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第三章 シャノン大海戦編
EP95 蒸発 <☆>
しおりを挟むフシュフシュと音を立てて、人型の黒い肉塊が蒸気として大気に融け込んでいく。
先程まで可憐な笑顔を浮かべていた花は、今や人の形をしていないのだ。
白い歯がむき出しとなった状態で、体は黒い膜に包まれたかのように焦げている。
もはや、安否の確認などは必要無い。
痙攣すらしなくなった彼女は、紛れもなく死んでいる。
「お、おい・・・。冗談だよな?おい・・・!!!」
シンは意を決して肉塊に話しかける。しかし、返事は無い。
「おい!なんか言えよ!!!」
花の肩を揺さぶるが、細かい焦げが指に付着するのみで、花はピクリとも動かない。
「触っちまうぞ~?それでもいいのか~?」
胸部に軽く手を当てても、石のように硬い感触があるだけで、何の反応も得られない。
「ま、マジで死んでる・・・・のか・・・。」
涙さえ出て来ないほどの虚しさが、心を満たしていく。
悲壮感が思考を覆い隠した時、シンは正常な思考が出来なくなった。
「ハハッ!そうか!電気で治そう♪心臓は電気信号で動くもんな♪
もっかいあの部屋に入れば、花は生き返るさ!焦げたぐらいは余裕だ!」
シンは本当の意味で、"常人には理解不能な論理"を立てた。
花の足先を掴んで、あの部屋へと投げ入れるために、乱雑な手つきで引いて行く。
「もうちょっとの辛抱だ。この手に取り戻してやるぞ・・・アメリア!!!」
シンはいよいよ、本気で頭がおかしくなって来た。
花を引きづっている筈なのに、"全然違う女性の名前"を叫んでいる。
以前、長旅で心を病んだ時も、同じようなトランス状態に陥った。今回もそれが、また起こったのかもしれない。
「さぁ・・・アメリア・・・もう一度、俺にその笑顔を見せてくれ・・・。」
そう言うと、シンは花を部屋に投げ入れようとしたが――。
寸手のところで、正気を取り戻した。
「ちょっと!アンタ私を殺す気なの!!??」
「・・・はっ!?」
振り向くと、花の顔を覆う黒い膜が剥がれ落ち、その下から可憐な素顔が覗いていた。
~~~~~~~~~~
「えぇぇぇぇぇぇっっっ!!!???」
「これ取ってくれない?自分じゃ剥がせないわ・・・。」
花は自分の体を覆っている厚い殻を、破るように指示する。
「お、おう・・・。」
シンはそう言うと、丁寧な手つきで花を保護するように生成された外殻を取り剥がした。
「あぁ~・・・助かった・・・。流石に声も出せなかった時は死んだかと思ったわ・・・。」
花は殻の中にいる間、体を動かせないどころか、声すら出せなかったようだ。
シンの呼びかけに答えなかったのは、それが理由である。
「危なかったな、もう少しでお前に、トドメを刺すところだった・・・。」
シンは冷や汗をかいた。
自分でも何故か分からないが、花を再び危険地帯へと放り込もうとしていたのだ。
「でも、何で助かったんだ?明らかにヤバい量の電撃だったけど・・・。」
シンは不思議そうに質問するが、彼女にも理由が分からない。
起き上がった花は、不思議そうに首をかしげる。体に不調が無いか確かめようと、大きく伸びをしてみる。
「何で助かったのかし・・・・・・んっ♡」
天井に向けて腕を伸ばした花は、甘い喘ぎを漏らしてしまった。
幸いにもシンには聞かれていないが、今はそれどころじゃない。
「こ、これ・・・もしかして・・・。」
何を思ったのか、自分の胸をラッシュガードの上から揉みしだいた。
その様子は、何かを"確認している"ようにも見える。
「おい・・・人前でするなよ・・・。」
シンは花の動作からナニかを連想したようで、完全に引いている。
「違うわよ!この馬鹿ッ!!あっち向いといて!!」
言われた通りにシンが後ろを向くと、花はラッシュガードのチャックを下ろした。
ぷるんっ♡とたゆたいながら、白く豊穣な双丘が勢いよくまろび出る。
それは子を育むための果実であり、女性の象徴でもある物。だからこそ、水着で保護する必要があるのだが――。
「な、無いッ!!??」
「どうしたんだ?」
シンは後ろを向いたまま、静かに聞き返す。あまり興味はなさそうだ。
しかし次の一言で完全に興味をひかれた。
「私の水着が無いのよ!!!」
先端しか隠れていないような、かなり卑猥な水着ではあった。
だが一応、最も重要な部分だけは辛うじて隠されていた。
今では、それすら存在しない。
さっき腕を伸ばした時、ラッシュガードと敏感な性感帯が擦れ、痺れるような快感を覚えた。
守る物が無くなった無防備な突起は、上着に擦れた痛みと快感で濃いピンクに染まり、上着からでも分かるほど隆起している――。
花は心底慌てた様子で、不思議な報告をした。しかし、シンはその隙を見逃さない。
「そんなわけ無いだろ!俺が探してやるよ!!」
自然な調子で振り向いたシンは、花の胸元を覗き込もうと背後から近寄っていく。
しかし、彼女は素早くチャックを上げ、彼の下顎に向けて軽いアッパーを喰らわせた――。
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