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第八章 魔人決戦篇
EP213 宿命の分岐点
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"運命の交差点"を越えた先で、男は"宿命の分岐点"に立った。
選択肢は3つあるが、進める道は一つだけ。そんな避けようの無い選択の中に、正解は有ったのか。
その答えは、未来だけが知っている――。
―――――――――――――――――
「私たちが溶岩に・・・助かりました・・・!」
「あ、危なかったぁ・・・。」
「ひ、酷い匂いじゃのう・・・。」
溶岩に向かう道を、虚ろな目で歩く人々。
そんな彼らを引き止める事に成功した三人は、口々に感謝の言葉を述べられていた。
その先にあった牢獄には、さらに大勢が囚われており、その鍵も破壊して救出した。
「他に囚われてる人の居場所を知りませんか?」
「いやぁ、知らないねぇ・・・すまない。」
「分かりました。この城は空に浮いてますから、このままでは脱出できません。
私の重力魔法で、短時間だけ浮けるようにします。6時間以内に、この城を出て飛び降りてください。
出口への道は分からないと思うので、窓から出るようにしてください。」
「分かったよ!ありがとなお嬢さん!」
「いえいえ、大丈夫ですよ。・・・では!」
ミサラはそう言うと、大きく杖を振った。
杖の先からは淡い霧のような光が噴き出て、三人を囲む人々を包み込んだ。
「これで城から逃げられます!さぁ、急いで!」
「ありがとねぇ・・・お嬢ちゃん・・・。」
一人の老婆がミサラたちに会釈し、他の者たちもそれに続いた。そして綺麗に隊列を組みながら、廊下を歩んで行く。
すると、背後から――。
「征夜ーッ!」
「ん?」
「お待たせっ!」
駆け寄って来た花は、勢いよく征夜の背に抱き着いた。
「パラド、意外と弱かったんだね。」
「私の秘策にかかれば、あんなの楽勝よ!」
「そうだね。それじゃ、他に囚われてる人を探そう。」
征夜はそう言うと、三人を率いて城内の探索を再開した。
~~~~~~~~~~
「コレは・・・看板ですかね?」
征夜たちは城内の探索を進め、他にも囚われていた人々を多く発見した。
その度にミサラの魔法で宙に浮く体にし、城からの退出を促した。
囚われている人は他にも居るらしいが、見つけられる範囲ではもう居ない。ならば、先にラースを叩いた方が良い。
そんな事を思っていた中、四人は一枚の看板を見つけたのだ――。
――――――――――――――
やぁ!僕はパラド!ラースに会いたいのかな?
そんなお客様は、3つの道から選んでね!全部が繋がってるかは分からないけど!アハハッ!
①魔法で回避するトラップがいっぱい!魔法が使えないと死んじゃうかも!?
②アスレチックだよぉッ!非力な子には向いてないね!ムキムキボディに自信はあるかい!?
③モンスターがいっぱい!とっても危ないよ!でも、護衛が多くて当然だよね?王様に会うんだから!
――――――――――――――
「ふざけた野郎だ。」
とっくにキレていた征夜は、乱暴な口調で吐き捨てた。この城に来てから、彼の"眼術"は収まる事がない。
「この場合、どれか一つしか奴には繋がってない筈だ。
けど、急がないと瞬間移動が回復する。ここは、それぞれ別に進むしかねぇな。」
「奴の言った事に従うのは癪だが、聞いてやるしかない。
①がミサラ、②がシンで、③が俺らだ。」
征夜は素早くチーム分けを決めた。
と言うよりも、ラースはこのチームで来る事を望んでいたのだろう。
魔法が使える者にしか、①の道は無理。ミサラ以外の魔法は封印されているので、通れない。
どんなトラップか分からないが、たとえミサラを先行させても花が着いて行くのはリスキーだ。
アスレチックを越えられる者にしか、②の道は無理。征夜とシンは通れるが、花には絶対に無理だ。
そうなると自然に、③の道が征夜と花になる。
(コイツに乗らされてるみたいで、気色わりぃな・・・。
まぁ良い、殺すのは後だ。見つける事を優先する。)
内心で悪態を吐きながら、征夜は③の道に立った。
眼術の使い過ぎなのか、物凄く眼球が痛い。しかし、コレを解除するのは自殺行為だ。
「行くぞ。油断するな。」
「征夜と一緒なら大丈夫。信じてるから。」
「さっさと野郎を殺して、飯食いに行こうぜ。」
「少将も、油断しないでくださいね。」
四人は顔を見合わせ、円陣を組んで手を出した。
それぞれの手は互いの甲に重なり合い、熱を伝え合って結束を確かめる。
「さぁ・・・行こうか。」
征夜の合図で3手に別れた4人は背を向け、それぞれの道に立った。
この先に"宿命の敵"が居る。それを倒す為に、今日まで戦い続けたのだ。
思い返せば、長い旅だった。この戦いが勝利でも、敗北でも、全てが今日で終わる。
分かたれた道の先で、自分達は再び出会う。
そして、"足並みを揃えて"ラースに戦いを挑むのだと。そう信じて、征夜たちは微塵も疑わなかった。
彼らはまだ、知る由も無い。
この三つの分岐点が、"各々の宿命"へと誘いざなう"下り坂"であると。
分かたれた道の先に、合流点は無い。ただひたすらに破滅へ向けて、転がり落ちていくだけだ。
そして、征夜たちは知らなかった。
他でもないこの場所で、仲間の一人が栄光の道から"脱落"する事を――。
選択肢は3つあるが、進める道は一つだけ。そんな避けようの無い選択の中に、正解は有ったのか。
その答えは、未来だけが知っている――。
―――――――――――――――――
「私たちが溶岩に・・・助かりました・・・!」
「あ、危なかったぁ・・・。」
「ひ、酷い匂いじゃのう・・・。」
溶岩に向かう道を、虚ろな目で歩く人々。
そんな彼らを引き止める事に成功した三人は、口々に感謝の言葉を述べられていた。
その先にあった牢獄には、さらに大勢が囚われており、その鍵も破壊して救出した。
「他に囚われてる人の居場所を知りませんか?」
「いやぁ、知らないねぇ・・・すまない。」
「分かりました。この城は空に浮いてますから、このままでは脱出できません。
私の重力魔法で、短時間だけ浮けるようにします。6時間以内に、この城を出て飛び降りてください。
出口への道は分からないと思うので、窓から出るようにしてください。」
「分かったよ!ありがとなお嬢さん!」
「いえいえ、大丈夫ですよ。・・・では!」
ミサラはそう言うと、大きく杖を振った。
杖の先からは淡い霧のような光が噴き出て、三人を囲む人々を包み込んだ。
「これで城から逃げられます!さぁ、急いで!」
「ありがとねぇ・・・お嬢ちゃん・・・。」
一人の老婆がミサラたちに会釈し、他の者たちもそれに続いた。そして綺麗に隊列を組みながら、廊下を歩んで行く。
すると、背後から――。
「征夜ーッ!」
「ん?」
「お待たせっ!」
駆け寄って来た花は、勢いよく征夜の背に抱き着いた。
「パラド、意外と弱かったんだね。」
「私の秘策にかかれば、あんなの楽勝よ!」
「そうだね。それじゃ、他に囚われてる人を探そう。」
征夜はそう言うと、三人を率いて城内の探索を再開した。
~~~~~~~~~~
「コレは・・・看板ですかね?」
征夜たちは城内の探索を進め、他にも囚われていた人々を多く発見した。
その度にミサラの魔法で宙に浮く体にし、城からの退出を促した。
囚われている人は他にも居るらしいが、見つけられる範囲ではもう居ない。ならば、先にラースを叩いた方が良い。
そんな事を思っていた中、四人は一枚の看板を見つけたのだ――。
――――――――――――――
やぁ!僕はパラド!ラースに会いたいのかな?
そんなお客様は、3つの道から選んでね!全部が繋がってるかは分からないけど!アハハッ!
①魔法で回避するトラップがいっぱい!魔法が使えないと死んじゃうかも!?
②アスレチックだよぉッ!非力な子には向いてないね!ムキムキボディに自信はあるかい!?
③モンスターがいっぱい!とっても危ないよ!でも、護衛が多くて当然だよね?王様に会うんだから!
――――――――――――――
「ふざけた野郎だ。」
とっくにキレていた征夜は、乱暴な口調で吐き捨てた。この城に来てから、彼の"眼術"は収まる事がない。
「この場合、どれか一つしか奴には繋がってない筈だ。
けど、急がないと瞬間移動が回復する。ここは、それぞれ別に進むしかねぇな。」
「奴の言った事に従うのは癪だが、聞いてやるしかない。
①がミサラ、②がシンで、③が俺らだ。」
征夜は素早くチーム分けを決めた。
と言うよりも、ラースはこのチームで来る事を望んでいたのだろう。
魔法が使える者にしか、①の道は無理。ミサラ以外の魔法は封印されているので、通れない。
どんなトラップか分からないが、たとえミサラを先行させても花が着いて行くのはリスキーだ。
アスレチックを越えられる者にしか、②の道は無理。征夜とシンは通れるが、花には絶対に無理だ。
そうなると自然に、③の道が征夜と花になる。
(コイツに乗らされてるみたいで、気色わりぃな・・・。
まぁ良い、殺すのは後だ。見つける事を優先する。)
内心で悪態を吐きながら、征夜は③の道に立った。
眼術の使い過ぎなのか、物凄く眼球が痛い。しかし、コレを解除するのは自殺行為だ。
「行くぞ。油断するな。」
「征夜と一緒なら大丈夫。信じてるから。」
「さっさと野郎を殺して、飯食いに行こうぜ。」
「少将も、油断しないでくださいね。」
四人は顔を見合わせ、円陣を組んで手を出した。
それぞれの手は互いの甲に重なり合い、熱を伝え合って結束を確かめる。
「さぁ・・・行こうか。」
征夜の合図で3手に別れた4人は背を向け、それぞれの道に立った。
この先に"宿命の敵"が居る。それを倒す為に、今日まで戦い続けたのだ。
思い返せば、長い旅だった。この戦いが勝利でも、敗北でも、全てが今日で終わる。
分かたれた道の先で、自分達は再び出会う。
そして、"足並みを揃えて"ラースに戦いを挑むのだと。そう信じて、征夜たちは微塵も疑わなかった。
彼らはまだ、知る由も無い。
この三つの分岐点が、"各々の宿命"へと誘いざなう"下り坂"であると。
分かたれた道の先に、合流点は無い。ただひたすらに破滅へ向けて、転がり落ちていくだけだ。
そして、征夜たちは知らなかった。
他でもないこの場所で、仲間の一人が栄光の道から"脱落"する事を――。
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