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序章 登録試験編

EP10 転生者

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「な、何を言い出すんですか!私が転生者?そんなことあるわけ無いじゃないですか♪」

 一瞬凍りついた顔に、作ったような笑みが戻った。

「君は、すり鉢を知っているね。
 ギルドの酒場で1ヶ月働いたけど、あれだけ巨大な調理場なのに、僕は一度もすり鉢を見たことがな」

 そこまで言って、彼女に言葉を遮られた。

「それは調理場が広すぎて、どこに仕舞ってあるか分からないだけです!
 探したらきっと出てきます!それに私の家には、すり鉢が何種類もあります!」

「確かにあるだろう。だが、それはきっと君が自作したんじゃないか?
 第二に、君は5億円と言う単語も知っているだろう?
 好奇心旺盛な君のことだ。知らない単語を質問せずに置くはずがない。」

 清也は追い討ちをかけるように二つ目の根拠を言った。
 それを聞いたフラウの方は、明らかに動揺し始める。

「そ、それは疲れていて、話を細かく聞いていなかったんです!」

「それに、君は1ヶ月近くあの酒場でパーティに入れてもらえずにいたね?
 なぜ君が事前に開示される事の無い試験の情報を知っていたのか。
 それは1ヶ月前の試験に、1人で申し込んで当日に門前払いされたからじゃないのか?
 そして何故、君がパーティに入れてもらえなかったのか?それは、君の能力が弱いからじゃない。それは君が」

「やめて!」

 フラウは叫んだが、清也は止まらない。

「転生者だからに他ならない。」

 無情にも、清也は言い切った。彼女の拒絶を、彼は受け入れ無かった。



 数秒間の沈黙があった後、彼女は俯きながらこう言った。

「だって・・・誰も仲間に入れてくれないんだもん・・・!
 私は何もしてないのに、みんなが私を避ける・・・。
 最初に話しかけた人が大声で私を転生者だと言ったせいで、翌日には噂が町の冒険者のほとんどに広まって、誰も私を仲間に入れてはくれなかった!」

 号泣し、ポツポツと本音を打ち明け始める。
 清也には、彼女の感情が理解出来た。知り合いのいない土地で、新たに友人を作ろうにも誰からも拒絶される孤独。
 そんな残酷な世界に、彼女は一ヶ月も晒され続けて来たのだ。

 清也には、宿泊先のご老人がいた。快活とは言い難いが、優しくて穏やかな紳士は、少なからず彼の心にゆとりを与えていた。
 しかし、フラウにはそれが無い。ただひたすら、存在を疎まれながらも仲間を探す日々。そんな毎日を一ヶ月も送ってきたのだ。

「だけど、あなたになら、みんなに拒絶されたあなたになら、歓迎してもらえると思った。それなのに・・・。
 さようなら。私といると、あなたまで疎まれてしまうものね・・・。
 あなたとの冒険、短かったけど楽しかったわ。騙して・・・ごめんなさい・・・。」

 失望と懺悔、そして何よりも喪失感に満ちた声で、フラウは清也から逃げ出した。彼女は、清也に疎まれていると思ったのだろう。



 しかし、清也は即座に追いかけて、彼女の手を優しく掴んだ。

「いや、君はもう僕の仲間だよ!怖がらせてごめん・・・。一度、腹を割って話すべきだと思ったんだ。」

 すると、フラウは振り向いてこう言った。

「それでも、やっぱりあなたには迷惑をかけれない!
 必死になって私を助けてくれて本当に嬉しかった。だから、離れたく無くなった。だけど・・・。」

 今度は清也が言葉を遮った。そして勢いよく、フラウを納得させる最強のカードを切った。

「僕も、転生者なんだ!」

 それを聞いたフラウの顔に、困惑の色が広がった。
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