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2章 アンジェラス1は軍部で活躍します
55話 アードリアとの別れ
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「ギィート、今日の弁当取りにきたよ。」
「おう、時間ぴったりだな!」
快活な茶髪の男性は、大将軍になった日からずっと弁当を作り続けてくれたシェフである。
「今日は何を作ったの?」
「今日は、ローストビーフだ。他には、甘めの野菜が入ってるな。」
「ほんと!?やったー!」
ローストビーフは、とても美味しいから有難い。
「いつも有難うっ!!」
弁当を受け取り、手を振りながら厨房から出る。
『相変ワラズ、シェフハイイ親父ノ様ニ見エルナ。』
「そうなの?」
『アァ、マルデ、娘ニ接スル様ナ態度ダ。』
「ふぅん……」
感慨深げに告げるフェンリルは、何を連想しているのか、少し声が低い。
「何考えてるのか知らないけど、ご飯が不味くなるから変な顔しないでね。」
『変ナ顔ナドシタコトナイゾ。』
「ふふっ」
ムスっとして否定するフェンリルが面白くて口元が緩む。
『何ガ面白イ』
「ううん、なんでもないよ。」
滅多に見られないフェンリルの拗ねた顔が見れて嬉しかったなんて言ったら、きっと怒るだろうから、言わないし言えない。
「そんなことより、早く場所取りしようよ。」
アードリアが居なくなって、急に中庭で食事を始める人達が増えた。
カイエンは、様子がおかしかった時以外に全く会っていない。
位の差はあるものの、三公格であるのだから、顔を合わせる事だって有るだろうに。
「あ、リアストスだ。」
最近は、リアストスと一緒に食べている。
どちらか先に中庭に着いた人が、場所取りをしているのだ。
大体、彼の方が早いが極々偶に遅い時がある為、困った時はお互い様だ。
「今日も、シェフからですか?」
「うん。今日はローストビーフだって。」
「それは良かったですね。好物が出てくる日ほど嬉しいものも、ありませんから。」
「もちろん!」
ニコッと笑えば、リアストスも微笑み返してくれる。
「では、食べましょうか。」
「うん。」
二人で挨拶をした後に、食べ始める。
リアストスは、いつも自分で作っているらしく色とりどりな食材がセンス良く並べられている。
「そういえば貴方もそうだけど、どうして三公格と大将軍は、接点が無いの?昼食時以外で貴方と会った事ないし、カイエンも喧嘩を売られないと会えないの。」
「それは、招集しないからですよ。」
「招集したら、集まってくれるものなの?」
「勿論です。僕達三公閣は大将軍の部下なんですから。」
「そっか……」
近々、招集をかけてみようかな?
まだ、やった事ないから一度くらいやってみたい。
「勿論、本当に用事があるときだけですよ?」
「す、少しくらい……」
「緊急な用事でもないのに、興味本位でかけて良いものではありません。」
どうやら、思考を読まれて居た様で駄目だと言われてしまった。
「まぁ、リアストスがそう言うなら無闇にかけないよ……」
残念だと思いながら、ローストビーフを口に入れた時に、突然中庭の空気が変わった。
そっと、隣で寝ているフェンリルを胸に入れ、近づいてくる気配に備えて海色のキューブを取り出す。
「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。」
何故か、リアストスは落ち着いている。
まるで、誰がきたのか分かっているかのように。
「敵じゃないの?」
「違いますよ。」
ニコリと微笑むリアストスが何を考えているか分からなくて首を傾げている内に、その人は現れた。
「アンジュさん。」
赤髪に派手な真っ赤なドレスが特徴的な女性は、一人しかいない。
「アードリア……なの?」
容姿の特徴は似ているが、その他が全く別人の様だった。
「そうですわ……」
やつれた顔で、ニコリと微笑んだ。
「そう……」
目が虚で、今にでも死んでしまいそうなほどに、弱っている。
「今日は、謝りに来ましたの……」
掠れた声で、そう言うと地面に膝をついて額を中庭の草につけた。
「御免なさい。」
弱々しい声色で、アードリアは土下座をして私に謝罪した。
手や足が震え、怖がっているのか、それとも力が上手く入らないからか、理由は良く分からない。
「私を、殺してくださいませ……好きな様に……」
ボサボサな赤髪と、所々破れている真っ赤なドレスに、カサカサな唇と擦り傷だらけの手がとても痛々しく見える。
「貴方は、私に殺されたいの?」
「私は、許されない事をしました……お父様に死んで謝罪してこいと言われたのもありますが……私にもう、生きる価値などありませんの……」
なんとなく、なんで殺してほしいと言っているのか分かった。
「……私は殺さないよ。」
「え?」
勢いよく頭を上げたからか、地面に顎が直撃して痛そうに顔を歪めている。
「だって、貴方は私に謝罪したいわけじゃないんでしょ?」
「そ、そんなことっ」
「居場所がないから、罪滅ぼしとして謝罪して、あわよくば殺されない事を願っている。皆が言うから、強制的にやらされている、ただそれだけだよね?」
心の底からの謝罪ではない。その証拠に、黙り込んでしまった。
「あと一つ、聞きたい事があるの。」
「なんですの?」
「貴方は、悪意を持って私を傷つけた?」
「傷つけましたわ。」
吐き捨てる様に、言った。
「私より勝っている貴方が、羨ましかったんですの。」
フェリックスが、言っていた事と全く変わらなかった。
「そっか。」
自分がされたいからだと信じていたのに、裏切られた様な気分だ。
「なら、もういいや。」
首を傾げるアードリアから離れて、まだ残っているローストビーフを一口食べて告げる。
「私には、貴方がどうなろうと関係ないから。貴方みたいな悪意を持って私を弄ぶ人のことなんて知らない。もう、近づかないで。」
「っ……」
驚愕に目を見開き、アードリアは地面に額をつけたまま動かない。
「目障りだから、どこかに行ってよ。」
ご飯が不味くなるから、消えて欲しい。
「悪意を……」
なかなか身をひこうとしない、アードリアに移動魔法をかけようとした瞬間だった。
「悪意を持って、喧嘩を売っていたカイエンにも、同じ言葉をかけるんですの?」
何かを探る様な言葉に、素直に返す。
「勿論、掛けるよ。私には関係ないことだから、殺してって頼まれても殺してあげない。まぁ、部下だから仕事くらいは手伝ってあげるけどね。」
「そうですのね……」
ゆっくりと立ち上がり、アードリアは何故かはっきりとした堂々と色のある瞳で告げた。
「やっぱり、貴方の様なアバズレは嫌いですわ。」
「アバズレじゃないよ。」
人の根は、中々変わらないと言うが、本当にアードリアは変わっていなかった。
ニヤリと人を見下した様に笑む姿は彼女らしい。
「じゃあ、さよなら。」
「えぇ、もう会うこともないでしょうけど。」
今度は自分から立ち去り、すぐに見えなくなってしまう。
その数秒後に、一連を見ていたフェンリルが一言こぼした。
『立チ直ッタカ。』
「何処に立ち直る要素があったの?」
『……貴様ノオカゲダ。アレハ強ク生キルダロウ。』
関係ないからって突き放しただけなのに立ち直ったのか理解できないが、フェンリルが悪くないと言うのなら、良い事をしたのだろう。
「ーーって、早くしないと時間がなくなっちゃう!」
まだ、残っているローストビーフや野菜を口に詰め込み、もうとっくに食べ終わっていたリアストスと別れて訓練場へと急いだ。
「おう、時間ぴったりだな!」
快活な茶髪の男性は、大将軍になった日からずっと弁当を作り続けてくれたシェフである。
「今日は何を作ったの?」
「今日は、ローストビーフだ。他には、甘めの野菜が入ってるな。」
「ほんと!?やったー!」
ローストビーフは、とても美味しいから有難い。
「いつも有難うっ!!」
弁当を受け取り、手を振りながら厨房から出る。
『相変ワラズ、シェフハイイ親父ノ様ニ見エルナ。』
「そうなの?」
『アァ、マルデ、娘ニ接スル様ナ態度ダ。』
「ふぅん……」
感慨深げに告げるフェンリルは、何を連想しているのか、少し声が低い。
「何考えてるのか知らないけど、ご飯が不味くなるから変な顔しないでね。」
『変ナ顔ナドシタコトナイゾ。』
「ふふっ」
ムスっとして否定するフェンリルが面白くて口元が緩む。
『何ガ面白イ』
「ううん、なんでもないよ。」
滅多に見られないフェンリルの拗ねた顔が見れて嬉しかったなんて言ったら、きっと怒るだろうから、言わないし言えない。
「そんなことより、早く場所取りしようよ。」
アードリアが居なくなって、急に中庭で食事を始める人達が増えた。
カイエンは、様子がおかしかった時以外に全く会っていない。
位の差はあるものの、三公格であるのだから、顔を合わせる事だって有るだろうに。
「あ、リアストスだ。」
最近は、リアストスと一緒に食べている。
どちらか先に中庭に着いた人が、場所取りをしているのだ。
大体、彼の方が早いが極々偶に遅い時がある為、困った時はお互い様だ。
「今日も、シェフからですか?」
「うん。今日はローストビーフだって。」
「それは良かったですね。好物が出てくる日ほど嬉しいものも、ありませんから。」
「もちろん!」
ニコッと笑えば、リアストスも微笑み返してくれる。
「では、食べましょうか。」
「うん。」
二人で挨拶をした後に、食べ始める。
リアストスは、いつも自分で作っているらしく色とりどりな食材がセンス良く並べられている。
「そういえば貴方もそうだけど、どうして三公格と大将軍は、接点が無いの?昼食時以外で貴方と会った事ないし、カイエンも喧嘩を売られないと会えないの。」
「それは、招集しないからですよ。」
「招集したら、集まってくれるものなの?」
「勿論です。僕達三公閣は大将軍の部下なんですから。」
「そっか……」
近々、招集をかけてみようかな?
まだ、やった事ないから一度くらいやってみたい。
「勿論、本当に用事があるときだけですよ?」
「す、少しくらい……」
「緊急な用事でもないのに、興味本位でかけて良いものではありません。」
どうやら、思考を読まれて居た様で駄目だと言われてしまった。
「まぁ、リアストスがそう言うなら無闇にかけないよ……」
残念だと思いながら、ローストビーフを口に入れた時に、突然中庭の空気が変わった。
そっと、隣で寝ているフェンリルを胸に入れ、近づいてくる気配に備えて海色のキューブを取り出す。
「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。」
何故か、リアストスは落ち着いている。
まるで、誰がきたのか分かっているかのように。
「敵じゃないの?」
「違いますよ。」
ニコリと微笑むリアストスが何を考えているか分からなくて首を傾げている内に、その人は現れた。
「アンジュさん。」
赤髪に派手な真っ赤なドレスが特徴的な女性は、一人しかいない。
「アードリア……なの?」
容姿の特徴は似ているが、その他が全く別人の様だった。
「そうですわ……」
やつれた顔で、ニコリと微笑んだ。
「そう……」
目が虚で、今にでも死んでしまいそうなほどに、弱っている。
「今日は、謝りに来ましたの……」
掠れた声で、そう言うと地面に膝をついて額を中庭の草につけた。
「御免なさい。」
弱々しい声色で、アードリアは土下座をして私に謝罪した。
手や足が震え、怖がっているのか、それとも力が上手く入らないからか、理由は良く分からない。
「私を、殺してくださいませ……好きな様に……」
ボサボサな赤髪と、所々破れている真っ赤なドレスに、カサカサな唇と擦り傷だらけの手がとても痛々しく見える。
「貴方は、私に殺されたいの?」
「私は、許されない事をしました……お父様に死んで謝罪してこいと言われたのもありますが……私にもう、生きる価値などありませんの……」
なんとなく、なんで殺してほしいと言っているのか分かった。
「……私は殺さないよ。」
「え?」
勢いよく頭を上げたからか、地面に顎が直撃して痛そうに顔を歪めている。
「だって、貴方は私に謝罪したいわけじゃないんでしょ?」
「そ、そんなことっ」
「居場所がないから、罪滅ぼしとして謝罪して、あわよくば殺されない事を願っている。皆が言うから、強制的にやらされている、ただそれだけだよね?」
心の底からの謝罪ではない。その証拠に、黙り込んでしまった。
「あと一つ、聞きたい事があるの。」
「なんですの?」
「貴方は、悪意を持って私を傷つけた?」
「傷つけましたわ。」
吐き捨てる様に、言った。
「私より勝っている貴方が、羨ましかったんですの。」
フェリックスが、言っていた事と全く変わらなかった。
「そっか。」
自分がされたいからだと信じていたのに、裏切られた様な気分だ。
「なら、もういいや。」
首を傾げるアードリアから離れて、まだ残っているローストビーフを一口食べて告げる。
「私には、貴方がどうなろうと関係ないから。貴方みたいな悪意を持って私を弄ぶ人のことなんて知らない。もう、近づかないで。」
「っ……」
驚愕に目を見開き、アードリアは地面に額をつけたまま動かない。
「目障りだから、どこかに行ってよ。」
ご飯が不味くなるから、消えて欲しい。
「悪意を……」
なかなか身をひこうとしない、アードリアに移動魔法をかけようとした瞬間だった。
「悪意を持って、喧嘩を売っていたカイエンにも、同じ言葉をかけるんですの?」
何かを探る様な言葉に、素直に返す。
「勿論、掛けるよ。私には関係ないことだから、殺してって頼まれても殺してあげない。まぁ、部下だから仕事くらいは手伝ってあげるけどね。」
「そうですのね……」
ゆっくりと立ち上がり、アードリアは何故かはっきりとした堂々と色のある瞳で告げた。
「やっぱり、貴方の様なアバズレは嫌いですわ。」
「アバズレじゃないよ。」
人の根は、中々変わらないと言うが、本当にアードリアは変わっていなかった。
ニヤリと人を見下した様に笑む姿は彼女らしい。
「じゃあ、さよなら。」
「えぇ、もう会うこともないでしょうけど。」
今度は自分から立ち去り、すぐに見えなくなってしまう。
その数秒後に、一連を見ていたフェンリルが一言こぼした。
『立チ直ッタカ。』
「何処に立ち直る要素があったの?」
『……貴様ノオカゲダ。アレハ強ク生キルダロウ。』
関係ないからって突き放しただけなのに立ち直ったのか理解できないが、フェンリルが悪くないと言うのなら、良い事をしたのだろう。
「ーーって、早くしないと時間がなくなっちゃう!」
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