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3.再起動
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藍宇軒(以降、転生したキャラクター「紅季月」とする)は窓枠に手をかけて、身を乗り出しながらシステムにその疑問を尋ねた。
「システム、私はこの完結した物語に、特に転生する必要はないと思うんだけど一体なにをすればいいんでしょう?」
曇天の空模様から、案の定雨が降り始め、庭の草花を濡らしていく。時折ゴロゴロという音も響き始め、雷の気配も感じる。この天気の様子が、先の分からない状況を示しているようで紅季月は少し困ってしまった。
【現在、本システムの任務に関する情報をダウンロードしています。残り20%】
システムが話はじめたので、紅季月はひとまずホッと胸を撫で下ろした。なるほど、転送中の慌ただしい中ではなく、ゆっくりと時間をとって話したかったんだな。患者(ではないが)の気持ちを優先せず急かしてしまったことを、精神科医として取り乱してしまったなと反省した。でもとりあえず、これで先に進める事ができる。
しかし、安心する紅季月をよそに、予想もしないことが起きた。
システムが青緑色に強く発光し、本部と通信しているまさにその瞬間、紅季月の目の前をピカッと白い閃光が包み込み、その刹那、ドーーン!と轟音とともに激しい振動が鳴り響いた!
「うわっ?!」
雷が、システムに落ちた!!
(えええ?! そんなことある?! こんなピンポイントに?! さすが、夢の中。シナリオがとんでもない!)
振動と爆音がしばらく続き、それらが収まった後、紅季月は慌てて外を見てシステムの姿をさがしたが、見当たらなかった。システムはいわば電気機器だから、雷が当たってショートして消えてしまったのだろうか。痛みは感じていないだろうが、消えてしまったことに心配と不安を覚える。任務内容も、まだ聞けていない!
突然の展開に、ぼーっと放心状態でそのまま外を眺めていると、少し先の木の下で、何かが雨に濡れているのが見えた。
「人が倒れている!」
紅季月は慌てて外に出て、倒れている男性の腕を自分の首に回して、部屋の中まで引き摺り込んだ。
不思議なことに、彼の服は濡れたそばからすぐに乾きはじめていた。
「特殊な繊維で作られた衣?」
紅季月は彼を寝台で寝かせ、自身の袂にあった手帕(ハンカチ)で顔や髪の水分を拭いてやり、「失礼します」といいながら、呼吸を楽にするために彼の立領(チャイナ服の立ち襟)の釦をいくつか外した。
熱を測るため手を彼の額に当ててみるが、心配はないようだ。むしろ冷やりとしていて驚き、低体温症を心配した紅季月は、掛け布団の上にさらに多くの布団を重ねたかったが、適切なものが見当たらなかったので、少しでも保温になればという思いで自身の羽織を脱いで重ねた。
「熱は無いようだけどとても体が冷たい。呼吸はあるし、低体温による意識レベルの低下かもしれないな、しっかり温めて様子をみよう」
紅季月は現実で精神科医であるが、一通り研修で学んで来ているので、一般的な対処法はわかっている。
布団の中で眠る人は、血色を感じさせないほどの透き通るような肌の白さで、長い銀色の髪をしている。まだ続く雷光に照らされるたび、その銀髪と肌に少し残る水滴が光を纏って、まるでこの世のものではないくらい神秘的に見えた。
「見たところ20歳前後の青年だけど、この小説にこんなキャラいたか?? 美形キャラなら目立ちそうなものだけど…」
寝台の脇に座り、じっと彼の顔を覗き込む。困ったことに、システムがいない事には、簡単に小説内の人物を知る事もできないし、どのような対応をすればいいのかもわからない。見たことのない展開に、紅季月はどうしたらいいのか検討がつかず、眠る彼の額にある文様:花鈿(かでん)あたりをそっと拭きながら、ただ祈るしかなかった。
「システム、なんとか再起動して戻ってきてくれ! 頼むよ!」
紅季月が縋るような思いで懇願すると、目の前で眠る彼の体が若干ビクリと動いた。
「あ、ごめん、驚かせてしまっ...」
彼の額に触れたことで驚かせてしまったと思い慌てて手を離すと、そのタイミングで彼の両目がパッと開かれ、紅季月が逆に驚いた。
彼は、天井の方を見ながら無機質にこう言った。
「再起動、完了しました」
開かれた瞳の色は、鮮やかな青緑色をしている。
「システム、私はこの完結した物語に、特に転生する必要はないと思うんだけど一体なにをすればいいんでしょう?」
曇天の空模様から、案の定雨が降り始め、庭の草花を濡らしていく。時折ゴロゴロという音も響き始め、雷の気配も感じる。この天気の様子が、先の分からない状況を示しているようで紅季月は少し困ってしまった。
【現在、本システムの任務に関する情報をダウンロードしています。残り20%】
システムが話はじめたので、紅季月はひとまずホッと胸を撫で下ろした。なるほど、転送中の慌ただしい中ではなく、ゆっくりと時間をとって話したかったんだな。患者(ではないが)の気持ちを優先せず急かしてしまったことを、精神科医として取り乱してしまったなと反省した。でもとりあえず、これで先に進める事ができる。
しかし、安心する紅季月をよそに、予想もしないことが起きた。
システムが青緑色に強く発光し、本部と通信しているまさにその瞬間、紅季月の目の前をピカッと白い閃光が包み込み、その刹那、ドーーン!と轟音とともに激しい振動が鳴り響いた!
「うわっ?!」
雷が、システムに落ちた!!
(えええ?! そんなことある?! こんなピンポイントに?! さすが、夢の中。シナリオがとんでもない!)
振動と爆音がしばらく続き、それらが収まった後、紅季月は慌てて外を見てシステムの姿をさがしたが、見当たらなかった。システムはいわば電気機器だから、雷が当たってショートして消えてしまったのだろうか。痛みは感じていないだろうが、消えてしまったことに心配と不安を覚える。任務内容も、まだ聞けていない!
突然の展開に、ぼーっと放心状態でそのまま外を眺めていると、少し先の木の下で、何かが雨に濡れているのが見えた。
「人が倒れている!」
紅季月は慌てて外に出て、倒れている男性の腕を自分の首に回して、部屋の中まで引き摺り込んだ。
不思議なことに、彼の服は濡れたそばからすぐに乾きはじめていた。
「特殊な繊維で作られた衣?」
紅季月は彼を寝台で寝かせ、自身の袂にあった手帕(ハンカチ)で顔や髪の水分を拭いてやり、「失礼します」といいながら、呼吸を楽にするために彼の立領(チャイナ服の立ち襟)の釦をいくつか外した。
熱を測るため手を彼の額に当ててみるが、心配はないようだ。むしろ冷やりとしていて驚き、低体温症を心配した紅季月は、掛け布団の上にさらに多くの布団を重ねたかったが、適切なものが見当たらなかったので、少しでも保温になればという思いで自身の羽織を脱いで重ねた。
「熱は無いようだけどとても体が冷たい。呼吸はあるし、低体温による意識レベルの低下かもしれないな、しっかり温めて様子をみよう」
紅季月は現実で精神科医であるが、一通り研修で学んで来ているので、一般的な対処法はわかっている。
布団の中で眠る人は、血色を感じさせないほどの透き通るような肌の白さで、長い銀色の髪をしている。まだ続く雷光に照らされるたび、その銀髪と肌に少し残る水滴が光を纏って、まるでこの世のものではないくらい神秘的に見えた。
「見たところ20歳前後の青年だけど、この小説にこんなキャラいたか?? 美形キャラなら目立ちそうなものだけど…」
寝台の脇に座り、じっと彼の顔を覗き込む。困ったことに、システムがいない事には、簡単に小説内の人物を知る事もできないし、どのような対応をすればいいのかもわからない。見たことのない展開に、紅季月はどうしたらいいのか検討がつかず、眠る彼の額にある文様:花鈿(かでん)あたりをそっと拭きながら、ただ祈るしかなかった。
「システム、なんとか再起動して戻ってきてくれ! 頼むよ!」
紅季月が縋るような思いで懇願すると、目の前で眠る彼の体が若干ビクリと動いた。
「あ、ごめん、驚かせてしまっ...」
彼の額に触れたことで驚かせてしまったと思い慌てて手を離すと、そのタイミングで彼の両目がパッと開かれ、紅季月が逆に驚いた。
彼は、天井の方を見ながら無機質にこう言った。
「再起動、完了しました」
開かれた瞳の色は、鮮やかな青緑色をしている。
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