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1章 アンジェラス1は転生する

42 出来ない理由

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「ほっほっ、いつの間にか仲良くなった様じゃな。」

3人一緒に来た事で、勘違いをしている様だからしっかり訂正しておかなければ。

「仲良くなんて無いよ、むしろ嫌いだし。」

ついでに夜這いの様な真似をされたと言えば笑い飛ばされた。
でも目が笑っていないから、おそらく後で怒られるのだろう。

「それより、冷めぬうちに早く食べるのじゃ。」

ホッカホッカのトーストのパンを食べる。

ちょうど良いくらいの温度で、バーターやジャムを塗ってもぐもぐ頬張って食べると更に美味しい。

「アンジュ様は、頬張って食べる主義なんですか?」

「私たちとは違いますね……」

驚いた目で見てくる2人に、一旦食べる手を止める。

「ご飯を食べるときくらい、私が好きな様に食べたっていいでしょ。礼儀作法なんて私知らないし。」

尤も、知る気もないのだが。

「「へぇ……」」

意外そうな顔をしながらも、上品に食べているところを見るに、やはり曲がりなりにも貴族なのか、上品さが体に染み込んでいた。

「ご馳走様。」

挨拶をして、食卓から出る。
そして、一旦部屋に戻ってお腹が膨れているフェンリルを胸に入れて、4人と一匹で訓練場へ向かった。

「今日も集まってくれてありがとう。」

「「「勿論です!!」」」

朝から元気な応答に、本当に元気な兵士達だと思わずにはいられない。

「今日は、特定の魔法を刻むから沢山覚えるんだよ。上級から下級まで覚えるから。」

ここからは、本当に努力次第だ。
怠れば、魔法剣の意味がなくなる。

上級魔法さえ使えれば、相当楽になるだろう。

「頑張ってね。ここが魔法の正念場だから。」

怠け者に関しては、何もいう気はない。
好きにやれば良いと思う。
やる気のない者に教えるほど、お人好しになる気は毛頭ないのだ。

そして、しっかりリアストスも来ている事を確認した後、防音魔法と認識阻害魔法をこっそり展開して、練習を始める。

ちなみに周りから見ると、剣術をしている様にしか見えない。
勿論、中に入られたら意味がないのだが、まぁ、用事がある者なんて居ないだろう。

「じゃあ、基本的なイメージ魔法から始めるよ。」

「「「はい!」」」

良い返事と共に、まずは見本から見せる。

「手を翳して、体から水を集める様に丸い水の玉を作り上げるの。もちろん、それぞれ属性が違うから炎の球や風の球でもいいからね。」

初めてやる時は、これが意外と難しいのだ。
だが、此処さえクリアできれば、後はスムーズにいくことが多い。

「じゃあ、始めてみて。」

木刀をイメージして、属性を纏わせたのだから、大して時間は掛からないだろう。

「魔力を、感じ取って前に押し出す感覚だよ。」

意外にも、かなり苦悶の表情を浮かべている者ばかりだが、ほんの少しだけ水が手から滲み出ていたりはしている。

それが手汗かどうかは、分からないが水だと信じておこう。

「中々、出来ないみたいだね……」

やる気の無い者達は、初めから手を伸ばしてるだけだが、真面目にやって出来ないなんて、なにか妨げになっている原因があるはずだ。

「皆、ちょっと休んでて。」

少し、魔術のことについて調べる必要があるかも知れない。
原因は魔術で間違いないと検討はついている。

「ーーと、いうわけでっと。」

宮殿の図書館へ足を運んだ。

「フェル、手分けして魔術の難しい本を持ってきてくれる?こっちの方では魔法なんだろうけど。」

『オウ。』

因みにフェンリルが使っているのは、私と同じ魔法だ。
だから、魔術だということも初めからわかっていたし、出会った時に魔術を使っていないことに驚いたらしい。

「えっと……」

フェンリルの背中を見送った後、奥の方へ入って探す。
魔術の本といっても、種類がたくさんあってどれが根本的な事が詳しく記載されているのか良く分からない。

「うーん……」

「ーー何をお探しですか?」

「!?」

突然、横からひょこっと女性が顔を出した。

「あ、すみません。私は司書のミリアと申します。」

ふわふわな茶髪のツインテールに紅色の瞳をしている。

「わ、私はアンジュだよ。」

「アンジュさんですか。私と同じ平民ですね。」

「そうだけど……」

何故か、気を使う様な言葉に首を傾げる。

「あ、いえ別に平民が悪いってわけじゃ無いですよ?ただ、周りが貴族ばかりで……」

「……そう。」

気後れする、そう言いたいのだろう。
特に気を使う言葉も思い浮かばず、本人もしてほしくなさそうだから黙っておく。

それに、大将軍たいしょうぐんである私と一階司書が平民である事は意味が違うだろうから何とも言えないし、何よりどうでも良かった。

誰がどう思っていようと、私には関係ないのだ。

「それより、聞きたい事があるんだけど良い?」

「良いですよ。」

「魔術……魔法の根本的な文書を探してるんだけど、詳しく載ってる物はない?」

「ありますよ。少し分厚いですが、たくさんの研究の歴史が綴られています。もしかして魔法に興味がおありで?」

「まぁ、うん。」

「魔法って、ちゃんと使えたら綺麗なので良いですよね。」

「……そうだね。」

平民は魔力が少ないと聞く。
だから、魔術が使えないのだろう。

「これです。」

棚からミリアが取り出したのは、年季の入った赤茶色の書物だった。

「かなり分厚いね……」

「ずっと昔からある本なんです。分厚過ぎて最後まで目を通せないんですけど、かなり現実的な事が書かれていますよ。」

本を渡すと直ぐに軽くお辞儀をしてどこかへ行ってしまう。
だから、お礼として一言つげた。

「自分を認めないと、誰も貴方を認めてくれないよ。」

「へ?」

呆然としているミリアを置いて、読書スペースへ移動する。
すると、フェルが魔術に関する本を何冊か準備していた。

「ありがとう。」

『構ワン。』

魔法を使い、秒速で目を通す。
そんなに分厚くとも3分も経てばミリアに紹介された本を読み終わる事ができた。
フェンリルの本は、30秒で読み終わった。

「まぁ、大体わかったよ。」

これは、私じゃ手をつけられない。
何を教えようと変わらない事だから、本人達に頑張ってもらう他ないだろう。

「本を返しに行こうね。」

『オウ。』

胸に本を抱きしめて、フェンリルと共に図書館を後にする。

司書のミリアが、ニコリと微笑んだのを見て私も微笑み返した。
先程の言葉の意味が通じたのなら、良いと思う。







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