ゲームを始めたはずの私は、なぜか異世界で勇者《最弱職》になりました

二章 ダンジョン探索は冒険者のロマンでしょ？

ダンジョンドラーズ、ハラハラドキドキ探索！ 47

「ふざるのも大概にしてくれる？　てか、私がこうも話しかけているのに、まず無反応とか、それは私の一人言なんだよ。今ここに二人いるのに、なんで一人言なんてしなきゃならんのさ」

「…………」

「はあ、これだけ言ってもまだ喋る気がないわけか。そもそも、優しく話しかけてあげてたんだから、そのときに受け答えしてくれてれば、こんなことにはなってないんだよ。話しかけてるのに、なに一つ答えなから、今の構図が出来上がってるだけでさ。そのことを考えたら、どっちが悪いのか、どっちがおかしいのか、わかるでしょ。いい加減さ、話してくれない？　そろそろ、我慢の限界なんだってことぐらい、わかってるでしょ」

　実に刺々しく、迫力満点に喋っているが、当の本人の顔は見えていない。
　そう、顔は見えてないのに、彼女が怒り、そこではっきりと話してる姿が想像できる。
　けど、そこには彼女の顔だけがない。

「ねえ、話す気がないってことでいい？　いいよね。待ったあげたんだから。時間は、十分にあげたんだから」

　彼女はそう言い終えると、なんとなく存在がそこから居なくなった気がした。
　もう、ここではない、どこかにでも行ってしまったような気がした。
　そう感じて、私は後ろへ振り返った。