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2章 アンジェラス1は軍部で活躍します

52 怖いよ

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パーティーが終わった後、ドレスはフェリックスに預けて寮に帰ってきていた。

「ねぇ、機嫌直してよフェル~」

ずっと太股に張り付いて息苦しかったのか、さっきからずっと胸から顔を出してくれない。

「私は、眠いから寝るよ?」

寝返りを打つ時に、胸に挟まって苦しくならない様に言っているのだが、全く聞く耳を持たない。

「もう、知らないからね?」

出てこないのなら仕方ない。
もう、意識が途切れそうだから布団を被って目を閉じた。



***



アンジェラス1が眠った後、胸からスポッと顔を出す白い毛玉が一匹。

『フゥ……流石ニ息苦シイノダ。』

枕の上へ座り直し、すぐ隣で寝息を立てている少女の瞼を撫でる。

『此奴モ、最近ハ頑張ッテイル。』

常識を履き違えているが、それでも悪い事は何一つとしてしていない。
やりすぎな事はあっても、悪意を持って傷つける事はないのだ。

初めは、アンジェラス1として強さ以外何も知らない少女が、獣人の世界に馴染めるのかどうか世界の意志様もフェンリルも含めて心配していたが、意外とちゃんと考えて行動していた。

今回のアードリアの一件で人間の身で油断は禁物だと学び、手加減をするという事を捨ててしまったのは、それはそれで問題なのだが取り敢えず人間だという認識を強く持てたことだけでも大きな進歩といえよう。

このまま死ぬまで、この国へ留まってくれるのなら国王やら王子やらの権力者が結婚させたりなんなりして守ってくれるだろうが、少女は縛られる事が何よりも嫌いだ。

だから、後数年もしくはフェリックスが寿命でなくなりでもすれば確実に国を去るに違いない。

『ソウナッタ時、コノ国ノ衰退具合は凄マジイダロウナ。』

アンジェラス1の力は人には過ぎたものだ。
だから、こんなに強大な人物が近くにいれば怠ける者も出てくるはず。
その対策を少女が、取れば良いのだが大体の事に無関心な為、予防策を講じる事は確実にないだろう。

『コノ国モ、終ワッタナ。』

強すぎる力は薬にも毒にもなる。

一時の栄光を手にする代わりに、あとは落ちていくだけの運命を辿るだけ。

まぁ、それも少女からすれば死ぬまでに過ごした国の一つに過ぎないだろうから、滅びた事を耳にしても少し懐かしむ程度で終わるだろう。その証拠に、今までの世界を懐かしむ様子を見せても後悔や惜しみは何一つとして見せないのだから。

すべて、過ぎ去ってしまった過去と割り切れてしまっている。
多分、世界の意思様は少しでも少女っぽい部分をアンジェラス1に取り戻してもらおうと、この世界に送ったのだろうが話を聞く限りでは元々世界の意志様以外に興味がなかったに違いない為、そういう感情は無かったとみている。

ただの憶測に過ぎないが、なんとなく確信があった。

何故かって?それはもちろんフェンリルも同類だからだ。

同族が絶滅しようと、自分さえ良ければそれで良い。生きてきた中で後悔だって何もないのだ。
流石に、アンジェラス1みたいに人を見捨てたり無神経な事は言わないが、助ける者と助けられない者では、分けている。

そんなところが類は類を呼ぶという様に勘が同じだと言っていた。

今は、呑気に隣で寝ている少女がいつか大切な人を失い泣いてしまう日が来るなど、もうどう想像もできないが、人の事をノートに書いてまで学ぼうとしていた事には驚いた。

世界の意志様が指示した人間の代わりに獣人を観察している事は知っていたが、普通に見捨てていたし格下に見下している節さえあった。
アードリアとの一戦で、どんな心境の変化か、仲間や近い人々には優しく接する様になって格下であっても見下す事はなくなった。

後は……ドレスの太腿に縛られた時、とても暑苦しかった。
すぐ隣には短剣とキューブがあって、動くたびに頬や体に当たって毛が削ぎ落とされないか、戦々恐々としていた。

『今、思イ出シテモ、怖カッタ……』

そんな事を呟いて、1日を振り返った後に毛布にフェンリルも包まる。
意外と寝返りを打つくらいで、寝相のいいアンジェラス1に押し潰される心配はないため、安心できるのだ。

極々たまに、何かを探す様に手を探るときは抱き枕くらいの大きさになって大人しく抱かれている。
そのときは世界の意志様がいなくて寂しいのか、悲しそうに眉を寄せている事が多い。

寝ている時くらい、安らかに眠ることができるのなら、いくらでも毛並みくらいは貸してやろうと考えている。
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