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序章 アンジェラス1は、世界を救う
19話 ドワーフと人狼の王国
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ドワーフと人狼の王国は、隣同士で国王同士仲が良いらしく、偶々旅行していた国王一行に出会うことができた少女は、上機嫌に話しかける。
『人狼にドワーフの王、話があるのだが。』
「「!?」」
あからさまに驚く、ドワーフと人狼にワハハッと笑う魔王な少女。
「いつの間に入ってきた!」
「不法侵入じゃぞ!」
おじさん口調がドワーフで、エルフと変わらないのが人狼だったか。
『まぁ、そう言わずに。』
「何しにきた!」
臨戦体制に入り出す人狼を、鎖魔法で押さえつける。
『今日は、ただの対話に来たんだ。そう警戒しないでくれ。』
そう言う割には、背後に鎖が蠢いている。
「この鎖をとけ!」
『臨戦体制に入らぬのなら、解いてやろう。』
「貴様……」
斧を構えるドワーフの王。
『我の話、聞いていたのか?』
武器を構えるなと言った途端に構えるなど、バカにも程があるのでは無いだろうか?と少女は首を傾げる。
「知らぬわ、そんな事。先に暴挙に出たのは貴様だ。」
『なら、仕方ないあるまい。』
ドワーフの足元から鎖が出現し、身動きを封じる。
人狼に比べて背丈が小さい事もあり、かなり捕らえやすかった。
少女は、完全に鎖に囚われた人狼とドワーフに、問いかける。
『我の話を承諾しなければ、今この場で殺す。』
善人のふりをしないで済むのは、実に楽だと、少女は思う。
コレが勇者の体を使うのだったら、この様な暴挙には出られない。
「っ……分かった、どんな条件だ。」
「良いのじゃ。」
承諾を得たところで、鎖から解放する。
『人間と魔族と仲良くする約束を結んでほしいだけだ。』
「魔族と?」
『あぁ。我らは貴様達に迷惑をかけた事はないだろう?』
「だが、邪神がの……」
『邪神は、邪神に生まれただけで、良い神だ。』
その証拠に、魔王を駒としてではなく一名の生き物として、涙を流していた。
『とにかく、承諾は得た。後のことは頼んだぞ。』
「あと……?」
余計な詮索をされる前に、少女はその場から去る。
そして残された人狼とドワーフは顔を見合わせて。
「「嫌な予感がするのぅ(な)……」」
そう、タイミングよく呟いた。
****
【アンジェラス様、説得はできましたか?】
『無論だよ。』
ホッと安心した様に息を吐く邪神。
少女は何故、当人でない邪神が息を吐くのか分からないが、聞く気にもなれず他のすべきことに意識を移す。
『魔族の土俵を高くするから、本番まで力を蓄えておいて。』
【畏まりました。】
光の神を倒すのは、邪神の役目。
少女は、均等に生み出された神である光の神と邪神が、相打ちになることは分かりきっている。
だから、少女が出来るのは勇者の足止めくらいだった。
『あとは……』
全ての種族が、仲良くするには魔族にも、人間にも、承諾を得なければならない。
人間の場合、王はたくさんいる様でその中の一人とさえ分かり合えれば問題ないだろう。
聡明な王ならば、条件を飲むはずだから。
『問題は、魔族だな……』
魔族を統べる邪神信仰筆頭の魔王は少女が使っている体である為、その次に権力を持っている者に頼らなければならない。
だが、きっと魔王ではないとバレる。
魔王の記憶を見る限り、次の権力者から面倒なことに淡い恋を抱かれている様だ。
この魔王、結構イケメンで強く優しい為、モテるのだ。
恋愛が絡むと面倒だと同じアンジェラスの仲間が以前言っていたが、結果的に宣言の承諾を得られるのなら問題ない。
来月、任務から帰ってくると魔王のカレンダーにチェックが付いていた為、接触を図ることには問題なさそうだ。
『邪神、ちょっと人間へ会ってくる。』
【少しお休みになられては……】
『時間がないよ。一応一年の猶予はあるが弱いうちに勇者は対処した方がいいから。』
【畏まりました。何かあったらお呼びください。】
『うん。』
神殿へ邪神が戻った事を気配で感じ取りつつ、人間界へと転移する。
基本的に転移は一度行った場所にしか行けないのだが、この魔王は各地を巡っている様だ。
記憶上では、何故か人間と遊んでいる事が多い。
『うーん……』
かろうじて話ができそうなのは、五大国のうち一大国しかない。
最近王が変わり急成長を遂げている変わり者が多いらしい"変国"。
魔族にも比較的に敵対心が無いらしく、何事も理論的に見て、魔王が悪いと"一様には決めつけない"良い国民と王である様で、魔王として街を歩いても普通に挨拶できていた様だ。変な国だとは思うが、好奇心が湧くのも事実で、少女は外套を取り街を歩くことにした。
『っと。』
一応、物陰に転移をする。
幸いなことに誰にも気付かれなかった様で、堂々と人の行き交う街へ出てみる。
「あ、久しぶりですね魔王様!」
『あぁ、久しぶりであるな。』
魔王の記憶が霞んでいて、何処の誰か分からない。
きっと、魔王にとってさほど重要な存在でも無かったのだろう。
気のいい街人は、すれ違うたびに挨拶をくれる。
ソレに、軽く返しながら城門へと着く。
『変王に話がしたい。』
「魔王様ですね、今、執務室におられるはずですので応接室でお待ちください。」
『感謝する。』
至極丁寧な物言いと態度に自然と気分が良くなる。
魔王が、この国に対して好印象を抱いていたのは、こういう所なのだろう。
応接室には、どうやら案内無しで行ってもいい様で一人で向かう。
通常、案内人が居ると思うがソレなりに信用されているのだろうか。
城内の者の態度といい、町の者達の挨拶やら、かなり警戒心が緩い国に見える。
『ーーと、ここか。』
記憶を頼りに歩いていけば、数分もしない内に辿り着いた。
金属で出来た薄茶色の扉を開く。
『!?』
すると、ものすごく甘い匂いが漂ってくる。
思わず顔を顰めたくなるほどで、匂いの元はどうやら机の上に置かれている芳香剤が原因の様だ。
『臭すぎる……』
悪趣味な芳香剤を、魔法で異空間へと"匂いだけ"飛ばすと同時に、外の空気を入れる。
『これで少しはマシになったな……』
まだ、少し匂いは残っているが時期に消え去る事だろう。
変王の姿が見えたら、文句の一つでも言ってやろうと身構えること数分、やっと現れた。
「す、すすすみばぜ、んぐぅ……」
ボッサボサの黒髪をしたお世辞にも清潔とは言えない人間が、この国の国王で間違いない様だ。
魔王の記憶にも、そう記録してある。
『ひどい有様だな……』
「はは……最近仕事が、立て込んでるので……」
舞踏会では、メイド達の尽力もあり美しい国王へと変身する様だが、普段は若い筈なのに老けて見えるくらいには顔色が悪い。
変王と呼ばれるのは、性格の問題ではなく顔色が悪いからなのだろうか。
『あまり無理はしない様にな。』
「相変わらず魔王様は優しいですね……」
『そういうのは変王くらいだ。それよりも、今日は承諾を得にきた。』
「講和条約的な約束を結べってですよね?」
『ほう、もう知っていたか。』
「はい、エルフの王から予め連絡がありましたから。」
『なら話は早いな。』
どういう意図かは知らないが、少なくともエルフの王は、協力的に動いてくれそうである。
「はい、承諾します。仲良くすることは本望ですからね。」
『ありがたい。』
「いつも、書類仕事を手伝ってもらっていたお礼ですよ。それより、勇者からは殺されそうですか?」
すこし、心配気味に聞いてくる変王に魔王らしくニヤリと笑う。
『我が勇者などに負けるわけがなかろう。』
「……確かに、そうですね。」
少し間が空いたのは、魔王に勝ち目がないのは誰にだって分かっているからだろう。
どの時代も純粋な魔王は勇者に勝てない。結局、闇は光に勝てないのだ。
まぁ、今回に限っては光より上の存在である世界の意志、あるいはアンジェラスが関わっている為、話は別であるが。
「では、最後まで頑張ってください。」
『あぁ。貴様もな。』
もう、今後会うことは無いだろう挨拶を互いに交わす。
エルフの王も、ドワーフも人狼もそうだが皆、あまり話すことが得意ではない様で、口数が少ない。
実際に今も、もう会えないと分かっていながら悲しい顔をしているにも関わらず、言葉を投げかけることはないのだから。
『人狼にドワーフの王、話があるのだが。』
「「!?」」
あからさまに驚く、ドワーフと人狼にワハハッと笑う魔王な少女。
「いつの間に入ってきた!」
「不法侵入じゃぞ!」
おじさん口調がドワーフで、エルフと変わらないのが人狼だったか。
『まぁ、そう言わずに。』
「何しにきた!」
臨戦体制に入り出す人狼を、鎖魔法で押さえつける。
『今日は、ただの対話に来たんだ。そう警戒しないでくれ。』
そう言う割には、背後に鎖が蠢いている。
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『臨戦体制に入らぬのなら、解いてやろう。』
「貴様……」
斧を構えるドワーフの王。
『我の話、聞いていたのか?』
武器を構えるなと言った途端に構えるなど、バカにも程があるのでは無いだろうか?と少女は首を傾げる。
「知らぬわ、そんな事。先に暴挙に出たのは貴様だ。」
『なら、仕方ないあるまい。』
ドワーフの足元から鎖が出現し、身動きを封じる。
人狼に比べて背丈が小さい事もあり、かなり捕らえやすかった。
少女は、完全に鎖に囚われた人狼とドワーフに、問いかける。
『我の話を承諾しなければ、今この場で殺す。』
善人のふりをしないで済むのは、実に楽だと、少女は思う。
コレが勇者の体を使うのだったら、この様な暴挙には出られない。
「っ……分かった、どんな条件だ。」
「良いのじゃ。」
承諾を得たところで、鎖から解放する。
『人間と魔族と仲良くする約束を結んでほしいだけだ。』
「魔族と?」
『あぁ。我らは貴様達に迷惑をかけた事はないだろう?』
「だが、邪神がの……」
『邪神は、邪神に生まれただけで、良い神だ。』
その証拠に、魔王を駒としてではなく一名の生き物として、涙を流していた。
『とにかく、承諾は得た。後のことは頼んだぞ。』
「あと……?」
余計な詮索をされる前に、少女はその場から去る。
そして残された人狼とドワーフは顔を見合わせて。
「「嫌な予感がするのぅ(な)……」」
そう、タイミングよく呟いた。
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【アンジェラス様、説得はできましたか?】
『無論だよ。』
ホッと安心した様に息を吐く邪神。
少女は何故、当人でない邪神が息を吐くのか分からないが、聞く気にもなれず他のすべきことに意識を移す。
『魔族の土俵を高くするから、本番まで力を蓄えておいて。』
【畏まりました。】
光の神を倒すのは、邪神の役目。
少女は、均等に生み出された神である光の神と邪神が、相打ちになることは分かりきっている。
だから、少女が出来るのは勇者の足止めくらいだった。
『あとは……』
全ての種族が、仲良くするには魔族にも、人間にも、承諾を得なければならない。
人間の場合、王はたくさんいる様でその中の一人とさえ分かり合えれば問題ないだろう。
聡明な王ならば、条件を飲むはずだから。
『問題は、魔族だな……』
魔族を統べる邪神信仰筆頭の魔王は少女が使っている体である為、その次に権力を持っている者に頼らなければならない。
だが、きっと魔王ではないとバレる。
魔王の記憶を見る限り、次の権力者から面倒なことに淡い恋を抱かれている様だ。
この魔王、結構イケメンで強く優しい為、モテるのだ。
恋愛が絡むと面倒だと同じアンジェラスの仲間が以前言っていたが、結果的に宣言の承諾を得られるのなら問題ない。
来月、任務から帰ってくると魔王のカレンダーにチェックが付いていた為、接触を図ることには問題なさそうだ。
『邪神、ちょっと人間へ会ってくる。』
【少しお休みになられては……】
『時間がないよ。一応一年の猶予はあるが弱いうちに勇者は対処した方がいいから。』
【畏まりました。何かあったらお呼びください。】
『うん。』
神殿へ邪神が戻った事を気配で感じ取りつつ、人間界へと転移する。
基本的に転移は一度行った場所にしか行けないのだが、この魔王は各地を巡っている様だ。
記憶上では、何故か人間と遊んでいる事が多い。
『うーん……』
かろうじて話ができそうなのは、五大国のうち一大国しかない。
最近王が変わり急成長を遂げている変わり者が多いらしい"変国"。
魔族にも比較的に敵対心が無いらしく、何事も理論的に見て、魔王が悪いと"一様には決めつけない"良い国民と王である様で、魔王として街を歩いても普通に挨拶できていた様だ。変な国だとは思うが、好奇心が湧くのも事実で、少女は外套を取り街を歩くことにした。
『っと。』
一応、物陰に転移をする。
幸いなことに誰にも気付かれなかった様で、堂々と人の行き交う街へ出てみる。
「あ、久しぶりですね魔王様!」
『あぁ、久しぶりであるな。』
魔王の記憶が霞んでいて、何処の誰か分からない。
きっと、魔王にとってさほど重要な存在でも無かったのだろう。
気のいい街人は、すれ違うたびに挨拶をくれる。
ソレに、軽く返しながら城門へと着く。
『変王に話がしたい。』
「魔王様ですね、今、執務室におられるはずですので応接室でお待ちください。」
『感謝する。』
至極丁寧な物言いと態度に自然と気分が良くなる。
魔王が、この国に対して好印象を抱いていたのは、こういう所なのだろう。
応接室には、どうやら案内無しで行ってもいい様で一人で向かう。
通常、案内人が居ると思うがソレなりに信用されているのだろうか。
城内の者の態度といい、町の者達の挨拶やら、かなり警戒心が緩い国に見える。
『ーーと、ここか。』
記憶を頼りに歩いていけば、数分もしない内に辿り着いた。
金属で出来た薄茶色の扉を開く。
『!?』
すると、ものすごく甘い匂いが漂ってくる。
思わず顔を顰めたくなるほどで、匂いの元はどうやら机の上に置かれている芳香剤が原因の様だ。
『臭すぎる……』
悪趣味な芳香剤を、魔法で異空間へと"匂いだけ"飛ばすと同時に、外の空気を入れる。
『これで少しはマシになったな……』
まだ、少し匂いは残っているが時期に消え去る事だろう。
変王の姿が見えたら、文句の一つでも言ってやろうと身構えること数分、やっと現れた。
「す、すすすみばぜ、んぐぅ……」
ボッサボサの黒髪をしたお世辞にも清潔とは言えない人間が、この国の国王で間違いない様だ。
魔王の記憶にも、そう記録してある。
『ひどい有様だな……』
「はは……最近仕事が、立て込んでるので……」
舞踏会では、メイド達の尽力もあり美しい国王へと変身する様だが、普段は若い筈なのに老けて見えるくらいには顔色が悪い。
変王と呼ばれるのは、性格の問題ではなく顔色が悪いからなのだろうか。
『あまり無理はしない様にな。』
「相変わらず魔王様は優しいですね……」
『そういうのは変王くらいだ。それよりも、今日は承諾を得にきた。』
「講和条約的な約束を結べってですよね?」
『ほう、もう知っていたか。』
「はい、エルフの王から予め連絡がありましたから。」
『なら話は早いな。』
どういう意図かは知らないが、少なくともエルフの王は、協力的に動いてくれそうである。
「はい、承諾します。仲良くすることは本望ですからね。」
『ありがたい。』
「いつも、書類仕事を手伝ってもらっていたお礼ですよ。それより、勇者からは殺されそうですか?」
すこし、心配気味に聞いてくる変王に魔王らしくニヤリと笑う。
『我が勇者などに負けるわけがなかろう。』
「……確かに、そうですね。」
少し間が空いたのは、魔王に勝ち目がないのは誰にだって分かっているからだろう。
どの時代も純粋な魔王は勇者に勝てない。結局、闇は光に勝てないのだ。
まぁ、今回に限っては光より上の存在である世界の意志、あるいはアンジェラスが関わっている為、話は別であるが。
「では、最後まで頑張ってください。」
『あぁ。貴様もな。』
もう、今後会うことは無いだろう挨拶を互いに交わす。
エルフの王も、ドワーフも人狼もそうだが皆、あまり話すことが得意ではない様で、口数が少ない。
実際に今も、もう会えないと分かっていながら悲しい顔をしているにも関わらず、言葉を投げかけることはないのだから。
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