎ねる。
オークの返り血と、少しの泥に塗れて、只でさえ出で立ちの黒いフェイトの全身は更に黒くなっていた。
「やるじゃねえかよ!!でも休んでんじゃねえぞ!!!」
ジークが拡声器で怒鳴りつけてくる。
伊邪那岐改はフェイトに背を向けて、次から次へと雪崩れ込むオークの有象無象をビームベレッタで乱射している。
「くそったれ!!ビームベレッタじゃ何にもならん!!!」
ジークが悪態をつくと同時に、Eパックの残量が全て尽きた。
これに伊邪那岐改はビームベレッタの銃身をオークの群れに向かって投げつけた。
いくら小型銃とは言え、機動兵器用なので長さは1.5mはあろうか、鉄の塊がオーク数十人程薙ぎ倒した。
「オークちゃん、ダンスしようぜぃ」
ふざけたジークは、コントロールレバーを指3本で摘まみながらアクセルを全開にした。
伊邪那岐改が古風な舞を踊るように、ヒートナイフを振りかざしてオークの群れを脚部で薙ぎ倒しつつ、ガーディアンの腕部の接続部を連撃し、攻撃不能に陥らせる。
更に、腰部からサイドマニピュレーターが一本飛び出し、強化装甲服を装備したオークを4、5人程雑に引っ掛け、ハンマー投げの要領で勢いよく投げ飛ばした。
勢い余ってその内二人は防壁の鉄板に直撃し、死んだ。
「ふぉーーーーー!!!これが剣の舞ってかああああ!!!」
トリップしたジークは更にコントロールレバーをこねくり回し、アクセルとブレーキを小刻みに踏みつける。
伊邪那岐改の舞が大きく派手な動きになり、縦の斬りつけが入って来た。
ガーディアンのコックピットハッチにヒートナイフを抉り込ませ、すぐに1機が戦闘不能。
その隣にいた別のガーディアンにも構える隙も与えずメインカメラに一閃、ヒートナイフを横に流し、間髪入れずに伊邪那岐改がバック転をしながらガーディアンの左胸部を抉る。
すぐにその1機も沈黙した。
この様子を見ても、フェイトは表情一つ変えず、自身もすぐに戦線復帰する。
銃身剣の台尻にあるスイッチを押し、銃と剣に分け、片手でライフル状の長い銃を片手で乱射しつつ、銃身についていた剣でオーク歩兵を、雑草を狩るように斬り倒していく。
何人かのオークはフェイトと伊邪那岐改の存在に目をつけ、我こそが倒さんと二人にかなりの数が殺到し始めた。
「なんだよかまってちゃんかーーー!?そんなに待てないのかよ辛抱強くない男は嫌われるぜーーーーー!!!!!」
ジークはまだトリップし続けていた。
飛び道具を失っていた為、例の“剣の舞”を繰り返しながら回転時にサイドマニピュレーターでオークの死体や機動兵器の残骸を引っ掴み、さながら人のように動く投石器と化した。
「機械で環境利用闘法とか、無茶苦茶なおっさんだな」
無表情でフェイトは一人毒づいた。
一瞬伊邪那岐改の動きに目をやった隙にオークが一人殴りつけようとして来たところ、フェイトは伊邪那岐改から目線を外さず後ろを向かずに、正確に剣でオークの喉を貫いた。
「卑怯な戦い方しか出来ねえのかよ、つまんね」
無愛想に吐き捨て、フェイトは再度行動開始した。
開戦からどれぐらい時間が経っただろうか。
オーク側が一旦、駐屯地手前まで一度撤退するようで一斉に退き始めた。
オーク側も被害は甚大だったようだが、割合で言えば人間側の方が致命的だった。
ざっと数にして、五千人だったのが千人にまで減少していた。
機動兵器も、応急処置して辛うじて動けるかどうかで、戦力低下どころか文字通りの戦闘不能寸前の状態だった。
「そういや、レベログラードへの援軍要請の返答はまだ来ねえのか!?あいつらいっつも高みの見物しやがって!!」
ジークは伊邪那岐改に乗ったまま、外に向けた拡声器をオンにしているのを忘れいた。
怒鳴り声が伊邪那岐改から発せられる。
「こるぁぁぁぁ!!!援軍要請は2時間前に出しただろがボケがぁ!!!
いっつもテメエら何だってそんなに遅いんだ!!!
こっちはいつもテメーらの要望に従ってやってんのによぉ、こんな時ぐらいシャキッと動けやあ!!!!!」
ジークは無線で何処かに回線を繋げて会話しているようである。
そして相手側に何かしら宥められる言葉を聞かされたのか、怒声は少し抑えつつもジークは不機嫌なまま答えた。
「おぉ、後1時間後来るんだな?今回のヤツらはまともなヤツらなんだろな?
指揮権はこっちが絶対に持つ。少しでも拒否するようなヤツらがいたら、このまま械人に乗ってそこまで行ってテメーらの拠点再起不能にしてやるからな」
ジークはそう吐き捨てて回線を切った。
そして伊邪那岐改のコックピットハッチが開く。
「今は負傷者の搬送、損耗率の低い兵器の応急修理をやってくれ!
くそったれな援軍は後1時間後到着するようだからそれまでに戦闘態勢を整えるぞ!!!」
それから数十分程してから、援軍が到着した。
だが、戦力の拡充、と言うには少し稚拙だった。
人数は1万人と、オーク軍に数ではタメを張れるぐらいにはなったが、如何せん、練度の低さが目に見えていた。
自分の銃すらもまともに組み上げられず、剣ですらも持つ手が震えている。
散っていった第一陣の大半の兵達の方が、粗野だが遥かに誇れる。
それが応援の方がまるで役に立たない。
次の戦闘は確実にやられる、そんな空気が第一陣の生存者の空気を支配した。
「かなりのボンクラばかりだな。七千人で三万を追い返した第一陣の戦いを見せればよかったな」
フェイトは目を見せないサングラス越しに毒づいた。
「たくよ、レベログラードの連中はどうも高単価な兵を寄越したがらない。
規模を聞いてすっかり尻込みしてやがるから役に立たねえよ。まあ、来てくれたこいつらには罪ねえんだけどよ
ジークは整備している手を止め、第二陣の様子を眺め、憐れむような目線を配った。
確かにやらかしているのはあくまでもレベログラードの傭兵企業であり、直接派兵された傭兵達には罪はない。
だがジークはこれまでにレベログラードからの応援受諾の内容には常に辟易していた。
しかも最も緊急事態であるこの最中でも、どこ吹く風で傍観している事に更に苛立てている。
「まあ、これが終わったらレベログラードの企業片っ端からぶっ壊して回るが・・・、て、なんだあれ?」
ジークは何かに気付き、オークが撤退した方向に向けて目を細めた。
つられて、フェイトも同じ方向を見た。
鈍く銀色に光る、人型のような何かが1体だけ、ホバー移動しているのか静かに、そして速く接近して来ていた。
双眼鏡を手に取ってジークはその銀色の対象を凝視したが、すぐに目を離してフェイトに怒鳴った。
「あれ何だ!?銀色のオークだぞ!!
オーク・ギアなのか!?」
そう言われフェイトはサングラスのフレームに指を二回、軽くタップした。
サングラスはどうやらズーム機能を持っているようで、フェイトの目にもその銀色の人型を捉える事が出来た。
「全員臨戦態勢で!!ヘタに手を出すな。あれは俺がやる!!」
そう言ってフェイトは銃身剣を乱暴に引っ掴み、更に手近にあった大剣や手榴弾を掴み上げた。
「オーク・ギアだ!!普通のオークや機動兵器はお前らに任せる!!
コイツだけは絶対に手を出すな!!!」
フェイトはジークに負けんばりの怒声を周囲に響かせた。
これに周囲の兵達は何事かとフェイトの駆けて行く方向を見据えると、全員言った事を理解したのか一斉に準備を急ぎ始める。
「オーク・ギアだと・・・?ホントにまずいんじゃねえのか??」
ジークも急いで、伊邪那岐改の整備を急ピッチで再開するが、ここで無線から怒声が発せられた。
「ジーク!!今誰かがオーク・ギアと言ってなかったか!?」
これにジークは怒鳴らず、しかし緊迫しているとしか思えない張り詰めた声で答えた。
「今すぐに役場に連絡して、村全域に非常事態宣言を出すよう伝えろ。
追加で伝えるなら、今見えているがオーク・ギアが3体、こちらに向かって接近してきているようだ。
今可愛げ満載の甥っ子が対処してくれるそうだ。オークが追加で来るならここにいる守備隊全員で、俺は甥っ子の救援でもやってくるぜ」
それだけ伝えてジークは無線を切り、操縦シートに乱暴に座りハッチを閉めた。
「お前らぁ!!今向かってきているのはオーク・ギア3体。
後方におそらく普通のオークもそこそこな数紛れているだろう!!
お前らは普通の方のオークの対処を頼む!!
俺は一人、オーク・ギアの対処に向かったフェイト・ガンザーラの救援に勝手に向かう!!
これまでのオークとのお遊戯会とはワケが違うぞ。ヤツらは本気で俺達を滅ぼしに来た。
おそらくこれから、人間とオークの全面戦争に突入する。でも初っ端が肝心だ。
ヤツらは人間を徹底的に舐め腐っている!!来るヤツら全員豚の丸焼きにしてやれやぁぁぁぁぁ!!!」
ジークの怒号が無線を通じて戦場に響き渡り、兵達の歓声、怒号がデレガナドの防壁中に響き渡った。
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年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。
ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。
毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。
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