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第七章 天空の覇者編
EP189 杖の力 <☆>
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ラースの猛攻を退けた後に征夜と花、ミサラの三人は焚き火を囲んで温まっていた。
「ほんとに助かったよ・・・君が居なかったら、どうなってたか・・・。」
「いえいえ!お安い御用ですよ!新しい杖の試し撃ちをしたかったので!」
「私からもお礼を言わせて。ありがとうミサラちゃん・・・!」
「あぁ、はい。」
征夜と花では、応対に天と地ほどの差がある。
だが彼女は、冷たくあしらわれた事にもめげず、もっと仲を深めようとする。
「その杖、新しい奴よね!?凄い物なの!?」
「はい。凄いです。」
「どんな感じなの?魔法使いって、杖が変わると全然違うの?」
「そりゃもう!全然違います!魔法の威力も、魔法のレベルも、使える種類だって!以前とは段違いですよ!」
ミサラは自慢げに胸を張った。
そして、バッグから征夜の財布を取り出す。
「少将!本当にありがとうございました!
20ファルゴ・・・私では、とても買えない値段でした!」
「良いよ良いよ!慰謝料だと思って!」
「え?慰謝料・・・?」
慰謝料と言う単語に対し、ミサラは敏感に反応した。
自分に渡された財布は、信頼の証ではなかったのか。自分の事を恋人として信じたからだと、彼女は思っていた。
「あの・・・少将・・・この財布は・・・慰謝料のつもりで・・・。」
「・・・語弊があったね。これは、君への感謝と労いのつもりで渡したんだ。
仲間として、友人として、君を大切に思っている。そんな気持ちを表したつもりだよ。」
「え・・・征夜、何を言ってるの・・・?」
ミサラと花は、一緒に困惑していた。
二人の中で、ミサラは他でもない征夜の恋人だったのだ。
花としても、それは認めていた。自分は”守られる対象”であって、恋人とは違うのだと。
「少将・・・私は・・・あなたの何ですか?」
「何って・・・ガールフレンド・・・?」
「待ちなさい征夜。・・・それは、恋人って意味なの?」
花は少し怒ったような、何かを察したような顔をしている。
これまでに征夜が放った言葉、その矛盾や違和感が一気に押し寄せたような気持ちだ――。
「恋人?・・・いや、”女友達”って意味だけど。」
「・・・えっ?」
「嘘でしょ・・・。」
困惑したようなミサラの表情と、呆れ果てたような花の表情。
それを見た征夜は、何かがおかしい事を察し始める。
「二人とも・・・どうかしたの・・・?」
「えぇと・・・少将・・・ガールフレンドって言うのは・・・。」
ミサラはそこから、英語音痴の征夜に対して単語の意味を説明した。
そして、自分がこれまで考えていた彼との関係性、それによって生じた違和感について、詳しく説明する。
「という事は・・・君は僕を・・・恋人だと・・・?」
「はい・・・思ってました・・・。」
「・・・本当にごめん!!!」
自分の勘違いによって、ミサラを振り回してしまった。
彼女が自分に好意を持っている事は、僅かながら分かっていた。
だからこそ、この勘違いが彼女を傷つけた事も理解できる。
「傷付けるつもりじゃなかったんだ!ほんとに、知らなくて!」
河原に膝を付いて、征夜は盛大な土下座をした。
この行為は、決して許される事ではない。意味も無くミサラを傷つけ、心を弄んでしまったのだ。
「だ、大丈夫です。・・・何となく、気付いてましたから。」
聡い彼女は、違和感に気付いていた。
自分は、もしかしたら恋人ではないのかも。そんな事は、とうに疑っていた。
「私・・・もう寝ます・・・おやすみなさい・・・。」
「あっ、待ってくれ!ミサラッ!!!」
征夜は彼女に追い縋ろうとするが、足元の砂利に躓いて転んでしまう。
もがく彼の背後には、”満面の笑み”を浮かべた花が立っていた。
「花・・・?」
「彼女は恋人じゃなかったのね。」
「僕の恋人は、君しかいないよ!あれは、本当に勘違いで・・・。」
「そっか・・・良かった・・・!」
花は征夜の右手を握って、起き上がるのを手助けする。
「なんて言うと思った?」
「えっ?・・・うわぁっ!!!」
ドサッ!
花は途中で、ワザと手を離した。
支えを失った征夜の体は、再び砂利の中へと墜落する。
「ミサラちゃんが可哀想よ!恥を知りなさい!この大馬鹿者がッ!!!」
「お”ごぉ”ッ!!!」
体勢を崩した彼の側頭部を、花は力の限り蹴り倒した。
先ほどの笑みは、皮肉と演技の賜物。それを取り払った花の顔は、”般若の如き形相”だ。
「は、花・・・!」
「もう知らないから!!!」
「い”っ”だぁ”い”ッ!!!」
花は征夜の脛を踏み付けて、ソソクサと歩いて行った――。
~~~~~~~~~~
征夜に制裁を加えた後、花はミサラのテントに訪れていた。
「ミサラちゃん・・・ちょっと良いかな・・・?」
「放っといてください!!!」
「彼にも、悪気があったわけじゃなくて・・・。」
「聞きたくないです!!!」
彼女は怒っているというよりも、現実を直視出来てないらしい。
花の親切心も跳ね除け、テントの中に篭ってしまう。
「あ、あのね・・・辛かったら、相談に乗るから・・・。」
「・・・それは余裕ですか?」
「え?」
ミサラは幼少より、貧しく過酷な環境で育って来た。母は産後直後に死に、父は犯罪で生計を立てていた。
だから、征夜のような"お坊ちゃん"は勿論、温かい一般家庭で育った花や、暴走族仲間に囲まれて育ったシンとも、感覚が違う。
早い話、簡単には人を信用出来ないのだ。自分に言われた言葉は、全て裏を読んでしまう。
彼女の巨乳嫌いはコンプレックス以外にも、義母になりかけた女の存在がある。
父は一度、一人の巨乳な女性と再婚を試みた。だが、その女はミサラを虐めようとした。だから、父の方から再婚を断った。
そんな事があったから、彼女の人間不信は特に酷い。特に巨乳な女性は、それだけで無理なのだ。
人間離れした美巨乳を持つセレアは、彼女に懐かれていた。だが、それは特例中の特例。
彼女から溢れ出る善人のオーラと裏表の無い顔が、ミサラの信用を勝ち取ったらしい。
「あなたは彼の恋人だから、そんな余裕があるんでしょ!?」
「ち、違うよ・・・ただ、私は・・・。」
「もう良いです!どっか行って!!!誰とも話したくない!!!」
「ミサラちゃん・・・。」
掛ける言葉が見つからない花は、トボトボとテントに戻って行った。
中に引き篭もったままのミサラの怒りは、行き場を失ってのたうち回る。
「何よ!何よ何よ何よ!!!私の・・・私の少将なのに・・・っ!」
彼女からすれば、1ヶ月も恋人だと思っていた男が、ポッと出の女に奪われた気分なのだ。
その立場はむしろ彼女の方だが、そんな事を気にする余裕もない。
「少将は・・・少将は絶対に渡さないから!!!」
ミサラは花と戦う事を、暗闇の中で決意した。
~~~~~~~~~~
花たちが寝静まった頃、テセウスはヒノキの大樹の先端に片足を乗せ、征夜のテントを眺めていた。
「あの馬鹿野郎が・・・。」
「無知ゆえの罪です。仕方ないとしか・・・。」
雷夜は呆れた表情で、眼下と主君を交互に見つめていた。その瞳は、どこか憐れんでいるようだ。
「それはそうと、ミサラ・・・普通に天才だな。」
「エレメントロードではありませんが、現時点のポテンシャルは"砂武"と同等ですね・・・。」
「惜しい話だ。環境と言うか・・・まぁ、なんだ。”運命”と言うか・・・。」
「親衛隊に引き入れますか?あの少女なら、訓練次第で・・・。」
「摂理を塗り替えるのは、私としても好きではない。
・・・やって来た事は、取り消せない罪だがね・・・。」
「この話は・・・もうやめましょう・・・。」
暗いムードに包まれた会話の流れを、雷夜は断ち切った。
より建設的な方向へと、話題をシフトする。
「良かったのですか?花様の心を覗くなど・・・。」
雷夜は怒りと心配の篭った表情で、主君を見つめている。
花を傷つける相手を許さない彼だが、今回は至って冷静だった。
「手を出せなくて悔しいが、アイツは"舞台装置"なんだよ。
伝説には悪役が必要だ。だから、"吹雪征夜に殺してもらう"必要がある。」
「承知・・・いたしました・・・。」
「この世界に、"アイツ"の気配が無い。
私は一足先に、ラウンド2に向かうとするよ。」
「"戦乱の世界"ですね。」
「そうだ。お前には、もう少しだけ残ってもらう。
困った事があったら言いなさい。いつでも駆け付けるからな。」
「承知いたしました。必ずや遂行いたします。」
「肩の力を抜いて良いぞ。
この世界で、お前に敵う奴は居ない。そろそろ、ラースがキャンプ客を連れ去りに来る。
・・・それじゃ、頼んだぞ。」
テセウスは雷夜を優しく抱きしめると、星空へ飛翔した――。
「ほんとに助かったよ・・・君が居なかったら、どうなってたか・・・。」
「いえいえ!お安い御用ですよ!新しい杖の試し撃ちをしたかったので!」
「私からもお礼を言わせて。ありがとうミサラちゃん・・・!」
「あぁ、はい。」
征夜と花では、応対に天と地ほどの差がある。
だが彼女は、冷たくあしらわれた事にもめげず、もっと仲を深めようとする。
「その杖、新しい奴よね!?凄い物なの!?」
「はい。凄いです。」
「どんな感じなの?魔法使いって、杖が変わると全然違うの?」
「そりゃもう!全然違います!魔法の威力も、魔法のレベルも、使える種類だって!以前とは段違いですよ!」
ミサラは自慢げに胸を張った。
そして、バッグから征夜の財布を取り出す。
「少将!本当にありがとうございました!
20ファルゴ・・・私では、とても買えない値段でした!」
「良いよ良いよ!慰謝料だと思って!」
「え?慰謝料・・・?」
慰謝料と言う単語に対し、ミサラは敏感に反応した。
自分に渡された財布は、信頼の証ではなかったのか。自分の事を恋人として信じたからだと、彼女は思っていた。
「あの・・・少将・・・この財布は・・・慰謝料のつもりで・・・。」
「・・・語弊があったね。これは、君への感謝と労いのつもりで渡したんだ。
仲間として、友人として、君を大切に思っている。そんな気持ちを表したつもりだよ。」
「え・・・征夜、何を言ってるの・・・?」
ミサラと花は、一緒に困惑していた。
二人の中で、ミサラは他でもない征夜の恋人だったのだ。
花としても、それは認めていた。自分は”守られる対象”であって、恋人とは違うのだと。
「少将・・・私は・・・あなたの何ですか?」
「何って・・・ガールフレンド・・・?」
「待ちなさい征夜。・・・それは、恋人って意味なの?」
花は少し怒ったような、何かを察したような顔をしている。
これまでに征夜が放った言葉、その矛盾や違和感が一気に押し寄せたような気持ちだ――。
「恋人?・・・いや、”女友達”って意味だけど。」
「・・・えっ?」
「嘘でしょ・・・。」
困惑したようなミサラの表情と、呆れ果てたような花の表情。
それを見た征夜は、何かがおかしい事を察し始める。
「二人とも・・・どうかしたの・・・?」
「えぇと・・・少将・・・ガールフレンドって言うのは・・・。」
ミサラはそこから、英語音痴の征夜に対して単語の意味を説明した。
そして、自分がこれまで考えていた彼との関係性、それによって生じた違和感について、詳しく説明する。
「という事は・・・君は僕を・・・恋人だと・・・?」
「はい・・・思ってました・・・。」
「・・・本当にごめん!!!」
自分の勘違いによって、ミサラを振り回してしまった。
彼女が自分に好意を持っている事は、僅かながら分かっていた。
だからこそ、この勘違いが彼女を傷つけた事も理解できる。
「傷付けるつもりじゃなかったんだ!ほんとに、知らなくて!」
河原に膝を付いて、征夜は盛大な土下座をした。
この行為は、決して許される事ではない。意味も無くミサラを傷つけ、心を弄んでしまったのだ。
「だ、大丈夫です。・・・何となく、気付いてましたから。」
聡い彼女は、違和感に気付いていた。
自分は、もしかしたら恋人ではないのかも。そんな事は、とうに疑っていた。
「私・・・もう寝ます・・・おやすみなさい・・・。」
「あっ、待ってくれ!ミサラッ!!!」
征夜は彼女に追い縋ろうとするが、足元の砂利に躓いて転んでしまう。
もがく彼の背後には、”満面の笑み”を浮かべた花が立っていた。
「花・・・?」
「彼女は恋人じゃなかったのね。」
「僕の恋人は、君しかいないよ!あれは、本当に勘違いで・・・。」
「そっか・・・良かった・・・!」
花は征夜の右手を握って、起き上がるのを手助けする。
「なんて言うと思った?」
「えっ?・・・うわぁっ!!!」
ドサッ!
花は途中で、ワザと手を離した。
支えを失った征夜の体は、再び砂利の中へと墜落する。
「ミサラちゃんが可哀想よ!恥を知りなさい!この大馬鹿者がッ!!!」
「お”ごぉ”ッ!!!」
体勢を崩した彼の側頭部を、花は力の限り蹴り倒した。
先ほどの笑みは、皮肉と演技の賜物。それを取り払った花の顔は、”般若の如き形相”だ。
「は、花・・・!」
「もう知らないから!!!」
「い”っ”だぁ”い”ッ!!!」
花は征夜の脛を踏み付けて、ソソクサと歩いて行った――。
~~~~~~~~~~
征夜に制裁を加えた後、花はミサラのテントに訪れていた。
「ミサラちゃん・・・ちょっと良いかな・・・?」
「放っといてください!!!」
「彼にも、悪気があったわけじゃなくて・・・。」
「聞きたくないです!!!」
彼女は怒っているというよりも、現実を直視出来てないらしい。
花の親切心も跳ね除け、テントの中に篭ってしまう。
「あ、あのね・・・辛かったら、相談に乗るから・・・。」
「・・・それは余裕ですか?」
「え?」
ミサラは幼少より、貧しく過酷な環境で育って来た。母は産後直後に死に、父は犯罪で生計を立てていた。
だから、征夜のような"お坊ちゃん"は勿論、温かい一般家庭で育った花や、暴走族仲間に囲まれて育ったシンとも、感覚が違う。
早い話、簡単には人を信用出来ないのだ。自分に言われた言葉は、全て裏を読んでしまう。
彼女の巨乳嫌いはコンプレックス以外にも、義母になりかけた女の存在がある。
父は一度、一人の巨乳な女性と再婚を試みた。だが、その女はミサラを虐めようとした。だから、父の方から再婚を断った。
そんな事があったから、彼女の人間不信は特に酷い。特に巨乳な女性は、それだけで無理なのだ。
人間離れした美巨乳を持つセレアは、彼女に懐かれていた。だが、それは特例中の特例。
彼女から溢れ出る善人のオーラと裏表の無い顔が、ミサラの信用を勝ち取ったらしい。
「あなたは彼の恋人だから、そんな余裕があるんでしょ!?」
「ち、違うよ・・・ただ、私は・・・。」
「もう良いです!どっか行って!!!誰とも話したくない!!!」
「ミサラちゃん・・・。」
掛ける言葉が見つからない花は、トボトボとテントに戻って行った。
中に引き篭もったままのミサラの怒りは、行き場を失ってのたうち回る。
「何よ!何よ何よ何よ!!!私の・・・私の少将なのに・・・っ!」
彼女からすれば、1ヶ月も恋人だと思っていた男が、ポッと出の女に奪われた気分なのだ。
その立場はむしろ彼女の方だが、そんな事を気にする余裕もない。
「少将は・・・少将は絶対に渡さないから!!!」
ミサラは花と戦う事を、暗闇の中で決意した。
~~~~~~~~~~
花たちが寝静まった頃、テセウスはヒノキの大樹の先端に片足を乗せ、征夜のテントを眺めていた。
「あの馬鹿野郎が・・・。」
「無知ゆえの罪です。仕方ないとしか・・・。」
雷夜は呆れた表情で、眼下と主君を交互に見つめていた。その瞳は、どこか憐れんでいるようだ。
「それはそうと、ミサラ・・・普通に天才だな。」
「エレメントロードではありませんが、現時点のポテンシャルは"砂武"と同等ですね・・・。」
「惜しい話だ。環境と言うか・・・まぁ、なんだ。”運命”と言うか・・・。」
「親衛隊に引き入れますか?あの少女なら、訓練次第で・・・。」
「摂理を塗り替えるのは、私としても好きではない。
・・・やって来た事は、取り消せない罪だがね・・・。」
「この話は・・・もうやめましょう・・・。」
暗いムードに包まれた会話の流れを、雷夜は断ち切った。
より建設的な方向へと、話題をシフトする。
「良かったのですか?花様の心を覗くなど・・・。」
雷夜は怒りと心配の篭った表情で、主君を見つめている。
花を傷つける相手を許さない彼だが、今回は至って冷静だった。
「手を出せなくて悔しいが、アイツは"舞台装置"なんだよ。
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「承知・・・いたしました・・・。」
「この世界に、"アイツ"の気配が無い。
私は一足先に、ラウンド2に向かうとするよ。」
「"戦乱の世界"ですね。」
「そうだ。お前には、もう少しだけ残ってもらう。
困った事があったら言いなさい。いつでも駆け付けるからな。」
「承知いたしました。必ずや遂行いたします。」
「肩の力を抜いて良いぞ。
この世界で、お前に敵う奴は居ない。そろそろ、ラースがキャンプ客を連れ去りに来る。
・・・それじゃ、頼んだぞ。」
テセウスは雷夜を優しく抱きしめると、星空へ飛翔した――。
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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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