壊れた心に闇が住む

遊月

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9.甘い香りに誘われて(3)

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アレンの剣から黒い煙がゆらゆらと現れ、徐々にそれは重さを持ち形を成す。

刀身が大剣のように太く長くなった。

「おい、手を貸して下さい(手を貸せ)。」

アレンとレオンは、剣を構えた。

アレンの一撃は空を切ったが、地面に亀裂を生むほどの威力を持っていた。2ndの逃げた場所をレオンの斬擊が道を防ぐ。

前とは違い、連携した攻撃は2ndに効いている。

お互いの攻撃がやむ。その中でもアレンの呼吸が一際大きくなっていた。

「おい、白いの。」

「何ですか。」

「へばってんじゃねーぞ。」

「…へばってないですよ。」

レオンはアレンの様子を横目で伺いながら、小声で何かを話した。アレンは驚いた表情を見せる。

「どんな策をたてても私には無駄だ。」

戦闘が再開される。アレンの威力の高い攻撃に対してレオンは連擊と速度をいかした攻撃で攻める。

2ndはレオンの攻撃以上にアレンの攻撃を優先的にかわしているようだった。

上手くいっていた連携が僅かに崩れ、レオンの攻撃がやむ。2ndはレオンを足蹴りでぶっ飛ばし、アレンへ突っ込む。レオンはふっとばされ力尽きたのか倒れた。

アレンは相手が殴りかかる瞬間、低い体勢で斬りかかる。

「バーカ♪」

2ndの口角があがった。2ndは殴るモーションをやめ、飛び上がりアレンの頭上へ跳ぶ。空振りにより、体勢が崩れているアレンにかかと落としをくらわせる。

「バカはてめぇだ。」

その瞬間、ダウンしてたはずのレオンの一太刀により、2ndの足が切り落とされる。

「やれ!アレン!!」

崩れた体勢から体をひねりアレンの一撃がくり出される。2ndは体を丸め防ごうとする。しかし、2ndの体が真っ二つに割れた。




「何故だ!」

灰化が進行するなか、必死の形相で2ndが叫ぶ。

「お前がやってた様に、俺らも演技しただけだ。」

そういってレオンはさらに2ndを切った。一瞬にして灰になり消えていった。

「それにしても、わざと攻撃を受けるなんてどうかしてますよ。」

アレンの剣はもとに戻っていく。

「あいつは、お前の剣を一回も防がず、逃げの一択だった。それに対して、俺の剣は多少斬られても気にしてない様子だった。その為の策が、これしか思い付かなかっただけだ。」

レオンは剣をおさめる。

「そうだ、あの子の兄は。」

「それって、あっちの部屋に眠らされているガキか?」

そういって、レオンはアレンが来た道と反対の道を指した。

アレンは急いでその場所へ向かった。来た道とは違い、そこはまるで牢屋のように、小さな部屋がいくつも並んでいた。

そして、その部屋の1つに1人の少年が倒れている。アレンはその少年をそっと抱えた。幸い、外傷はなく眠らされているだけだった。

ーーーーー

「おーい、起きろー。」

少年は自身の体が勝手に動くのがわかった。ゆっくりとめをあける。早朝の光が視界を包む。瞬きを繰り返す内に、目が慣れてくる。

そこには、こちらの様子を覗きこむ、警察官がいた。少年は鉄格子の扉を開けて階段を降りた所で寝ていた。

少年は驚き、飛び起きる。

「お、起きたね。体に痛みはないかい?」

「…はい。」

「この女性を知ってるかい?」

警察官は一枚の写真をみせる。

「はい、僕の為に仕事見つけてくれた人です。」

「この人は悪い人でね、昨日逮捕した人なんだ。」

「え!?」

警察官は微笑んだ顔で少年を見つめる。

「良かった、少年を助けられて。ここは危ない所だから勝手に入っちゃダメだよ。」

「うん…ごめんなさい。」

「じゃあ、妹も心配しているだろうから気を付けてお家にお帰り。」

少年は元気に返事をしたあと、階段をかけあがり家へ帰っていった。





「で、お前何で警察の格好したんだ?」

一部始終をレオンはみていた。

「なんとなくですよ。警察の人に言われた事の方がより言うこと聞いてくれると思っただけです。」

帽子を脱ぐとアレンの白い髪がサラサラと揺れる。

「わざわざこんな事する必要無かったと思うけど。」

「また、この場所に訪れてしまわないようにするためですよ。」

「…普通そこまでしねーよ。」

「もともと普通じゃないので、気にしません。」

アレンとレオンはその場を後にした。


ーーーーー

「で、これはどういう状況ですか。」

サニーが呆れた様子で尋ねる。

食堂にいるアレンとレオンはぐったりと椅子に座っている。二人の隣には大量のお皿が積み上がっている。

1人の男性が説明した。

「二人が帰ってきて、ご飯食べに食堂に来たのですが、同時に注文したのがきっかけなんですよ。」

ーーーーー

「お腹すいたー。」

「あぁ。」

アレンとレオンが食堂に入ってくる。メニューを眺める。

「じゃあ、カレーの大下さい(カレーで)。」

「悪い、カレーの大に変えて、プラス肉野菜炒め。」

レオンがアレンに聞こえるように注文を変更する。

「すいません、自分も肉野菜炒め。それと日替わりセットを追加でお願いします。」

アレンは笑顔で注文を追加する。すると、レオンの表情から怒りが見える。

「おい、俺も日替わりセットあと…」

「僕も、それと…」

「俺は…」

「僕は…」

「…」

「…」
ーーーーー 

「…てな感じで、お互いに沢山注文したあげく、早食い勝負が始まったって感じですよ。」

「それで結果はどうなったんですか?」

「同着です。」

サニーは呆れた素振りをみせぐったりとしているアレンに近寄る。

「おいしかったですか?」

「…えぇ、もう食べれません。」

「それは、良かったです。それに…無事に帰って来てくれてありがとうございます。」

サニーが微笑む。いつもの明るい周りを照らす笑顔。

「…約束しましたから。」

アレンは照れ隠すように目を逸らしながら答える。


「そうですね。あ、言い忘れてました。お帰りなさい!」

アレンは少し恥ずかしがりながらもサニーの方へ向く。

「うん、ただいまです。」

辺りは温かく、穏やかな空気が包み込んだ。

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