明日の海

山本五十六の孫

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坊ノ岬

坊ノ岬

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暗い空に、黒い雲が浮いている。その空にも所々青い所があるが、それは米軍機。米軍機からは黒い塊が落ちて来て、それがこの舟を襲う。海を見ると、白い線がどんどんこの船に向かって伸びてくる。そして、それは舟に当たると大きな爆発をし、この舟を襲う。
銃弾と砲弾と飛行機が飛び交うここは果たして本当に海なのであろうか。私達を育ててくれた、あの海なのだろうか。あの海なら、鳥や子供達の声が飛び交っていたはずなのに。

また、黒い爆弾が落ちてきた。甲板に当たる。だが、当たりどころが悪かった。舟は聞いたことない音を出し、周りを真っ赤に染めた。弾薬庫に火がついたのだ。私の航海は終わった。せめてこの「大和」と共に死にたい、そう思った時だった。
『ゴンッ』
何かが自分の後頭部に当たった。視界は赤く染まり、体に力が入らなくなり、徐々に意識が遠のいていく。そして遂に倒れ、目を瞑ってしまった。



光が目に差し込む。段々と、その朦朧とした意識が回復してきた。艦長、江熊はなんとか立ち上がった。空は青く、雲一つない。米軍機も居ない。海には、雷跡もなく、艦影の一つも無い。そして艦橋内の人は全員倒れ込んでいた。
「おい、起きろ」
江熊は、尾崎副長(砲雷長)を呼んだ。
「対空戦闘用意、、、」
「何を寝ぼけているんだ。」
「なんとしても、沖縄まd、、」
パシッ
江熊が、平手打ちをした。
「いってぇ、、、って、あれ?」
「ようやく気がついたか。とりあえず、全員を起こせ、そして艦内の状況を調べろ。」
40分後
「よし、全員集まったな、状況の確認をしたい、尾崎砲雷長。」
「はい、艦長。砲雷科からは、主砲副砲それぞれ損害無し、弾薬庫にも何も問題は無く、無事です。。」
「弾薬庫は吹っ飛んで無かったのですか?」
と、嶋田航海長が言った。
「はい、私も吹っ飛んだと思ったんですが、、、神の御加護でも起こったんでしょうかね、、、しかし、故障は見られなく、無事なのでひとまず良かったです。」
「次は、須田船務長。」
「はい、船務科としても、艦内には特に問題はありません、が、僚艦からの通信が取れていない状況です。今も信号を送り続けているのですが、なんとも、、、」
重い空気が漂った。しかし、それを切り裂くかのように池田機関長は言った。
「沈んだ、なんてことも十分にあり得るな。」
「池田機関長、なんて事を、、、!」
嶋田が言った。
「そう言ってますが、嶋田航海長、貴方も薄々そう思ってるのでしょう?我々が行なっている作戦は特攻作戦です、沈んで当たり前でしょう。」
嶋田は、怒りの表情を浮かべながら池田を睨んでいた。
「嶋田、池田の言う通りだ。これは戦争だ。では次は、、、嶋田航海長」
「はいっ、こちらも特に異常はなく、敵艦も見当たらなければ、僚艦からの通信もありません、以上です。」
怒り気味の口調だった。
「池田機関長」
「はい、機関科からも特に故障などは見受けられませんでしたが、主缶主機共に停止しており、凄く冷え切っている訳ではないのですが、再燃まで2時間は必要でしょう。」
「、、、と言うことは、どの部署からも艦内に異常は見受けられなかったと言うことか。しかし、僚艦との通信が取れていないのが不可解だな。しかし、我々の作戦は沖縄に向かぬ事には始まらない。機関科は再燃を急ぎ、航海科は、沖縄に向かって舵を取れ。船務科は通信を諦めずに続け、対空警戒、対潜警戒を厳となせ。砲雷科はいつでも戦闘が取れるように準備を行え。今の時間が14:57分だ。沖縄には19:00頃に攻撃が出来るようにしろ。以上。」

厨房
「なんか、凄いことになりましたねぇ、、、」
秦野少尉が言った。
「しかしな、俺たちの仕事は飯を作って、船乗り達を笑顔にさせる事だ。よし、こんな事話してねぇで、とっとと飯作るぞ!」
「はい!」



3時間後
「あれは?」
見張り員の一人が言った。
「航海長!船を発見しました!」
「何?」

その先には、駆逐艦程の艦艇がこちらに向かって航行中だった。
「偵察機を飛ばしますか?」
「いや、いい。このまま様子を見る。」

「艦長へ航海長より連絡。2時の方向に国籍不明の駆逐艦級の艦を発見。我が艦に向かって航行中です。」
「わかった。尾崎副長、あの船をいつでも叩けるようにしようと思うのだが。」
「はい。私もそう思います。」
「よし。わかった。こちら艦橋。艦内全域に告ぐ。対艦戦闘用意!」
艦がどよめく。小さな船1隻に対して、大和が全てを注いでいる。

艦影が近づく。すると、見張り員が
「航海長、あの駆逐艦、旭日旗掲げてますよ。」
「本当だ、、、しかしよく見ろ、あの艦の乾舷部分には英語が書かれていないか?」
「本当ですね、、、でも、武装が見られませんが、、、本当に駆逐艦なんでしょうか?あの英語も、なんて意味だかさっぱり、、、あ、でも井ノ原少尉なら海外に行ってた経験もありますし、わかるのではないでしょうか?japan coast guard、、ですね!」
「聞いてみてくれ。」
そう言うと見張り員は走って行った。
「あの艦、やけに白い、、、さらに、煙突からの硝煙も見られない、、、武装もない、一体あの艦はなんなのだ、、、?」

「井ノ原!」
「どうしたんだよ、志田。」
「japan coast guardの意味ってわかるか?」
「japan coast guard、、、日本、沿岸、ガード、日本沿岸警備って意味だな。」
「ありがとう!」

「航海長!井ノ原によると、あの英語、日本沿岸警備って意味らしいです!」
「ありがとう。」

「艦長。あの駆逐艦、どうやら日本の艦らしいですよ。」
「ちょうどいいところに来た。あの船、さっきから領海から出ろみたいな事発光信号で言っているんだ。」
「返信はしますか?」
「いや、いい。」
「しかし、このままでは、、、」
「では、こちらからも脅しをかけてみては?」
と、尾崎が言った。江熊は、
「それが一番かもしれん。発光信号を送れ。それにも応じない場合は沈ませろ。」と言った。しかし、江熊にはまだこの状況が把握できなかった。もちろん乗員も一緒だろう。
(本当にここは日本の海なのか、、、?そしてあの艦は果たしてなんなのだ?あれがもし友軍だとしたら、、、)
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