ゲームを始めたはずの私は、なぜか異世界で勇者《最弱職》になりました

二章 ダンジョン探索は冒険者のロマンでしょ？

ダンジョンドラーズ、ハラハラドキドキ探索！ 52

　この人は今、そんなことと言ったの？
　私はそのためにここまで来たというのに。
　ここがどこなのか、どうやってここから出るのか、それを知るためにこんなこところまで来たというのに、この人は今、そんなことと言った。

「なるほど。あなたにとっては、そんなこと、ではなかったのですね。私にとってはその程度のことだったので」

　私は彼女に対して、このあと暴言を吐くつもりだった。
　そして、さっさとここから退場しようとしていた。
　けど、何一つできなかった。
　足を動かすことも、唇を動かすことも。
　したいと思ってたことが、なにもできなかった。

「あの、少し失礼じゃありませんか？　私はこうも優しく、こうも対話を好んでいるというのに、どうしてあなたはそう考えているのでしょうか。もう少し、私との対話を望んでくれてもよくないですか？」

　私はまだ、なにも言っていない。
　けど、私のやろうとした行為がアルートに伝わっていた。
　それはつまり、心を読まれたと考えるのが妥当である。
　けど、きっとそうじゃない。
　心を読まれたわけじゃない。
　未来を見た？　そんなことじゃない。
　その程度のことじゃない。
　この感覚はそんなこと程度の話じゃない。